西暦2015年、海の底へ沈んでしまった、大都市のなれの果てを、巨大な生物らしき物体が、
悠然と泳いでいる。
 湾岸には、これを迎え撃つべく、UN(国連軍)の戦車隊が待機している。
「正体不明の物体、海面の姿を現しました」
「物体を映像で確認!!」
「主モニター回します」
 作戦本部らしき所、オペレーター達が慌しく状況を報告する。
「15年ぶりだな」
「ああ…間違いない。使徒だ!!」
 後ろに立っていた男の問いに、サングラスをかけた男が、手を前に組んだまま答える。
「来たるべき時がついに来たのだ。人類にとって、避けることのできない試練の時が…」

リアルバウトエヴァンゲリオン 第壱話「使徒、襲来」
『本日12時30分、東海地方を中心とした関東地方全域に、特別非常事態宣言が発令されました。  住民の方々は、速やかに指定のシェルターへ避難してください。繰り返します…』  そんなアナウンスが流れている。  駅から1人の少年が降りてきた。サングラスをかけているためはっきりとは分からないが中性的な顔つき、 身長は中学生の平均あたりといったところか。半そでのYシャツに黒いスラックスという服装からして、 学校の制服だろうか。  少年――碇シンジは、近くのあった電話で連絡を試みた。 『ツー、ツー、ツー、……』  ……どうやら、つながらないようだ。  メキメキッ…バキャッ!!! 「ったく!やっぱだめかぁ…」  受話器を握りつぶし、シンジは1人ごちた。 「ここにいてもしょうがない。外に出るか…」  いうや否や、シンジは駅を出て、近くの階段に腰掛けた。  一息ついたところで、シンジは服の胸ポケットから、ここへ来る元凶ともいうべき1枚の紙を取り出した。  メモ用紙かなにかを切り取ったとしか言いようの無いその紙には、お世辞にも綺麗とはいえない字で、    来い ゲンドウ と書かれてあった。 (父さん…これでどうやって来いっていうの?)  シンジは、自分の父親のダメさ加減に、大いに嘆息した。  シンジは、その紙をポケットにしまうと、ボストンバックから、一通の封筒を取り出した。  封筒から手紙を取り出すと、手紙には、シンジが向かう所、自分が迎えに行くこと、待ち合わせ場所などが 書かれていた。 (父さんもこれくらい書いてくれたら、分かるのに。それにしても……)  ため息混じりに、シンジは同封されていた写真を見た。写真には、髪の長い女性――差出人である葛城ミサト が、やたら胸を強調するポーズで写っていた。胸の谷間にはご丁寧に、『ここに注目!!』と書かれてあり、 キスマークまでついていた。 (ミサトさん……僕にどういうリアクションを期待してるの?)  シンジは、差出人の意図がわからず、頭を抱えた。  手紙をしまうとシンジは立ち上がった。視線を感じ顔を上げてみると、青い髪、ひとめでアルビノと分かる 赤い瞳の少女がシンジを見ている。  しばらく見つめあっていた2人だが、鳩が飛んでいくのにシンジが気をとられ視線をはずし、視線を戻した時には 少女の姿は無かった。 「大丈夫、約束は必ず守るよ。綾波…」  消えた少女――綾波レイに向かってシンジは呟いた。  シンジは、レイと交わした約束を思い出していた――――― 「知ってる?アイしあう2人がトーダイってトコにはいるとね、『シアワセ』になれるんだって」 「ふーん」 ………ちょっと待て!!お前らいつそんな約束をした!!っていうか、作品が違うだろ!!!!! ゴホン!!失礼、話を戻そう。 「碇君、本当に行くの?」 「うん、もう決めたんだ」  紅い海の広がる砂浜で、シンジはレイの問いに答えた。 「後悔はしていないのかい?」 「後悔しない為に行くんだよ、カヲル君」  近くにいた少年――渚カヲルに向かって、シンジは微笑みながら答えた。 「そこまで決心が固いのなら、僕達は何も言わない。    シンジ君、君の意志の強さは好意に値するね…好きってことさ」  カヲルの言葉に少し照れるシンジ。そんなカヲルに、殺意すらこもった視線を投げかけるレイ。 「そんな立派なものじゃないよ。ただ僕は奪り還したいんだ……」  照れ隠しのためか、2人に背を向けていたシンジは、振り返り、はっきりと答えた。 「みんなの笑顔をね。そして…2人を“あいつら”から奪り還してみせる!!」 「碇君……約束よ」 「やはり君は好意に値するよ」  レイとカヲルは嬉しそうに微笑んだ。  レイとカヲルが準備を進めている間に、シンジは、自分と一緒に還ってきたが、最早生きることをやめてしまった 少女にむかって、静かに言った。 「それじゃあ、行ってくるね」 「「碇(シンジ)君、準備ができたわよ(よ)」」  シンジは、2人の元へ歩いていった。 「碇君……気をつけて…」 「シンジ君、お別れのキスはしてくれないのかい?」  いきなり寝言をほざくカヲルを、レイは容赦無く蹴たぐり回した。 「そ……それじゃあ、行ってきます」  頭に大きな汗を浮かべつつ、シンジは、過去へ旅立った。 ――――回想終了。  ズゴゴゴゴ……  シンジの頭上を、戦闘機が、非常識な高度で飛んでいく。シンジが顔をあげた次の瞬間…… シュパアアアアァァァァァ……    「じゅ…巡航ミサイル!?」  シンジのすぐ上を、巡航ミサイルが通り過ぎていく。その鉄の凶器の目標は先ほど海面に姿を現した生物―使徒だ。  すべてのミサイルが使徒に直撃する。しかし、使徒は、何事も無いかのように歩きつづける。  戦闘機は、後退しつつ、使徒への攻撃を繰り返していたが、全く効果が無い。  使徒が、戦闘機の一機を光のパイルで貫く。破片が、シンジに向かって飛んできた。 「チィ!!<蛇咬(スネーク・バイト)>!!」  シンジは、毒蛇の宿る右手で破片―自分の身長ほどもある鉄の塊―を弾き飛ばした。しかし、爆風までは防ぎきれ ない。身を低くし、衝撃に備えるシンジ、そのとき――  キキキキキザザ―――!!  激しい制動音とともに、1台の青いスポーツカーが、シンジの盾になった。 「ごめぇん、おまたせ♪」  ドアを開けて顔を出したのは、おバカな写真(笑)を送ってきた張本人、葛城ミサトその人であった。 「しっかりつかまってんのよ!!」  シンジを乗せたミサトは、激しいスキール音とともにその場から非難した。 「ごめんね、遅れちゃって」 「いいえっ僕のほうこそ」  シンジは答えながら、車内から外の様子を見た。  依然繰り返される使徒への攻撃。しかし、全く効果が無い。 「国連軍の湾岸戦車隊も全滅したわ……。軍のミサイルじゃ何発撃ったって、あいつにダメージは与えられない」 「あのう、一体なんなんですか、あれ?」  シンジはあえて知ってる疑問を口にした。 「状況のわりに落ちついてんのね」 「そ、そうですかぁ」 「あれはね、“使徒”よ」  シンジに呆れながらも、律儀に答えるミサト。 「使徒?」 「今は詳しく説明してるヒマがないわ」  おうむ返しに聞いてきたシンジを遮り、車を飛ばすミサト。
 ピリリ、ピリリ、ピリリ……  作戦本部に呼び出し音が響く。カードキーを読み込ませ、ロックを解除した軍人が受話器を取る。 「はい…はい、わかりました。では、そのように」  どうやら上層部から、“切り札”使用の許可が下りたようだ。その表情からは、それを使うことへの罪悪感以上に、 目の前にいる2人に自分達の力を見せつけることができるという意思がうかがえる。
 戦闘機が次々と使徒から離れていく。  その様子を遠くから双眼鏡で見ていたミサトの脳裏に、最悪のシナリオが浮かんだ。 「ちょっとまさか……NN地雷を使うわけ!?…ってシンジ君!?」  ミサトが驚くのも無理は無い。シンジが車から降りていたからだ。 「シンジ君!!危険よ!!戻りなさい!!!」  シンジは、ミサトの声を無視して、胸を膨らませ、深く高い息吹の声を上げた。 「ヒュゥゥゥ―――………」  シンジは、おのれの体内に特別な呼吸法によって得られる霊的エネルギー<龍気>が育っていくのを感じた。  すべての戦闘機が撤退した後、使徒は閃光に包まれた。  カァッ!!  ドォォォォォォォォ……… 「フン!!!!」  シンジは爆発と同時に、おのれの<龍気>を開放、防護壁とした。  車内でショックに備えて伏せていたミサトだったが、いつまでたっても衝撃が来ないので顔を上げて見ると、爆風が ミサト達をさけていた。いや、さけていたというより、何かバリアーのようなもので守られていたというべきか。 「ふ〜〜。ぶっつけ本番だったけど、何とかうまくいったな」  シンジはクルマに戻ると、未だ呆然としているミサトに声をかけた。 「葛城さん、葛城さん!!大丈夫ですか?」 「あ、あぁ、ミサトでいいわよ…ってシンジ君!?今のは一体…」 「後でゆっくり話しますよ。それよりミサトさん、行くところがあるんじゃないんですか」 「え?あ…ああ、そうだったわね。」  ミサトは我に帰ると、目的地へ向かうべく、車を発進させた。 「シンジ君、ちょ〜っち、お願いがあるんだけど」 「何ですか?ミサトさん」  ミサトにいきなり話し掛けられ、シンジは彼女のほうに顔を向けた。 「そのサングラス、はずしてみてくんない?」 「これをですか?それは…ちょっと…」 「“邪眼”とかいう力を制御するためにはずせないって            いうんでしょ。だけどお姉さん、興味あるなぁ」 「……分かりました。別にはずしても、集中さえしなければ滅多に発動しませんから」         そういうとシンジは、サングラスをはずした。その奥には、金色の光を帯びた、冷たさと暖かさ、そして、 強さを併せ持った瞳があった。 「綺麗ね……」 「ありがとうございます(ニッコリ)」  ミサトの素直な感想に、会心の笑みをうかべるシンジ。それを見て、思わず顔を赤らめるミサト。 (な…なんて綺麗な笑顔なの!こりゃ久々の掘り出しもんかもね。……おっといけない!ヨダレが…)  …………あんた、何考えてる!!
「わははははは…」  作戦本部に、間抜けな笑い声が響き渡る。 「見たかね!!これが我々のNN地雷の威力だよ。       これで君の新兵器の出番はもうないというわけだ」  やたらと偉そうに、1人の軍人が威張って言う。横にいた2人も、当然とばかりにうなずく。  別にお前らが偉いわけじゃない。 「電波障害のため、目標確認まで今しばらくお待ちください」 「あの爆発だ。ケリはついてる!!」  男性オペレーターを報告を無視して、もう勝った気でいる軍人A。三流である。  爆心地をモニターしていたレーダーに、突然反応が表れる。  オペレーターが、非情な現実を報告する。 「爆心地に、エネルギー反応!!」 「なんだとっ!!」  その報告に、愕然となる3バカ軍人達。 「映像、回復しました」 「おおっ」  現実に直面し、声を上げることしかできない。モニターには、使徒の姿が映し出されていた。  さしたるダメージはなく、強いて言えば表面が少し融けた程度。自己修復中のためか、動く気配がない。その姿は、 体育座りをしているように見えなくも無い。 「我々に切り札が」 「町をひとつ犠牲にしたんだぞ」 「なんてやつだ」 「化物め!!」  口々に不平を漏らす軍人達。モニターには、そんなことお構いなしに進行する使徒の姿。  そんなとき、上層部からの連絡が入った。 「――はっ、わかっております。    はいっ――、では、失礼います。」  ピッ!  受話器を取った軍人の表情は暗い。まるで、リストラを食らったサラリーマンのようだ。 「…………碇くん。本部から通達だよ」  その言葉を聞いて、椅子から立ち上がるサングラスの男――特務機関ネルフ総司令、碇ゲンドウ。 「今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを拝見させてもらおう」  嫌味の混じった軍人の言葉に何の反応も示さないゲンドウ。 「我々国連軍の所有兵器が目標に対し、無効であったことは認めよう。   だが碇君!!…君なら勝てるのかね」  それが気に入らないのか、今度は少し脅しを含んだ口調で続ける。すなわち、『失敗は許さん』と。 「ご心配なく。そのためのネルフです」  そんな空気などどこ吹く風、サングラスを押し上げ、自信たっぷりに答えるゲンドウ。
 ネルフ本部へ向かうカートレインのなか、ミサトはシンジに、先ほどの現象について聞いてみた。 「ねえシンジ君。さっきのあれ、どうやったの?」 「あれって何のことですか?」  ミサトに渡されたパンフレットを見ながら、シンジは聞き返す。 「さっきのバリアーみたいなものよ。あれ、シンジ君がやったんでしょ?」 「ああ、あれですか。あれは、僕が小さい頃に学んだ<神威の拳>を応用したものですよ。   ぶっつけ本番でやってみたけど、うまくいったみたいですね。」 「<神威の拳>……!?」 「仙術気功闘法っていう呼び方もしますけどね。特別な呼吸法によって体内に<神気>――  僕はこれを<龍気>って呼んでますけど、これを生み、そのパワーを利用した格闘術のことです。」 「へ…へぇ〜。シンジ君、シンジ君はどこでそれを学んだの?」 「話してもいいですけど、長くなりますし、それに…」 「それに?」 「もうすぐ目的地に着くんじゃないですか?」  シンジの指摘どおり、2人を乗せたカートレインは、地下へと続くトンネルをぬけた。  トンネルの向こうは、雪国でも、不思議の町でもなく、球状の地下都市であった。 「すごい!!本物のジオフロントだ」 「そう。これが私たちの秘密基地、ネルフ本部よ。世界再建の要……人類の砦となるところよ」
「UNもご退散か………」 「…………」  UNが退散したネルフ本部。ゲンドウに話し掛ける初老の男――冬月コウゾウ。しかし、ゲンドウは答えない。 「碇指令、どうなさるおつもりです」  金髪に黒眉の女性――赤木リツコが問い掛ける。 「初号機を起動させる」 「しかし…パイロットがいないぞ」  ゲンドウの一言に、首をかしげる冬月。 「問題ない。たった今、予備が届いた」
 ネルフ本部を、ミサトに先導され歩くシンジ。同じところを歩いているようだが、気のせいだろうか? 「ミサトさん」 「な――に?」 「さっきから随分歩いてますけど…、まだ父の所へ着かないんですか?」 「え?」  びくっとなるミサト。 「う…うるさいわね。あなたは黙ってついて来ればいいのっ」  図星をつかれたせいか、ジト目で言うミサト。 (“また”迷ったんだな) (おっかしいわね。確かこっちでいいハズなんだけどナ…)  ……シンジ君、正解。  シンジ達がさらに5分ほど歩いていると…  チン!  シュッ! 「どこへ行くの?2人とも」  通り過ぎたエレベーターのドアが開き、後ろから2人を呼び止める声がした。振り返ると、リツコが立っていた。 「遅かったわね、葛城一尉!」 「あ…リツコ……」  リツコの呼ばれ、バツの悪そうな顔をするミサト。 「あんまり遅いから迎えに来たわ。人手も時間もないんだから…グズグズしてるヒマないのよ」 「ごめ〜〜〜ん。迷っちゃったのョ。まだ不慣れでさ」  謝ってはいるが、反省の色が見えないミサト。  リツコは、シンジを一瞥した。 「その子ね?例のサードチルドレンって」 「あ…初めまして。碇シンジです」 (前は気にしなかったけど、リツコさんって僕のこと、ものを見るような目つきで見てたんだな)  そんな考えなどおくびにも出さず挨拶をするシンジ。 「あたしは技術一課E計画担当博士――赤木リツコ。よろしく」  挨拶を済ませるとリツコは、エレベーターのボタンを押した。 「いらっしゃい、シンジ君。お父さんに会わせる前に、見せたいものがあるの……」 「見せたもの……ですか?」 (きっと初号機だな……)
「指令!!使徒前進!強羅最終防衛線を突破!」 「進攻ベクトル5度修正、なお進行中! 「予想目的地、我第3新東京市!!」  オペレーターが、矢継ぎ早に状況を報告する。 「よし!総員第一種戦闘配置だ」 「はっ」  オペレーターに指示するゲンドウ。 「冬月…あとを頼む」 「ああ」  冬月に後を任せ、どこかへ行くゲンドウ。 (10年ぶりの、息子との対面か……)
 リツコに案内され、ある部屋へとやってきたシンジ達。  一寸先も真っ暗で何も見えない。 「暗いですね。電気代、ケチってるんですか?」 「何いってるの!これがロマンってものよ!!」  シンジの身もフタも無い一言に、わけのわからない返答をしつつ、明かりをつけるリツコ。  そこには、巨大な顔があった。 「顔……、巨大ロボット…!」 「厳密に言うとロボットじゃないわ。人の造り出した、究極の汎用人型決戦兵器!   人造人間エヴァンゲリオン。我々人類最後の切り札。これはその初号機よ………」 「これも、父の仕事ですか」 「そうだ」  シンジの頭上数10メートル上から声がした。そこには、ゲンドウの姿があった。 「久しぶりだな、シンジ」 「ホント、何年振りだろうね。僕を“あんなところ”に捨てたくせに、今さら何の用?  それにそのサングラス、邪眼対策のつもり?心配しなくても邪眼を使うつもりは無いよ。   もったいないから」  ゲンドウの高圧的な挨拶に、皮肉をこめて返すシンジ。 「ふ…。出撃」  シンジの態度を虚勢と判断し、出撃命令を下すゲンドウ。  しかし、ミサトが反発する。 「ちょっと待ってよ。パイロットがいないわ」 「さっき届いたわ」  シンジを見るリツコ。 「けど、綾波レイでさえ、エヴァとシンクロするのに7か月もかかったのよ。   今日来たばかりのこの子にはとても無理よ!」 「座っていればいいわ。それ以上は望みません」 「葛城一尉!今は使徒撃退が最優先事項よ。そのためには誰であれ、  エヴァとわずかでもシンクロ可能な人間を乗せるしかないのよ!」 「…………」  リツコの言葉に、何も言い返せないミサト。論破されるのも時間の問題であろう。 「父さん。僕を呼んだのって、これに乗ってあの化物と戦わせるため?」 「そうだ」  シンジの問いに、にべも無く答えるゲンドウ。 「ふ〜〜ん。嫌だと言ったら?」  そう言って、意味深な視線をゲンドウに送るシンジ。そんなシンジをみて、自分のシナリオ通り に育ったと内心ほくそえむゲンドウ。 「わかった………。お前のような臆病者に用は無い」  ゲンドウは、手元のコンソールを操作し、冬月を呼ぶ。 「冬月っ。レイを起こせ!」 『使えるのかね?』 「死んでいるわけではない」  通信が、レイに切り替わる。 「レイ」 『はい』 「予備が使えなくなった。もう一度だ」 『はい』  レイをのせたストレッチャーがケイジに運ばれてくる。  その体は、素人目に見ても重傷だ。 「ミサトさん、もしかして……」 「そう。あなたが乗ってくれないと、彼女を乗せるしかないの」  シンジの問いに、やりきれない表情で答えるミサト。 「ハァ〜。誰もまだいやだって言ってないのに…」 「え!!それじゃあ、シンジ君…」 「ええ、乗りますよ」 「けど…本当にいいの?」 「いいも悪いもないですよ。自分で決めたことです。けど、その前に…」  そういうとシンジは、サングラスをはずして、無理にでも起きようとしているレイの元へ行った。  レイの頭上に影ができる。顔を上げて見るとそこには、シンジではなく、何故かサングラスをはずした髭 もとい、ゲンドウがいた。 「レイ、先ほどの命令は撤回する。ゆっくり休め」 「……しかし……」 「命令だ。休め」 「……はい」  レイは再び、ストレッチャーに横になった。  それから“ゲンドウ”は、不可視の力を、レイに注ぎ込んだ。 (何?この感じ?暖かい……けど、嫌じゃない…)  レイの顔にあかみがさして来た。と同時に、呼吸も安定してきた。  そばにいた“ゲンドウ”は、ほっとしたように呟いた。 「いい夢、見れたかい?」  その様子を見ていたミサトは呆然とした様子だった。  リツコは対照的に、事態を理解したかのように呟いた。 「あれが……邪眼の力……」  再びサングラスをかけたシンジが戻ってくる。 「リツコさん、操縦方法を教えてください。それと、ミサトさん、ミサトさん!!」 「え…な、何?シンジ君」  シンジに呼ばれ、やっと我に返るミサト。 「念のため、もう一度逃げ遅れた人がいないか確認してください。  それと、早く彼女を医務室へ!応急処置だけはしておきましたから」 「え!一体どうやって!?」 「後でまとめて説明します!!」  そう言ってシンジは、リツコとともに消えた。 「こうしちゃいらんないわ!!日向君…」  ミサトは、シンジの要求に応えるべく、部下に連絡をとった。
<冷却終了!!ケイジ内、すべてドッキング位置> <パイロット…エントリープラグ内、コックピット位置に着きました!> <了解!エントリープラグ挿入!!> 「プラグ固定終了!!第一次接続開始!!」 <エントリープラグ注水!>  エントリープラグ内に、血をうすめたような液体が入ってくる。 「何ですか?これ」  慌てる様子のないシンジ。 「大丈夫、肺がLCLで満たされれば、直接酸素を取り込んでくれます」 「あ…そうですか。ゴボゴボ……」 (驚かないわね…)  シンジの反応に、首を傾げるリツコ。  シンジにとっては、何度も味わった味ですっかりなれてしまっている。慣れてしまってはいてもやっぱり…… 「……気持ち悪い」 「我慢なさい!男の子でしょ!!」  理不尽なことをいうミサト。 <主電源接続。全回路動力伝達。起動スタート!!> <A10神経接続、異常なし。初期コンタクト、すべて問題なし> <双方向回線開きます!> 「シンクロ率…え…嘘!!」  驚く女性オペレーター、伊吹マヤ。 「どうしたの、マヤ?続けなさい!」 「す…すみません。シンクロ率、99.89%!!…暴走、ありません」   驚異のシンクロ率に驚く一同。 「すごい…」 「いけるわ」 「発進、準備!!」  何かを確信し、命令を下すミサト。 <発進準備> <第一ロックボルト解除!> <解除確認。アンビリカルブリッジ移動開始> <第一、第二拘束具除去!> <1番から15番までの安全装置解除> <内部電源、充電完了。外部コンセント、異常なし!!> 「エヴァ初号機、射出口へ!!」  射出口へ移動する初号機。 <5番ゲート、スタンバイ!> <進路クリア。オールグリーン!> <発進準備完了> 「了解」  報告を受けるミサト。  最終確認のため、ゲンドウのほうを見る。 「……かまいませんね?」 「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り、我々に未来はない」  手を組んだ、いつものポーズで応えるゲンドウ。  ミサトはうなずくと、最後の命令を下す。 「発進!!」  地上へと射出されるエヴァ初号機。 (シンジ君…死なないでよ…) <龍気>を操る地上最強の中学生――碇シンジの戦いが、今始まる。
あとがき はじめましてシェルブリットと申します。 こんなへっぽこ作品におつきあいくださり、誠にありがとうございます。 しかし、でたらめですね、シンジ君(笑)一体どこで<神威の拳>を学んだんでしょうね。 しかも、邪眼にスネーク・バイトって… まぁそのへんの生い立ちについては、2話以降のお楽しみってことで。 さて、あんまりあてにならない予告でも… ユイさんが還ってきます。そして、シンジ君と一緒にゲンドウにお仕置きをします。 その方法とは……秘密です(爆) じゃあ、一つだけヒントでも ヒント:霧島マナ はい!!全然わかりませんね(笑)これで分かった人はすごい!正解者には……なんにもあげません!(爆) なお、話は予告無く変更される恐れがあります。


マナ:シェルブリットさん。登校ありがとーっ!\(^O^)/

アスカ:シンジってバリアみたいなのが使えるのね。

マナ:凄いわっ! 使徒なんかやっつけちゃえっ!

アスカ:さすがに使徒に生身じゃ無理じゃない?

マナ:あはは、その為にエヴァに乗ったんだもんね。でも、他にもいろいろ凄いことできるみたいよ?

アスカ:邪眼ってヤツね。なんなんだろう?

マナ:なんか綾波さんは、いい感じになったみたいだけど、碇司令は恐がってるのかしら?

アスカ:まだよくわからないわね。生い立ちのストーリーで出てくるみたいだけど。

マナ:とにかく、まずは戦いねっ! シンジきっと強いんだからっ!

アスカ:でしょうねぇ。ためらわずエヴァに乗れるくらいだし。

マナ:次回どんな戦いを見せてくれるか楽しみ楽しみね。

アスカ:うんうん。シンジがんばれーっ!
作者"シェルブリット"様へのメール/小説の感想はこちら。
akaxc405@tcn.zaq.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system