新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第6話 火曜日−その3−


「わ〜い,アサトお兄ちゃんだ〜っ!」

「遊んで〜。」

「高い高いしてよ〜っ。」

俺が保育室に入ると,子供達が押し寄せてきた。

「おい,ちょっと待て!順番だっ!」

いつものこととはいえ,俺はてんてこ舞いだ。最初は子供達を順番に『高い高い』する。
要は子供を持ち上げて『たか〜い,たか〜い。』と言ってあげるんだ。これって結構ハー
ドなんだぜ。さすがの俺も,非常に疲れるんだ。体を鍛えていて,本当に良かったと思う。

俺の近くにいるショウの所にも子供達は群がっている。でも,ショウは俺より体力が落ち
るから,結構辛そう。悪いな,ショウ。俺に付き合わせちゃって。

次は『ひこうき』だ。子供を抱えて『そ〜れ,ひこうきだぞ〜っ』って言いながら10秒
位走るんだ。ただそれだけなのに,子供達には大人気なんだ。でも,これも物凄く体力を
使うんだ。

それに,俺がここに来る時間は,子供達のお昼寝の時間が終わり,3時のおやつも食べ終
わって,エネルギーが満タン状態の時なんだ。よって,物凄くエネルギッシュなんだ。

ちなみに,他の保育園では,5歳児はお昼寝をしないところもあるけれど,俺の園では,
9月まではお昼寝をしている。そして,小学生まで後半年という時になったら,お昼寝を
止めるんだ。そうしないと,小学生になっても,授業中に居眠りをしちゃうからだそうだ。

でも,今の時期は12時半から2時間はお昼寝をする。その後におやつなんて食べるもん
だから,お腹一杯でエネルギー充填120%なんて状態なんだ。だから,一緒に遊ぶのは
物凄く体力が必要なんだ。

でも,子供達はすっごく喜んでくれるから,俺としては嬉しい限りだ。それで,ついつい
疲れを忘れてしまうんだ。子供って,本当に可愛いよな。それに保育園だと女の人が多い
から,俺みたいにパワフルな遊びをしてくれる人はいないのだろう。幾らでも群がって来
るんだ。

もちろん,保母のお姉さん方の評判もいい。何せ,俺が来ると大きい子供達の半分近くが
俺とショウの所にやって来るもんだから,お姉さん方も少しは楽を出来るって訳だ。

そんな俺でも失敗はあるし,怒られることもある。子供にせがまれて『せんぷうき』をや
ったら,危ないって怒られたんだ。子供の腕を掴んで振り回すのは,結構危険らしいんだ。
その時,俺はかなり強く怒られたんだけど,素直に謝った。そしたら,直ぐに許してもら
えたけど,あんなことはもうこりごりだ。

そうだ。この保育園の一日を紹介しよう。

7時  登園   早い親は,この時間に子供を預けに来るんだ。

9時半 朝の会  皆が揃ったらおうたや体操をするんだ。

10時  お遊び  近くの公園に行ったり,園庭でお遊びをする。

11時  昼食   小さい子から順番にお昼を食べるんだ。お代わりもあるぞ。

12時半 お昼寝  皆ぐっすりお昼寝。保母さんは交代で休憩タイム。でも休んでばかり
         じゃないんだ。暗い部屋の中で親に渡す連絡帳にせっせと書いてる保
         母さんもいる。打ち合わせが入ることもある。

14時半 おはよう お寝坊さんは,目をごしごし。

15時  おやつ  手作りおやつは美味しい。余ったらたまにもらえることがある。普段
         は子供達が食べ終わって間もなく俺達が着くんだ。

16時  降園   早い子はこの時間でバイバイする。でも,残っている子の方が多いぞ。

18時頃 おやつ  遅くまでいるとおやつが出るんだ。この時間に迎えに来る親が多いか
         ら,親への対応で俺達はちょっと大変。子供が食べる手伝いの方が気
         が楽だけど,検便しろって言われるからパスしている。

19時頃 夕食   20時まで残る子は夕食が出る。この時間だとかなり子供は少なくなる。
         普通なら俺達もそろそろ帰る時間だ。

20時  閉園   保育園の一日は、これでお終い。

***

「今日も疲れたな〜。」

俺はそう言った後,アイスコーヒーを一気に飲んだ。子供と遊んだ後は疲れるうえに,汗
を大量かくから,終わった後はジュース類をがぶ飲みするんだ。だから行き先はドリンク
が飲み放題のファミレスだ。ついでにここで食事をすることも多い。

「あ,アサト。お代わり欲しい?」

「あ,ああ。」

「じゃあ,わたし行って来るね。」

そう言って,隣に座っていたアケミが俺の飲み物をお代わりを持って来てくれた。

「ありがとな。」

一応礼は言っておく。まあ,人間としての最低限の礼儀って言うやつだな。こいつが優し
いからなのか,お節介焼きなのか,俺に好意を持っているのか,そんなことはどうでもい
い。理由はどうあれ,俺のために動いてくれたんだから。

でも,他の女の子達がアケミをジト目で見ている。きっと,そいつらも狙っていたんだろ
うな。それが先を越されたっていう訳か。でも,俺は気付かないフリをして,保育園の子
供達の話をした。

おっと,その前に保育園のことを話しておこう。俺が行っている保育園の定員は,0歳児
から5歳児まで各20人で,計120人なんだ。これに対して保育士の人数には国の作っ
た決まりがある。例えば,0歳児だと子供3人に対して保育士が1人で,1・2歳児だと
6人,3歳児だと20人,4・5歳児だと30人に対して保育士1人なんだそうだ。

その決まりだと,保育士は16人必要になる。でも,この保育園は国の決まりよりも保育
士の人数を多くしている。原則として22人いるんだ。そのうち常勤の職員が8人で,パ
ート職員が4人,それ以外は俺みたいなボランティアなんだ。

保育園が開園しなければならないのは,1日最低8時間。これを原則保育時間というらし
いんだが,うちでいうと8時から4時で,この間は常時22人の保育士を配置している。
でも,うちの保育園は夜遅くまで預かることを売りにしていて,朝は7時から,夜は20
時まで開園している。

そんなことから,実際に子供達が帰り始めるのは6時過ぎなんだ。親が5時過ぎまで働い
て,それから迎えに来ると,大抵それ位の時間になってしまう。だから俺達ボランティア
が帰るのは7時過ぎ,場合によっては親のお迎えが遅くなって,8時になる。

その後にファミレスに行くと,やっぱりお茶だけじゃなくて,食事もするよなあ。保育園
で4時間近く働く訳だから,お腹も空くし。だから俺達は喫茶店なんかじゃなくて,ファ
ミレスに入るんだ。人数も10人だし。まあ,男1人に女の子4人か。他の男から見たら,
羨ましいだろうな。

あっ,そうだ。ファミレスに行く大きな理由を忘れていた。良く行くファミレスは,母さ
んの会社の系列なんだ。だから俺達は金を払わなくて済む。これって大きいよなあ。とま
あ,話はそれたが,俺達は飲み食いしながらおしゃべりして9時近くまでいることが多い。

話題は保育園の子供達のことが多い。ナツミが最近元気が良いとか,タケシの絵が上手だ
とか,子供の情報をお互いに交換するんだ。えっ,他の話題は無いのかって。もちろん無
いさ。最初は他の話をしようとする女の子がいたが,そいつのことを無視するようにした
ら態度を改めやがった。

そいつも,俺が子供達の話をしている時は機嫌が良いって気付いたみたいだ。こうして,
わいわい話しながら,俺の火曜日は過ぎていく。



つづく

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あとがき

 アサミ以外の女の子に囲まれる,この一時が,アサトの唯一の息抜きかもしれません。
アサトも子供のことが好きなので,ボランティアは長続きしそうです。


written by red-x


マナ:子供の相手って、重労働だもんね。

アスカ:子供が好きじゃなきゃ、できない仕事よ。

マナ:偉いなぁ。わたしなんか、アスカの相手するだけで、大変だもん。

アスカ:なんで、それが大変なのよっ!

マナ:まだ子供は可愛いけどさぁ。

アスカ:アタシも可愛いでしょうがっ!

マナ:はいはい、可愛いでちゅねぇ。

アスカ:なんか、ムカつくわね。(ーー)

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