As a memorial to 9 million hit of 「The Epistles」・・・ 僕が僕であるために・・・ BY 龍尾
半年前に起こった・・・僕が起こしたサードインパクトから街は立ち直ろうとしている。 以前と変わらないくらいに復興した第3新東京市の町並みが夕焼けに赤く染まっている・・・。 あのLCLの海のように赤く・・・でもどこか温かみを感じる赤・・・・・。 この街の賑わいは、温かみは偽りなのかな・・・あんな事があって、みんな一つになって・・・ それでも人の心は何も変わっていないのかな・・・。 アスカは今でも僕に心を開いてくれない。 あの時湖のほとりで首を絞めて以来何も口を利いてくれない・・・ 僕は何も分かっちゃいないんだろうか・・・?傍にいる者の心でさえ・・・。 ははっ・・・あの時他人の存在を望んだ僕の意思さえも偽りかもしれないな・・・・・ 分かった気でいただけ・・・。 僕は一つ溜息をついて高台を後にした・・・・・。 数日前。コンフォート17マンション。今も僕らはここで暮らしている。アスカも一緒だ。 なんで僕なんかと未だに暮らしているんだろう・・・。 相変わらず僕と交わす会話は何も無いのに・・・。 僕はそれが猛烈に怖くなった。 「ミサトさん・・・僕・・・ここを出ます。」 「・・・・・。」 「僕は・・・アスカが怖いんです・・・。いや・・・アスカを傷つけるのが・・・怖いんですよ。」 「・・・シンジ君、とりあえず一週間ほど一人で考えてみなさい。部屋は手配しておくわ。」 ---------------------------------------------------------------------------- そして僕は言葉どおり一週間考えた。答えなんて出なかったけど・・・。 「おかえり、シンジくん。答えは・・・見つかった?」 何故かミサトさんの表情がぎこちなく見える・・・ 今にも満面の笑みを浮かべそうな・・・。そう・・・僕が出て行くのが嬉しいんだ・・・。 ミサトさんだって所詮は他人なんだもんな・・・。 「ミサトさん・・・答えは見つからなかったんですけど・・・やっぱり」 「答えがどうだろうとそれはさせないわよ?」 へっ!? 「アスカが泣いて止めたのよぉ・・・シンジを行かせないで〜〜〜、ってね!!」 へぇぇっ!? ミサトさんがあの懐かしい、からかうような笑みを開放して僕に向けてくる。 それも束の間、ミサトさんは勤務中の時みたいな真剣な表情に戻って僕に言った。 「シンジ君。人を傷つけても人は生きて行かなければならないの・・・ 前にも似たようなことを言ったけど・・・人生は後悔の繰り返しよ・・・。 アスカにも何か後悔があるんでしょう?アナタなりのケリのつけ方があるはずよ・・・。 シンジ君・・・ここに残りなさい。」 僕はここに残った。何て言うんだろう・・・なんだか心の隅に、その・・・温かみを感じた。 ミサトさんが僕が求めていた答えを教えてくれた事・・・そして僕を必要とまではいかなくても、居場所をくれたアスカに・・・・・。 さて、・・・とは言ってもどうしたものか・・・。 今更簡単に優しい言葉をかけてどうなるっていうんだろう・・・。 数日が過ぎた。案の定僕はアスカに何も言ってあげられない。 一体何をいえばいい?ごめんなさい?ありがとう?・・・わからない。 答えを教えてもらっても・・・やっぱり理解するのは自分なんだな・・・。 「シンジ・・・?」 「えっ!?」 不意に声を掛けられた僕は振り返って驚いた。驚いた・・・ってN2爆雷の衝撃くらいに驚いた。 「あの・・・アタシ・・・今度・・・その・・・。」 俯いているアスカ。表情こそ分からないけど、何か思いつめているのはひしひしと感じることができる。 「場所・・・変えようか・・・?」 一大決心をして僕は言った。いつのまにか教室のみんながこっちに注目している。痛いくらいに視線を感じる。 アスカにしてみれば耐えられないくらいだろう・・・。 「うん・・・」 僕はアスカの手を取って屋上へ向かった。 「アタシ・・・今度ドイツに帰るの。」 言葉を失った。考えてみればアスカがいなくなるなんて考えた事はなかった。 「それだけ・・・よ。・・・バカシンジ?」 バカシンジ・・・懐かしい言葉の響き・・・感じる温かさ。 「・・・ありがと・・・。」 アスカはそのまま屋上から駆けていってしまった。 また何も伝えられなかった・・・。アスカが「ありがとう」って・・・「ありがとう」って・・・。 ・・・それなのに僕は・・・・・!!!!! 気がつけばまたあの高台に来ている。 僕は何をしているんだ。こんな時に・・・こんな所に来て感慨に耽るのか!! 何なんだ!!僕って・・・!!・・・やめよう・・・こんな事考えてる場合じゃないよ・・・。 今までこうやって自虐的になって・・・内罰的になって・・・謝ってばかりで・・・ アスカ・・・そういうの嫌いだって言ってたもんね・・・。 謝るなんてのは・・・中途半端な優しさなのかな・・・?それがアスカを傷つけたのなら・・・? 人を傷つけることに怯えて、謝って・・・それがどれだけアスカを傷つけたか・・・ 僕は今までちっとも考えちゃいなかった。 今回もとりあえず謝ろうなんて考えてた僕は間違ってた・・・ 僕の気持ち・・・伝えよう・・・僕の・・・心からの優しさを・・・ きっとアスカもそれを待っているんじゃだろうか・・・ やっと分かったよ・・・これが僕の正しさ・・・ケリのつけ方だ・・・・・。 「僕はアスカが好きだ」 家に帰るとミサトさんはいないようだった。 絶好のチャンスじゃないか!!よし・・・行くぞ・・・!! 「アスカ・・・?入るよ・・・?」 でも・・・そこにアスカの姿は影も形も見あたら無かった。ただあるのは整理途中と思われる荷物・・・。 気合十分で踏み込んだはずの僕はへたりこんで・・・そのまま動けなくなってしまった・・・。 僕はアスカが戻ってくるのを信じて・・・茫然自失ながらも待ち続けた。 その夜アスカは戻ってこなかった・・・。 心も体も疲れた僕は・・・気づけばアスカの部屋で転がっていて・・・そのまま寝てしまった。 朝になっていた・・・今日は土曜か・・・。 ・・・ん?毛布・・・だれが掛けてくれたんだろう・・・アスカ!? 「アスカっ!!」 家のどこかにいるんじゃないかと、僕はとりあえず叫んでみた。 「・・・なによウルサイわねぇ・・・」 アスカはすぐ傍のベッドから眠たそうに体を起こした。 言わなきゃ・・・言うんだ・・・言うべきだ・・・よし!! 「アスカ!!・・・あの・・・その・・・。」 わ〜!!なにそこでどもってるんだよ俺!! 「・・・なに〜?なんなのよ?」 あ〜〜〜アスカも不機嫌そうだよ・・・早く言ってしまえ!! 「す・・・す・・・すっ」 「早く言いなさいよ!!」 怒ってる・・・ちくしょう!!アスカに嫌われたまま終わりたくない!! その時頭の中で何かが切れた。 「アスカ!!好きだ好きだ好きだ!!だから行かないでっ!!僕はアスカがいないとダメなんだ!! アスカがいなきゃ僕じゃなくなるんだ!!愛してるんだ!!そう、愛してるんだよ!! どうしようもないんだ!!今まですれ違ってたかもしれないけどっ!!僕もどうしようもない位バカで鈍感かもしれないけどっ!! それ以上にどうしようもない位アスカが好きなんだ!! 大好きなんだよ!!!!!」 自分で信じられない位、おそらく人生でもっとも早口で、心の底から搾り出すようにアスカへの思いを叫んだ。 「・・・・・」 アスカはハトが豆鉄砲喰らったような顔をしてポカーンと僕を見てる。 でもアスカはすぐに顔を元に戻すと僕に言った。 「早くて聞き取れなかったわ・・・もう一回言いなさいよ。」 えぇ〜っ!?そんな・・・こんなに精一杯言ったのに・・・しかも何言ったか全然覚えてないよぉ・・・ 「早くー!!」 「え〜っ!?お・・・全部は覚えてないよ・・・。」 「アタシが言えって言ってるんだから言いなさい!!」 困ったな・・・でも別にさっきの台詞なんて覚えて無くてもいいよね・・・言いたい事は一つなんだし。 ん?心なしかの表情がニヤついているような・・・・・アスカ・・・聞き取れてたんだな・・・? いいさ・・・もう迷わないよ。 「要は・・・君が好きって言ったんだ、アスカ。」 すんなりこんな事を言った僕にアスカの方が驚いたみたいだ。 「だから・・・僕はアスカがドイツに帰って欲しくない・・・。一緒にいてよ・・・アスカ。」 眼の奥がジンジン熱くなって涙が流れてきてしまう・・・泣きたくなんてないのに・・・。 アスカがいなくなるなんて事を思い浮かべるとついつい・・・。 「シンジ、アタシは行くわよ・・・。」 その言葉に、僕は世界が終わったような気がした。 あのサードインパクトの直後、意識を取り戻したばかりの時のような・・・脱力感。 「・・・ンジ、シンジ・・・」 あぁ・・・思えば僕は君に何もしてやれなかったんだね・・・しょうがないか・・・。 幸せになってねアスカ、それだけが僕の願いだよ・・・アスカ・・・うぅ・・・ 「バカシンジィー!!」 一人で思考がループ状に陥って号泣していた僕はアスカの言葉で我に返った。 「一週間っていってるでしょ!!」 「え・・・何が?」 「ドイツ行きよっ!!」 一週間・・・てことはアスカはここに残ってくれるの・・・? 「だ、だってこの部屋の荷物は・・・!?」 「部屋が散らかってるから片付けてるの!!それだけよっ!!」 ってことは・・・ってことは!ってことは!!! 「アスカー!!」 「きゃっ!!」 僕は小躍り始めたいくらい嬉しくなってアスカに抱きついた。そのままアスカを振り回してみたりして・・・(^^; その後僕は今一度アスカをしっかりと抱きしめた。 「アスカ・・・愛してる。大好きだよ。」 「私も・・・好きよ、シンジ!」 もう絶対に離すもんか!!心からそう思った。 僕は・・・僕を見つけた・・・。 リビングのソファーでアスカが僕に寄りかかっている。 「ねぇ、シンジ?」 「何だい、アスカ。」 「私、今度ドイツに行って、そのままずっと暮らすのもいいかなぁ、とか考えてたの。」 「えっ!?」 「だから・・・シンジが行かないで、って言ってくれて・・・すごく嬉しかったよ?」 「僕こそ・・・アスカにいろいろ教えてもらったよ。ありがとう。」 「ねぇシンジ・・・もう少しこのままでいていいかなぁ?」 「いいよ・・・好きなだけね。」 「ありがと。」 少しするとアスカはすーすーと寝息を立て始めた。 そうか、昨日ネルフで出国手続きやテストやらで忙しかったらしいしなぁ。 少し近づいて、腕でアスカの体を優しく抱えてあげる。 起きているアスカも寝ているアスカもすごくかわいい・・・ そんな事を考えているうちに僕も眠くなってきてしまった。 僕らはそのままリビングに注ぐ朝日の中でまどろんで眠った。 「シンジくん、アスカ・・・おめでとう・・・」 私はアスカと一緒に帰宅した後一部始終をひっそりと見守っていた。 ようやく二人とも自分を見つけたのね・・・本当に・・・良かった・・・。 ふふ・・・涙がでちゃうわ・・・これは家族ゴッコじゃない、家族の証、よね? ふう、そろそろ私も寝ようかな・・・今日も夜勤入ってるし。 二人とも、いい夢見なさい。おやすみ、私の弟と妹・・・。 Fin.
後書きです みなさん こんにちは、そしてまずは・・・ タームさん、The Epistles 900万HIT おめでとうございます!! いや、それにしても莫大な数字ですね・・・(^^ その記念を祝うべく何とかSSの方も気合入れて書きましたが・・・みなさんいかがでした? 以前より作風も心理描写・形容表現の多さもなかなか濃いものを作ったつもりなんですが・・・ まだまだ青いですね・・・自分でもよくわかります・・・(−−; タームさん、900万HITにこんなんでゴメンなさい! そして読者の方も・・・龍尾はもっとスキルアップ&ページの盛り上げに努めます! これからもよろしくお願いします!!


マナ:1週間じゃなくて、一生ドイツに行けば?

アスカ:シンジと?

マナ:1人に決まってるでしょっ!

アスカ:もう、シンジのいない生活なんて考えられないわっ。

マナ:こうなったら、アスカのいない一週間がXデーだわ。

アスカ:な、なによっ! そのXデーってのはっ!(ーー;

マナ:ないしょ。

アスカ:ちょっとっ! はっきりしなさいよっ!(ーー#

マナ:ないしょーー。(^^v
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