新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第7話 水曜日−その1−


「ねえ、アサト〜。起きてよ。」

「う〜ん、もうちょっと寝かせてくれ。」

「あっそう。じゃあ、母さんに言っちゃおうかな。」

「おい、ちょっと待て!」

俺は飛び起きた。ちっ、アサミの奴。いつもいつも、俺が母さんに弱いのを知っているか
ら、直ぐに母さんのことを引き合いに出して、困ったもんだ。いつか、仕返ししてやる。

俺は飛び起きた。これから、日課のランニングだ。そして、それが終わったら、アサミと
格闘技の訓練なんだ。それが終わって、やっと学校に行けるんだ。

***

「おはよ〜。」
「おはようございます。」

俺とアサミは、クラスに入ると、いつものように皆にあいさつした。

「おっ、アサト。お早う。」

そう言いながら、ショウが寄って来た。

「どうした?」

「ああ、お前のお気に入りの碇シンジだけど、使徒っていう化物と刺し違えて死んだらし
い。結構確かな情報だぜ。」

「どこからの情報なんだ?」

「それは秘密だ。まあ、良いじゃないか。」

何だよ、教えてくれてもいいのに。

「じゃあ、いいけどよ。他に何か分かったか?」

「ああ、結構分かったぜ。使徒っていう化物は、エヴァンゲリオンていうロボットで倒し
たらしいんだ。それで、そのパイロットの中で、一番活躍したのが碇シンジなんだと。」

「そうか。ちなみに他のパイロットって分かるか?」

「ああ、ちょっと来いよ。」

俺は、ショウの机の上にあるパソコンの画面を見るようにと言われて、覗き込んだ。ええ
と、何て表示してあるんだ。

『パイロットリーダー:氏名不詳/女/エヴァンゲリオンパイロット
最後の使徒戦役後、消息不明。

 ファーストパイロット:綾波レイ/女/エヴァンゲリオン新弍号機専属パイロット
最後の使徒戦役後、平和維持活動に従事。現在は、予備役。

 セカンドパイロット:氏名不詳/女/エヴァンゲリオン旧弐号機専属パイロット
第一次使徒戦役の戦闘の際、重傷を負い入院。その後の消息不明。

 サードパイロット:碇シンジ/男/初号機専属パイロット
最後の使徒戦役時、使徒と刺し違えて戦死する。

 フォースパイロット:鈴原トウジ/男/参号機専属パイロット
最後の使徒戦役後、平和維持活動に従事。現在は、予備役。

 フィフスパイロット:渚カヲル/男/四号機専属パイロット
最後の使徒戦役後、平和維持活動に従事。現在は、予備役。』

「ふうん、パイロットは全員現役を退いたのか。で、今はどうしているんだろう。」

「そんなこと知ってどうするんだよ。」

「出来れば、碇シンジの話を直接聞きたいと思ってな。」

俺は、そこまで言って、ふと頭を捻って考えた。この中には、妹の友人の姓と同じものが
ある。もしやと思うが、もしかしたら親戚かなんかの可能性があるから、今度聞いてみよ
うと思う。

そんなことを考えているうちに、先生がやって来た。俺達は、慌てて自分の席に座った。
すると、先生はすぐに出席をとり始めた。

「赤木ショウ君!」

「はいっ!」

「伊吹シノブさん!」

「はいっ!」

ふふふっ、ショウの奴は赤木だから、出席をとられる順番が早いんだ。

「葛城サキさん!」

「はいっ!」

おっと、もうサキか。もう少しで俺の番が来るな。

「アサト君!」

「はいっ!」

「アサミさん!」

「はいっ!」

そう、俺とアサミは姓が同じだから、先生も姓は言わなくなった。俺達だけが名前だけで
呼ばれるんだ。出席番号が早いってことは、結構損だよな。そんなことを考えていると、
ショウからメールが来た。

ちっ、ショウの奴、こんな時にメールを送るなんて。先生にわかったら、怒られるじゃな
いか。だが、俺は何となく開いた方が良いような気がしたんで、メールに目を通すことに
した。

『アサトへ。もう一つ、ビッグニュースがあるんだ。後で教えてやるから、楽しみにして
いろよ。』

なんだよ、ショウの奴。もったいぶっちゃって。早く教えてくれればいいのに。俺は少し
機嫌が悪くなった。ショウとは、小さい頃からの付き合いだが、こういう風に、もったい
ぶるところがあるんだ。これだけは気に入らないな。


そうそう、ショウのことを少し話しておこう。ショウとは、小さい頃からの付き合いで、
同じマンションに住んでいることもあって、一緒に良く遊んだもんだ。

それに、俺の母さんとショウの母さんは仲が良くて、いわゆる家族ぐるみの付き合いって
いう奴なんだ。それもあって、しょちゅうお互いの家を行き来しているんだ。

ショウの母さんは、名前は忘れちゃったが、世界的に有名な科学者で、高校の教科書にも
載っているくらいなんだ。だから家にいないことも多くて、ショウはミコ姉−ショウのお
姉さんのミコトさん−と二人きりになることが多かったんだ。

それは、シノブの家やサキの家も同じで、どういうわけか、俺の家がたまり場的になって、
子供がいつも集まってぎゃあぎゃあ騒いでいたんだ。子供の面倒を見るのは、主にばあち
ゃんだが、多分大変だったろうな。

男は、サキの兄さん二人と、シノブの兄さんにショウ。女は、ショウの姉さんに、サキと
シノブが来て、俺達兄弟妹4人を加えると、総勢11人にもなったんだ。そりゃあ、もう、
うるさいってもんじゃなかったろうな。

そういえば、あの頃は母さんは今よりももっと家に居たと思う。週に2〜3日位は、平日
の昼にも家に居たような気がする。もっとも、パソコンの端末を打ちながら俺達の様子を
見ていたから、きっと仕事をしていたんだろうな。

そういえば、鈴原のおばさんと相田のおばさんも良く来ていたっけ。そして、ばあちゃん
と一緒に俺達の面倒を見てくれたんだ。もっとも、子供がさらに各2人増えたけど、ミカ
コは同い年の遊び相手が増えて、ミライは家来が増えたって言って、喜んでいたっけ。

これだけ子供が多いと、全員一緒に遊ぶこともあったけど、年齢別に分かれて遊ぶことも
多かったな。サキの兄さん二人、シノブの兄さん、ミコ姉のグループと、俺とアサミ、シ
ョウ、サキ、シノブのグループと、ミカコ、ミライ、鈴原姉弟、相田姉弟の、3グループ
に分かれて遊んだっけ。

俺は、いつしか昔の思い出に浸っていた。

***

「おい、アサト。」

休み時間になって、ショウが話しかけてきた。

「おい、ショウ。さっきのメールの話か?」

「ああ、そうだ。実は、大変なことがわかったんだ。」

「ほう、一体なんだよ。」

「お前、サキのおばさんを覚えてるか?」

「ああ、当たり前だ。あの、胸が大きくて、明るくさばけた感じの人だろう。」

「それもあるけど、名前だよ。」

「ええと、…。」

うっ、俺は大人の名前を覚えるのは苦手だ。普段、呼びなれないからな。ショウは、そん
な俺をあきれたような顔で見て、続きを話した。

「確か、ミサトさんだったよな。実はな、碇シンジ達、エヴァンゲリオンのパイロット達
を指揮して戦ったのが、『智将、葛城ミサト』と言われている、名将中の名将、史上最高
の軍師なんだそうだ。」

「おい、それって、まさか…。」

「ああ、葛城という名字は珍しい。鈴原や綾波もな。」

「じゃあ、もしかすると…。」

「ああ、そうだ。おそらく、お前の予想は当たっているだろう。それに、俺の母さんも、
おそらく何らかの関係があるはずだ。もしかしたら、お前のおばさんも何か知っているか
もしれない。」

「そうか、そうかもしれないな。でも、大人に聞くのは最後の手段にしようぜ。ちょうど、
明後日はみんなで集まって、碇シンジの出る映画を見るじゃないか。その時にみんなにも
情報を持っていないかどうか、聞いてみようぜ。」

「ああ、そうだな。じゃあ、この話は金曜日にしようぜ。」

こうして、金曜日に碇シンジの話をすることになったんだ。さあて、一体どうなることや
ら。



つづく

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あとがき

 誤解される前に、言っておきます。パイロットリーダーというのは、アスカが変装した
姿です。



written by red-x


マナ:みんな自分達が過去の英雄だってこと隠してるのね。

アスカ:まぁ、あまり見せびらかすもんじゃないし。

マナ:子供達が、その秘密を紐解いていくみたいだけど・・・。

アスカ:どこまで、できるか楽しみだわ。

マナ:真実を知ったら、びっくりするでしょうね。

アスカ:隠された秘密は、10倍にしてあばくのよっ!

マナ:アスカ・・・。わけわかんないわよ?(ーー)

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