光は君の足下に

「もうイヤなの・・・イヤなのよぉ・・・」 暗闇の中、壁越しに、毎晩決まってすすりなく声。 毎夜の夢に苦しんで、君の枕を濡らしている事、僕は知ってる。 何がイヤなのか、何が悔しいのか、僕には全く解らない。
「人の顔色ばかり伺っているからよ」 「アンタってホントバカね」
僕はバカだね。 君がイヤのはもしかして・・・ わかってて何もしてあげられない僕なのだろうか。 「・・・・・。」 今夜も聞こえる彼女の嗚咽。 苦しい。 身体がわなわなと震える。 苦しい。 布団を頭から被り、狭い闇に身体を丸めて思いつめてる泣き声の主と 今夜もただ、ただ、君の声を傍観しようとしている僕への怒りに。 閉ざされた君の空間へつながる扉。 立ち止まってゴクリと唾を飲み込む。 あいかわらず止まない嗚咽。 扉のノブを握る僕の手にじわりと浮かぶ汗。 それは僕が君を救うべく滾らせている熱い鼓動。 やつれたカオ。 腫れぼったいまぶた。 女神の如く眩しかった輝きも今はすっかり影を潜めてしまっている。 改めてこんなになるまで助けの一つにもなれぬままに、 流されるままここまで放っておいた僕への怒りと後悔に駆られる。 泣きたい・・・。 「アスカ・・・。」 枕元で涙を流すアスカに小声でそっと語りかける。 「・・・・・。」 寝ているのを確認すると、アスカの肩に手をかけ、起こさないようそっと抱く。 久しぶりにこんな近くでアスカの顔を見た。 でもそれは前とは違って、切なく、 僕の心が締め付けられてしまうような、悲しい表情。 「アスカ・・・どうして・・・?何が苦しいの?」 アスカの肩に掛けた手に腕にグッと力が入る。 あれ・・・僕泣いてる? 僕はどうして泣いてるの・・・? ごしごしと左手で涙を拭う。 涙が溢れ続ける視界は霞み、暗い部屋の中、 自分の周りはほとんど見えなくなってしまった。 「・・・何?アンタ何でココにいるのよ。」 呟くようなか細いアスカの声。 肩をついギュッと抱えたせいで起きてしまったらしい。 「アスカ・・・ゴメン。」 言ってしまってからハッとした。僕の悪い口癖。 でもアスカは何も言わない。 「アスカ、何が苦しいの・・・?何が悔しいの? 僕でよければ聞くよ。聞かせてくれないかな。」 「・・・・・。」 「・・・ね?」 「・・・ふざけないで。」 「アスカ・・・?」 「出てって。早く。」 冷たく低い声が僕にチクリと突き刺さる。 「待ってよ、アスカ。ふざけてなんかいないよ! アスカの気持ちが知りたいんだ。 苦しいのなら助けてあげたいんだ。」 「アンタ何様のつもりよ。アタシがアンタに助けられる? ハン、150億年早いわよ。・・・もうほっといてよ・・・。」 最後の声は切なく、力ない、震えた涙声。 「アスカ・・・」 「・・・何でアンタにそんな事言われなきゃなんないのよ。」 その問いかけに対して、 何の躊躇も無く、ごく自然に口から零れ出た言葉
「アスカが好きだから。」
何分とも何十分とも錯覚する沈黙。 アスカの泣く声もいつのまにか聞こえなくなっていた。 再びアスカの肩をそっと優しく抱きしめる。 刹那、ビクッと小さく震えたアスカの身体。 でも、抵抗したりとか振りほどいたりとかそういう事は無く。 「アスカ・・・君が何に悩んでいるのかは僕には解らないよ。 でも・・・もっと自分を大切にしようよ。 失敗したって、迷っていたって、アスカはアスカじゃないか。 例え人に認められない事があったって・・・ 必要としてる人がいるんだ。前を見すぎてて気付かないかもしれないけど・・・ 一応・・・器足りないけど・・・僕だってアスカが必要なんだ。」 帰ってくる答えは何もない。もう寝ているのかもしれない。 それでも僕は静かに、語りかける。 「・・・また、苦しくなったら・・・その、だ、抱きしめてあげるから。」 自分でも歯の浮くようなクサイ台詞。 でも、少しでもアスカの助けになれれば、 そう願ったからこそのクサイ台詞。
・ ・ ・ ・ ・ 「・・・カンチガイしてんじゃないわよ」 ・ ・ ・ ・ ・
ベットに上半身を預け、床に足をついたまま眠っていた僕。 窓から差し込む眩しい日の光に目を覚ます。 目の前に先刻まであったアスカの姿はもう無かった。 寝ぼけ気味の重たい目をこすりつつ、自分の部屋に戻ると、 目に入った白い紙切れ。 破り取った30行垳のノートのページ、 真ん中にまだ上手いとは言えないひらがなで書かれた文字。
ありがと P.S アタシもOKよ!!
最後の「アタシもOKよ!!」の文章、アスカらしさに 「ハハッ、何がOKなんだか・・・」 思わず少し吹き出してしまった。
どうもコンニチワ。龍尾(その他に スキャナ・Loveげっちゅ とも言う)です。 「アタシもOKよ!!」ってのは・・・ねぇ?全く、何がOKなんでしょうか?( ̄ー ̄) それよりもなんかとんでもない性格のシンジになっちゃいました。もうシンジじゃありません(爆) 将来女ったらしの予感すら漂います(待)。でもアスカしかいない(?)でしょ、彼には。 久々にSS投稿です。意見他感想お聞かせ頂けると本当に有難いです〜。 では、読んでくださった皆さん、投稿させて頂いたタームさん、本当ありがとうございました。m(_ _)m


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