リアルバウトエヴァンゲリオン              第参話「ハハ、カヱル」                     〜そして、ゲンドウにお仕置きを〜
 シンジは使徒を倒した後、ユイをサルベージするべく、再び、初号機の中へ行った。 『母さん、迎えに来たよ』 『ありがとう。だけど、本当に大丈夫なの?シンジ』  うれしいのだが、やはり不安なのだろう。心配そうにユイが問う。 『大丈夫。きっとうまくいくよ。おっと、その前に……』  シンジはそう言うと、初号機の中にいた、もう1つの“モノ”に話し掛ける。 『悪いけど、母さんは連れて行くよ』 『………ヒトリハ、イヤ……』 『う〜ん、そうはいっても、僕が残るわけにもいかないしなぁ』  “ソレ”の言葉に、少し考え込むシンジ。しばらく考え込んでいたが、どうやら、結論 がでたようだ。 『よし!!それじゃあ、時々会いにくるよ。それでいいでしょ?』 『………ホントウニ?』 『本当さ。約束するよ』  そう言うとシンジは、両手を胸の前で向き合わせ、その間に龍気を集中した。龍気の粒 子が、星雲のように渦を巻いて収束していく。 『とりあえず、約束手形代わりにこれを渡しておくよ』  ソフトボール大に成長した龍気の塊を“ソレ”に渡すシンジ。 『アタタカイ……。アリガトウ……』 『どういたしまして。それじゃあ、行くね』  ユイを連れ、シンジは戻っていった。 「初号機、シンクロ率低下!!」  発令所に、マヤの声が響く。先ほどまで慌しかった一同も、固唾を飲んで初号機の様子 を見守っている。 「380……330……290……270……250……220……     180……150……120……シンクロ率、100%で安定!!」  マヤの報告に、ワァッと歓声が上がる。 (自力で還ってきたというの……)  そんな歓声のなか、ただ1人黙っているリツコ。 「!!?。エントリープラグ内に、2つの生命反応!?」  マコトの報告に再び慌しくなる発令所。エントリープラグ内にいるのは、シンジ1人の はず。生命反応が2つあるなどありえないことだ。 「どうなってるの!?」 「あたしにわかるわけないでしょ!?」  ミサトの言葉に、逆ギレぎみにこたえるリツコ。そんなやりとりをしてるとき、シンジ から通信が入る。奇妙なことに、音声回線のみだ。 <ミサトさん、ミサトさん。聞こえます?> 「シンジ君!?無事なのね!?」  シンジの無事を確認し、胸をなでおろすミサト。 <ええ。大丈夫です。それより、どこから戻ればいいんですか?> 「とりあえず、さっき出た5番ゲートから戻ってちょうだい」 <わかりました。それから、リツコさん> 「な…何かしら?シンジ君」  いきなり話を振られ、驚くリツコ。 <ケイジに戻ったら、リツコさんの白衣、貸してもらえませんか?> 「それはかまわないけど、なぜ?」 <ケイジに来ればわかりますよ。あと、父さん>  ゲンドウに呼びかけるシンジ。しかし、ゲンドウはこたえない。 <父さんも、よかったらケイジに来てくれるかな?プレゼントがあるんだけど…> 「シンジ君、司令へのプレゼントって…」  いつまでたっても返事をしないゲンドウの代わりに、ミサトが尋ねる。 <今はまだ秘密です。ヒントは…“父さんが今、1番逢いたい人”ってところか な?>  そう言うとシンジは、通信を切って戻っていった。  ケイジに戻ったシンジは、エントリープラグから出て、リツコから白衣を受け取るとす ぐにエントリープラグへと戻っていった。シンジは、白衣に包まれた女性を抱えて出てき た。 「リツコさん、すぐに医務室に運んでください。……父さんは?」 「碇司令は、忙しくてこられないそうよ。」  どうやらゲンドウは、シンジのプレゼントがなんだったのか、わからなかったらしい。 「そうですか…。リツコさん、このことは父さんには内緒にしてもらえますか?」 「どうして?」 「後でビックリさせたいからですよ」  そう言って、さわやかな笑みをうかべるシンジ。ちょうどそのとき、ミサトがケイジに 駆け込んできた。シンジを見て、ホッとするミサト。だが、ストレッチャ―に乗せられて 運ばれようとしている女性を見て首をかしげる。 「シンジ君、無事だったのね。ところで…、あの人は?」 「僕の母、碇ユイです」 「へ〜、そうなの……って、何でシンジ君のお母さんが初号機の中にいるのよ!?」 「それは……、時期が来れば話します」  ミサトとシンジのやりとりが一段落ついたところで、リツコが話し掛ける。 「シンジ君、ら少し聞きたいことがあるの。診察もしたいから、シャワーを浴びた後、こ こに書いてあるところまで来てくれるかしら?」  リツコは、病院の場所を書いた地図をシンジに渡した。 「シャワーの場所はミサトに案内してもらって。ミサト、シンジ君を案内したら、診察室 まで来てちょうだい」 「わかったわ。シンジ君、ついて来て」  ミサトに伴われ、ケイジを後にするシンジ。シンジがシャワー室に着いたのは、それか ら約30分後のことである。どうやら、ミサトがまた迷ってしまったらしい。  病院の診察室。検査を終え、シンジが出てくるのを待っているミサトとリツコ。2人と も、手元のファイルから目が離せないでいた。そこには、シンジの身体能力に関する記録 が記されていた。シンジの身体能力は、明らかに並みの中学生を上回っていた。特に握力 は、完全に人間の領域ではなかった。 シンジの握力――200kg。 「………とんでもないわね…」 「解剖しようなんて考えちゃだめよ?」  自分の親友にして、もっぱらマッドとのうわさのあるリツコに釘をさすミサト。 「そ…それはともかく、シンジ君って、格闘技でも習ってたのかしら?」 「(考えてたな…)よくわかんないんだけど、小さい頃に習ってたことがあるみたいよ」 「……そういうことは早くいってよ」 「仕方ないでしょ!使徒が来たりして時間が無かったのよ!!」 「それもそうね」  程なくして、シンジがやってきた。LCLまみれになった制服はすぐには乾かず、かわ りに青いTシャツに、カンフーズボンといういでたちだった。 「あれっ?どうしたんですか?」  2人をみて、怪訝そうな顔をするシンジ。 「シンジ君、あなた、武術の心得があるんですってね?」 「ミサトさんに聞いたんですか?」  ミサトのほうに目をやると、うなずいてくる。 「わかりました。約束でしたよね?<神威の拳>について話すって」  とりあえず、椅子に座る3人。話しが長くなりそうなので、リツコがコーヒーを用意し てくれた。 「それじゃあシンジ君、その<神威の拳>とやらについて話してくれるかしら?」 「仙術気功闘法――<神威の拳>。肉眼には見えない<神気>という特別なエネルギーを 利用した格闘術です。ここまではミサトさんに話しましたよね」  シンジの言葉にうなずくミサト。さらに興奮した口調で尋ねる。どうやらミサトは、格 闘技マニアのようだ。 「シンジ君、もう少し詳しく教えてくれるかな?誰が創始して、どんな歴史を経たのか、 その格闘理論は………?」 「<神威の拳>については僕も詳しくは知りません。なんせ、超古代アトランティス文明 が崩壊した頃、すでに伝説の武術と呼ばれてたらしいですから」  コーヒーを飲んでいたミサトとリツコは思わず吹き出してしまった。 「ア…アトランティス文明って…」  「確か……1万2000年以上前に滅んだといわれる文明よ…」  ミサトの問いに答えるリツコ。 「まあそれだけ古い歴史を持ってるってことです。格闘理論というのは特に無く、<神気> を使って様々な超常現象をおこすというのが基本思想です。まさに<仙術>ですね」  シンジの話に黙り込む2人。ミサトはともかく、こういうオカルトの類には懐疑的なリ ツコだが、先ほどの戦闘でシンジが使った超能力じみた技を目にした以上、信じざるを得 なくなった。 「<神威の拳>についてはよく分かったわ。それじゃあシンジ君、あなたはどこで<神威の 拳>を学んだの?」  その質問にシンジの顔が暗くなる。 「どうしたの、シンジ君?話したくないなら無理にとは言わないけど…」 「いえ、大丈夫です。僕が<神威の拳>を習い始めたのは…4歳か、5歳くらいの時かな…」 「10年くらい前か…そういえばシンジ君、ケイジで司令に『僕をあんなところに捨てたく せに』っていってたわよね?あれってどういうこと?」  ミサトの言葉に少し考え込むシンジ。やがて思い出したかのように、 「ああ、あれですか?まあ、父さんが直接悪いわけじゃないけど、責任が無いともいえませ んね。でもそのおかげで、僕は<神威の拳>に出会うことができたんだから」  そう言ってコーヒーを一口飲むシンジ。 「続けますよ。10年前僕は、父さんにある夫婦のところに預けられました。遠い親戚とか 言ってたけど、本当は父さんが金で雇った赤の他人だったんですよ。これがまたひどい夫婦 で、父さんから養育費を受け取ると、それをもち逃げして僕を捨てたんです」 「捨てたって…どこに?」 「……第2東京裏新宿」 「裏新宿?」 「第2東京市にあるスラム街のことよ。セカンドインパクト時の混乱がそのまま残ってるっ て感じね」  リツコに説明してやるミサト。 「で…でも、第2東京にいたのなら、なぜ諜報部は捕捉できなかったのかしら?」 「僕の身辺、嗅ぎまわってたんですか?お気の毒に、その人達、間違いなくカラスのえさに なってますよ」 「どういうこと?」 「裏新宿っていっても、その危険度はピンキリで、外側は比較的治安はいいですよ。けど… 最奥部になると…」 「最奥部って……まさか……」  シンジの言葉に、ミサトは何か気づいたようだ。 「そうですよ、ミサトさん。僕が捨てられたのは、裏新宿の最奥に位置する、悪鬼の巣窟『 無限城』です」  シンジの話を聞いて、顔面蒼白になるミサト。そんなミサトを見たリツコは、無限城がど ういう所か知らないが、とにかくとんでもないところだということは理解できた。 「シ…シンジ君、あなたよく生きてこれたわね…」 「運が良かったんでしょうね。『中層階』で生き残れたんですから…」 「中層階?」 「ええ。『無限城』は、大きく3つのエリアに分けられるんです。最下層の『ロウアータウン』、 中層スラム地区『ベルトライン』、そして上層階層『バビロン・シティ』。当然、危険度は上へ 行くほど高くなります」  シンジの言葉に声も出ない2人。シンジの言葉を信じるなら、彼はかなりの修羅場に居た事に なる。そんな2人に気もとめず、シンジは続ける。 「ある日、僕は水の代わりにお酒を飲んでいた変なおじさんに会ったんです。あの頃僕は、『ベ ルトライン』の連中から逃げることで精一杯でした。そんな時そのおじさんが、僕に『喧嘩に勝 つおまじない』といって、<神威の拳>の呼吸法を教えてくれたんです。それからというもの、 僕は『ベルトライン』の連中になめられない程度の強さを身に付けることができたんです」  シンジは、自分と、師匠である東方流玄(ひがしかたりゅうげん)との出会いを話したが、す こしだけ嘘をついた。シンジは<神威の拳>を伝授されてからというもの、生まれついてのバト ルセンスも手伝って『ベルトライン』を支配するまでになった。しかしシンジは、その頃の自分 があまり好きではないため、話さなかった。 「12歳の時、僕は『無限城』を出ました。そのとき師匠が、僕に弟子の1人を紹介してくれた んで、僕はここにくるまでその人のお世話になってたんです」  ファイルの身元引受人の欄には、『南雲慶一郎』という名前があった。 「お弟子さんってことは、この人も<神威の拳>の使い手なの?」 「ええ、南雲先生もかなりの使い手です。僕なんかとてもじゃないけど敵いませんよ。しかも、 南雲先生の神気弾は、スパイ衛星を撃墜したことありますからねぇ」 「「………」」 「それで、僕は南雲先生のところに預けられたんです。先生は僕にいろんな事を教えてくれまし た。<神気>の使い方に始まって、命のやりとりを想定した本物の格闘術も教わりました。ちな みに、僕が使った技は南雲先生直伝です」  楽しそうに語るシンジに何もいえない2人。2人の頭の中はバイオレンスの嵐が吹き荒れてい たという。 「わ…わかったわシンジ君。ところで…レイに邪眼をかけたわね?」 「え?いつの間に!?」 「気付かなかった?ケイジでレイに駆け寄った時よ」 「なるほど……それでレイの傷がふさがってたのね」  ボケをかますミサトに思わずシンジはずっこける。 「違いますよミサトさん。あれは、<神気>を利用した気功術で、傷口に神気を送り込んで細胞 を活性化させて傷口をふさいだんです。時間が無かったから、骨折まで直す余裕はありませんで したけどね」 「まったく…報告書をちゃんと読んで無かったわね?あのレイが、初対面の相手のいうこ とをおとなしく聞くと思う?」 「リツコさん、僕から説明しますよ。僕の邪眼という能力は、“目を合わせた相手に1分間の 幻影(イリュージョン)を見せる”能力なんです」 「へ…へぇ〜。便利な能力ね」 「そうでもないですよ。ちゃんと目を合わせないと発動しないし、24時間で3回しか使用できま せん。しかも、1度かかった人間は、24時間効果無いんです」 「そうなの……ところで、レイはどんな幻を見てたの?」 「彼女は、僕が父さんに見えたと思いますよ」  シンジの言葉に想像力を働かせるミサト。中学校の制服を着たゲンドウ。かなりシュールな光景 である。 「………おえ」 「どうしたの?ミサト?」 「……何でもないわ」 「ならいいけど…悪いけどシンジ君、あなたの部屋はまだ用意できてないの。とりあえず検査入院 とういうことで、今夜は病院に泊まってくれるかしら?」 「分かりました。あの…リツコさん」 「なに?」 「母さんが目覚めたら、父さんと話がしたいんですけど…」 「わかったわ。司令に話はつけといてあげる」 「ありがとうございます」  礼を言って診察室を後にしようとするシンジ。しかし、何かを思い出したかのように振り返る。 「そうそう、無限城のこと調べようなんて考えないでくださいね。あそこは、腕時計を奪うために 腕を切り取ったり、金目の物を持ってなくても、健康な内臓の持ち主だと知ったら、内蔵を狙うよ うな連中がごまんといますから」  脅かす風でもなく、まるで観光ガイドでもするかのような口調で言うシンジ。あまりにも気楽な 口調が、かえって不気味である。  シンジが診察室を出る。後には、未だショックから立ち直れないミサトとリツコの姿があった。  翌朝、ユイが目覚めたので、リツコによる診察のあと、シンジ、ユイ、リツコの3人はゲンドウ の執務室までやってきた。中に入ったとたん、ユイの姿を見て固まる冬月とゲンドウ。 「お久しぶりです。あなた、冬月先生」 「やはりシンジ君はユイ君のことを言っていたのか…」 「どういうことだ?冬月」 「どういうって…聞いてなかったのか」  ゲンドウの言葉に声も出ない冬月。このままでは埒があかないと判断したシンジが口を開く。 「父さん、話したいことがあるんだけどいいかな?それと、副司令とリツコさんにも聞いてもらい たいんですが…」 「言うなら早くしろ……でなければ帰れ!!」  ゲンドウの言葉に少し青筋をうかべるユイ。しかしシンジはかまわず、 「単刀直入にいうよ。父さん、『人類補完計画』を中止してくれないかな…あと、『ダミーシステ ム』も破棄してもらえるかな?」  驚愕の表情を浮かべる、ゲンドウ、冬月、リツコ。このことは最高機密で、昨日来たばかりのシ ンジが知っているはずが無いのだ。 「シンジ君…あなたどうして…」 「口で説明してもいいんですけど、実際見てもらったほうが早いですから。父さん、悪いけど、サ ングラスはずしてくれる?」  はずすのを渋っていたゲンドウだが、ユイに睨まれたのでおとなしくはずした。シンジは、ゲン ドウ達を一箇所にかためると、サングラスをはずし、邪眼を発動させた。  ゲンドウ達は、これから起こること、いや、シンジが経験してきたことを自らの経験として感じ ていた。精神崩壊したアスカ、自分を救うため自爆したレイ、自分の手で殺してしまったカヲル、 戦自の攻撃、虐殺されるネルフ職員、エヴァシリーズの襲来、そして…サードインパクトの発生。   後に残ったのは、すべてがひとつになった生命のスープだけだった。1人佇むゲンドウ。 (なんでこんなことになった……)  自分はただ、愛する者に逢いたかっただけだ。しかし、逢うことはできなかった、それどころか、 ユイに逢いたいがために、世界を滅ぼしてしまった。 ―――絶対の孤独。それがゲンドウを蝕んでいく。 「すまなかったな……シンジ……」  そう言い残し、LCLへと変貌するゲンドウ。しかし――― 「―――ジャスト、1分だ」 パアアァァァァアン………  ガラスが砕けるように、世界が崩壊する。気が付くと、執務室に戻っている。邪眼の効果が切れた のだ。 「悪夢(ユメ)は見れたかい?」 「シンジ……」 「信じる信じないは3人に任せるけど…」 「レイを押し倒して、胸を触ったというのは本当か?」 「………は?」  関係ない質問をするゲンドウ。リツコと冬月が後に続く。 「アスカの寝ている隙にキスしようともしてたわね」 「だが…ファーストキスはアスカ君とだったぞ」 「ああ、病院のベットで寝ているアスカ君をオカズにもしていたな」  そのあと3人は、『君の息子は君に似てなかなかやるようだな…』だの、『ああ、問題ない』だの、 『将来が楽しみですわ』だのと全く関係ない話に花を咲かせていた。ユイを見てみると、顔をそむけ、 肩をヒクヒクとさせている。どうやら必死に笑いをこらえているようだ。  シンジが、少し殺気の混ざった声で言った。 「……話を続けてもいいかな……」 「あ、ああ、すまなかったな、シンジ君」  真っ先に反応した冬月がこたえる。 「『人類補完計画』と『ダミーシステム』の破棄、了承してくれますね?」 「し、しかし……」 「母さんが還って来た以上、続ける理由は無いと思うけど?」 「そうだな。すぐに中止しよう。すまなかったな、シンジ…」 「ありがとう、父さん」  シンジの話が終わるのを待って、ユイが続ける。 「ゲンドウさん、あなたのしてきたことは決して許されることではないわ。でもあなたは過ちに気付い た。過ちに気付いたのなら、やり直せます。私もE計画に携った者として、やり直しのお手伝いをしま すから…」  ゲンドウの手を取りユイは言った。感動のあまり声の出ないゲンドウ。しかし―― 「けど……赤木さん母子に手を出したことは許すわけにはいかないわ」  みるみる青ざめるゲンドウ。シンジに目をやると、憐れみを含んだ視線を投げかけてくる。 「ふ…冬月…」 「碇…自分のまいた種だ。自分で始末しろ」 「し…シンジ…」 「父さん、助けてあげたいのは山々だけど、僕にはどうしようもないよ」  ゲンドウの申し出をあっさり却下するシンジ。 「今までのことは命がけで償う。だから助けてくれ」 「その言葉は信用するけど…それはそれ、これはこれだから」  このときゲンドウは、三途の川の向こうで手を振っている祖母の姿を見たという。 「そうそう、リツコちゃんも一緒にどう?この人に酷い目に遭わされたんでしょ?」  少し考えるリツコ。だが、すぐに結論を出す。  結論は―――『YES』 「それじゃあ行くわよシンジ。冬月先生はここで待っててください」  シンジと2人でゲンドウの両脇を固めて奥へ進むユイ。リツコが後に続く。 ―――30分後、シンジ達が戻ってきた。3人とも一様にすっきりした顔をしている。 「シンジ君、あなた一体どこであんなお仕置きを覚えたの?」 「あれは南雲先生が学生時代に考案したものなんです。本来なら、仕上げに湖とかに放り込むんですけ ど」 「それじゃあ溺死しちゃうんじゃ……」 「あるいは、そのほうが幸せかもしれませんねぇ」  なにやら物騒な会話をしているシンジとリツコ。嫌な予感がした冬月は、ユイに訊ねる。 「ユイ君、君達は碇に何を……」 「…………」  冬月に耳打ちをするユイ。冬月の頬が赤いような気がするが気にしないでおこう。しかし、赤かった 冬月の顔が次第に青ざめていく。 「ほ、本当かね?」 「ええ♪」  すぐに奥の部屋へ急ぐ冬月。 「シンジ君、住む所はどうするの?」 「そうですね…ミサトさんと一緒ってわけにもいかないし……警護しやすいからって理由で、ミサトさん の部屋の隣にしてもらえますか?」 「わかったわ。ユイさんと一緒にそこで暮らせるよう手配するわ」 「レイも一緒ですよ」 「なぜ?」  首をかしげるリツコ。 「だって…僕のかわいいですから…」 「妹……?そうね、そういうことになるわね。シンジ君、レイのこと、お願い」 「わかりました」 「それじゃあ、ミサトに送らせるから」  リツコの一言に少し嫌そうな顔をするシンジ。 「その前に、レイの病室に行ってもいいですか?」 「どうして?」 「家族の感動の再会をするためですよ」  3人は、レイの病室へ向かった。  冬月が奥の部屋に入ると、床に『屑鉄製の巨大ミノムシ』としか表現できない物体がころがっていた。  あたりを見回すと、柄の折れた箒が散乱している。何故か金属バットまである。これを見た冬月は、こ の巨大ミノムシが掃除用具を納めたロッカーのなれの果てであると気付いた。表面にあるへこみから判断 するに、中に人を閉じ込めてから嫌というほど殴ったことは明白だった。 「ま…まさか…」  冬月が耳を近づけてみる。 『い…痛い…暗い…狭い…』  かすかなうめき声が聞こえてくる。冬月はロッカーを開けようと取っ手に手をかけたが、扉が本体に食 い込んでビクともしない。冬月はユイの言ったことをを思い出した。 『冬月先生、<鋼鉄の処女(アイアンメイデン)>ってご存知ですか?』 「これがそうか……」  そんな冬月の呟きが聞こえたのか、ゲンドウが言った。 『ふ…冬月…そこにいるのか…助けてくれ…』 「あ、そうだ。これから委員会の招集だったな…」  冬月にまで見捨てられたゲンドウ。彼が救助されたのは、それから1時間後のことである。                              to be continued……
あとがき座談会 作者:「ふ〜、なんとかおわったな…」 シンジ:「けっこう時間かかりましたね」 作者:「ほっとけよ…」 シンジ:「これって、リ○○バ○トハ○○クールとのクロスオーバーのはずですよね?」 作者:「そうだ」 シンジ:「けど、無限城ってゲ○トバ○○ーズのネタじゃないですか?しかも邪眼って…」 作者:「まあいいじゃないか、細かいことは気にするな」 シンジ:「まあいいですけど…僕のイメージを一言で言うとどうな感じですか?」 作者:「ウニ頭じゃない美○蛮」 シンジ:「……僕はセクハラ大王ですか…」 作者:「そんなことは無いぞ。あくまでもビジュアル的なイメージだから」 シンジ:「それを聞いて安心しました。ところで…この2作品から誰か出てくるんですか?」 作者:「知らん。考えてない」 シンジ:「そんなはっきり言わなくても…」 作者:「ノリ任せで書いてるからなぁ…」 シンジ:「しみじみと言わないでください!」 作者:「まあそういうな。善処はするさ」 シンジ:「それならいいですけど」 作者:「それはともかく、ゲンドウへのお仕置きだが…」 シンジ:「<アイアンメイデンの刑>ですね?それが何か?」 作者:「いや〜、さんざん引っぱった割にじみだったなあって思ってさ……。どうせなら、ガソリンを頭からか けて逆さ吊りにして、ちょっとでも動こうもんなら電気着火で全身火だるまになるとか、関節全部外してスポー ツバックに折りたたんで詰めるとか、全身の骨を砕いてダストシュートに捨てるとかのほうがよかったかな…」 シンジ:「……それじゃあ死んじゃいますよ」 作者:「やっぱそれはまずいよなぁ…。けどな、お前を怒らせるととんでもないことになるんだ。簡単に言うと、 『死ぬよりマシ』と言うレベルの暴行が、『死んだ方がマシ』ってことになるから」 シンジ:「僕を怒らせないほうがいいってわけですね?」 作者:「そういうこと。ついでに言うと、冒頭で初号機の中でお前が龍気の塊を渡したのはエヴァの魂で、この先 たぶん出番は無いから」       


マナ:考えてみたら、シンジって女の子の敵かも。

アスカ:アイツの悪逆非道を並べ立てると、たいがいなものがあるわね。(ーー#

マナ:シンジって、墓穴を掘るためにあの情景を見せたのかしら。

アスカ:そのあたりが、シンジのボケボケっとしてる所以ってやつよ。

マナ:しかも綾波さんには司令を・・。

アスカ:アタシならその場で失神してたわね。

マナ:葛城さんなんか、吐き気をもようしてたみたいよ?

アスカ:シンジの眼には気をつけなくちゃ・・・。

マナ:サングラスかおうかしら。
作者"シェルブリット"様へのメール/小説の感想はこちら。
akaxc405@tcn.zaq.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system