航海 ― 月と氷と滅びの調べ ―
ここはとあるドイツの港町。夕日が沈んでいく。 すべての戦いが終わり、アスカとシンジ、そしてトウジ、ヒカリ、ミサト、加持らは世界を巡る慰安旅行に来ていた。 費用はもち、ネルフ持ちだが。 日本から中国、シンガポール、アスカの故郷であるドイツなどを経由、アメリカへ渡り、また日本へ帰る計画。 そしてこのドイツ-アメリカ間は豪華客船での船旅を楽しむ事になっている・・・のだが。 「風が・・・寒い・・・!!」 それもその筈、平和が訪れた現代でも地軸は治っておらず、ここドイツは極寒の地である。 甲板に出たところで凍てつく海風が容赦無く吹きつけ、景色どころじゃない。 「大西洋に出たら割とマシになるから、それまで我慢しなさい。」 この船の開発に携わったリツコが言う。この船には使徒戦で得たネルフの最先端技術が応用されたのだ。 「景色なら展望室に行けば360°のパノラマを見ることができるわ。」 「へぇ、いいわねぇ」 「まぁね、何しろこの船はS2機関を応用した半永久超大型エンジンにMAGIによる航路選択に緊急時の対応、頑強な拘束具・・・」 またリツコの薀蓄が始まりました。っていうか拘束具ってなんじゃ拘束具って・・・。 とそこにミサトがリツコの言葉を遮る。 「はいはい、その辺にしときなさいよ・・・じゃ、みんなで展望室に行きましょうか!」 「いいわねぇ。」 「ほな行こか、委員長。」 「そうね。」 5000人が乗り込んでいるこの船、しかし展望室に他の客はまったくいない 「うわぁ・・・」 「ほ・・・ホンマにこれは・・・」 「・・・何?」 リツコ以外絶句。星一つない空、サーチライトの先には氷山の海。船旅の旅情も何もあったもんじゃない。 「安心しなさい。この船には砕氷装置が取り付けられているし、装甲もエヴァ並みに強化してあるから絶対に沈まないわ。」 「そうじゃなくってこれじゃぁ「もののあはれ」も何もないじゃないの!」 「たしかに殺風景ねぇ・・・。」 「こっちの窓なんて凍りついてないか?」 「私に言わないでほしいわ。お望みならN2爆雷で一帯の氷溶かしてあげるけど?」 一同「「「「「「やめなさい(て下さい)!」」」」」」 「しょうがない・・・部屋に戻ろうか、みんな。明日になれば大西洋に出られるから寝て待つとしよう。」 加持の一言でそれぞれが部屋へ戻って行った。 船室は以下のように二人ずつ割り当てられている。 部屋番号G60 アスカ&シンジ G61 ヒカリ&トウジ G62 ミサト&加持 ちなみにリツコは航行に関わり、S2エンジンの管理をしているので、船室は取っていない。 一同がそれぞれ船室に入ろうとした時ミサトが声をかける。 「じゃぁみんな、また後でね。みんな二人きりだからって変な事しちゃダメよ!」 「「「「しません(しないわ)よ!!」」」」 四人でユニゾン。 「ミサトこそ、ちゃんと眠るのよぉ?」 「うっ・・・!!!ま、まぁ・・・おやすみなさぁーい・・・。」 「・・・・・」 シンジとアスカの船室には先程から沈黙が続いている。 どうやらミサトの言葉を二人とも意識してしまっているようだ。 「ねぇ」 「あの・・・」 「あ・・・アスカ・・・先に言って」 「シンジこそ・・・・」 赤くなって俯く二人。面白い・・・。 「ね・・・寝ようか。」 「そうね・・・」 そういうとシンジは荷物を整理し始める。チェロケースを取ってベッドの下に押し込めようとするとアスカが声をかける。 「アンタ、チェロ持って来てたのね。何でまた旅行にまで持って来てんのよ?」 「そうだなぁ・・・そういえばまだ弾いてないね。」 「寝る前に弾いてよ、聞いててあげるから。」 「うん・・・」 そういうとシンジはチェロを弾き始める。穏やかな旋律、心地よい音色。 アスカはずっとシンジの弾くチェロに聞き惚れていた、シンジの真剣な顔を見ながら。 シンジが何曲か弾き終わったあともアスカはその余韻に酔っていた。 「アスカ、アスカ?」 「あっ・・・何?」 「あの・・・どうしたの?ぼーっとしちゃって。」 「な、なんでもないわよ!ちょっとかっこいいな・・・って」 「え?」 「ほら、寝るわよ!」 紅くなった顔をシンジに見られないよう、立ち上がって電気のスイッチを消しに行く。 電気が消え、窓から月光が差し込む。 「月がでてる・・・大西洋に近づいてるのかな・・・ってアスカ!?」 アスカがシンジのベッドに入ってきたのだ。シンジに抱きつくアスカ。 「お願い・・・こうしてて。」 「うん・・」 高鳴る心臓の鼓動、紅潮する顔、暴走しそうな欲望。 密着する体に五感とアレはフル稼働(^−^;) なんとか落ち着こうとするシンジくん。 (普通に・・・普通に・・・普通に普通に普通にふつうにふつうにふうつにつふふふ・・・) 精神パルス逆流。 (目標をセンターに入れてスイッチ・・・目標をセンターに入れて・・・) ・・・・・・・(−−;)。 (・・・はっ・・・ダメだダメだ・・・逃げちゃダメだ・・・逃げちゃダメだ・・・) 逝くところまで逝ったシンジくん、我を取り戻したか!? (アスカの思いを受け止めるんだ・・・アスカの重いを・・・) 「だぁーれが「重い」ですってぇぇぇ――――!!!」 「わぁぁぁ―――!タダの誤字じゃないか!!!」 なぜ解る?女の勘、恐るべし。 「シンジったら目がイっちゃったままブツブツ呟いてるんだもん。考えてることもまる聞こえ。」 「ははは・・・(聞かれてたのかよぉ・・・だったら!)。ねぇ、アスカ」 一世一代の決意を胸に真剣な目になるシンジ。再び熱くなる鼓動。 「何よ・・・」 「僕、旅行中今日までずっとチェロ弾かなかったじゃない。」 「旅行中って言うかアタシは初めて聞いたわよ。」 「あ・・・そうだよね。第三新東京市に来てから弾いてないね。」 「で、それがどうしたの?」 「僕はあそこに来る前は何もなかったんだ・・・。辛かったんだ・・・。だからその寂しさから逃げるように毎日チェロを弾いてたんだ。 チェロは僕にとっては現実から逃げる為の道具でしかなかったんだ・・・。でも、ネルフに来てからは違った。 確かに僕は相変わらず逃げてばかりだったけど・・・チェロを弾くことは無かったんだ。 みんながいてくれたから、ミサトさんにトウジ、ケンスケ・・・・・そしてアスカがいてくれたから。」 「・・・・・」 「僕が一年間弾きもしなかったチェロをわざわざ持ってきたのは、ケジメをつけたかったからなんだ。 このチェロを逃避の道具なんかじゃなくて、大切な人の為に聞かせたかったんだ・・・アスカ。」 「・・・・・」 「僕は君の為にチェロを弾きたい・・・好きだ。愛してるよ、アスカ」 「シンジ・・・プッ!!!」 吹き出すアスカ。 「えっ?」 一気にマヌケな顔になるシンジ。 「声震えてるくせにキザな台詞言ってんじゃないわよ!!」 「あっ・・・」 気がつけば身体中こわばって震えていた。真っ赤になって俯くシンジ。 「ご・・・ごめん・・・」 「あやまってんじゃないわよ・・・・!」 「え?アスカ?」 シンジの胸の中でアスカが更にシンジをキツく抱きしめる。涙を流している。 「アタシすっごく嬉しかったんだから・・・!!!」 「アスカ、僕はずっとアスカの傍にいる・・・ずっと守るよ・・・」 「シンジ・・・」 そして二人は眠りに落ちていった・・・。 朝シンジは目をさました。目の前にはアスカの顔がある。 起きようにもアスカが抱きついているので起きられない。がこの幸せな状況に比べたらどうでも良い。 (可愛いなぁ・・・アスカの寝顔) ごくり、と喉を鳴らすシンジ。ゆっくりとアスカの顔に唇を近づける。 と、いきなりアスカの顔が近づいたと思った瞬間、二人の唇が重なった。 しばらくの間キスを交わした二人。 「ひどいなぁアスカ・・・起きてたの?」 「まぁね・・・。ねぇ、もう一回・・・ダメ?」 「アスカ・・・」 再び抱き合って唇を重ねる二人。とそこへ・・・ 「いやああああぁぁぁぁ――!!!」 「「えっ!?」」 二人が声の方に目をやるとそこにはミサトやヒカリたちの姿。 「セ、センセ!これはなんやぁ!!!」 「だぁから昨日言ったのにぃ・・・もう、二人ともこんな朝から好きねぇ。」 「な、なんでみんながここに!?」 赤くなりながら慌てるアスカとシンジ。 「あぁ、鍵がかかってなかったんで二人とももう起きてると思ってね。 まさか愛し合ってる最中だなんて思わなかったよ。やるなぁ、二人とも。」 「しまったぁ――!!鍵かけてなかったぁ――!!!!」 アスカの絶叫が響きわたった。 その後二人は必死にみんなの誤解を解いたのだった。 昼食を終えて外に出るアスカとシンジ。昨日とはうってかわっておだやかな風景。 風がまだ少し冷たいがどこまでも広がる海、水平線は絶景だ。 アスカとシンジは甲板でしばらく語り合っていた。 「ねぇ、シンジ。」 「何?」 「チェロ聞かせてくれない?この絶景をバックにさぁ!」 「もちろんいいよ。アスカの為にね。」 「・・・アンタ、言うようになったじゃない。なーんか生意気ねぇ。」 「え・・・あ、ごめん。」 「ジョーダンよ、嬉しかったわよ、シンジ!」 「あ、ありがとう・・・。」 シンジは顔を赤くして逃げるようにチェロを取りにいった。 チェロを取ってきたシンジはアスカの前で演奏を始めた。 シンジの気持ちがこもったかの如く包み込むような旋律に周りの乗客も耳を傾けている。 アスカは音色を聞きながら、今この幸せをかみしめた。 そんなこんなで今日も日が暮れていく。 朱に染まる空。そこに出ている夕月。どことなくあの戦いの直後を思い出させる。 「月を見てると綾波を思い出すね・・・。」 甲板から夕月を眺めてシンジは言った。 「アタシ、一度もレイって呼んであげなかったな・・・今のアタシ達があるのはレイのおかげでもあるのにねぇ。」 「お礼言わなきゃね。」 「誰によ?」 「綾波に。」 シンジは月を指差して言った。 「そうね。」 「「ありがとう。」」 船室にもどった二人。 「シンジ、もうすぐ夕食じゃない?」 「そうだね、お腹すいたな。」 「ホテルとか船の料理もおいしいけど、やーっぱシンジの料理が一番よねぇ。」 「え?そ、そうかなぁ・・・。」 照れるシンジ(#^.^#)。 その頃、隣の船室では。 「鈴原、もうすぐ夕食みたいよ。」 「うーん、最近外食ばっかりやからやなぁ、・・・委員長の弁当が恋しいわ。」 「す・・・鈴原ったら・・・(#^.^#)」 照れるヒカリ、ってなんでトウジまで赤くなってんだ!!!  その頃、更に隣の船室では。 「加持クン、夕食よん♪」 「ああ、そうだな・・・旅行はいいな、行く先々でうまいメシにありつけるからな。」 「あら、だったら日本に帰ったら私がもっとおいしーゴハン、毎日つくってあげるわん♪」 「・・・・・。」 引きつる加持。合掌・・・(−_−;)。 今日の夕食はバイキング形式でパーティーだった。一通り食事が済んだ後、ダンスパーティーが催された。 シンジ達はそれぞれのペアで踊った。ユニゾン特訓の経験が生きたか、容姿も手伝ってアスカとシンジのペアはかなりサマになっていた。 ビールで潰れたミサトと加持以外はそれなりに楽しんだようだ。 パーティーが終わり、乗客もほとんどいなくなり六人は潰れて寝ているミサトのところに集まっていた。 「しょうがないわねコイツは・・・」 「ミサトさん大丈夫でっか?加持はん」 「ははは・・・今日はパーティーだったからな、こういうノリが好きなんだよコイツは。」 (ミサトさんが潰れるなんて・・一体どのくらい飲んだんだろう・・・?) 「じゃ、部屋に戻ろうか、ミサトはオレが背負ってくから。」 「あ、アタシトイレ行ってくるからシンジは待ってなさいよ!!」 「うん、別にいいよ。」 「じゃぁ、先に行ってるで、センセ。」 シンジはトウジ達と別れた後、暫くアスカを待っていた。 (おそいなぁ、アスカ。トイレ近くになくて迷ってるのかなぁ・・・) その直後。破滅の音、衝撃。 アスカはあちこち歩きまわってようやくトイレを見つけ、用を足して帰ろうとしていた。 (この船別れ道が多すぎんのよ!結構近くにあるんじゃない!!) ホールはこの巨大客船の中央に位置し、そこから蜘蛛の巣状に廊下が延びている為、あちらこちらの廊下を調べることになってしまったのだ。 左に曲がればもうホール前の廊下だ、と、その時!
ズゴーン!!
もの凄い爆発音と共に巨大地震のように船内が揺れた。 「キャッ!!」 思わずアスカは転んでしまった。と同時にゴン!と鈍い音がしてアスカは意識を失った。 <後書き> なんか無意味な部分が多くなって長くなりました。よきかなよきかな。 最初は悲劇的お話だったんですが、ひねりがない!てな感じになったので 大幅改正しました。そしたらどうしようもない作品になっちゃったYO! 笑っとけ笑っとけ。LASでハッピーならいいんです!そういいんです! ・・・一番どうしようもないのはオレだ。


マナ:ア、アスカ! シンジと2人で何してんのよっ!

アスカ:ちゅー。(*^^*)

マナ:いやぁぁぁぁぁぁっ! やめてぇぇぇぇぇぇっ!

アスカ:ちゅー。(*^^*)

マナ:今度から、2人の部屋には、わたしが監視につくわっ!

アスカ:そんなのダメっ!

マナ:わたしの目の黒いうちは、そんなことさせないんだからっ!

アスカ:しゃーないわねぇ。アンタの前で、嵐のちゅー。(*^^*)

マナ:そんなのいやーーーーーーーーーーーーーっ!!!
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