使徒との戦いも終わり、時は2016年7月。街の復興も進んでおり、ここ第3東京市においても以前のような生活が行われ始めていた。

この葛城家においてもそれは言えた。ミサトの住むこのマンションの一室には以前と同じようにアスカとシンジも同居していた。
ただ一つ異なる点があると言えば2人の関係である。

2人は戦いで精神的に深く傷ついた。その傷は決して治すことが出来ないほどのものだった。そんな時に2人はお互いのことに気が付き、癒しあうことで自分の傷も癒していった。 そして最後の戦いの後、シンジはアスカに気持ちを伝え現在に至っている。

2人の保護者であるミサトに言わせれば「何か間違いでも起こったら司令になんて言われるか・・・・」ということであるが幸か不幸か2人はまだそこまでの関係には至っていない。

そんなある日の出来事。


 

 

星の出る夜に

written by sakushi

 

 

 

 


「あ〜も〜つまんないじゃないの!!」

叫んでいるのはもちろんアスカ。しかしその相手は今は誰もいない。

今日はシンジは学校の週番のためアスカは先に家に帰ってきたのだった。

 

ガチャリ

ちょうどそのときドアノブをまわす音がした

「ただいま〜」

「おそ〜い!!」

「ごめん。ちょっと遅くなっちゃって」

しかし、まだアスカが家に帰ってから10分ほどしか経っていない。シンジが急いで帰ってきたのは明らかだ。
アスカはそのことを理解はしているが、まだどうしても素直になりきれずにいる。

「言い訳しないでよね。・・・・・ってそれ何?」

見るとシンジは後に緑色のものを担いでいる。

「ああ、この笹の事?今日は七夕だろ。トウジにもらったんだよ」

「七夕?・・・何それ」

「そっか、アスカは七夕知らないんだね。
七夕って言うのは中国の伝説が由来になってる行事でね、
短冊っていう紙に願いを書いて笹に飾ると願い事がかなうんだよ」

「へ〜。日本にも面白い行事があるのね」

「ね、アスカも願い事書こうよ」

「仕方ないわね、付き合ってあげますか」

週番の仕事を終え、かつ笹を持ってアスカが帰ってから10分で家に到着する。原理的にそんなことが出来るのだろうか?(笑)

何はともあれ2人は七夕の短冊を書き始めたのだった。

 

 

 

書き書き書き・・・・

「よ〜し、で〜きたっと」

「アスカは何を書いたの?」

「ほら、読んでごらんなさい」

「なになに・・・・えっ!『今日の晩御飯がハンバーグでありますように』ってなんだよこれ」

「願い事がかなうんでしょ。今日の晩御飯は当然ハンバーグよね、シンジ」

「今日はアスカの大好きなから揚げのつもりだったんだけど・・・それじゃダメ?」

「うっれしい!今日のご飯はハンバーグだけじゃなくてから揚げも食べれるのね」

両方とも作らせるつもりですか、アスカ様・・・・

「え゛っ・・・両方って・・・冗談だろ?」

「シンジはアタシのお願い聞いてくれるわよね?」

「そ・・・そんな無茶な・・・」

聞いてくれるわよね?

こ・・・怖い。シンジ君にはとてもじゃないけど逆らえるわけがありません。

「分かったよ・・・だけど挽き肉がなかったな。買いに行かなくちゃ・・・・そうだ!」

書き書き書き・・・・・

「何書いてんの?え〜っと『アスカが買い物についてきてくれますように』。なによそれ」

「いいじゃないか。アスカだってわがまま言ってるんだし」

「いいもんね〜だ。それなら・・・」

書き書き書き・・・・

『シンジがスーパーで欲しいものみんな買ってくれますように』だって?」

「そうよ。まさか逆らわないわよね」

シンジはアスカがついてきてくれることが嬉しくてそんなことはどうでもいいようです。

こうしてみるとシンジの性格も少し変わったのかもしれない。

「じゃあ行こうかアスカ」

「わ〜い、シンジとデートだ」

嬉しそうにシンジに抱きつくアスカ。最近の2人は家の中ではこんな調子。
もっとも学校では結構抑えている(本人談)のだが。

「さ、早く行きましょ」

「うん・・・・(真っ赤)

 

 

 

「つ・・・疲れた・・・・」

「お疲れ様」

「こんなに疲れたのはアスカが『シンジが荷物をぜ〜んぶもってくれますように』ってお願いするからじゃないか。それにアイスクリームをこんなに買い込んで。こんなに食べたらおなか壊すよ。」

「男なんだから細かいことは気にしないの。さ、ご飯作って」

「えっ!もう作るの?今帰ったばっかりなのに。ちょっと休ませてよ」

「だめ・・・なの?(うるうる)」

目を潤ませながらシンジを見るアスカ。シンジ・・・あっけなく陥落。どうせ断っても短冊に願いを書かれるのがオチだろうけど。

「分かった。作ればいいんだろ、作れば」

「だからシンジって大好き」

またしても抱きつくアスカ。もう完全にシンジを操る術を心得ているようだ。シンジ君、君は将来絶対尻にしかれるよ・・・

 

 

 

「アスカ〜。ご飯できたよ」

「おいしそう・・・早く食べましょ」

「そうだね。冷めないうちに食べちゃおう。今日はミサトさん遅くなるって言ってたし」

パクパク・・・ムシャムシャ・・・・

「おいしい?アスカ」

「とっても

「アスカが喜んでくれたなら嬉しいよ」

シンジの作る料理に素直においしいとアスカが言ったり、謝ったりするようになったのは2人が付き合いだしてからである。
まだ完全に素直になったとは言えないが、そんなアスカを見てシンジもほっとする。

「でもなあ・・・」

「ど・・・どうしたの?」

さっきからずっとアスカのお願いに振り回されてるシンジはビクビクしながら質問した。

「シンジが食べさせてくれたらもっとおいしいのに」

この時シンジは「やっぱり」と思ったとか(後日談)。

「いや?」

「嫌じゃないけど・・・」

「じゃ、食べさせて

「それじゃあ・・・はい、あ〜ん」

「あ〜ん」

「お・・・おいしい?」

「うん。それじゃあ今度はアタシが食べさせてあげる。はい、あ〜ん」

「あ〜ん」

「おいしい?」

「アスカが食べさせてくれるからとってもおいしいよ」

「も〜そんな恥ずかしいこと言わないでよね・・・そうね、お仕置きが必要だわ」

どう考えてもお仕置きって言うのは口実なんですけど。作者が自分の思い通りに話を進めたいからって・・・

書き書き書き・・・・

「ねえシンジ、これな〜んだ」

「またお願い?今度は何?・・・ってえーーーっ

「だめとは言わないわよね」

「で・・・でも『シンジが好きと言ってくれますように』って・・・」

「もしかしてあたしのこと嫌いになっちゃった?」

「そんなことあるわけないじゃないか」

当たり前です(キッパリ)。嫌いな人と食べさせあいをする奴がどこにいる(怒)

「じゃあお願い」

「どうしても?」

「どうしても」

アスカにじっと見つめられるとそれだけで顔が赤くなるシンジ。だけど彼は決してアスカには逆らえない・・・

「分かったよ。す・・・好きだよ・・・アスカ

「もっと大きな声で」

「好きだよ」

「まだ小さい」

「好きです」

「もう・・・・何大声だしてんのよ(真っ赤)

自分で言わせたのは確かだがここまで大きな声で言われると自分の方が真っ赤になるアスカ。

「仕方ないから今回はこれで勘弁してあげるわ。それじゃあアタシはお風呂に入ってくるから覗かないでよね」

「い・・・今更何を言ってんだよ。もう!」

シンジ君・・・・アスカの挑発にもいいかげんに慣れたらどうかと思うんですが。

 

 

 

さてアスカがお風呂から上がってきたようだ。

いつものことではあるが、バスタオルを巻いただけの姿である。

「ねえシンジ〜」

「どうしたのアスカ・・・・って何なんだよその格好。服ぐらい着てよ」

「いいじゃん別に。アタシとシンジしかいないんだしさ」

「僕だって男なんだけど・・・」

「それじゃあもしかしてアタシ、シンジに襲われちゃうの?」

「そんなわけないだろ。からかわないでよね」

「つまんないの〜。い〜もんね〜だ」

書き書き書き・・・・

「またお願いかいちゃったもんね〜」

「ええっ、またなの〜?今度は何?」

「今度のお願いも聞いてくれる?」

「なんて書いてあるのさ。えっと、『シンジがキスしてくれますように』・・・・冗談でしょ?」

「冗談なわけないでしょ。さ、キスしてよ」

「で・・・でもこういうのはムードが・・・・」

「それならどういうムードならいいの?」

「どういうって・・・そんなこと急に聞かないでよ」

「それともシンジはあたしのこと嫌いになっちゃった?」

「そんなわけないって言ってるだろ」

「じゃあお願い」

「ちょっとまってよアスカ」

「嫌」

「困ったなあ」

「やっぱりキスしてくれないんだ。シンジはアタシの事嫌いになっちゃったんだ。ふえ〜ん」

「そんな泣かないでよ。しょうがないな・・・・」

チュッ

アスカのほっぺたにキスするシンジ

「これでいいだろアスカ」

「ダメ」

「ど・・・どうして?」

「ほっぺたにしただけでいいわけないでしょ。ちゃんとここにしてよ」

自分の唇を指差すアスカ

「もうっ。分かったよ。すればいいんだろすれば」

半分やけになったシンジはアスカの唇に自分のそれを重ねた。するとその瞬間アスカがシンジを抱きしめた。

「あ・・・あすかぁ?」

慌てて離れようとするシンジ。でも離そうとはしないアスカ。

「お願い・・・もう少しだけ・・・このまま・・・」

「アスカ・・・」

アスカの髪からかすかにシャンプーの香りがただよってきた。シンジは心地よい感触の中で融けそうになった。

 

しばらくしてどちらからともなく体を離した2人。どちらの顔も真っ赤になっている。

「ねえシンジ・・・・」

何かを訴えるような眼でシンジをアスカ。シンジもそれが何を意味するか分かったようだ。

「ダメだよ」

「ど・・・どうして?」

「僕達まだ中学生じゃないか」

「でもアタシは」

「アスカがそういう風に僕を見てくれてることは嬉しいし、僕もアスカのことが大好きだよ」

「なら・・・どうして!」

「アスカのことが大好きだから・・・大事だから・・・ごめん・・・」

「うん・・・シンジならそういってくれると思ってた」

「ごめんね、アスカ」

「いいわよ別に。でもちょっとショックだったな」

「ごめん」

「そんなにすぐ謝らないの。あんたの悪い癖」

「ごめん」

「もうっ!」

「ふふっ」「ははっ」

楽しそうに笑いあう2人。そしてその笑いはしばらくやむことがなかった。

その夜は雲ひとつなく、天の川の星だけがその2人を見ていた・・・・

 

 

 

その夜遅く

残業で疲れたミサトが帰ってきた。

「たっだいま〜。シンちゃんもアスカももう寝ちゃったかな〜」

当たり前だ。時刻は現在午前3時。ネット中毒者でもそろそろ寝ようかという時間だ。まして健全な中学生が起きてる時間ではない(作者注:2人は健全です。多分。)

「つっまんないの。最近あの2人をからかっても張り合いないしな〜。やっぱりこんな時は飲まなきゃね」

ミサトが飲むのはいつものことではないかというのは、もうすでにつっこむことさえも許されない(笑)

「グビッ、グビッ、グビッ・・・・プハァ。やっぱりえびちゅは最高ね」

今更の事ながら彼女の飲みっぷりには敬意を表する。

ミサトは1本目の缶を飲み干すと続いて2本目の缶を開けた。

「そっれにしても暑いわね。もう7月だもんね」

そう言うとミサトはえびちゅを持ったままベランダに出ることにした。

「う〜ん、夜風はいいわね。どんどんビールが進むわぁ・・・・ん?なにあれ?」

ミサトはシンジの持って帰ってきた笹に気がついたようだ。

「そっか。今日は七夕ね。シンジ君も気が利くじゃない。七夕かぁ・・・セカンドインパクト以来忘れてたわ。
せっかくだしあの2人がどんな願い事したのか覗いちゃおっと」

それって勝手に見てもいいんでしょうか?(汗)

「どれどれ・・・・あれ?変ねぇ」

ミサトは辺りを見回した。短冊が一枚しか無いのだ。それに対してシンジ・アスカの両方が願い事を書くのだから最低2枚は無いとおかしい。風でどこかに飛んでしまったのだろうか。

「弱ったわねぇ・・・ん?」

ミサトは唯一笹についている短冊を見て「はは〜ん」とにやつくと呟いた。

「2人ともおあついことで・・・独身の私に見せつけてくれるわね・・・・はぁ」

 

ちなみにその短冊に書かれていたのは

『ずうっと一緒にいられますように アスカ・シンジ』

という一行のくだりだったとさ。

 

 

 

おまけ

何もなかったにもかかわらず、その翌日から今までにも増してラブラブになり、手を繋いで登校した2人がいたとかいなかったとか。

「不潔よぉぉぉぉぉ」(2人の某友人H・Hの証言)
「いや〜んなかんじ」(2人の某友人K・Aの証言)

 

 

 

もひとつおまけ

あんまりにも2人がアツアツだったので、いたたまれなくなったミサトさんはなぜか生きていた加持さんを無理矢理口説いて部屋から出て行ってしまいましたとさ。

「これで邪魔者はいなくなったわね」

「ミサトさんにそんな言い方はひどいよ」

「シンジはアタシよりミサトが大事なの?」

「そんな訳ないじゃないか。僕が大事なのはアスカだけだよ」

「う〜ん、シンジだ〜いすき

「あすかぁ

 

 

 

fin.

 

 

 


 はじめまして。sakushiと言う者です。
 この度はこんな駄文を読んでくださった皆様、そして掲載してくださったターム様に感謝とお礼、ついでにお悔やみ申し上げます(笑)

 この作品は僕の処女作になります。
 皆様の作品に触れるうちに突然電波がやってきましてこの作品の制作に至ったわけです。
 作品を書くと途中から勝手にキャラが動き出す・・・というのはよく言われることですが、今回僕の中でも勝手に2人が動いてくれました。
 そのため途中のキスシーンの後で”作者の意思とは無関係に”18禁になりかけました。何とかシンジ君に抑えてもらったのですが、下手をすると処女作が18禁というとんでもない汚名を背負うことになるところでした(汗)

 今回の作品はとりあえず初めてなので完成まで時間がかかることが予想されました。そこで、6月6日のシンジ君の誕生日に間に合わなければ次の行事は・・・と考えて七夕に至りました。
 それから、基本はLASで攻めようというのは決まっていたので考えてこのようなネタになりました。

 ちなみに僕はエヴァのアニメの方は一回も見たこと無いんですけど、まあその辺の具体的な内容はうやむやにしてますんで勘弁してください(汗)
 あと読んでて眼がチカチカするかもしれないですが、夜って感じを出したかったからです。どうかお許しを。



マナ:sakushiさん。投稿ありがとーっ!\(^O^)/・・・・って、なのLASなのは?(ーー;

アスカ:いやーーーーん。とってもラブラブじゃないのよぉっ!(*^〜^*)

マナ:なにが、「ちゃんとここにしてよ」よぉぉっ!(ーー#

アスカ:とっても素敵な七夕記念よねぇ。

マナ:浮かれすぎ。(ーー#

アスカ:あっらぁ? やきもちぃ?(^〜^)

マナ:だいたいアスカは、ドイツから来たんだから、七夕なんか関係ないでしょっ!

アスカ:あまいっ! あまいわっ!

マナ:なんでぇ? ドイツにも七夕があるっていうの?

アスカ:誰がそんなこと言ったのよ?

マナ:じゃぁ、なにがあまいのよ?

アスカ:決まってるでしょっ! アタシとシンジは、とってもあまいのよぉぉっ!!!!(*^〜^*)

マナ:・・・・・・。それがいいたかったのね。(ーー)

アスカ:あーん。もっとあまーーーーい話待ってるわぁぁっ!

マナ:この浮かれ娘、なんとかして。(;.;)
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