新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第15話 金曜日−その3−


 俺の名前は、惣流アサト。碇シンジが出演しているという映画を見るために、双子の妹
のアサミと一緒に親友の赤木ショウの家に来ている。

映画を一緒に見ているのは、ショウのお姉さんのミコトさん、幼なじみの葛城サキとその
兄ハヤト、同じく幼なじみの伊吹シノブとその兄マサトの計8人だ。

その映画、『救世主アスカ −使徒&ゼーレVSエヴァンゲリオン−』には、なんと母さ
んが出ていて、しかも主演女優だったんだ。

俺は、いつしかこの映画に見入ってしまっていた。


タイトルが徐々に薄くなっていったかと思うと、急に海に変わる。そして、その海から突
如として化物が現れる。なんだ!こいつは?ウルトラセブンが好きな俺は、そいつを独断
と偏見でジャミ公と呼ぶことにする。そのジャミ公に戦車隊が集中砲火を浴びせるが、ジ
ャミ公は悠々と上陸していく。

ジャミ公はとてもじゃないが造り物に見えなくて、なんだか本当に巨大な化物が歩いてい
るみたいな物凄いド迫力だった。これって、一体どうやって撮ったんだろう。CGか特撮
なんだろうが、こんなに凄いのは初めて見た。

『急に現れた第3使徒。だが、使徒に通常攻撃は通用しない。』というテロップが流れる。

そして、場面は急に別の場所へと移る。随分と広い空間があり、大勢の人が見える。そこ
の正面のスクリーンには、ジャミ公じゃなくて使徒っていうのか、使徒の姿が大写しにな
っている。

急に画面は紺のタイトスカートに赤いジャケット姿の凛々しい美女に切り替わり、その美
女は不敵な笑みを浮かべて呟く。

「15年ぶりね。」

『ネルフ総司令葛城ミサト』というテロップが流れる。

そして、白衣をまとった知性的な美女が現れ、これに応える。

「そうね。間違い無いわね。」

『ネルフ技術部長赤木リツコ』というテロップが流れる。

「げっ。今度は俺の母さんかよ。」ショウが驚きの声をあげる。

そして、アサミに生き写しの、さきほどのスーパー美少女が、赤いスカートに赤いジャケ
ット姿で現れる。不敵な笑顔、自信満々の態度、凛々しい雰囲気で、物凄くカッコイイ。
うんうん、これは絶対に母さんに間違いない。

「じゃあ、そろそろアタシ達の出番ね。マコト、マヤ、エヴァの準備はいいわね。」

『ネルフ作戦部長惣流・アスカ・ラングレー』というテロップが流れる。

「やっぱり、母さんなのね。」アサミが呟く。

そして、誠実で真面目そうな男性が映し出される。これは、もしかして…。

「はい、パイロットの用意は完了しています。」

『ネルフ作戦部部長代行日向マコト』というテロップが流れる。

「おいおい、今度は父さんかよ。」ショウは、さっきよりも大きな声を出す。やっぱり、
ショウのおじさんだったか。

次にシノブを「少し」大人にしたような可愛いらしい女性が映し出される。

「はい、エヴァンゲリオンの出撃準備も完了しています。」

『ネルフ技術部部長代行伊吹マヤ』というテロップが流れる。

「今度は私の母さんが…。」シノブも驚いた様子だ。

「ミサト、こっちはいつでもOKよ。」

母さんは、『ネルフ総司令葛城ミサト』であるサキのおばさんの方を向いて叫ぶ。

「分かったわ。もう少し待ってて。」

使徒に大型ミサイルが直撃するが、何ら効果が無いようだ。次に大きな爆発が起きるが…。

「爆心地にエネルギー反応!」

急に長髪の男が現れて叫ぶ。

『ネルフ作戦部青葉シゲル』というテロップが流れる。

「ええっ、お父さんじゃない。」シノブは、一層高い声を出す。

「やっぱり、通常兵器は通用しないわね。」

母さんが腕を組んだ姿が大写しにされる。

「国連軍から、指揮権が委譲されましたっ。」

シノブのおじさん、『ネルフ作戦部青葉シゲル』が叫ぶと同時に、サキのおばさんが命令
を下す。

「いいわよっ、アスカ!やっちゃって!」

「オーケー!シンジを呼び出して。」

母さんが言うなり、スクリーンの一部に少年の顔が映る。精悍でいて、優しさも感じられ
る不思議な顔をしていた。

『ネルフ作戦部所属パイロット碇シンジ』というテロップが流れる。

「これが、碇シンジなのかっ!」俺は、興奮のあまり思わず立ち上がってしまった。

「アスカさん、準備出来てます。」

「よ〜し、エヴァンゲリオン、発進!」

母さんの声と派手な身振りと共に、紫色をしたロボットが発射される。そして、使徒と対
峙する。

「シンジ、訓練通りにやって。緊張しないでね。」

「分かった。」

こうして紫ロボは、使徒に飛び掛かっていく。だが、使徒の手前の光の壁に激突した。

「シンジ、その壁を中和して、こじ開けて。」

その言葉通りに、紫ロボは、光の壁をこじ開けて、使徒の手を掴み蹴り飛ばす。

「良いわよっ!そのまま攻撃よっ!」

紫ロボは、使徒に馬乗りになって、もぎ取った使徒の胸の骨のようなものを何度も打ち下
ろした。すると、使徒は紫ロボに張り付き、その身を丸めた。

「シンジ、使徒は自爆するかもしれないわよっ。直ぐに離れて!」

母さんの言葉に、紫ロボは使徒から離れたが、その瞬間、使徒は大爆発を起こす。

「自爆か。勝ったわね。」

母さんは腰に手をやり、胸を張った。母さんお得意のポーズだ。もう、この頃からやって
いたのか。

「アスカさん、助かったよ。ありがとう。流石は、名作戦部長。」

爆炎の中から紫ロボが現れ、碇シンジの顔がスクリーンに映った。

「はんっ!そんなこと言っても何も出ないわよ。」

「ちぇっ。残念。」

そして、その場に笑い声が響いた。

***

急に場面は変わって、第壱中学校が大写しされる。のどかな学校生活が映し出され、中学
生の姿が次々と映し出される。

ある者は笑い、ある者は怒り、ある者は騒ぐ。

その中で、母さんの大声が響きわたる。

「シンジ!今日は訓練よっ!忘れないでっ!」

「分かったよ、うるさいなあ。」

「うるさいとは何よっ!」

バチーンと音がしたかと思うと、碇シンジの頬に真っ赤な紅葉が出来上がる。おいおい、
母さん。世界を救った英雄に、そんなことをしてもいいのかよ。あれっ、でもこれって映
画だからいいのかな。でも、碇シンジの印象がさっきとは全然違うな。これじゃあ…。

「なんや、賑やかやな。」

『ネルフ作戦部所属パイロット鈴原トウジ』というテロップが流れる。

これは、鈴原ナツミのおじさんに似ている。

「いつものことでしょ。」

『ネルフ作戦部所属パイロット洞木ヒカリ』というテロップが流れる。

これは、間違いない。ナツミのおばさんだ。だとすると、さっきのはナツミのおじさんに
間違いないだろう。

続いて窓の外を眺めるスーパー美少女も映る。この、髪が水色で、紅い瞳をしたスーパー
美少女は、何となくミカに似ている。

『ネルフ作戦部所属パイロット綾波レイ』というテロップが流れる。

なにっ、綾波アイのおばさんかよ。そうかあ、アイとミカは姉妹に間違えられる位良く似
ているもんなあ。

「平和だねえ〜。」

今度は、相田ミキのおじさんに似た、メガネをかけた少年が呟く。


そして、映画はまだまだ続く。

 
つづく

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あとがき


 次々とお馴染みのキャラが現れます。ですが、映画の内容と本編の内容はかなり違って
います。その理由は…。いずれ分かるかもしれません。


written by red-x
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