新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第10話 木曜日−その1−


「ねえねえ、アサト。」

休み時間になって、隣のクラスのケイがやって来た。

「うん、何だよ。」

「あのさ、今度の日曜日に応援に行く?」

ちなみに、ケイの妹はミライと一緒にサッカーをしている。応援とは、サッカーの試合の
応援のことだ。

「ああ、もちろんさ。」

「じゃあさ、一緒に行こうよ。」

「う〜ん、今度はパスさせてくれ。俺の母さんやばあちゃんが行くことになっているんだ。
母さんだけが一緒ならいいんだけどよ、俺がばあちゃんの面倒を見なきゃいけないから。」

「いいよ、私も一緒に面倒見るから。」

「でもなあ。」

俺が渋っていると、アサミが横から口を出してきた。

「いいじゃん、アサト。私も一緒に行くし、ケイが一緒の方が良いよ。」

くっ、アサミめ。余計な口を言いやがって。俺は、ばあちゃんが一緒のところを、他人に
見られたくないっていうのに。でも、こうなったら断れないな。

「それじゃあいいけどよ。かなり大勢で行くから、あんまりお前の相手は出来ないかもし
れないぞ。それでもいいのか?」

「うん、いいよ。アサトが相手出来なかったら、アサミと話してるから。」

「じゃあ、集合場所は俺の家の前。時間は試合開始の1時間前だと思うけど、決まったら
連絡するよ。」

「うん、アサトからの連絡、楽しみに待ってるね。」

じゃあね、と言いながらケイは去って行った。そしたら、アサミが口を尖らせた。

「駄目じゃん、アサト。ケイに冷たくしちゃあ。」

「冷たくしてねえよ。俺だって、ばあちゃんが一緒じゃなきゃあ、嫌がらないさ。」

「でもさあ、アサト。ケイは妹さんに頭を下げてサッカーするようにって頼んでくれたん
でしょ。それも、アサトが頼んだからでしょ。それなのに、あの態度はあんまりじゃない
の?」

「そ、そりゃあそうだけどよ。」

俺は、アサミのいつになく強い剣幕に少し引いた。確かに、ちょっと冷たかったとは思う
が、そんなに悪いことをしたのか、俺は?

「まあ、いいわ。今度の日曜日、ケイに何かプレゼントしなさいよ。それで許してあげる
わ。」

「じょ、冗談だろ。何で俺が女の子なんかにプレゼントするんだよ。」

「何でもいいのよ。気持ちよ、気持ち。ちゃんとお礼しておかないと、ケイの妹さんがサ
ッカーやめたいって言いだした時に、ケイは止めてくれなくなるよ。アサトは、それでも
いいの?」

「そっ、そりゃあ、良くないさ。」

「じゃあさ、もうちょっとケイに優しくしなよ。」

「ああ、俺が悪かったよ。あとでケイには俺から謝っておくよ。」

「頼むわよ、アサト。アサトだって、ミライの泣き顔、見たくないでしょ。」

「ああ、もちろんさ。」

「じゃあ、頼むわよね。」

そう言いながら、アサミは去って行った。

「ふう、たりいなあ。」

俺は呟いた。実は、ミライのチームが今年は勝てる見込みがあるのと、今の話しは関係あ
るんだ。ミライのチームは弱小なため、ミライはチームの強化に乗り出したんだ。

その強化策のひとつがメンバーの数の確保なんだが、負けず嫌いのミライは、最後の手段
に出た。そう、ミカコに頭を下げて、今年からチームに加わってもらうことにしたんだ。
むろん、その友達も一緒にな。

ミカコの友達の、相田ミキ、鈴原ナツミ、綾波アイ、霧島レイナの4人を加えて、計5人
の6年生が加わったんだ。これは、かなりの戦力増強になったはずだ。確かに、サッカー
に関しては素人同然とはいっても、全員がスポーツ万能だからな。

それに加えて、サッカー経験者に片っ端から声をかけて、チームへの参加を呼びかけたん
だ。だが、ミライがいくら声をかけても、なかなかいい返事はもらえなかったんだ。

そこで、ミライは俺に泣きついてきた。メンバーの勧誘について、俺に協力しろって言う
んだ。具体的に言うと、ミライが目星をつけた女の子の兄か姉に俺が頼み込むっていうこ
となんだ。

俺は最初は嫌がった。だって、そうだろう。知らない人に頼みごとをするなんて、嫌だよ
なあ。少なくとも、俺はそんなことは願い下げだ。でもな、ミライが泣きそうな顔をして
俺に頼むんだ。可愛い妹に涙を流さんばかりにして頼まれたら、どんなに嫌なことだって、
断れないよな。

だから、俺はミライに言われた通りに頼みまくったんだ。そのうちの一人がケイっていう
訳さ。ケイは、妹をミライのサッカーチームに入るよう、説得してくれたんだ。それも、
5年のサヤカ、4年のマキ、3年のヒトミの3人の妹を。それを聞いた時のミライは、そ
れこそ飛び上がって喜んでいたもんさ。

えっ、何でかって。だって、ミカコ達6年生は1年で卒業しちゃうじゃないか。すると、
来年はまたメンバー不足に悩まされる。だから、5年生以下の加入は、凄く嬉しいらしい。
現在は5年以下のメンバーは8人だから、ちょうど必要人数が揃っている。

えっ、サッカーは11人でやるもんだって?まあそうだけど、小学生の女子は11人集ま
らないチームが多いから、8人制の公式戦の方がむしろ多いんだ。でも、1日に3試合や
ることもあるし、交代要員が最低3人欲しいところだ。当日に体調を崩したりして休む者
もいるから、さらに余裕は欲しい。

そうなると、14人という人数は理想的だな。来年は6年生がごっそり抜けるが、何人か
新規加入してもらえば何とかなるだろう。

それに、人数が少ないのは、弱いせいもあるらしい。ミライと同じ小学校の女子のうち、
何人かは他の小学校のチームに入っているらしいんだ。これは、同じ小学校のチームに入
らなくてはならないという決まりがないからなんだ。

だから、上手な子ほど弱いチームを避けて強いチームに行くんだそうだ。だから、弱いチ
ームはいつまでも弱いままだし、強いチームは、なかなか弱くならないらしい。

だが、ミライのチームが勝ち進めば、他のチームに行った子や、他のチームに行こうとし
ている子を引き入れることが可能なんだ。だから、ミライは今年の試合にかなり気合を入
れているんだ。

「しょうがねえなあ、ミライのためだ。」

俺は、ケイにプレゼントを買うことを決意した。なけなしの小遣いがさらに減るが、可愛
いミライのためだからしょうがねえか。俺は、そう思いながらも、あんまり入っていない
財布の中身を思い出して、深くため息をついた。


つづく

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ミライのサッカーチームの紹介

今年のメンバー 14人

6年生 リカ、(ミカコ、相田ミキ、鈴原ナツミ、綾波アイ、霧島レイナ)
5年生 カオリ、リサ、エリ、(サヤカ)
4年生 ミライ、カオリ、(マキ)
3年生 (ヒトミ)

かっこ内が新たに入団したメンバー

昨年のメンバー 8人

6年生 アヤ、ユウコ
5年生 リカ
4年生 カオリ、リサ、エリ
3年生 ミライ、カオリ



written by red-x


マナ:サッカーとかしてたら、応援きてくれると嬉しいわよね。

アスカ:そりゃ、なんだって応援して貰ったら嬉しいものよ。

マナ:わたし、応援するのって好きなのよねぇ。

アスカ:じゃ、アタシを応援してよ。すぐ近くまで来て。

マナ:なに? 何か試合に出るの?

アスカ:エヴァで使徒と戦うの。足元で応援してね。

マナ:そんなとこ行ったら、死ぬじゃないのよっ!

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