リアルバウトエヴァンゲリオン 第七話『レイ、心のむこうに』

 第四使徒襲来から3日が経った。その間シンジは、家出することもなく学校に通い、 訓練をしていた。  青空の下、女子達はプールサイドで騒いでいた。一方の男子は――  このクソ暑いなか、炎天下でバスケットボールをしていた。  大半の男子は、自分の出番まで待つことになる。その中には、プールに向かって、 意味もなく恨みがましい視線を送る者、うらやましそうに見つめる者、『スクール水 着萌え!!』などと言いながら危ない視線を送る者様々である。  シンジも他の男子同様プールサイドに目を向けている。しかしその表情は苦しそう だ。 (く…首が痛い……)  どうやら、昨夜寝違えたようである。 「センセも案外スケベェやな〜〜〜。タンパクそうな顔しとるくせに…」  何やら勘違いしているトウジがシンジに絡んできた。   「ち、違うよ!そんなんじゃないって……」 「その割にはやけに綾波のほうに熱い視線を送ってたような……」  さっきまで危ない視線を送っていたケンスケまでも会話に参加しだし、事態はさら にややこしくなっていく。一応、シンジの名誉のために言っておくがシンジは決して レイに熱い視線を送ってはいない。ついでに付け加えると、プールサイドに座ってい るレイに話し掛けているマナに視線を送っているわけでもない。 「いや……全然違うから……」  ブチキレそうになるのを必死に我慢してシンジは言った。 「あ、綾波の胸、綾波の太もも、綾波のふくらはぎ…」 「いや〜〜ん、お兄ちゃんのエッチ!!」 「じ、自分の妹の水着姿に欲情するやなんて……シンジ!!おまえは最低の生き物や!!」 「おい………(~_~メ)」  シンジがフツフツと沸き上がってくる怒りを抑えている中、バカ二人の話はどんど んエスカレートしていき、終いには、『自分の妹を無理やり○○したりとか、自分の× ××を▲▲させたりなんかしてるアブナイ兄ちゃん』という人物像が確立しつつあっ た。 「「いや〜〜〜ん感じ!!!」」  ブチッ!!  トドメの一言でシンジがキレた。  ドカッ!!バキッ!!グシャッ!!! 「……殴るよ…」 「「そ、そういうことは、普通殴る前に言うんじゃないか(ちゃうんか)?」」  シンジに殴られつつも、もっともなこと言う二人。 「ただ、昨夜寝違えて、首が回らなくなっただけだよ」 「なんや。そうならそうとはよ言うたらええのに…」 「話聞かなかったのは誰だっけ?」 「「…………」」  何も言い返せない二人。  時間が立つのは早いもので、あっという間に放課後になってしまった。  シンジが下駄箱から靴を取り出そうとすると、靴の上に手紙が置いてあった。 「おっ、なんやシンジ。自分も隅におけんやっちゃなぁ」 「どうしたんだ、トウジ?あっ、シンジぃ…羨ましいなぁ。ラブレターか?」  ケンスケの一言にレイが片方の眉をピクリと上げた。その横でマナも少しムッとし た顔をしている。 「ああ、これってラブレターだったんだ……」 「し…シンジ、この状況でそういうボケをかますのは…」 「だって、どう見てもそういう風には見えなくて…」  シンジはそう言うと、ケンスケに手紙を渡した。 「どれどれ……。確かにラブレターじゃなさそうだな…」  確かに手紙には『碇シンジ様』とある。しかし、女の子特有の丸っこい文字ではな く、新聞か何かから文字を切り抜いて貼り付けたものであった。  なんだかもう、怪しさ大爆発である。 「それに……、便箋以外に何か入ってそうなんだよね…」  そう言うとシンジは、上履きを脱ぐのを止め職員室に向かった。  他の五人も後に続く。 「え?何か切るものを貸してくれ?」 「はい」  職員室についたシンジは、机に向かって明日の授業の準備をしている涼子に言った。 「あら、それひょっとしてラブレター?シンジ君もやるわねぇ」 「…これがそう見えます?」  そう言うとシンジは、涼子に宛名を見せた。 「……見えないわね」  納得した涼子は、自分のカバンから合口を取り出すと、シンジに手渡した。  とくに驚いた様子を見せないシンジとは対照的に、五人は担任の動作に固まってし まっている。 「あ…あのぅ〜〜、御剣先生?」 「なにかしら、洞木さん?」 「が、学校にドスを持ち込むのはちょっと……」 「大丈夫よ。バレなきゃ問題ないから」  教師とは思えぬその言動に、シンジ以外の五人は、彼女が自分達の担任であること、 それ以上に、こんな人間でも教師になれるこの国に疑問をもった。 「さてと…」  固まっている五人を横目に、シンジは手紙を開封した。  封を切った手紙を下に向けると、中から大量のカミソリとともに一枚の紙切れが落ち てきた。紙にはこれまた新聞の切抜きで『オマエヲコロス』とあった。 「……やっぱり」  ある意味予想通りの展開に、シンジは半ば呆れていた。  「か…カミソリレター!?」 「な…なんで」 「心当たりはあるのか、シンジ!?」 「な…無いわよね?シンジ君」 「お兄ちゃん…」  シンジを心配してトウジたちが声をかけるが、当のシンジは、 「う〜〜ん、心当たりがありすぎて逆に特定できないな……」  お気楽そのものだった。 「「「「「…………」」」」」  呆れてなにも言えない五人。 「それで?どうするつもり?」  事の成り行きを守っていた涼子が不意に口を開いた。 「どうするって、言われても…」                          シンジが答えに窮していると、不意に 「おっなんやこれ!?うわぁ〜〜ごっつようさんのカミソリやんか。どないしてん?」   後ろから静馬が声をかけてきた。 「ああ、静馬。実はね……」  涼子が簡単に事情を説明すると、 「ほうか、シンジも災難やの〜〜」  全くの他人ごとのように言う静馬。しかし、そんな物言いとは裏腹に、その顔には新し いおもちゃを見つけた子供のような表情が浮かんでいたのを、シンジは見逃さなかった。 「よっしゃ!!ここはワイにまかせとき!!チンピラの一人や二人、ワイが一発で…」 「教師が暴力に訴えてどうすんの!!」  静馬の教師らしからぬ提案に、涼子が特殊警棒で突っ込みを入れた。  ガスッ!!  振り下ろされた特殊警棒は、かなりやばい角度で静馬の後頭部にクリーンヒットした。 「…………」  頭を押さえたまま静馬は数歩後ずさった。一応立ってはいるものの、その足元はかなり おぼつかなく、酔っ払いのようにフラフラしている。 「先生、酔拳でっか?」  そうではない。ダメージが足に来ているのだ。  苦悶の表情を浮かべる静馬は、涼子に言いたいことがあるらしく、口をパクパクさせて いた。 「どうしたんです。何が言いたいんですか?」  シンジは静馬の身振り手振りから、メッセージを読み取って翻訳してみる。 「え…?脳が揺れてる?……小学校!?修学旅行の思い出がクラッシュした?え〜っと、 それは置いといて、え?なんですか?地図記号が分らない?それは最初から憶えてないん じゃ…」  脳に重大な損傷を受けたと思われる静馬に、一同は心の中で形ばかりの十字をきった。 「さ、こんなアホはほっといて、どうするの?」 「逃げられるもんなら逃げますけど、後々面倒なんで、行きますよ」  涼子の問いに、シンジは達観した表情で答えた。 「よっしゃ!!ワイも一緒に…」 「却下」  トウジの申し出を、シンジはあっさりと切り捨てた。 「な…なんでやねん」  明らかに不満げなトウジにシンジは、 「手紙に、『一人で来ない場合は、お前周りの人間すべてに地獄を見せる』って書いてあっ たから…」 「そ、そないなこけおどしにワイがビビる思ったんか?」 「というより、みんなに何かあると、僕が困るから…」 「し、しゃあないな…」  しぶしぶながら、トウジはシンジの意見に従った。 「というわけだから、みんな、先に帰ってよ」  シンジに促され、五人は職員室を後にする。 「…ところで、ホントにそんな寝言書いてあったの?」  五人が去った後、涼子がシンジに聞いてみた。 「いいえ。でも、困るって言うのは本当ですよ。下手に連れて行って、みんなを人質にとら れたりしたら厄介ですから」 「確かにね…」 「ま、もし相手がそんなふざけた手を使うようなら…」 「使うようなら?」 「こっちが地獄を見せてやりますよ…」  トウジ達の前では、決して見せることのない冷酷な表情を浮かべて言うシンジを見て涼 子は、 (こんなシンジ君の顔を見たら、喧嘩を売ろうなんてバカな考えはまず起きないわね…)  背中に薄ら寒いものを感じながら思った。  ある意味決闘場の定番、体育館裏。  シンジが到着すると、そこにはこれまたお約束な、木刀やら、鉄パイプやらで武装した不 良がおよそ三十人、シンジを待ち構えていた。 「あの〜、用件はなんですか?さっさと帰って、夕飯の支度をしたいんですけど…」  あまりにベタな状況に心底うんざりしながらシンジが訊ねた。 「なぁに、てめぇに世話んなった舎弟にかわってお礼がしたくてよぉ」  一番後ろにいた男が口を開いた。 「………?」 「とぼけてんじゃねえよ!!てめぇが転校初日に病院送りにした連中だよ!!!(第五話参 照)」  そこまで言われてようやくシンジは、 「そんな大昔のことを今さらまぜっかえすなんて、結構器が小さいんですね」  思い出しはしたものの、その物言いはかなり挑発的だった。 「っんだとぉっ!!」 「なめやがって!!」 「ぶっ殺せ!!!」  シンジの一言で不良グループはいっせいに殺気立つ。 「ぶっ殺す?……やれるもんならやってみな?」  冷たい笑みをうかべてシンジが言い放った。  校門へ向かうトウジ達。しかし、一様にその顔は冴えない。 「…………」  不意に足を止めたマナが、校舎の方を振り返る。 「どうした、霧島?」  その様子に気付いたケンスケが声をかける。 「うん、ちょっと……」 「…シンジのことが心配か?」 「うん……」 「なぁーに、心配あらへんて」  あっけらかんとした様子でトウジが言った。 「でも…」 「霧島も毎日見てるやろ?シンジと草薙先生のドツキ漫才」  そう、シンジは毎朝、静馬からの『教師と生徒のコミュニケーション』の名を借りた攻撃を 受けていた。しかも、シンジはそのことごとくを受け止めていた。 「そうね、鈴原でも敵わなかった草薙先生と、互角に戦ってるものね」 「委員長、そないはっきりいわんでも…」  ヒカリの一言に、トウジはかなり落ち込んでしまった。ただ、間違ってはいけないのは、『 トウジが弱い』のではなく、『草薙静馬と互角に戦えるシンジの方がデタラメだ』ということ だ。 「そ…そうよね!!シンジ君なら大丈夫よね」  トウジやヒカリの言葉に、マナの顔に明るさが戻ってきた。 「そう…。お兄ちゃんは大丈夫…」  今まで黙っていたレイが不意に口を開いた。 「あ…綾波さん?それってどういう……」  四人を代表してヒカリが聞いてみる。 「むしろ心配すべきなのは敵の方……」 「あ、あのぅ…それって…」 「今ごろ、お兄ちゃんは敵を殲滅してるわ…」 ((((せ……殲滅!!?))))  せんめつ【殲滅】=残りなく滅ぼすこと。皆殺しにすること。  レイの不吉極まりない予言に、四人は黙っているしかなかった。 〈再び、体育館裏〉 「しぃぃぃねぇぇぇぇ!!」  不良達が一斉にシンジに襲いかかる。  しかし、シンジはそのすべてを最小限の動きでかわし、すり抜けざまに、 トンッ!!  胸のあたりを軽くつく、その繰り返しだった。 「へっ!!そんなもん、痛くも痒くも……」  すべて言い終わる前にチンピラAは倒れこみ、 「ぐゎぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  あまりの激痛に、悲鳴を上げ地べたを転げまわった。シンジに胸を突かれた他の不良達も 同様にのた打ち回っている。 「て…てめぇ、一体なにしやがった…」  喋るたびに、ヒューヒューとどこかから空気の漏れるような音をさせるチンピラA。 「何って……。あなた達の肺にちょっと穴を開けただけですよ。いますぐ病院に駆け込めば 助かるかもしれませんね。僕は助けてあげませんけど…」  自分で穴をあけておいて、まるで他人事のように言い放つシンジ。 「「ひ……ひいいいぃぃぃぃぃぃ……」」  シンジの非情な宣告に、不良達の殆どがほうほうの体で逃げて出した。 「さて…と」  逃げ出したザコを尻目に、シンジは最後に残ったリーダー格の男に目をやる。 「どうします?残ったのはあなただけみたいですけど」  そう言って一歩前へ出るシンジ。 「そ…それ以上近づくんじゃねぇ!!」  そう言いながら男は、ポケットからトランシーバーのような物を取り出した。 「一歩でも近づいてみろ、こいつで俺達の会話を聞いてる仲間が一斉にお前のダチを襲う手筈 になってるんだぜ」 「…………」  傲慢極まるその言い草に、シンジは封印していたブラックキャットの血が目覚めていくのを 感じた。 〈再び、校門前〉 「……やっぱり」 「え?」 「やっぱりほっとけない!!」  そう言うなり、マナは踵を返した。 「あっ!!ちょっとマナ!?」  ヒカリの制止も聞かず、マナは校舎へと急ぐ。 「霧島の奴もしゃあないなぁ…」 「シンジなら大丈夫だって言ってんのに…」  半ば呆れながらも、マナの後を追う準備を始める二人。 「まっ、変なヤツにからまれても四人くらい守ったるわ」 「…私は大丈夫…」  レイが口を開いた。 「お兄ちゃんから合気柔術を習ってるから…」 「さ…さよか…」  『ワイの出番が少なくなるやないか!!』とは口が裂けても言えないトウジであった。 「で…でも、碇君がどこにいるかわからないんじゃ……」 「それならご心配なく」  よほど自信があるのか、ケンスケが胸を張る。 「こういうとき、不良が呼び出しに使う場所なんて、一箇所だけさ」 「どこなの?」  ヒカリの質問にケンスケははっきりと言い切った。 「体育館裏だよ」 〈体育館裏〉 「う〜〜ん、それはちょっと困るなぁ…」 『困る』という一言を聞いただけで自分の優位を確信したのか、男の顔に醜い笑みが 浮かんだ。 「けど…そっちがその気なら、こっちも手を打たないとなぁ…」 「どうする気だ?あぁん!!」  自分が優位に立っていると思い込んでいるため、男の口調も段々横柄になっていく。 「そうですね……今この場で始末しときましょうか」 「なっ……!!」  男が驚くのも無理はない。シンジの口調が、『帰りにゲーセンにでも寄ってくか』 並の気軽さだったからだ。 「僕、敵になる可能性のある人間を見逃してやるほど、人間ができてないんですよね…」  そう言うとシンジは、一歩踏み出した。 「そ…それ以上近づくと……」 「こいつで仲間に連絡がいくんでしょ?」  そう言ったシンジの手には、男が持っていたはずの『トランシーバー』――実は単な る携帯ラジオ――が握られていた。 「い…いつの間に…」 「ああ、それとこれ…返しときますね」  ポイッ!!  シンジが投げ返したモノが、男の前に転がる。それを見た男の顔がみるみる蒼ざめる。 「お…おおおおお、おでのうでがぁぁぁぁぁぁ!!」 「さぁて、次はどこを切り刻んであげましょうか……?」  右手に、涼子から借りたままになっていたドスを持ったシンジが迫る。 「や…やめてくれ、俺が悪かった…」 「…………」 「も…もうお前らにちょっかいは出さない。約束する」 「…………」 「ほ…本当だ!だから命だけは…」 「…本当ですね?」  そう言ってシンジは踵を返した。助かったと思った男は安堵の表情を浮かべる。 「ああ、言い忘れてましたけど…」  ホッとしたのもつかの間、シンジの一言で、男は再び地獄に落ちることになる。 「あなた、もうとっくに死んでますよ――」 「へ?」 ピシッ!! 「ぎゃ……!!」  断末魔の声をあげる間もなく、男はバラバラに吹き飛んだ。 「シンジ君!!」  体育館裏から出てきたシンジに、マナが声をかけた。 「マナ?それにみんなも…」  マナの後ろに、バツの悪そうに笑みをうかべてトウジ達もいた。 「先に帰ってろって言ったのに…」 「だって、シンジ君のことが心配だったから……」 「そっか……」 「そんなことよりシンジ、お前大丈夫やったか?」 「ああ、もう終わったよ」  体育館裏の方を向き、シンジは言った。  シンジの言葉を聞き、トウジ達は体育館裏に向かった。  そこには、バラバラの死体が転がっている――などということはなく、男が一 人座り込んでいた。 「ア……。アア……」  男はよだれを垂らし、一気に二、三十年程老け込んだように髪は白くなり、 よほどの恐怖を味わったのか、小刻みに震えていることを除けば全くの無傷だっ た。 「……?アイツ、どないしたんや?」  事態が飲み込めないトウジがシンジに聞いた。 「…さあね。よっぽど悪い“夢”でも見たんじゃないの?」  シンジはそう言うと、校門へ向かった。五人も後に続く。  トウジ達と別れたシンジとレイは、夕飯の買い物を済ませ、家路を急いだ。  家まで残り数百メートルのところで、レイが不意に口を開いた。 「…お兄ちゃん」 「ん?何?」 「あの人に邪眼をかけたでしょ?」  ズバリ核心をつくレイ。 「まぁね」 「大丈夫なの?幻だってばれたらまた……」 「その点は心配ないよ。特別キツイ邪眼をかけたから、ユメから覚めてもしばらく あのままだろうね」  あっけらかんとした様子でシンジは言った。 「……お兄ちゃんて、結構残酷ね……」 「……ほっといて」  兄弟でラブラブ(?)トークをしつつ、二人は家に戻った。   「シ〜〜ンちゃ〜〜ン、ご飯まだぁ?」 「……人ン家にあがりこんで、開口一番ソレですか?」  いきなり入ってきたミサトに、夕飯の準備を始めているシンジは言った。 「いいじゃない。お腹すいたんだから」 「……理由になってませんよ」  これ以上のツッコミは無駄と判断したシンジは、ミサトとの会話を打ち 切り、料理をよそっていく。どうやら今日はシーフードカレーのようだ。 「ミサトさん、これ運んでくれますか?」 「りょ〜かい」  料理を運ぶミサト。テーブルにはレイとユイの他に、ユイに招待された リツコと冬月の姿があった。だが、二人とも居心地悪そうに座っており、 二人の視線はある一点に集中していた。そこには―― 「……何かね?」  招待されたわけでもないのにノコノコとついて来たゲンドウがいた。  ゲンドウは、テーブルにつくことを許されず、部屋の隅に追いやられ、 その上、床に直に正座させられていた。卓袱台代わりのミカン箱はせめて もの慈悲であろうか。 「ユ…ユイ君…」 「いいですよ、冬月先生。勝手について来たあの人が悪いんですから」 「しかし……」 「冬月先生もあちらの方がよろしいですか?」 「ついて来た碇が悪いな。うん」  ゲンドウとの友情(?)と人としてのプライドを天秤にかけ、プライド を選んだ冬月。そんな冬月を恨みがましい目で見るゲンドウ。 「お待たせしましたぁ」 「さ、みんな食べましょう」 「「「「「「いただきます」」」」」」  カレーを食べ始める面々。すると―― 「……私の分は?」  図々しくもゲンドウが言った。仕方がないのでシンジは、料理を出した。  しかし、ソレは明らかにカレーではなかったので、シンジに聞いた。 「…これは…」 「昨日の残りの麻婆豆腐を炒めたご飯にかけてみたんだ」 「……ようは残飯か…」 「せめて『まかない食』って言ってよ。いらないなら別にいいけど」 「……しかたない」  他にも『なぜ私がこんな目に』だの、『これが父親に対する仕打ちか』だ のと文句といいつつ、料理をスプーンで口に運んだ直後、急に真顔になった。 「い…碇。どんな味なんだ?」 「フッ。きさまには絶対やらん」  ゲンドウは皿を抱えて冬月に背を向けた。 「さては碇、美味しいんだろう?一口くらいいいじゃないか」 「…ならば私と同じ身分になったらです?冬月先生?」(ニヤリ) 「そ…それはオレに人間をやめろと言うことか?」 「…それでは私は人間以下か!?」  ネルフのトップ二人の不毛なやりとりを横で見ていたリツコが呟いた。 「……無様ね」  しかしゲンドウは気付いていなかった。ペンペンの分のカレーをシンジか ら渡されたレイが何気なく置いた場所が、自分よりも上座にだったことに。  そのためにリツコや冬月だけでなく、ミサトからも同情のこもった眼差し で見られていたことにも。  碇ゲンドウ。ネルフ内では最高の権力を有する(しかし、本当の権力者は ユイではないかと専らの噂)彼も、ユイを頂点とする碇家のヒエラルキーで は、ペンギンにも劣る最下層に位置していた。合掌…
あとがき う〜〜ん、ゲンドウさん、ペンギン以下ですか……。あの人にはお似合いかな(笑) さて、マナがプールでレイに話し掛けてた(恐らくシカトされてた)理由ですが… とりあえず外堀から埋めようと言う魂胆からでして… う〜〜ん、姑息だねぇ、マナちゃん(笑) それと、草薙・御剣両教師の戦闘力ですが、二人とも暴走族グループの一つや二つ は簡単に潰せるだけの力を有しています。 次はヤシマ作戦か……頑張るぞ!!


マナ:邪眼って怖いわねぇ。

アスカ:どこからが現実かわからなくなっちゃうもんね。

マナ:戦う前から負けてるようなものだわ。

アスカ:本当に体をバラバラにするよりは、ずっと良心的だけどさ。

マナ:そんなことしたら、シンジの方が極悪人になっちゃうわよ。

アスカ:これにこりて、シンジにちょっかい出すバカはいなくなればいいんだけど。

マナ:シンジも、次はヤシマ作戦に集中しなくちゃいけないしね。

アスカ:あぁ、あの作戦嫌いなのよねぇ。

マナ:へ? どうして? べつに、アスカが酷い目にあったわけじゃないでしょ?

アスカ:ファーストの目立つシーンがあるからよっ。(ーー)
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