新世紀エヴァンゲリオン 蒼い瞳のツインズ


第1部 アサトの1週間


第17話 金曜日−その5−


 映画が終わって、みんなは興奮してしゃべっていたが、俺はゆっくりと自分の頭の中を
整理することにした。


最初は母さんだ。主演女優が母さんであることは疑いない。そして、最後に映し出された
組織図を見る限り、母さんは特務機関ネルフ広報部のチーフをしていたことになる。

中学生のうちから、母さんは世界主要国に支部があるネルフという巨大組織の、広報のチ
ーフを任されていたことになる。それも、単なる会社組織ではなくて、人類の未来を守る
国連所属の特務機関という、凄い組織のだ。

やっぱり、母さんはただ者では無かったんだ。俺は猛烈に感動した。高校の教科書に名前
が載っているショウのおばさんや、しょっちゅう新聞に名前が載っているサキのおばさん
と比べて、母さんは小さな会社の社長に過ぎないと思っていたから、俺は少しばかり引け
目を感じていたんだ。

でも、それも今日でおさらばだ。中学生の頃からそんな凄い仕事を任されていたんだから、
今はもっと凄い仕事をしているに違いない。母さんは会社の社長だって言ってるけど、本
当はまだネルフの仕事をしているんだ。そうだ、そうに違いない。でも、何か理由があっ
て、俺達子供には内緒にしているんだろう。

俺は、このマンションのセキュリティーが並外れて厳しいことを思い出した。おそらく、
それもネルフに関係するんだろう。ネルフ組織図に載っていた人物で、このマンションに
住んでいない人は、碇ゲンドウという人と、市長と同じ名前の冬月コウゾウという人、そ
れに碇シンジの3人だけじゃないか。

だから、このマンションの住人は、みんな何らかの形でネルフとかいう組織に関係してい
るんだろう。おそらく、母さんの経営している会社は広報関係の仕事をしていて、表向き
はネルフとは関係の無いようになっていても、実際はネルフの仕事をしているんだろう。
そう考えるとつじつまが合う。

そして、映画の件だが、映画自体は中学生が製作したことになっているようだが、文化祭
なんかで上映されるお粗末な映画とは全然レベルが違っていた。映画館で上映される映画
と比べても遜色の無い出来だった。

これはもう、主演女優が素晴らしい演技をしたから、それに尽きるだろう。少なくても、
演劇部の連中でもあんな迫真の演技は出来やしないし、それにキスもしないぞ。それと、
あの使徒というのが物凄い迫力だったからでもある。そんな映画の主演女優が中学生とい
うのは、普通じゃ考えられない。

まったく、母さんはどんなことに対しても人並み外れた才能を発揮する。本当に素晴らし
い人だということがはっきりした。間違いなく、世界で一番素晴らしい女性なんだ。我が
母ながら、鼻が高い。

それに、監督が相田ミキのおじさんだっていうのにも驚いた。この俺でも名前を覚えてい
るくらいなんだから、相田ケンスケというのはかなり有名なんだろう。有名な映画監督な
んだけど、写真家でもあるんだ。

でも、名前を覚えている本当の理由は、相田ミキの家には物凄い数の映画DISKがあっ
て、しょっちゅうタダで借りているからなんだけどな。借りたDISKに所有者の名前、
「相田ケンスケ」なんてのが記してあったら、嫌でも名前を覚えちまう。

あ、こう言うと有名じゃないみたいに聞こえるかもしれないけど、そうじゃない。実際に
相田ケンスケ監督の作品が、年に1〜2作品上映されて、いずれもそこそこヒットしてい
る。おっと、話がそれたかな。


次に、母さんと碇シンジとの関係だ。単に映画で共演した仲なのか、それとも映画通りの
仲だったのかだ。これはすんごく気になる。

サキのおじさんとおばさん、鈴原ナツミのおじさんとおばさん、いずれもこの映画が出来
た後に結婚していることから見て、母さんと碇シンジの仲も映画通りの仲だったと見ても
いいだろう。

いくら相手があの碇シンジだったとしても、母さんが好きでもない男とキスなんかする訳
がないからだ。これだけは、絶対に間違いない。しかも、映画の中では3回もしている。
まったく、すっげえ羨ましいかぎりだ。って、俺って一体何を考えているんだろう。

ん、待てよ。母さんが霧島レイナのおばさんや綾波アイのおばさんと取り合った男って、
まさか、碇シンジなのか。それじゃあ、あの映画の時はどうだったんだ。既に決着が着い
ていたのか、それともまだだったのか。

もし、映画を製作した時に、碇シンジが他の女と付き合っていたなら、母さんが主演女優
というのは動かないにしても、碇シンジの恋人は母さんではなくて、付き合っている女性
になっただろう。

そうなるとだな、やっぱり母さんと碇シンジは恋人同士だったんじゃないかと推測出来る。
なんだ、碇シンジのことは、母さんに聞くのが手っとり早かったんじゃないか。恋人同士
なら、他人が知らないようなことも知っている可能性が高いもんな。

だが、まてよ。碇シンジが母さんの恋人だったとしたら、碇シンジが死んだ時、母さんは
凄く悲しかったはずだし、下手をすると今でもその哀しみが癒されていない可能性がある
な。そうなるとだな、母さんには碇シンジのことを聞かない方がいいじゃないか。う〜ん、
これは参ったな。

それに、200%あり得ないことだが、碇シンジが母さんを振って他の女の子と付き合う
ようになった可能性もある。その場合でも母さんには聞けないよなあ。う〜ん、どうしよ
う。でも、まあいいや。後で何かいい考えが浮かぶだろう。


次は、他の大人達だな。う〜ん、整理するのは大変そうだな。最初はネルフ関係から整理
してみるか。情報源は、この映画とショウの情報だな。

○特務機関ネルフ 

 総司令官:碇ゲンドウ>知らない名前だ。マンションの住人にも心当たりはない。

 副司令:冬月コウゾウ>現在の市長と同じ名前だ。

○本部組織

・総務部  総務部長:冬月コウゾウ(副司令兼務)>上に同じ。

・作戦部  

作戦部長:葛城ミサト>サキのおばさんだ。同じマンションに住んでいる。

部長代行:日向マコト>ショウのおじさんだ。同じマンションに住んでいる。

 チ−フ:青葉シゲル>シノブのおじさんだ。同じマンションに住んでいる。

・Evaパイロット

 チ−フ:碇シンジ(サード/初号機専属)>人類を救った英雄だ。母さんの恋人だった?
  最後の使徒戦役時、使徒と刺し違えて戦死する。

 サブ :鈴原トウジ(フォース/参号機専属)>鈴原ナツミのおじさんだろう。
  最後の使徒戦役後、平和維持活動に従事。現在は予備役。同じマンションに住む。

 サブ?:綾波レイ(ファースト/新弍号機専属)>綾波アイのおばさん?
  最後の使徒戦役後、平和維持活動に従事。現在は予備役。同じマンションに住む。

 サブ?:氏名不詳(パイロットリーダー/女)>氏名不詳じゃ何も分からん。
  最後の使徒戦役後、消息不明。

 サブ?:氏名不詳(セカンド/女/旧弐号機専属)>氏名不詳じゃ何も分からん。
  第一次使徒戦役の戦闘の際、重傷を負い入院。その後の消息不明。

 サブ?:渚カヲル(フィフス/四号機専属)>知らねえなあ。
  最後の使徒戦役後、平和維持活動に従事。現在は予備役。

・技術部  技術部長:赤木リツコ>ショウのおばさんだ。

      部長代行:伊吹マヤ>シノブのおばさんだ。

・広報部  広報部長:マリス・アマリリス>同じマンションにいたと思う。

      チ−フ:惣流・アスカ・ラングレー>母さんだ。
  
・保安部  保安部長:真田ヒロシ>同じマンションにいたと思う。


次は、映画の出演者についてだ。既に出ている人は除くと3人だけだな。

2年A組の生徒:相田ケンスケ>相田ミキのおじさんだろう。同じマンションにいる。

2年A組の生徒:洞木ヒカリ>鈴原ナツミのおばさんだろう。同じマンションにいる。

葛城ミサトの恋人:名前は忘れた。>サキのおじさんだろう。同じマンションにいる。


ここまで整理して、俺はアサミに大人のことを聞いてみた。アサミなら、俺よりも大人の
事情に詳しいと思ったからだ。その内容を加えて、我が惣流家以外の家庭を整理したのが
これだ。但し、ネルフに関しては映画当時のものだ。


○同じマンションに住んでいる家庭

赤木ショウ:幼なじみで親友。
赤木ミコト:幼なじみのお姉さん。中学2年生
リツコおばさん:ネルフの技術部長。母さんと仲がいいぞ。
マコトおじさん:ネルフの作戦部長代行。

葛城サキ:幼なじみでちょっと気になる、胸が大きくて明るい性格の女の子
葛城ハヤト:幼なじみのお兄さん。中学2年生
葛城ユウキ:幼なじみのお兄さん。高校1年生
ミサトおばさん:ネルフの作戦部長。母さんと仲がいいぞ。
リョウジおじさん:おばさんと同じ職場−ネルフか?−に勤めている。母さんと仲がいいぞ。

伊吹シノブ:幼なじみでちょっと気になる、可愛いくて気立ての良い女の子
伊吹マサト:幼なじみのお兄さん。中学2年生
マヤおばさん:ネルフの技術部長代行。
シゲルおじさん:ネルフの作戦チーフ。母さんと仲がいいぞ。

鈴原ナツミ:ミカの親友。
鈴原ヒトシ:ミライの家来。
ヒカリおばさん:母さんの親友。俺が小さい頃からお世話になっている。映画に出ていた。
トウジおじさん:碇シンジと同じパイロットだった。

相田ミキ:ミカの親友。
相田ユウキ:ミライの家来。
ユキおばさん:母さんの親友。俺が小さい頃からお世話になっている。
ケンスケおじさん:碇シンジが出演していた映画の監督だった。碇シンジのクラスメートだ。

綾波アイ:ミカの親友。
綾波レイジ:ミライの家来。
レイおばさん:碇シンジと同じパイロットだった。憧れの人だったが、今は避けている。
カヲルおじさん:何をしてるのか良く分からない。

○違うマンションに住んでいる家庭

霧島レイナ:ミカの親友。
霧島マサキ:ミライの家来。
マナおばさん:憧れの人だったが、今は避けている。
ムサシおじさん:何をしてるのか良く分からない。


やっぱり。ネルフに関係していた人は、みんな同じマンションに住んでいるじゃないか。
そうなると、母さんは今でもネルフと関係あるんだろうな。

それから俺はショウに頼んでDISKをコピーさせてもらった。明日じっくりもう一度見
てみて、何か見落としがないかどうか確認するためだ。

 
つづく

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あとがき


 アサトは、レイやマナに憧れていたようです。年上の異性に憧れていたアスカに似たの
でしょうか。


written by red-x
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