僕が殺したんだ!

 

見たことのないシンジの剣幕に、アスカはただ立ちつくしていた。

シンジの気持ちが、アスカには少し分かった気がした。

いつも冷静だったシンジ。

だが、笑っている時も、怒っている時も、シンジは寂しそうだった。

きっと、心の底から笑ったことはないのだろうと、アスカは思った。

作った笑顔・・・・それしか見たことがないと思うと、悲しかった。

 

アスカはシンジに体を寄せた。シンジの表情は見えないが、その頬を涙がつたっていた。

胸が締め付けられるような想い。そして・・・・・

 

アスカにとってはファーストキス。何故かは分からない、体が勝手に動いていた。

・・・・・・・・・・

唇が離れる・・・・・

アスカは立ち上がり、シンジを見つめた。

シンジは俯いたまま。

 

「・・・・もう、苦しまないで・・・・・アタシも辛いから・・・・」

そう呟くと、紅くなった顔を隠すように、アスカは自分の部屋に入っていった。

 

 

それから数日間、アスカはシンジを避けていた。

あんな事をしてしまった自分に、アスカ自身も驚いていたが、どんな顔でシンジと話せばいいのか分からなかった。

シンジも考え事をする時間が多くなった。

もちろん学校では、ひやかす者、心配する者、嬉しがる者など多種多様だったが。

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

いつもここから...

 

第四話

彼女の傷跡!?

 

 

 

 

少年は、目を開ける。見覚えのある天井、消毒液と病院独特の臭い。何度かお世話になったベッド。シンジは手の臭いをかぐと、きつく握りしめた。

(進歩ないな・・・・僕も・・・・)

 

 

 <10時間前>

 シンジはエヴァと共にディラックの海を漂っていた。

 何もない空間、虚数の世界・・・・

 そこでシンジは、自分に出会う。

 

 暗い空間に立っているプラグスーツのシンジ。その前には、制服姿のシンジが立っていた。

 『また、会えたね。』

 「・・・・・うん」

 『会いたくなかった?』

 「・・・・かもね」

 『そう・・・・でも、僕は君だよ。君は僕。』

 「聞いたよ。何度も・・・・」

 『そうだね。また戻るの?彼女の所へ』

 「・・・・・うん」

 『君もわかっている筈だろ。今回は、今迄とは違うという事に。』

 「・・・・・・・」

 『辛い事になるかもしれない。その覚悟があるなら・・・・戻ればいい・・・・』

 「うん」

 『ハァ。君はいつも心配の種だよ・・・・・』

 「・・・・・ごめんね」

 『ま、嫌いじゃないけどね・・・・・・またね・・・・』 

  そう言って、もう一人の自分は消えた。・・・・・・

 

 

「・・・・ふう」

一つため息をつくと、再びベッドに倒れ込む。

少しぼーっとした後に、違和感に気がついた。

(そういえば・・・・いままで、綾波とアスカがお見舞に来てくれていたのに・・・・・?)

もう一度辺りを見回すが、人の気配はない。

(アスカはともかく、綾波は?)

イスの上を見るとプラグスーツが置いてある。シンジはプラグスーツに着替えると、司令室に向かって歩き出した。

 

 

<中央作戦司令室>

 プシュー

シンジが司令室に入ると、中では、作戦部長 葛城ミサト一尉と、技術部長 赤木リツコ博士が、険しい表情でモニターを見つめていた。他のオペレーター達も、休む暇なく指を動かしている。

「ミサトさん!」

「あっ、シンジ君! 大丈夫なの?」

「えぇ、もう大丈夫です。いったいどうしたんですか?」

「使徒よ!」

「えっ!?」

驚きながらもシンジは、正面のモニターを見つめる。そして目を見開いた。確かに使徒が映っていたが・・・・・

「これが・・・・使徒?」

「そうよ。第十二使徒からまだ一日しか経ってないけど、間違いなく使徒よ。第十三使徒、アラエル!」

ミサトが呟きながら見つめたスクリーンに映っていたのは、光り輝く鳥のような形をした使徒だった。

「現在は、衛星軌道上にあるわ。少しずつ近づいてるけど・・・・・」

リツコが説明するが、シンジはスクリーンを見続けていた。

(そんな・・・・確かあれは第十五使徒だったはず・・・・・なんで・・・・・今までこんな事なかったのに!)

ハッと気が付きミサトに振り向く。

「ミサトさん!アスカはっ?」

「アスカは、既に出撃しているわ。今回は長距離射撃よ。もうすぐ射程距離に入る・・・・・」

「僕も出ます!」

そう言うと、指令席のゲンドウを見上げた。

「父さんっ 槍を!!」

そして、シンジは駆け出した。

大きな不安を胸に抱きながら・・・・・・

 

 

<弐号機エントリープラグ内>

アスカは、モニターで使徒に狙いを定めていた。

冷静に振る舞っているアスカだが、本当はシンジが心配でしょうがない。

そんなとき、ミサトから通信が入る。

『アスカ、シンジ君が出るわ』

「シンジ!?大丈夫なの?」

『彼は大丈夫。それより、そっちに集中して!もうすぐ射程距離よ』

ピィーという音と共に、モニター内のカーソルが重なる。

『撃って!アスカ!!』

「了解!」

レバーを握る。弐号機の構えたライフルから、光のすじが大空に消えていった。

使徒のコアをめがけて進む光のすじ。だが寸前で、使徒のATフィールドに阻まれ、拡散する。

そして、使徒の放つ優しい光が、弐号機を包み込んだ。

「キャーーーッ」

ホワイトアウト・・・・・・

 

 

暗い空間・・・・・アスカは其処に一人でいた。

目の前には、扉が一つあった。

(ここはどこ?見覚えが・・・・・)

『ママ〜』

懐かしい声が聞こえてきた。

『アタシ一番になったよ〜』

一人の少女が、アスカの前を通り過ぎて扉を開く。

「そんな・・・・・いやぁぁぁぁぁ

『エヴァのパイロットに選ばれたの』

次々と扉を開けていく。

「やめて!開けないでっ!!」

『だからアタシを見て!!』

「いや!見ちゃだめっ!!」

少女が最後の扉を開く

『!!!!!』

目の前で・・・・足が揺れていた・・・・・

昔見た光景・・・・・

其処にあるのは・・・・悲しみ、憎しみ、そして絶望・・・・

アスカは目を伏せた。

『アスカちゃん、一緒に死んでちょうだい・・・・』

声が聞こえる・・・・

「いやっ!死ぬのはいや!」

『一緒に死んで・・・・・』

「もういらないっ!過去も・・・・ママも・・・・・何も要らない!!」

『・・・・そう・・・・』

「そうよっ!アタシは一人で生きていくの!!」

『・・・・・アスカ・・・・』

「うるさいっ」

『・・・・・僕はもう・・・・要らないんだね・・・・』

「えっ!?」

アスカが顔を上げると、その瞳に映ったのは、天井から吊られている少年の姿だった。

「ッッッッッ!!!」

 

声にならない・・・・・悲鳴

 

 

<司令室>

「アスカ!!」

「使徒、ATフィールドを展開!ダメージゼロです」

「使徒の放つ可視光線は精神波です。セカンドチルドレン、精神汚染されています。」

「プラグの強制射出!急いで!」

「だめです!信号を受け付けません」

「葛城三佐・・・・」

指令席で、いつもの格好をしたゲンドウが口を開いた。

「ドグマに降りて槍を使え・・・・・」

「しかし、それでは・・・・・」

「かまわん!レイをドグマに降ろせ」

「・・・・はっ!」

横に立っていた冬月が、ゲンドウにしか聞こえないように呟いた。

「大丈夫なのか碇、また老人達がうるさいぞ」

「問題ない」

 

「エヴァ初号機、リフトオフ」

オペレーターの声が響いた。

 

 

「アスカ!!」

地上に出たシンジが見たのは、頭部を抱えてもがき苦しんでいる弐号機の姿だった。

「くそっ!」

弐号機に駆け寄ると、そのまま突き飛ばし、地面に押さえつける。

「アスカっ!アスカ!」

必死に呼びかけるシンジ。だが、聞こえてくるのは悲鳴だけだった。

 

(もう、アスカを傷つけさせるもんか!絶対に守ってみせる)

 

そして、弐号機に覆い被さる様にしていた初号機を、使徒の精神波が襲う。

 

そしてシンジは出会う。今までの罪に・・・・・

 

シンジは見つめる・・・・心の傷を!

 

 

第四話 終

 

あとがき

・・・・・・・・・・(@_@)

「やあ、どうも!

 作者が死んでいるので、今回の後書き担当・渚カヲル(35人目)です。

 いやー、相変わらず稚拙な文章だね。この作者は!

 どう見ても自分の首を絞めてるね。まったく、好意に値しないよ。(??)

 あなたもSHINに文句を送ろう。もちろん僕は出したがね。

 じゃ、予告!

      『どうにか使徒の殲滅に成功したチルドレン達。

       だが、シンジが負った心の傷は、軽くはなかった。

       全てを拒絶するシンジと、それを見守るアスカ。

       激化する使徒との戦いの中で、シンジは立ち直ることができるのか!!

       さて、次回もサービスサービスっ!』

  ああ、次回もダークそうだ。今回の予告担当はキール議長でした。冬月先生の言ったとうり、“老人達は黙ってなかった”みたいだね。僕の出番も近いらしいし・・・・フフフ、次回にご期待ください。」


マナ:とうとうアラエルが出て来たわね。

アスカ:やばいじゃない。

マナ:アスカも悲鳴を上げてるけど、出て行ったシンジの方が危険よっ!

アスカ:覆い被さったってことは、アタシは精神攻撃から開放されたの?

マナ:どうかしら?

アスカ:シンジを守らなくちゃっ!

マナ:2人とも精神攻撃を受けてたら、大変なことになるわねぇ。

アスカ:うーん、肝心なところで引きだから、どうなったのかわからないわ。

マナ:綾波さんに期待するしかないわね。

アスカ:ファーストはどこで油売ってんのよぉっ!
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