いつもここから....
第三話
子供達に休息を!
「ねぇ、アスカ」
「なに?」
リビングでテレビを見ながらくつろいでいたアスカに、シンジが声をかけた。
「明日、どこか行こっか・・・」
「なんで?」
「せっかくの休日なんだからさ」
既にネルフは、第11使徒まで倒していた。明日は日曜日で、テストはなし。ミサトも友人の結婚式に行くのだと、複雑な表情で語っていた。
「どこに、行くの?」
「う〜ん、遊園地はどう?」
「・・・・・遊園地、ねぇ・・・・」
「だめ?」
「それってさー、デートのお誘い?」
アスカは微笑みながら言った。シンジの慌てる姿が見たかったのだろう。
「うん、そうだよ」
シンジは、そんなアスカに微笑み返す。
「・・・・・へ?」
「だからー!明日、僕とデートしてくんない?」
ボッ!!
アスカの顔は真っ赤に染まった。
「あ・・・あの・・・な、何でアンタとデートしなきゃなんないのよ!」
「そっか、そうだよね・・・・」
「そ・・・その・・・でも、明日はヒマだから・・・・・つきあってあげてもいいわよ」
「ほんと?ありがと」
シンジの笑顔を見たアスカの顔が、さらに紅く染まったのは言うまでもない・・・・・
翌日・・・
「おはよう、アスカ」
「・・・・おはよ」
そういって、浴室に駆け込むアスカ。シャワーを浴びて、御飯を食べて、服を選んで、ルージュを少し、準備OK! 現在午前9時前 。
(ふむ、バッチリ! これでシンジは・・・・ムフフ・・・・)
グリーンのワンピースを着て、リビングに出てきたアスカ。
「あのさ、アスカ」
「なに? もう行くの?」
「あの・・・僕、ちょっと行く所あるんだけど・・・・一緒に行く?それとも待ち合わせにする?」
「どこ行くのよ?」
「う〜ん、ちょっとね」
「あっそ!いいわ、ついてってあげる」
二人は家を出た。空は雲一つない、絶好のデート日和。
電車に揺られ、少し歩いたら、目的の場所についたらしい。シンジの足が止まった。
その手には、来る途中で買った花束が握られていた。
「ここ・・・・墓地?」
「うん、今日は母さんの命日だから・・・」
「・・・・・・」
アスカは墓参りという物をしたことがなかった。一人で生きると言ったアスカにとって、自分を捨てた母親は憎いだけの存在だった。
「ちょっと、ここで待ってて。」
そういうとシンジは走り出した。
「あ・・・アタシも行く!」
アスカもシンジを追って走り出した。
少し走ったら、人影が見えた。
近づいたところで、シンジの足は止まる。
「・・・父さん・・・」
「・・・・シンジか・・・」
続いてアスカが追いつく。
「・・・え、碇司令・・・」
後ろで呆然としているアスカを置いて、シンジは母親の墓標の前に立った。
花束を前に置き、手を合わせる。
「・・・父さん」
母の墓標を見つめたまま、シンジが話しかけた。
「なんだ。」
「母さんは・・・・・戻ってこないよ。たとえ計画が成功してもね。」
「!!!」
「父さんの計画は・・・・他人を巻き込みすぎる。みんな不幸にしかならないよ・・・」
「だが、やるしかない。もう後戻りはできん。」
「僕は・・・・止めてみせる。」
「フ、覚えておこう・・・・」
ゲンドウの後ろにネルフの専用機が舞い降りる。
「時間だ・・・・先に帰る。」
二人は、飛び立っていく専用機を眺めていた。やがて、シンジはアスカの方に振り向く。
「行こうか。」
「・・・・うん」
「ごめんね、変な事に付き合わせて・・・・さっきのこと、忘れてよ」
「・・・・うん」
そして二人は歩き出した。
遊園地に着いたのは正午過ぎ。食事を摂った二人は、乗り物完全制覇に向かった。とはいえ流石に無理があるので、面白そうな物から乗っていった。
「シンジ、あれ乗ろう!あれ!」
「え〜!」
「きゃあああああああ!」
「ーーーーーーーーッ!」
「あうぅぅ」
「なによ。情けないわね」
「うぅぅ、じゃあ、次はあそこ!」
「ゲッ」
ドサ、ガコ、うらめしや〜
「きゃーーー!きゃあぁぁぁぁ!」
ぎゅっ
「・・・・・・(結構いいかも)」
「あ〜怖かった!じゃあ、次行ってみよー」
・
・
・
・
観覧車の中・・・・
既に夕日が辺りを包んでいた。シンジとアスカは、観覧車の窓から、夕日に染まる街を眺めていた。
「きれいね・・・」
「うん、そうだね」
「ねぇ、シンジ・・・・」
「ん・・・」
「アタシ、遊園地なんて・・・・今日、初めて来たんだ。いままで、訓練とかばっかりだったから・・・」
「そう・・・」
「今日は・・・・何年分も笑ったわ・・・・」
「うん、よかった」
アスカはシンジに向き直った。
「アンタには・・・・迷惑ばっかりかけるわね」
「・・・・・・」
「マグマに落ちたときも、使徒を受け止めたときも・・・・・」
「・・・・うん」
「だから・・・・・その・・・・・あのね・・・」
「なに? アスカ」
「あーーっ!もうっ、何でもないわよ! バカシンジ!!」
「なんだよ!それ」
そういって、シンジは微笑んだ。
「また、いつか・・・・来ようか。」
「うんっ!」
(ありがと!シンジ・・・・)
アスカは微笑む。二人の笑顔が、夕日の中に溶けていった。
葛城家・・・・
夕食を食べ終わったアスカが、テーブルにつぶれている。シンジはS−DATを聞いていた。
「は〜、ヒマね〜」
アスカはシンジを見つめていた。少しの静寂・・・・
そしてニヤリと笑う少女。
「ねぇ、シンジ〜。 キスしようか」
「・・・・・遠慮しとくよ。」
シンジは耳からイヤホンを外すと、哀しそうな顔で下を向いた。
「お母さんの命日だから、女の子とキスするのはイヤ?」
「べつに・・・・」
「それとも恐いの〜?」
「・・・・・・・」
「アンタのことだから、キスなんてしたことないんでしょ?」
ビクッと、一瞬シンジの肩が震える。だが顔は俯いたままだ。
「・・・・ないんでしょ」
「・・・・・・・」
「・・・・・あるの?」
「・・・・・・・」
既にアスカの顔に笑顔はない。
「へ、へー・・・シンジなんかとキスしてくれる物好きもいたんだ。・・・どんな娘?」
「・・・・うん。・・・・我が侭で意地っ張りなんだけど、ホントは優しくて・・・・淋しがり屋で・・・・普通の・・・女の子だった」
さらに俯くシンジ。もう表情は見えない。
「あっそ!だったら、今日のデートも・・・・その娘と行けばよかったじゃないっ!!」
アスカは立ち上がり、肩をふるわせている。それは、怒りからなのか、それとも悲しさからなのか、アスカ自身にも分からなかった。
「・・・・・・もう・・・ないよ」
「なにっ!」
ドンッ シンジの握りしめた拳が、床を叩いた。
「もう・・・・いないんだよ!!」
「・・・えっ」
シンジは自分の両手を睨みつける。そのときアスカは初めて見た。シンジの怒鳴るような声、怒っているような・・・・哀しそうな瞳。
「もう、彼女は死んだ! 死んだんだ!!!」
「シ、シンジ?」
「この手が・・・・僕が・・・殺した。殺したんだよ!!」
僕が・・・ころしたんだ・・・・
第三話 終
あとがき
はい!第三話、終了でございます。
なんだかどんどんダークになっていきますね。
これからもダークが続くと思います。たぶん・・・・
感想、文句、遠慮なく送りつけて下さい。
では、次回が気になる皆様に・・・・え?そんなのいない?まーそう言わずに。
〜 予告! 〜
ディラックの海から帰還したシンジ君。休むヒマもなく次の使徒が・・・・・
ところが、いつもと違う使徒の出現にとまどうシンジ。
使徒の攻撃によりシンジ君は・・・・・
さて、次回もサービス、サービスっ!
by 碇ゲンドウ
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