「えいっ。」

「あーっ!僕のショートケーキのイチゴーっ!楽しみにしてたのに〜。」

「ふふん。先手必勝、適者生存。グズグズしてるから、こうなんのよ。」

「む、無茶苦茶だよ〜。お願いだよ〜。返してよ〜。」

第3東京市にあるマンション、コンフォート17の中に入っている葛城家では、夕飯後の恒例行事、“地獄のオヤツ・タイム”が幕を開けようとしていた。






おやつ少女アスカ

さかぐち周太郎






シンジの懇願もむなしく、取って置きのイチゴは、あ〜んと開けられたアスカの口に吸い込まれてしまう。

「むしゃむしゃ、ごっくん。もう手後れよ。」

「そ、そんな〜。」

汎用人型決戦兵器・エヴァンゲリオン弐号機パイロット、惣流アスカ・ラングレー嬢は、大のオヤツ好き。

基本的には甘いお菓子が大好きなのだが、アイスクリームからセンベイまで、オヤツと名のつくものなら、なんでもござれ。

オヤツがあると言えば、草の根分けても探し出してパクっ、オヤツがあると聞けば、スッ飛んで行ってパクっ、もちろんオヤツを見れば、すぐにパクってな調子だ。

そして彼女の最大の楽しみは、同僚パイロットにして同居人の下僕少年、碇シンジからオヤツを巻き上げる事だった。

「あ、もしかして、ケーキの下の部分もいらないとか?じゃあ、アタシが貰ってあげるわ!」

言うや残されたケーキ本体も、ひと口でパクリ。

「うう・・・。ヒドイや・・・。いいもん。まだ、こっちにティラミスがあるから。」

シンジはそう言って、かたわらに置いてあるケーキの箱から、最後のケーキを取り出した。

「うりゃっ。」

ドカッ!!

アスカの手に持った特大フョークが、シンジの目の前に置かれたティラミスに突き刺さった。ティラミスの「ぎゃ〜!」と言う悲鳴が聞こえて来そうなくらい、エゲツない突き刺し様だ。

驚いて飛びのいた瞬間、シンジのオヤツは、またも強奪されてしまった。

「ちょ、ちょっと、アスカぁ!それまで食べられたら、僕のオヤツが無くなっちゃうよ〜。」

「べーだ。この味は、アンタにとっては猫に小判、馬の耳に念仏よっ!アタシの上等な舌が味わう方が、このケーキにとっても幸せってモンよ。もぐもぐ。」

「しくしく。もういいよ・・・。」

ティラミスが虐殺されてしまい、もうケーキは、ひとつも残ってはいない。

シンジは涙を流しながら、自分の部屋へと引き上げた。

「は〜。アスカってば、何で毎回毎回、僕のオヤツを取るんだろう?」

部屋に入ったシンジは押し入れを開け、奥から厳重に封をしている大きなポリ袋を引きずり出す。

無論、アスカはこの袋の存在を知らない。

これは、アスカが夜中にオヤツが食べたいと言って暴れ出した時のための買い置きなのだ。

「しょうがないや。アスカの為に隠していたオヤツだけど、少し食べようっと。」

「とうっ。」

バッ!!

「あっ!」

後ろから飛びかかったアスカに、オヤツを満載した袋は奪われてしまった。

「こんなモノを隠してたなんて・・・。うふふふ〜。」

お菓子がイッパイ入った袋に、す〜りす〜りと頬をスリ寄せ、至福の表情だ。

「シンジ!これはアタシに対する立派な裏切り行為よっ!アンタの捻じ曲がった根性を叩き直して、正義の何たるかを示すため、ホントはイヤでイヤでしょうがないんだけど、アンタの為を思って、このオヤツは全部、アタシが処分してあげるわ!」

「ダ、ダメだよ!今月の食費代は使い切ってるから、それ食べちゃうと、もうオヤツ食べれなくなっちゃうんだよ!」

「んな事は、アタシの知ったこっちゃないわ。」

次々と封を切っては、ひとくちで口へ流し込んでしまう。

トップバッターは、ビスケットの大袋だ。

バリッ!ざーっ!ベリベリベリ!!もぐもぐ、ごっくん

2番手は、オカキの特大詰め合わせ袋。

バリッ!ざーっ!バリバリバリッ!!もぐもぐ、ごっくん

3番手、巨大チョコスティックの箱。

バリッ!ざーっ!ベリバキボキッ!!もぐもぐ、ごっくん

次から次へ、凄まじい速度で平らげていく。

あっと言う間に、アスカの前に空き袋が山のように積まれていった。

「あ、ああ・・・。今月の食費が〜。僕のお小遣いが〜。」

これで買い置きの補充のため、シンジのお小遣いカットは決定的なものになった。

補充しなければ、禁断症状を起こしたアスカが何を仕出かすか知れたものではない。

「あううう・・・。なんで僕の嫌がる事ばっかり、するんだよぉ〜。」

「わはははっ!満足、満足。さーて、お風呂に入って寝よーっと。」



んご〜、すぴ〜

そろ〜り、そろ〜り

ぐ〜ぐ〜

そろ〜り、そろ〜り

深夜を過ぎて真っ暗なった家の中を、足音を忍ばせながらアスカの部屋に向かうシンジの姿があった。

部屋の前まで来ると、さらに音を立てないように気を付けながら、ちょっぴり襖を開けて中を覗う。

「ふっふっふっ。寝てる寝てる。」

寝ているアスカは布団を蹴飛ばし、枕と足は天地逆さま。顔をだらしなく弛緩させて、口の端からヨダレがタラーり。

シャツは捲くれ上がって、おヘソ丸出し。イビキまでかいている。

100年の恋も1発で覚めてしまう様な、すんごい寝相だが、それを見るシンジの頬はポッと赤い。

「アスカってば寝相が悪いな〜。で、でも、ちょっとカワイイかも。」

どんなにソーゼツな格好でも、シンジくんの瞳にはキュートに映るらしい。

存分な目の保養の後、そーっとフスマを閉めて台所へと向かう。

「考えてみたら、自分でお菓子を作る事だって出来るんだ。アスカが寝てる今がチャンスだね。」

葛城家に来てからのシンジ君は、家の者が誰も料理が出来なかった事もあって、今では、すっかり料理が上手になっていた。お菓子作りなんか朝飯前。

あの寝姿なら、使徒に踏み潰されよーが、口の中にN2爆雷を放り込まれよーが目を覚まさないだろう。

キッチンに入り、冷蔵庫から材料を出すと、脇目も振らずにお菓子を作っていく。

チーン♪

あっと言う間に、スポンジケーキが完成する。パンパンに膨れ上がった、見事な出来上がりだ。

後ろも振り返らずに、それをテーブルの上に置くと、続いてアップルパイにとりかかる。

もぐもぐもぐ

後ろで、何か物を食べるような音がしたようだが、そんな事を気にしていては貴重な時間が無くなってしまう。

チーン♪

続いてアップルパイ完成。またも振り返らずに皿をテーブルの上に乗せ、次の料理に取りかかる。

もぐもぐもぐ

後ろで、何か音がするようだが、気にしない気にしない。

ホットケーキ完成。

もぐもぐもぐ

ドーナツ出来上がり。

もぐもぐもぐ

「よーし。これくらい作ったら、もう十分だね。それじゃあ、いただき・・・。」

後ろを振り返って、ビックリ仰天。

テーブルの上は、きれーに食べられてカラッポの皿、皿、皿。

「こ、これは・・・?」

そして、その先にはツマヨウジで歯の隙間を掃除しているアスカの姿があった。シンジと目が合うと、ニマ〜と悪魔の微笑みを浮かべる。

「シンジ〜。とーっても美味しかったわよ〜。」

「ア、アスカぁ??ね、寝てたんじゃなかったの?あんなにグッスリ・・・。」

「アンタ、バカぁ!?アンタが夜中にコッソリお菓子を作る事くらい、アタシには最初からちゃーんと分かっていたのよ!この天才美少女アスカ様が、あーんなハシタナイ格好で寝てるワケがないでしょーが!」

「気が付いていたんなら、声をかけてくれたらいいじゃないか〜!な、なにも全部食べなくても・・・。」

「アタシは、お菓子を作るのをヒミツにして、1人だけでコッソリ食べようとしたアンタの根性が気に入らないのよ!」

「うう・・・。ヒドイよ、アスカ・・・。せめて1個くらい残しておいてくれても・・・。」

すっかり打ちのめされたシンジ君は、うなだれて部屋へ引き上げようとした。

「しんじ〜。コッチ向いて見なさ〜い。」

「?」

振り返れば、ニコニコ顔のアスカの手に、光り輝くドーナツが1個。

それを見たシンジの顔に、見る見る笑みが広がっていく。

「あっ!やっぱり残してくれてたんだ。アスカって優しいね。」

喜んで手を伸ばそうとすると、またもアスカの顔にイジワルな微笑みが浮かんだ。

「そう言や、アンタ。アタシの部屋を覗いてたわよねぇ。」

「え?」

いやーな予感が、シンジの頭を駆け巡る。

「乙女の寝姿を見物するなんて重罪だわ!と、ゆーワケで、コレは見物料ね。」

ぱくっ!

「そ、そんなぁ〜。僕、何も見てないじゃないか〜。見物料を取るんだったら、何か見せてから取ってよ〜。」

何を見るのかは全くの謎だ。

最後のドーナツを食べられてしまい、追い討ちの掛かった形となったシンジは、心労の為か、パタッと床に倒れてしまった。

「わはははっ!これに懲りたら、2度とアタシにナイショでお菓子を作らない事ね!さーて、お腹もイッパイになった事だし、改めて寝るとしますか。じゃ、おやすみ〜。」

お腹をポンポンと叩くと、アスカは自室へと引き上げて行った。

「あうう・・・。なんでイジワルばっかり、するんだよぉ〜。」

苦労して作ったお菓子を根こそぎ奪われたシンジは、冷たい床の上で涙に暮れるしかなかった。



本日の被害状況・・・

EVA初号機パイロット、碇シンジx1:全てのオヤツを奪われ、精神的、金銭的に大ダメージ






アスカの大満足の翌朝、葛城家で、ちょっとした異変が起った。

昨夜の1件に、よほどシンジは怒ったのか、話し掛けようとしても、プイっとソッポを向いてしまう。

「ちょっと、シンジっ!このアタシが話しかけてんのよ!無視するんじゃないっ!」

つーん

「なによっ!オヤツ食べたくらいで、そんなに怒んなくてもいいじゃない!」

ぷいっ

「こらっ、シンジ!返事しなさいよ!返事しないと、後でヒドイわよっ!」

無視

「シンジーっ!ねえってばぁっ!」

アスカの呼びかけは、次第に必死なものになっていく。しかし、そんなアスカに構う事無く、シンジは新聞の折り込み広告に目を走らせている。

「しんじぃー。今日のオカズは、ハンバーグがいいなー。」

「さてと・・・。外にでも行こっかな。」

すたすた・・・ガチャッ!バタン!

甘えん坊モードのアスカに全く反応せず、シンジは外へ行ってしまった。

「・・・うう。しんじぃ。」

先程までの勢いは何処へやら、シンジの姿が見えなくなると、途端にアスカはションボリしてしまう。

実の所、シンジのオヤツを奪い取って食べるのは、彼に構って欲しいから、話し相手になって欲しいからに他ならない。

端から見れば、馬鹿馬鹿しいくらい幼稚なやり取り。

だが、厳しい訓練と、絶え間なく続く監視の中で生きなければならなかった少女にとって、同居している冴えない少年との他愛ない会話は、何物にも代え難い大事なものだった。

広い家の中に、ぽつーんと1人っきり。

さみしい・・・。

寂しければ、お腹も余計に減ってくる。

カラッポのお腹を抱えながら、アスカが後悔の念に駆られていると、玄関の扉が開く音がした。

「うい〜っ。帰ったぞ〜。」

アスカとシンジの保護者であるNERVの作戦部長、重度のアル中にして、オヤジの心を持つ三十路女性、葛城ミサトの御帰宅だ。

朝っぱらだと言うのに、完全に出来上がってしまっている。

「どっこらせっと。」

ミサトは冷蔵庫からビールを取り出し、椅子に座ってアグラをかき、ツマミの袋をテーブルの上に山積みにして宴会を始めた。

お腹の空いていたアスカは、当面の充足を得るために、ミサトに救いを求める事にした。

「ミサト、お菓子とか持ってないの?」

「ん〜?私が持ってんのは、ビールのツマミくらいよ〜。」

そう言って、ビールのアテにしていたスルメの袋を振って見せる。

「ん〜。それでも良いか・・・。」

もぐもぐ

しばらくミサトと一緒にスルメやらピーナツやらを食べて、ある程度お腹が膨らんだアスカは、テレビを見ながらゴロ寝をしることにした。

「しんじ〜。早く帰って来て、アタシの為に、美味しいゴハンを作るのよ〜。」



お昼頃になっても、シンジは帰ってこなかった。そうなると、お腹が再び不平を言いだす。

しょうがないので、再びオヤツを探す事にする。

「ミサト〜。甘いお菓子とかないの〜?」

「朝食べたツマミが私の持ってたオヤツの最後よ。冷蔵庫にコンビニのお弁当があるから食べたら?」

「ダメよ!アタシはオヤツが食べたいのよ!」

アスカの味覚は、シンジの料理を食べるようになってから、シンジの手料理か、オヤツ以外の物を受け付けなくなっていた。

「じゃあ、もう、なんにも残ってないわ。ペンペンにでも聞いてみたら?」

そう言われたアスカは、オヤツを求めて、温泉ペンギンのペンペンが住んでいる冷蔵庫へと向かった。

ガチャッ!

「ね〜、ペンペン。アンタ、何かオヤツ持ってない?」

「ク、クエッ!」

冷蔵庫の扉を開けると、丁度、ペンペンがスナック菓子を頬張っている所だった。

アスカの姿を見ると、袋を背後にサッと隠す。

「アンタ、なに隠そうとしてんのよ!ひとり占めしようとした罰よ!それを寄越しなさいっ!」

「クエエエっっ!!」

冷蔵庫に頭を突っ込んだ少女が、ペンギンからオヤツを巻き上げようとしている。見かねたミサトが止めに入った。

「ちょっと、アスカ。何もペンペンからオヤツを取らなくてもいいじゃないの〜。」

「ミサト!アンタ、なに甘ちょろいコトを言ってんのよ!これは生死を賭けた生存競争なのよ!」

ペンペンも激しく抵抗するものの、オヤツに飢えて狂暴化したアスカの前では、まるで蟷螂の斧に等しい行動だ。

「クエ〜・・・。」

「ふん!今度から隠したりしたら、もっとヒドイわよ!むしゃむしゃ。」

涙を流す温泉ペンギンを尻目に、アスカは戦利品にパクついた。



ぎゅるるる〜

「お腹すいたよ〜。」

時刻は夕方となり、アスカのお腹は不平不満を漏らしている。シンジが帰宅する様子は全く無い。

「はぁ・・・。アタシ、とうとうシンジに見捨てられちゃったのかなぁ・・・?しくしく。」

空腹の為か、思考がやたらとネガティブな方向へ突っ走る。

きゅ〜くるるる〜

もうシンジが帰ってこないかもしれないと考えると、お腹の皮と背中の皮が引っ付いてしまいそうだ。

「うう・・・。ヒモジイよぉ・・・。」

ペンギンからまで巻き上げてしまった今となっては、葛城家に残されたオヤツは全て食べ尽くしてしまったに違いない。

おまけに、あんまりお腹が減るもんだから、冷蔵庫の中の物も洗いざらい食べ尽くしてしまった。

今月は無駄遣いが多かったせいで、アスカの財布はスッカラカン。

ミサトはビール代をキープするために、財布の口を厳重にブロックしている。

その他の人達は?

それは考えるだけ無駄だろう。

それでなくても、シンジから借りたお金を全く返済しないアスカの姿は、“マネー・ブラックホール・アスカ”とか、“泥沼踏み倒しアスカ”として、通学している第壱中学は愚か、第3東京市全体にまで知られている。

よほどの物好きででも無い限り、アスカにお金を貸そうなどと思う人間はいない。

「このままだと、空腹で気が変になりそうだわ。アイツに電話するのはシャクだけど、この際、しょうがないか・・・。」

受話器を手にとり、番号をプッシュする。

ぷるるる・・・

『はい・・・。綾波です・・・。』

電話に出たのは、EVA零号機のパイロットの少女、綾波レイ。

普段は何かとライバル関係にあるのだが、空腹の前に、そんな事は消し飛んでしまった様だ。

「あ、レイ?アタシ。アスカよ。」

『どうしたの・・・?』

「アンタ、なんかオヤツ持ってない?アタシの家にあったのは、ぜーんぶ食べ尽くしちゃってさあ。」

『お金、持ってないの・・・?』

「今月の食費は、ぜーんぶ使い果たしちゃったわ。何なら、お金貸してくれる?」

『ダメ・・・。アスカにお金を貸すのは、虚数空間へ物を投げ入れるのと同じ事だもの・・・。』

えらい言われ様だ。

やはり“マネー・ブラックホール・アスカ”の噂は津々浦々まで広がっているらしい。

「そんなこと言わないでさあ〜。食べるものだったら何でもいいから〜。」

『ラーメンでよかったら、いくらでもあるけど・・・。』

「ラ、ラーメン持ってんの!?今から取りに行くわ!」


びびゅんっ!


あっと言う間にレイのマンションに到着。

「うわっ!アンタの家、どーなってんのよ!」

部屋に入ったアスカが驚いたのも無理はない。

レイの部屋には、リビングにも、ダイニングにも、キッチンにも、全ての場所にラーメンの入ったダンボール箱が、山のように積まれているのだ。

日頃、これでどうやって生活しているのか不思議になる。

「でさ、どれくらい貰って行っていいのよ?」

「好きなだけ持っていくといいわ・・・。」

「わーい。」

大喜びのアスカは、乗ってきた自転車が潰れるんではないだろうかと思えるほどのダンボールを運んで、荷台に括り付ける。

あっと言う間に、レイの部屋はカラッポになってしまった。

「ふー。これだけあれば、一安心ね。」

「それじゃあ、部屋に戻って休憩しましょう・・・。」

相変わらず何も無いので、部屋にあったラーメンを食べながら休憩と言う事になった。

ずるずる

「ありがと〜、レイ。今度ばっかりは、ホントに助かったわ。」

ずるずる

「そう・・・。よかったわね。」

ずるずる

「でもさあ、これだけアタシが持って帰ったら、アンタの食べる分はどーするのよ?」

ずるずる

「それは心配しなくていいわ・・・。ちょっと来てくれる・・・?」

そう言って部屋の1室にアスカを案内する。

「な、なんなの、この部屋?」

案内された部屋の壁には、一面にテレビモニターが据え付けられている。

画面には、マンション内の各部屋の内部が映されているのだが、そこに映っているのは、どれもこれも、ラーメンの入った箱の山、山、山だった。

「な、なにコレ?どこもかしこも、ラーメンだらけじゃないのよ。」

「このマンション、NERVの所有物だから、ラーメンの保存倉庫に改造してもらったの・・・。これで24時間、いつでもラーメンに囲まれて生活出来るの・・・。」

そう言ったレイは、幸せそうな笑みをクスリと漏らす。それを見て、チョット引いてしまうアスカ。

「そうそう・・・。お返しの事なんだけど・・・。」

「えー?電話でも言ったけど、アタシ、今は無一文なのよ?」

「今回は別にいいの・・・。」

「珍しいわねぇ?いっつもアタシが借りをを作ったら、これ幸いと飛びついてくるのに。」

前にレイから消しゴムを借りた時には、イクラ、アワビ、フカヒレ、キャビアの入いった高級海鮮ラーメンを奢らせられた。

それが、今回は何も要らないと言う。不自然の極みだ。

「・・・ところでアスカ。」

「なによ?」

「碇クン、最近は、どうしているのかしら?噂だと、家に帰っていないそうね・・・。」

ぎっくーーーーーーっっ!!

ヤバい。

よりにもよって、一番知られたくないヤツに知られている。

家事全般の処理能力に優れ、しかも心優しいシンジ君を狙う女の子は、結構な数にのぼる。

その中でも、レイはアスカにとって最大のライバルなのだ。

「な、なんでアンタが、その事を知ってんのよ?」

その問いには答えず、レイはニヤリと笑うだけだった。

「丁度、全部の部屋が一杯になって、どこにラーメンを移そうか悩んでいた所なの・・・。アスカが持って行ってくれるおかげで部屋が空いたから、碇クンを呼ぶ事が出来るわ・・・。」

「ア、アンタ、最初からそのつもりだったのね!」

「今ごろ気が付いても手後れよ・・・。食い意地の張ったアナタには、ラーメンを返す事なんて出来ないわ・・・。」

「ぐぐぐ・・・!」

「碇クンも、さんざんヒドイ目にあわされているアナタの所には、帰ろうとしないでしょうね。そう言う訳で、ここが、碇クンと私の愛の巣になるの・・・。ポッ。」

「ぐぬぬぬ・・・!」

アスカの顔は、既に爆発寸前の赤色になっている。そして・・・。

ぷっちん

アスカちゃんの脳天の線が、音を立てて断絶した。

マンションの部屋を映しているモニターにスタスタと近づくと、備え付けられているスイッチをガチャガチャと操作する。

「何をするの・・・!そのスイッチは、生麺を保管している部屋の温度を調節しているのよ・・・!」

「そんな事は百も承知なのよっ!温度を上げて、生のラーメンをぜーんぶ腐らせてあげるわっ!」

「や、やめて〜!」

レイは悲鳴を上げて、アスカに掴みかかる。が、知力的にはともかく、腕力的にアスカに敵うはずがない。

「じゃあ、シンジに手を出さないと誓うのわね!」

「ううう・・・。」

収集したラーメンと、碇クン獲得のチャンスを吊るした天秤が、レイの頭の中でグルグルと回った。

「そう。アタシの言う事が聞けないってーの。じゃあ、もっと温度を上げてやるわ!これで生麺は、ぜーんぶ腐っちゃうわね!うひひひっ!」

狂気の表情を浮かべながら操作を続けるアスカ。生ラーメンの苦しむ姿を見かねたレイは、思わず叫んでしまう。

「わ、わかったから!わかったから、やめて〜!」

その言葉を聞いたアスカの表情が、邪悪なものに変化した。

「ふっふっふっ。」

「な、なに・・・?」

アスカの不気味な笑いに、レイは思わず2、3歩、後退してしまう。

「アンタはシンジよりもラーメンを選らんだのよっ!そんなヤツに、シンジと同居する資格なんて無いわ!」

自信満々な態度で、ビシーッ!と指で刺されて指摘され、レイは動揺してしまう。

「そそそ、そんなつもりで言ったんじゃないわ・・・!」

「じゃー、どんなつもりよ。言ってみなさい。」

「そ、それは、あの、えーっと・・・。」

とっさの事なので、気の効いた言い訳が思い浮かばない。

「ほーら、みなさい。やっぱり、なんにも言えないじゃないの。アンタはシンジよりもラーメンを選らんだのよぉぉぉ〜。」

「うわーん!碇クン、ゴメンなさい、ゴメンなさい・・・。」

泣き崩れて、ポテッと倒れてしまうレイ。

「わはははっ!勝ったわっ!約束だから、当分の間はシンジに近づいちゃダメよ。じゃあね〜。」

レイを倒した上、大量のラーメンまでも手に入れたアスカは、ニコニコ顔で自転車をこぎながら帰って行った。



本日の被害状況・・・

温泉ペンギンx1:オヤツを略奪される

EVA零号機パイロット、綾波レイx1:過度の精神的ダメージにより入院、再起不能






ず〜るず〜るず〜る

レイの家からラーメンを貰ってきて、3日ほど経った。依然、シンジは帰ってこない。

最初は5000袋近くあったラーメンも、これが最後のひと袋。

「またオヤツが無くなっちゃったな。はあ〜。どっかにオヤツが落ちてないかな〜。・・・むむ?」

アスカの頭の中に新設された「オヤツ捕獲用レーダー」がピコピコと作動を始めた。

「むむむ?」

部屋のフスマをそーっと開けて首を突き出して見ると、背中にオヤツを包んだ風呂敷きを担いだペンペンが、忍び足で玄関に向かい、この家から逃亡しようとしているではないか。

どうやら、家の外で安心してオヤツを食べようと思っているらしい。

「ペンペン〜。アンタ、こないだアタシが言った事を聞いてなかったよーねぇぇ。」

「ク、クエエエッッ!!」

振り向いて、部屋から首を出しているアスカを見たペンペンの顔が恐怖で引きつる。

脱兎の如く玄関の扉へ向かうペンペンだが、一瞬早く背後に迫ったアスカにリックサックをつかまれてしまう。

「さあ、このリックサックをアタシに寄越しなさいっ!」

「クエ〜!」

渡してはなるものかと、ペンペンも死にもの狂いでオヤツの入ったリックサックにカジリ付く。

「人鳥の分際で、このアタシに逆らう気ぃ!?さっさと放せっっっつってんのよっっ!!」

アスカは力任せにペンペンごとリックサックを振り回した。

べちゃああっっ!!

たまらず振り飛ばされ、壁に激突するペンペン。

「フンっ!今度ナイショにしたら、こんなモンじゃ済まないわよ!もぐもぐ。」

叩き付けられた衝撃で、壁にメリ込んでいるペンペンを尻目に、巻き上げたオヤツを食べながら、アスカは自分の部屋へと戻った。



ぎゅるぎゅる〜

ものの数時間たたない内に、またもお腹が鳴っている。

「また、レイに連絡してもいいんだけど、何度も借りを作ったら、ラーメンのカタにシンジを持って行かれそーね。今度はヒカリの家に電話かけてみよっと。」

と、言う訳で、クラスの委員長で親友の、洞木ヒカリの家にダイヤルする。

プルルル・・・ガチャッ!

『はい、洞木です。』

「もしもし、ヒカリ?アスカよ。」

『あら、アスカ。どうしたの?』

「実はさあ、オヤツが底をついちゃってね。何か持ってないかと思って、電話したのよ。」

『はあ〜。アスカ、また碇君を困らせてるのね〜。』

「シ、シンジは関係無いわ!それよりオヤツ持ってるの?持ってないの?」

『実は、私も買い置きを切らしちゃってて・・・。今、コダマお姉ちゃんとノゾミがケーキ作ってるけど、誰かにプレゼントするらしいから・・・。』

「う〜ん。それじゃあ、しょうがないわね。」

『ごめんね、アスカ。』

「いいのよ。他に当たってみるわ。じゃあね。」

が、言葉とは裏腹に、電話を切って、すぐにアスカは家を出た。


びびゅんっ!


「ね〜、ヒカリ〜。この次は、ど〜すんの〜?」

「ヒカリお姉ちゃん、こっちも手伝ってよー。」

「きゃー!お姉ちゃん、ケーキの中に納豆を入れちゃダメーっ!ノゾミもイチゴばっかり食べないで!飾り付ける分が無くなっちゃうわよ!」

ここは洞木ヒカリの住んでいる洞木家。洞木3姉妹はキッチンでケーキ作りに勤しんでいた。

「それにしても珍しいわね。コダマお姉ちゃんもノゾミも、普段は料理なんてした事無かったのに。」

ここ洞木家では、家事の大半を次女のヒカリに依存している。

「ミサト2号」として知られる長女コダマは家事全般の才能がカンペキに欠如していたし、甘えん坊の末っ子、ノゾミは手伝うよりも邪魔している方が多かった。

「2人とも、一体、誰にプレゼントするつもりなの?」

「決まってるじゃない〜。シンジ君よ〜。」

「私も碇センパイにあげるのー。」

それを聞いてヒカリは仰天。

「ちょ、ちょっと!碇君にあげるつもりなの!?ダメよっ!碇君にはアスカがいるのよ!」

「だめだめ〜。アスカちゃんと引っ付いたら、シンジ君は過労で死んじゃうわよ〜。私達は、幸薄い可憐な少年を、生き地獄から救い出してあげようとしてるだけなのよ〜。」

「だもんねー。」

「・・・もし碇君が、お姉ちゃんかノゾミと生活するようになったとしても、アスカと一緒になるのと大して変わらないと思うんだけど。」

親友及び、姉妹に対して、かなり残酷な事をサラっと言ってのけるヒカリ。

ウ〜!

『ただ今、第3東京市に特別警戒態勢が布かれました。市民の方は、近くのシェルターに避難して下さい。繰り返します・・・。』

ヒカリの顔がサッと青ざめる。

「大変!ケーキどころじゃないわ!お姉ちゃん!ノゾミ!避難しましょう!」

「わ〜、大変だわね〜。ドラマの予約を早くしなくちゃ〜。」

「わたしもヌイグルミを持って行かなくっちゃー。」

「もうっ!お姉ちゃんも、ノゾミも、、そんな事はどうでもいいから、早く逃げましょう!」

「だーいじょうぶよ、ヒカリ〜。使徒とか言う変なオバケが来って、シンジ君たちが、ちょちょいのちょいって片づけてくれるわよぉ〜。」

そんなこんなで洞木3姉妹、退場。家の中は静かになった。

ぎ〜こ、ぎ〜こ、ぎ〜こ・・・ドサッ!

静かになったのを見計らったかのように、何かを切り裂く音と、重いものが落下する音が家中に響いた。

見れば、裏窓が壁ごと切り取られ、その開いた穴からノコギリを持ったアスカが入ってきた。

「ぬふふふ・・・。邪魔物は消えた様ねぇ。」

手には変テコな機械が握られており、液晶モニターの部分に、

『洞木家周辺の警報作動回路に侵入完了。警報を作動させます。』

と言う文字が表示されている。

「さ〜てと。キッチンは向こうだったわね。」

勝手知ったる他人の家。アスカは迷う事無く、目的の場所を目指す。

「いい香りね〜。じゅるじゅる。」

テーブルの上には、期待通りの立派なケーキが、甘い香を放っていた。

「アタシのシンジに手ぇ出そうったあ、いい度胸してんじゃない。どうせ食べるつもりだったけど、そうと聞いては、ますます見逃せないわ!」

キラーン!

ナイフとフォークがアスカの両手に光った。

ガツガツガツガツガツガツッッ!!!!

「は〜。美味しかった〜。おおっ!?あんな所に冷蔵庫が!」

ばびゅんっ!と冷蔵庫のトコまで駆けて行って、中をあらためる。

「わー、コーヒー牛乳にシュークリーム、トンカツに冷やし中華、栗ヨウカンまであるわー!まるでアタシに食べてくれって言ってるみたいね〜。」

モグモグ、バリバリ、ガツガツ・・・

警報が誤報だと分かり、帰宅した3姉妹が目にしたのは、

「ああっ!だ、誰よ!こんなにテーブルを無茶苦茶にしたのは!キャーッ!冷蔵庫も中の物が根こそぎ食べられてる!」

「シ、シンジ君に食べてもらおうと思ってた私のケーキがああ〜っっ!!」

「うわーん。センパイにあげようと思ってたのにぃー。」

無残に食べ散らかされた、シンジとの愛の架け橋に成るはずであったケーキの残骸と、奇麗サッパリにカラッポになった冷蔵庫だった。



本日の被害状況・・・

温泉ペンギンx1:暴行を受け、重傷

洞木家長女、洞木コダマx1:再起不能

洞木家次女、洞木ヒカリx1:後片付けに追われて疲労困ぱい

洞木家3女、洞木ノゾミx1:再起不能






洞木邸侵入から明けて1日の夕刻。

ぎゅるるる〜

アスカのお腹は早くも不平を漏らし始めている。

腹時計が鳴っているにもかかわらず、ぐーぐーとイビキをかいて眠っていた。

ヒタヒタヒタ・・・

何かが廊下を忍び足で歩いてくる音がする。

ヒタヒタヒタ・・・ピタ・・・

そして、その足音は、アスカの部屋の外で静かになった。

そーっとフスマが開いたかと思うと、ペンペンが部屋の中を覗き込む。

背中には先日と同じくオヤツの詰まったリックサックを背負い、手には一切合財を包んだ風呂敷きをブラ下げている。

アスカが眠っている事を確認すると、そーっとフスマを閉め、足音を殺しなが玄関に向かった。

魚の代わりにビールを飲ませようとする三十路の家主や、オヤツを横取りする赤毛猿には、もう沢山。

自分のために美味しい食事を作ってくれる、あの優しい少年の元へ行くのだ。

「クケッ!(いざ行かん!シンジくんの元へ!)」

そう勢い込んで、玄関の扉を開けようとした矢先、

バサーーーッ!!

頭の上から網が降ってきた。

「ク、クエエエ〜!!」

体が絡まってしまい、もがき苦しむペンペン。

「アンタも懲りないペンギンねぇ・・・。」

残忍な視線で自分を見下ろすアスカは、網からペンペンを取り出すと、荒縄でグルグル巻きにして、肩に担いだ。

「何度もオヤツを隠そうとした挙げ句の脱走騒ぎ。今度ばっかりは、きいいいっっっちりとペナルティを科さないと、シメシがつかないわよねえええ?」

そう言ってキッチンへ。コンロの上には、既にナベに火がかけられており、沸騰した湯がボコボコと泡を立てている。

「今から、この中につかって、ダシになってもらうわ!」

「クエエエッッ!!」

「よく見ると、ペンペン。アンタって美味しそうよね〜。あっ、そーだ。ペンギン鍋もいいかもね。じゅるじゅる。」

「クケーーーーーーッッッッ!!!!」

ヨダレを垂らさんばかりのキケンなアスカの表情に、ペンペンは必死にクチバシをパクパクさせて絶叫する。

「許して欲しい?」

カクカクカクとペンペンの首が光速で上下に振られた。

「アンタからオヤツを頂いたのは、これで3回目。取っても取っても出てくる。てコトは、どこかに隠し場所があるハズよねぇ?」

ズボシッ!

内心の動揺を表す擬音とともに、ペンペンの顔が凍り付く。

「どーやら図星だったよーねぇ。ダシになりたくなかったら、残りのオヤツが何処にあるのかを白状しなさい!それとも・・・?」

眼下にはグツグツと煮えたぎる湯を満たした鍋。

「ダシになる方がイイのかしら〜?」

死の恐怖に屈したペンペンは、自分の居住用冷蔵庫の床下にオヤツが隠してある事をゲロってしまった。



アスカはベランダに出て、ペンペンが隠していたオヤツを頬張っていた。

時刻は深夜。雲ひとつ無い空には、無数の星が輝いている。

「もぐもぐ。なーんてキレイな星空なのかしら。ね〜、ペンペン?」

ぶら〜ん、ぶら〜ん

傍らの物干し竿には、簀巻きにされたペンペンが、お仕置きとして逆さ釣りにされていた。風に揺られて振り子のように左右に振れている。

「それにしても、シンジのヤツ。なにが不満で、この天才美少女アスカ様の元から逃げ出しちゃったのよ〜。」

未だシンジは家に帰って来ていない。

その為、アスカのストレス値は、ウナギのぼりに上がる一方。そして傍らには、パンチングボールの様にブラ下がっている温泉ペンギンがいる。

「人の気も知らないで!バカバカバカッ!!」

ドカ!!バキ!!ドス!!ボキ!!

溜まったウップンを押さえ切れないアスカは、反射的に傍らのペンペンをタコ殴りにしてしまう。

乙女の八つ当たりを全身に受け、白目を剥くペンペン。その顔には、早くも死相が漂っている。

「ふう。スッキリした。でも、なんだかお腹が空いて来ちゃったわね。」

ぎゅるる〜

言ったそばからお腹が鳴る。

食べても食べても、ポッカリと大穴が開いたかのようだ。何故こんなに、お腹が空いてしまうのか?

「シンジぃ〜。アタシを置いて、どこに行っちゃたのよ〜。早く帰ってきなさいよ〜。くすん。」

さびしくて、さびしくて、シンジの事を思い出すと、お腹が直ぐに空いてしまう。

寂しさと空腹のダブルパンチで、涙まで出そうになってくる。

「むぅ〜。こうなったら、アイツに連絡をするしか無いわね。」

アスカは三度、受話器をとった。

プルルル・・・プルルル・・・『この回線は、戦略自衛隊が保有していものです。一般の方の御利用は出来ません。』

今度は戦略自衛隊に所属している、シンジをめぐる不倶戴天の敵、霧島マナに連絡をとるつもり・・・だったのだが、考えてみれば、マナの所属しているロボット部隊は、戦自の中でも極秘とされている部隊だ。おいそれと連絡を取れるワケがない。

しかしアスカは気にした風も無く、身支度をすると家を飛び出した。


びびゅんっ!


その夜、霧島マナは、戦自の女子寮で幸せな熟睡タイムを過ごしていた。

「う〜ん、むにゃむにゃ。しんじぃ〜。」

余程に幸せな夢を見ているのか、ヨダレを垂らして思いっきり顔を弛緩させている。

ドドドドドド・・・ガリガリガリ・・・

何か、地底を掘り進むような音が、地面の下から響いてくる。部屋も小刻みに振動を始めた。

その音と振動は次第に大きさを増し、地中を進む何かが、この部屋に向かっている事を示していた。

ドドドドドド!!ガリガリガリ!!

「ふにゃ?」

余りの音と振動にマナが目を覚ました瞬間。

ウイイイーーーンッッ!!!!バリバリバリッッ!!!!

いきなり部屋の床を突き破って巨大なドリルが現れた。

「うにょおおおっっ!???」

謎の物体が、寝ている場所の真横から突如として出現したのでビックリ仰天。

「ななな、何!??何がどうなってるの〜???」

寝起きで動かない体を必死にバタつかせながら、慌てて部屋の隅へと避難する。

ガリガリガリッッ!!!ウイイイイイイーーーンッッッ!!!ベリベリベリッッ!!!

床から出現した巨大ドリルは更に上昇を続け、天井までも突き破ってしまう。ドリルの全身が姿を現すと、その下からは円柱形の胴体が現れた。

ウイイイーーーン・・・ぶしゅ〜

ようやく謎の機械は活動を停止した。

「あああ〜、あうあうあう〜。こ、これは、なに〜??」

腰を抜かしたまま、謎の物体を見上げるマナ。

がっちゃん

胴体の部分に取り付けられたハッチが開く。

「やっほー、マナ。起きてるみたいね。」

中から出てきたのはアスカだった。

「ア、アスカ!あなた、私を殺す気なの!?もう少しでミンチになっちゃうトコだったわよっ!」

「や〜ね〜。そんなコト、アタシがするワケないじゃない〜♪(チッ!狙いが外れたよーね。もう少しで邪魔物が1人消えたのに。)」

「こらこら。聞こえてるわよ。その機械は一体、何なのよ?」

先端に巨大ドリルを付けたロケットの様な物体を指差して、マナが尋ねる。

「ああ、コレ?リツコが作った対使徒用の秘密兵器よ。なんでも地底から来る使徒を撃退するために作ったそーよ。戦自の目をかすめてアンタに会うために、わざわざ借りて来たのよ。」

どーでもいいが、目をかすめるどころか、かえって目立っているぞ。

「そんな事よりさ。何かオヤツ持ってない?」

「昨日、ゼリーが支給されたんだけど、もう食べちゃって残ってないわ。」

「なんで食べちゃうのよ!」

「そ、そんなこと言ったって、戦自にはオヤツなんて気の効いたもの置いてないもの。」

「なんでもいいから、なんか持ってない?」

「カンパンとかの保存食ならあるけど・・・。」

「それでいいわ!あるだけ全部用意ちょうだい!」

「あ、あるだけ全部?ダンボールに山積みあるのよ?」

「いーのよ。全部、貰って行くわ。」

「そ、そう。じゃあ、取り敢えず私の後について来て。」

やっとの事で抜けた腰が元に戻ったマナは、フラフラと立ち上がった。

「ドコ行くのよ?」

「この寮の地下に、有志で作った秘密の倉庫があるのよ。カンパンは、そこに置いてあるの。」

「??何でそんなモンを作ったのよ?」

「ま、それは追々わかってくるわ。」

マナに連れられて入った地下倉庫には、ところ狭しとカンパン入りのダンボールが積まれていた。

「わおっ!あるある!コレ、ぜーんぶ貰っちゃっていいの?」

「足がついてる品物だから、丁度、助かるのよ。」

「足がつく?」

「あんまり大きな声じゃ言えないんだけど、実はこのカンパン、横流し品なのよ。」

「横流しーっ!??」

「しーっ!静かにしてよっ!バレたら大変なんだから!」

「何で、そんなアブナイ橋を渡ってんのよ?」

「私の所属している対使徒部隊は、お給料なんて無いに等しいのよ。おまけに、ご飯が1年365日、毎日、カンパンばっかりなんて信じられる?たまにはカワイイ服でも着て、ラーメンとかステーキとか食べたいわよ。」

「何だか切実ね。」

「で、寮の床下に部屋を作って、取り敢えずカンパンを確保したんだけど、交渉相手を見つける前に、気づかれちゃってね。身動きが取れなくなっていたのよ。ま、そんな事情だから、今回はタダであげるけど、次回からはバーター取り引きにして欲しいわね。」

「物々交換?何が欲しいの?」

「なーんでも。でもやっぱり、メインは食料品と服関係ね。後、音楽なんかも聞きたいわ。インスタントラーメン10袋ならカンパン1箱、音楽CDならカンパン5箱、服なら20箱、CD付きラジカセなら50箱ってとこでどう?カンパン以外にも、カンズメとかも手に入るわよ。」

「まあ、いいんじゃない?」

そこまで話を進めたマナの目が、急にキラーンと怪しい光りを放ちだした。

「でねでね、実は私、どーしても手に入れたい物があるのよ。」

「何よ?」

「アスカが初めて日本に来た時に着ていたクリーム色のワンピースとか、ユニゾンの訓練していた時のレオタードとかなのよ。そーゆーアイテムなら、カンパン100箱と交換してもいいわよ。」

「・・・アンタ、アタシとシンジの思い出の品を露骨に狙ってるんじゃない?」

「や、やーね。そんな訳、無いじゃない。あはは!」

ジト目で睨まれ、冷や汗を流すマナ。ポケットの中に、「らぶらぶアスカ&シンジ分断作戦:先ずは思い出の品から処分するべし」と書かれたメモ帳を忍ばせているのは、絶対にヒミツだ。

とにかく慌てて話題をそらす。

「あ、あはは・・・。ほ、他に何か交換するものなんてないかしら?」

「そうねぇ・・・。そうだ。戦自の内部情報とかは?ミサトが高く買うと思うわよ。」

「じゃあ、トライデントの設計図は?」

トライデント級陸上巡洋艦は、EVAに対抗するために、戦自が独自で開発したロボット兵器の事だ。その存在は、トップ・シークレットの筈なのだが・・・。

「・・・なんで、そんなものまで持ってんのよ?」

「対使徒部門は、戦自の中でも日陰者だからねぇ。ま、色々とあるのよ。で、どれくらいの物と交換してくれるの?なんなら、シンジとのデートでもいいわよ。」

「ダ〜メ。それだけは、いくら高い値段をつけられても売れないわ。」

「ケチっ!」

「ま、設計図を何と交換するかは、帰ってミサトの意見を聞いてからね。んじゃ、そろそろ帰るから、アタシの掘って来た穴、何かフタをして隠しといてね。これからも使うんだから。じゃあね〜。」

ウイイイーーーン!!ドドドドドド・・・・

乗ってきたドリルマシンに、倉庫内のカンパンを全て積み込むと、アスカは来た道を逆走して帰って行った。

「お願いだから、今度来る時には、もう少し静かな乗り物に乗って来てね。それにしても・・・。」

マナは静かになった辺りを見渡した。

そこは散乱するガレキの山で、夢の島と化していた。

「後片付けは、いったい誰がすると思ってるのよ〜。うえ〜ん。」



本日の被害状況・・・

温泉ペンギンx1:瀕死

戦自少女、霧島マナx1:後片付けで筋肉痛を起こし、行動不能







ぽこ〜ん

マナから貰ったカンパンを食べ尽くした頃、アスカのお腹は「ぎゅるるる〜」ではなく、「ぽこ〜ん」と言う音を出すようになりだした。

「?」

最初の内こそ、何かヘンだとは思ったものの、お腹が空いているアスカは全く気にしない。

今日もニコニコ顔でハンバーガーを頬張っていた。

「もぐもぐ。お腹いっぱい食べるのって、ホントに幸せよね〜。シンジなんか居なくても、オヤツがあればイイもんね〜。」

シンジ君が居なくなって、日に日に募る寂しさを紛らわす為、最近のアスカさんはチョッチ過食気味。

ぽこ〜ん、ぽよよ〜ん

なんだか妙な音が混じって来た。

「わははっ。気にしない気にしない。もぐもぐ。」

ぽこ〜ん、ぽよよ〜ん、ぷよよ〜ん

「あう・・・?」

次第に聞きなれない音が増えてくるので、シャツをめくって、お腹の肉をつまんでみると・・・。

「・・・ヤバ。」

指先から伝わってくるデンジャラスな感触に、アスカの顔が見る見る青くなっていく。

慌てて風呂場に直行し、体重計に乗っかる。

ピピッ!


んきゃ〜〜〜〜〜〜っっ!!


「あれ?アスカの叫び声が聞こえる。な、何か、あったのかな?」

ほぼ1週間ぶりに葛城家へと戻って来たシンジは、玄関扉の外で、その絶叫をいきなり聞いた。

「も、もしかして、オヤツが切れて禁断症状が起こった、とか?」

アスカの身に何かあったのかと、チョッチ不安になったので、慌てて部屋の中に入る。

ペタンと座り込んで、うなだれているアスカをすぐに見つけ、側に駆け寄った。

「アスカ?アスカ?何があったの?」

周囲を見渡せば、完膚なきまでに破壊された体重計。大体の事情を察したシンジは、ホッと胸をなで下ろす。

「脅かさないでよ、アスカ。何が起こったのかと思ったよ。」

「ううう・・・。シンジが居ない上に、太っちゃって、これから一体、アタシはどうしたらいいの・・・って、あれ?シンジっ!帰って来てくれたの!?」

「うん。ただいま、アスカ。」

今まで会いたいと思ってきたシンジが目の前にいる。ホントは、すぐにでも飛びつきたい所だったが、シンジを目の前にすると、日頃の意地っ張りがムクムクと頭をもたげてくる。

「フンだ!今までどこに行ってたのよ!ア、アタシはオヤツがあれば、それで幸せなんだから、ア、アンタなんか帰って来なくっても全然困んないのよ!ぐすん。」

だけど、いくらキツイ言葉を浴びせても、アスカの瞳はウルウルになって、

「いかないで〜。いっちゃイヤだよ〜。」

の光線をイヤと言うほど放ってる。

そこはアスカ様専属下僕たるシンジくん。何も言わなくても、アスカの心の中の事はキチンと分かっています。

へたり込むように座っているアスカの顔を覗き込むようにして話し始めた。

「ゴメンね。ホントは、もう少し早く帰れたはずなんだけど、色々と調べる事があって・・・。それに、急にアチコチ、お見舞いに行かなくちゃならなくなってね。それで遅くなったんだ。」

「お見舞い?誰か入院でもしたの?」

「うん。綾波と、コダマさんとノゾミちゃん。あと、委員長も。」

「ええ!??」

「で、最初に、綾波が入院している病院にお見舞いに行ったんだけど、綾波は

『碇クン・・・。決して、ラーメンと碇クンを天秤にかけた訳じゃないの・・・。ゴメンなさい、ゴメンなさい・・・。』

て、僕に謝るんだ。」

「そ、それで?」

「何の事だか良く分からなかったんだけど、気にしないで早く良くなってね、って言ったら、だいぶ元気になったみたいだったよ。」

(チッ!余計なコトを〜。折角、邪魔物が1人減ったと思ったのに〜。)

「え?何か言った?」

「な、何でもないわ!そ、それで、ヒカリとヒカリのお姉ちゃんと、ノゾミちゃんはどうしたのよ。」

「コダマさんとノゾミちゃんは、僕が行った時は眠っていたんだけれど、

『絶対に赤毛猿よ〜!嫉妬深いゲルマン赤毛猿が、私とシンジ君の愛の架け橋を食い散らかしたのよ〜!』

『そうなのー。きっと、おサルさんなのー。』

って、訳の分かんない事を言って、うなされてたんだ。」

(くっくっくっ。いい気味だわ。もっと悪夢にうなされるといいわ。それにしても、“嫉妬深いゲルマン赤毛猿”って誰の事よっ!退院したら、即、死刑ね。)

「それから委員長も同じ病室に居て、こっちは、

『そうよ!どうして気が付かなかったのかしら。ケーキはおろか冷蔵庫の中の物まで食べ尽くす人間って言ったら、1人しか居ないじゃない!』

って、お姉さん達以上に酷いうなされ様なんだ。」

(まずいコトになったわねぇ。ただでさえ、あの2人が何を言い出すか分かったモンじゃないのに、ヒカリまで加わったら始末に悪いわ。薬でも飲まして、3人とも記憶を消しとかないといけないわねぇ。)

次第次第に変テコな方向へ考えが進んで行く。アスカの顔には、隠しようも無い邪悪な笑みが広がっていた。

「・・・?」

(ヒカリには悪いケド、アタシとシンジがラブラブになる為に犠牲になってもらうわ。くひひひ。)

「どうかしたの?」

「きき、気にしないで!何でもないの!」

「あ、そうそう。ペンペンがね、僕の泊まっていた部屋に、泣きながらやって来たんだ。ケンカでもしたの?」

「ししし、知らないわよ!アタシ、なーんにも知らないわ!(ペンペンめ〜。あれだけ言ったのに、まだ懲りてないようね〜。今度こそカラ揚げにしようかしら?)」

「なんか、知り合いばっかりが倒れてるね。どうしてだろ?アスカ、何か心当たりない?」

「わわわわ、アタシが知るワケないじゃない!」

まさか、全部、自分が原因だと言う訳にも行かないので、誤魔化すしかない。慌てて話題を他へ振る。

「そ、それはそうと、シンジ。アンタ、その格好は?」

見れば、シンジは背中に体の倍以上もある大きなビニールの袋を背負っている。色とりどりの包装紙や箱のオヤツが中に入っているのが透けて見えていた。

「ああ、これ?ミサトさんに無理言って、僕の貯金をおろして買って来たんだ。ほら、これだけあればアスカも当分は困らないでしょ?」

「ええ!?コレって、アタシの為に買ってくれたの??」

てっきり、まだまだ腹を立てているとばかり思っていたのに。

「で、でも、シンジのオヤツを食べちゃったコト、怒ってないの?」

「ゴメンね。僕、ちょっと言い過ぎたよ。アスカがオヤツを食べても、僕以外の誰かが困ったりする訳じゃないし、怒る事もないかなって。」

(うう〜、しんじぃ〜。アンタって、ホントに優しいわね〜。実は、もうアチコチで迷惑をかけまくってるのよ〜。ま、この際だから、アレは無かった事にしておきましょう。)

かけまくった数々の迷惑は、こうしてアスカの頭から、奇麗サッパリと忘れ去られた。

「じゃあ早速、オヤツにしようか。」

「だ、ダメよっ!アタシ・・・。体重が・・・。」

嬉しさと不安がゴチャ混ぜになったような表情で、破壊した体重計を指差す。

「大丈夫だよ。そろそろ体重が気になってくる頃だと思って、この1週間、無理の無いダイエット・メニューを作ってたんだ。これなら、お菓子を食べながらでも、十分にダイエットが出来るし。アスカも無理をしないで済むかなって・・・。」

「ア、アタシの為に?」

「う、うん。僕には、これくらいしか出来る事が無いから・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・?アスカ?」

急に押し黙ってしまったアスカを、シンジが心配そうな表情で覗き込む。と・・・。

「しんじぃ〜。」

アスカは立ち上がるやシンジに飛びついて、その首にカジリついた。

「わっ!ア、アスカぁ!」

「しんじぃ〜。やっぱりアタシ、どんなオヤツよりも、シンジの方が、ず〜っとイイよぉ〜。」

その時のアスカの表情は、どんなオヤツを食べているよりも幸せそうだった。



本日の被害状況・・・

EVA弐号機パイロット、惣流・アスカ・ラングレー:大満足♪






「シンジ〜。オヤツが食べたいよ〜。」

「しょうがないなぁ。チョットだけだよ。」

シンジは押し入れの奥に仕舞っている「アスカ専用」と張り紙が張ってある大きな袋を取り出し、中からオヤツを取り出した。

以前のように、

「がるるる〜。うお〜。」

などと言って飛び掛かったりはしない。

なぜって?

「あはは。それって面白いね。」

「でしょでしょ?でね、その後・・・。」

袋をカラッポにしたら、シンジと楽しく会話できないから。

そんな訳で、最近のアスカは、減っていないオヤツ袋を見るのが、1番の楽しみだったりする。



(おしまい)



あとがき

先ず始めに、読んで頂いて、本当に有り難うございました。
「目指せ、ラブコメ!」の第2弾と言うワケで、オヤツ大好きアスカさんを書いてみましたが、いかがだったでしょうか。全然、ラブコメになっていないような気も、しないではありませんが・・・。
幸せそうにオヤツをモグモグ食べているアスカを思い浮かべて、なんか良いなと思ったのが切っ掛けで書き始めました。
オヤツ少女と言うよりも、単なる食欲魔人。いっそのこと、『食欲魔人アスカ』とか、『ドカ食い少女アスカ』とかにすれば、題名と内容が一致して分かりやすかったかもしれませんが、やはりカワイさに欠けるので、この題名にしました。
では、そろそろ失礼します。
最後にもう1度、読んで頂いて、本当に有り難うございました。






おまけ


おなか少女アスカ



ぽっこ〜ん

ぷよよ〜ん

今日もアスカちゃんのお腹は絶好調に鳴っています。

これは例え話でもなんでも無く、ホントにお腹が音を出して鳴っているのです。

連日連夜の暴飲暴食がタタったのか、それとも、これも彼女の天才的才能のひとつだったのか。

兎にも角にも、アスカちゃんは「食べ物によって、お腹から違う音を出す」と言う奇怪な能力を身に付けてしまったのです。

「ほーら、シンジ。次はロールケーキよ〜。」

ぱくっ!

うみょみょ〜ん

「わー。アスカって凄いや。」

感動の余り、シンジくんはパチパチと手を叩いています。

「ところで、アスカ。最近、ボクの作ったゴハンを食べてくれないね。どうして?」

「う・・・。」

あれからシンジの作ったメニューを守って、体重も元通り。

なのに最近、アスカちゃんはシンジくんの料理を食べようとしません。

「ボクの料理、嫌いになっちゃたの?」

瞳をウルウルさせるシンジくんに、タジタジとなってしまうアスカちゃん。

「あ、あのね。ホントは、とーっても食べたいんだけど・・・、その・・・。」

「・・・?」

「わ、笑っちゃダメよっ!」

「う、うん。笑わないよ。」

「じゃあ、何でもいいから料理を作って来て。」

数分後、アスカちゃんの前には、見事な盛り付けのフランス料理のフルコースが置かれていました。

しばらくの間、食べようか食べまいかと迷っていたアスカちゃんでしたが、シンジくんの悲しげな表情を見て、思い切って料理を口に運びました。

ぱくっ!

しんじ〜、だあああい好きよおおお〜

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

紛れも無く、その声はアスカちゃんのお腹の中から聞こえてきます。

「な、なんだか良く分かんないんだけど、シンジの作った物を食べると、お腹が、こーんな風に鳴る様になっちゃたのよ〜。」

「・・・実はボクも、アスカにナイショにしてた事があるんだ。悪いけど、卵焼きを作ってくれないかな?」

シンジくんに言われて、アスカちゃんは手料理で唯一のレパートリーである卵焼きを作ります。

「はい。出来たわよ。」

差し出された卵焼きは、焼け焦げた上に、形はイビツでしたが、シンジくんは嬉しそうに口に運びます。

愛は盲目・・・。いえいえ。愛の力は偉大です。

パクっ!

あすかぁ〜、ボクもアスカのことが、だあああい好きだよおおお〜

今度はシンジくんのお腹から声が聞こえて来るではありませんか。

しばらくの間、2人は真っ赤になりながら見詰め合っていましたが、どちらからとも無く手を差し出し、

「しんじ〜!」

「あすか〜!」

しっかりと抱きしめあいました。



意地っ張りで、素直になれない女の子。

内気で、自分の気持ちを言えない男の子。

でも、お腹のおかげで、2人は思いを伝える事が出来たのでした。


アスカ:ぬわによっ! これーーーーーーーーーーーっ!!!(ーー#

マナ:なにって、アスカの凶暴性がよくわかる名作よっ!

アスカ:断じて、これがアタシなんて認めないわっ!(ーー#

マナ:しかも、太っちゃってるし。プククク。

アスカ:どーゆーことよっ! アタシは太ったりしないわよっ!(ーー#

マナ:ヘルスメーターに八つ当たりするなんて、アスカよねぇ。(^^;

アスカ:ざけんじゃないわよーーーーーーーーーーーっ!(怒)

マナ:さぁ、みなさん。アスカの本性を暴露してくれた、さかぐち周太郎さんにお礼のメール送りましょうっ!(^^/

アスカ:爆弾送ってやるぅぅっ!(ーー#

マナ:ちょ、ちょっと。それは・・・いくらなんでも。

アスカ:N2よっ!(ニヤリ)

マナ:大きすぎるってば。封筒に入らないわよ。

アスカ:なら、空爆するまでよっ! うりゃーーーーっ!

マナ:待ってっ! いくらなんでも・・・。(ーー;

アスカ:ドガガガガガガガガガガガガガガ!!(▼▼#

マナ:行っちゃった・・・さかぐち周太郎さん。ご無事で・・・。(-人-)
作者"さかぐち周太郎"様へのメール/小説の感想はこちら。
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