2019年 第3新東京市

アタシはまた帰ってきた・・・・

目的?そんなのは一つだけ

あいつに会うため

 

 

 

 

 

 

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Written by sakushi

 

 

 

 

 

 

「惣流・アスカ・ラングレー様ですね」

空港に着くとすぐに声をかけられた。サングラスをかけている大柄な男。ちょっと緊張しているのが見て取れる。

「そうだけど・・・アンタは?」

男は自分はNervの人間だと告げ、IDカードを見せた。

まあセカンドチルドレンのアタシが来たんだから迎えが来てもおかしくはないわね。でも本音を言えばあいつに来て欲しかったな。

「これからどこに行くの?」

「とりあえず本部においでください。車を用意しております」

「ふーん」

 

 

久々に来た第3東京市。あの戦いが終わるとすぐにアタシはドイツに送還された。

強制的な送還ではなかった。アタシがいやだと言えばわがままも通じただろう。

だけどあたしはそれに従った。なぜって?

辛かったから。日本にいることが。

そして辛かったから。あいつと顔を合わせることが。

ミンナ、ミンナ、ダイッキライ・・・・

アイツハ、トクニ、ダイッキライ・・・・

 

車から見える外の景色はどことなく懐かしい思いがしたけどあまり記憶にない。

アタシの記憶が薄れたのか、それとも街が変わったのか。

多分両方だろう。月日は人も街も変えていく。

 

アタシはドイツでは英雄として扱われた。

だから日本での事をいろいろ聞かれた。

でもアタシは何も話さなかった。

Nervの機密だから。それもある。

でも何より思い出したくなかった。

どんなこまかいことでもアタシは辛くなる。

そんな中でパパとママだけは何も聞かなかった。

そんなことが嬉しかった。

ワタシハ、ドウシテ、カナシイノ?

 

でも3ヶ月ぐらいするとだんだんまわりもアタシに注目しなくなった。

昔のように一番を取ることには興味がなかったからせいせいした。

アタシは大学も出てるし、知らないこともほとんど無いつもりだけどドイツのことは良く知らないことに気付いた。

家とNerv以外の場所なんて行ったことなんか無かった。観光地なんてもってのほか。

そんな余裕は無かったから。

パパにどこかに連れて行ってと言ったらパパは驚いてた。

それでも次の日には休みを取って遊園地に連れて行ってくれた。

中学生にもなって父親と遊園地っていうのも恥ずかしかったんだけど、パパは「一度アスカとこういうところに来たかった」って。

アタシはその時ドイツに帰ってはじめて笑った。

ううん。違う。

パパの前ではじめて笑った。

ワタシハ、ナニヲ、ノゾムノ?

 

 

「ねえ、まだ着かないの?」

あたしは男に聞いた。

「後5分ぐらいです。もうすこしです」

男は答えた。

 

それからアタシはパパともママともうまく会話できるようになった。

2人ともアタシのことを考えてくれる。アタシを見てくれる。それだけが嬉しかった。

そんな時、アタシの元に1通のメールが届いた。

あいつから・・・・だ。

何が書いてあるかと思って見たけど何にも書いてなかった。本当に何も書いてなかった。

書いてあったことは、あいつが元気だってこと。

そしてアタシも元気かって聞いているだけ。

気が利かないと思ったけど、あいつのことだから仕方無い。

それでもあいつのことだから何度も何度も書き直したんだろう。

ドウシテ、ワタシナンカニ、カマウノ?

 

アタシはすぐに返事を出した。

自分は元気だとまず書いて、その後に自分のまわりの事を書いた。

そして、ヒカリは元気かと聞いた。

やっぱり学校のことは気になる。初めて同年代の友達と通った学校だから。

 

次の日、あいつからまたメールが届いた。

みんなは元気にしているらしい。

あいつはまだミサトと同居しているらしくて、家事がやっぱり大変らしい。

それでもミサトは加持さんとうまくやってるらしく、家にいることは稀らしい。

なんだか、文字を見ているだけで想像できて楽しくなってきた。

少し日本に帰りたくなった。

アイツハ、ナニヲ、カンガエテルノ?

 

 

「着きました」

男が言った。

「司令がお待ちです。ご案内します」

「結構よ。ここの勝手は知ってるから」

男の申し入れを断るとアタシは司令室の方に歩き出した。

 

 

あいつがはじめにメールをくれてから半年ぐらいの間、アタシは毎日メールを書いた。

あいつも毎日メールを書いてくれた。

そんな時、突然あいつがメールを送ってこなくなった。

一日目は大して気にしてなかったけど二日、三日と経つうちにだんだん心配になってきた。

アタシは心配を紛らわすためにたくさんのメールを送った。

それでもあいつはメールを送ってこなかった。

六日目。

我慢できなくなったアタシは国際電話でミサトの家に電話した。

留守電になっていた。

七日目。あいつがメールを出さなくなってから一週間後。

アタシはあいつの携帯に電話した。

それでも留守電になっていた。

タニンノ、コトハ、ワカラナイ

 

司令室に行くまでの通路は昔とまったく同じだった。

アタシは楽しみでもあったけど、少し怖くなった。

ついでに"あの"髭司令に会うことを考えたら、少し憂鬱になった。

 

八日目。

アタシはもう何も考えられなかった。

シンジに何かがあったに違いないと思った。

絶対に突き止めないといけない。

今度は直接Nerv本部に電話した。

すると・・・・・

「もしもし。碇シンジをお願いします」

「もしもし・・・アスカ?」

「えっ、シンジ?」

話を聞くとずっとNervで泊り込みのトレーニングだったらしい。

確かに日本ではもう夏休み。

家にいなくても不思議じゃない。

だからっていってアタシに何も言わずにメールの返信をしなかったなんて許せない。

「バカ・・・」

「ごめん・・・」

「心配したんだからね」

「うん・・・ごめん」

「ちゃんと毎日メール送んなさいよ」

「分かった」

「この借りは高くつくからね」

明るい声で言ったものの、アタシはうれしくてうれしくて涙がこぼれそうだった。

あいつは気がついたんだろうか。

デモコノキモチ、ナンダロウ

 

アタシは司令室の前に立っている。

息を大きく吸い込んで

「セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーです。失礼します」

「問題ない」

やっぱりこの髭司令の口癖は健在なのね。

アタシは何年か前にはしょっちゅう入っていた部屋に入った。

 

それからはシンジはかならず毎日メールを出してくれた。

そういえば、一日だけメールを出さなかった日があった。

去年のアタシの誕生日だ。

12月の3日。あいつは突然こんなメールを送ってきた。

>ごめんアスカ・・・・
>明日用事で家に帰れないんだ。
>だから明日はメール送れない。
>ごめんね。

よりにもよって何でこんな日に。

アタシの怒りのボルテージはどんどん上がっていったけど肝心のシンジがメールを見ないんじゃどうしようもない。

このバカシンジ!

 

12月4日。

アタシは不機嫌なまま午前中過ごした。

昼になって、パパとママが買い物に出かけた。

アタシも誘われたけどなんだか気持ちが乗らない。

アタシへの誕生日プレゼントを買いに行くっていうのが分かったから、「楽しみにしてる」と伝えて2人を送り出した。

せっかくの誕生日なのに。

全部シンジが悪いんだ・・・・

あいつはいつまでたってもバカバカバカ・・・

アタシは枕を壁に投げつけた。

バカ・・・・

「アスカお誕生日おめでとう」

どこからかそんな声が聞こえた気がした。

あいつの声で。

そんなはずは無いのに。

「アスカ誕生日おめでとう」

また聞こえた。

どうしちゃったんだろアタシ。何であいつの声が聞こえちゃうんだろう

アタシは誰もいないはずの廊下を見た。

するとそこにはやっぱり誰も・・・・・

いないはずなのに。

いないはずなのにあいつが笑っているのが見える。

どうして?

あたしは自分がおかしくなったんだと思った。

でも・・・・でもそれは違った。

だって次の瞬間あいつがアタシを抱きしめてくれたから。

アタシの耳がおかしいとしても、アタシの目がおかしいとしても・・・・この感覚だけは間違いない

アタシの目からなんだか熱いものが流れてきたのがわかった。

 

大体、バカシンジの癖にアタシに黙ってドイツに来るなんて許せないのよ。

そう言ったらシンジの奴、また「ごめん」だって。

大体誠意が感じられないのよね。あの謝罪には。

でもいいわ。来てくれたことには誠意を感じるから。

精一杯の、誠意を。

ナゼカ、ウレシイ・・・・・

 

 

「惣流・アスカ・ラングレー、ただいま帰還しました」

あの凶悪な面の司令の前でアタシはまずそう言った。

大体、顔が怖すぎるのよ。よくあの顔からシンジが生まれたと思うわ。

シンジがお母さん似で良かった。

「とりあえず、葛城作戦部長に報告してきたまえ」

ミサトか・・・・しばらく会ってないわね。

もっとも日本にいる人で会ったのはシンジぐらいなんだけどね。

シンジもミサトと一緒にいるのかな

 

ふーん。ここが作戦部か。

ずいぶん規模が縮小されたわね。とは言っても仕方ないか。

「ハロー、ミサト」

「アスカ久しぶりね」

ミサトはビールを飲みながらそう言った。まだ職務中にビールを飲むのはやめないらしい。

「作戦部もずいぶん小さくなったのね」

「そうね、Nervはもう必要ないのかもしれないわね」

そこでミサトは悪戯っぽく笑って言った。

「ところでシンちゃんとは話さなくてもいいの?」

とミサトが振り返った方を見ると・・・・

あいつが・・・・碇シンジが・・・・そこにいた。

「久しぶりね、シンジ」

「・・・うん」

「あんた・・・この間あってから半年ぐらいしか経ってないのにまた背が伸びたんじゃない?」

「そうかな?」

「そうよ。この間はまだアタシの目の所にあんたの口があったのに、今じゃ首じゃない。しゃべる時も見上げないといけないわね」

「ところでアスカ・・・・いつ帰るつもりなの?」

「着いたばっかりなのに何いってんのよ。それとも何?そんなにあたしに早く帰って欲しいわけ?」

「ち・・・違うよ。いつまで一緒にいられるのかなと思って」

「あんたはいつまでいて欲しいの?」

「それはその・・・できればずっと・・・かな」

「じゃあそれでいいわよ」

「何だって?」

「ずっと日本にいるつもりだって言ったのよ」

「ドイツには帰らないの?」

「そりゃあたまには帰るかもしれないけどね」

「ずっと?」

「そう、ずっと」

「じゃあまた3人で一緒に暮らせるの?」

「残念だけどそれは出来ないわね」

そう・・・・それは出来ない。だってアタシは・・・・

「あんた、ドイツでアタシに何言ったか覚えてる?」

 

ドイツでのアタシの誕生日。

あいつはアタシにバラの花束をくれた。

そして・・・・何よりも嬉しい言葉をくれた。

何を言ったかって?それは内緒。アタシだけの宝物だから。

ただ一言言うのなら・・・・アイノコクハクね。

 

「覚えてるけど・・・・」

間の抜けた顔でシンジは答えた。

「そしてあんたは今、アタシにずっといて欲しいって言ったわよね?」

「それと3人で暮らせないのとどういう関係があるのさ」

「あんたばかぁ?ミサトと一緒に暮らせるわけ無いでしょうが」

「だからなんでだよ」

「アタシ達が結婚するからに決まってるじゃない」

「「ええっ?」」

シンジだけじゃなくて話を聞いてたミサトも驚いて叫んだ。

「あんたの今のセリフはどう聞いたってプロポーズでしょうが!」

ちょっと強引だったかな。

でもアタシには考えを変える気は毛頭ない。

「ちょ・・・ちょっと待ってよ、アスカ」

「何?」

「そんな急に結婚って言われても・・・・」

「アタシ・・・・邪魔?」

「そ・・・そんなことはないけど」

「アタシのこと嫌い?」

「そんなことはないよ」

「じゃあいいじゃない」

「うん・・・いい・・・のかな?」

まあ、シンジの扱いなんて簡単よね。

さてと、この鈍感シンジをどうやって教育しようかしら。

シンジの調教は今始まった。

 

 

 

ワタシハ、イマ、シアワセデス

 

 

 

 

 

FIN.



何かが違う・・・・当初の予定と何かが違うんですよ・・・・最後はあっさり終わらせるつもりだったのに・・・やっぱりアスカ一人称は難しいです。
ちなみに、2019年になってるのは結婚できる歳になってもらうため。それだけです。


マナ:ま、また、ラブラブじゃないのっ!!!(ーー#

アスカ:いいわよーっ! どんどん書いてぇっ!(*^^*)

マナ:おもいっきり、押しかけ女房よっ! こんなのーっ!

アスカ:押しかけだろうがなんだろうが、アタシとシンジがラブラブならいいのっ!(*^^*)

マナ:アスカはいっつも強引なのよっ!

アスカ:強引だろうがなんだろうが、アタシとシンジがラブラブならいいのっ!(*^^*)

マナ:そもそも、シンジが嫌でドイツに帰ったんじゃなかったのーっ!?

アスカ:んもぅ。ヤボなこと聞かないの。(*^^*)

マナ:ムムム。だんだん、腹が立ってきたわ。(ーー#

アスカ:いよいよアタシとシンジは結婚するのねぇ。

マナ:邪魔してやるっ。(ーー#

アスカ:残念でしたぁ。シンジはもう完璧に調教したから、アタシ以外の言うことはきかないのぉ。

マナ:ちょ、調教・・・シ、シンジぃぃ。ほんとにそれでいいのぉ?(TOT)
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