「アスカ!シンジ君!!」

ミサトの正面のスクリーンには、弐号機を庇うように覆い被さる初号機の姿が映し出されている。

「レイは!?」

「零号機、槍を回収。地上まであと300秒です。」

「アスカ、アスカ!聞こえる?」

「セカンドチルドレン、意識がありません。」

「なんですって! 初号機は!?」

「精神汚染されています。シンクロ率低下!」

 

 

 

 

いつもここから....

第五話

”心の痛み!?“

 

 

 

「ここは・・・・・」

シンジは眩しいほど白い空間にいた。

(たしか・・・・アスカを助けようとして・・・・)

「戻らなきゃ・・・・」

『どこに戻るんや?』

突然背後から声をかけられて振り向くと、そこには親友鈴原トウジが立っている。

「ト、トウジ・・・・」

黒いプラグスーツを着たトウジは全身血だらけで、瞳は黒く濁り、死人のような顔色だ。

『ワイの足をこんなにしといて・・・・・』

トウジの片足は、膝から下がなく、血が滴り落ちていた。

「あ・・・・そんな・・・・・」

『ワイを殺そうとしたくせに・・・・・』

「こ、殺そうとなんて・・・」

『殺そうとしたくせに』

「僕じゃない!父さんが勝手にやったんだ。どうしようもなかったんだ!!」

『殺そうとしたくせに』

「ちがうっ!僕は悪くない!」

振り返って駆け出そうとするシンジ。だが・・・・

 

「あ・・・カ、カヲル君」

そこには銀髪で紅い瞳の少年が立っていた。

『君は好意に値するね』

「しかたなかったんだ・・・・」

『好きだってことさ』

「使徒だったんだ・・・・どうしようもなかった」

『僕は君に逢うために生まれてきたのかもしれない』

「逢えてうれしかった・・・・」

『生と死は等価値なんだよ』

「僕だって殺したくなかった!」

『遺言だよ』

「いやだ!」

『消してくれ・・・・・』

「もういやだっ!」

 

『バカシンジ・・・』

膝をつき、頭を抱えて悶えているシンジ。

その声に、恐る恐る頭を上げると、その少女がいた。

頭や体に包帯を巻いている。その青い瞳には、もう生気がない。

そう、見間違えるはずもない。

最初の少女・・・・・

ファーストキスの相手・・・・・

好きだった女性・・・・

そして・・・・殺した。

 

「あ・・・そ・・・・・そんな・・・」

『シンジ』

「ぼ、僕は・・・」

『シンジ・・・・苦しい』

「ご・・・ごめん・・・なさい・・・」

『くるしい・・・』

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

『クルシイ・・・』

「もう・・・ゆるして・・・」

『気持ち・・・悪い・・・・』

「もう許してっ!」

『キモチワルイ』

「やめてくれ!!」

 

 

『ワイを殺そうとした』

『消してくれ・・・・』

『くるしい・・・・』

 

「もう許してっ!誰か助けて!!」

 

殺した

人を

殺した

親友を

殺した

家族を

コロした

『アタシを・・・・』

コロシタ

 

オマエガ!!

 

「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー」

 

 

 

 

 

「零号機、地上に着きました」

「レイ、使徒を!」

『了解!』

零号機は、槍を構えて、狙いを定める。

「・・・・よくも碇君とアスカを・・・」

零号機パイロット・綾波レイは、奥歯を噛み締めると、使徒めがけてロンギヌスの槍を放った。

雲を吹き飛ばし、使徒をATフィールドごと貫いた槍は、月の衛星軌道まで飛んでいき、回収不可能となった。

「回収班、パイロットの保護!急いで!!」

ミサトの命令が響く。

動きの止まった二体のエヴァが、スクリーンに虚しく映し出されていた・・・・・・

 

 

 

あれから一週間・・・・

アスカは病院にいた。使徒との戦いから目覚めたのが四日前。すでに三日前に退院していたのだが、ミサトに、シンジが助けてくれたことと、シンジの意識がまだ戻らないことを聞き、それ以来彼女はつきっきりで看病していた。

「アスカ・・・・」

疲れが溜まり、シンジの側で眠っていたアスカは、ビックリして跳ね起きる。だが、その声は、手を握っている少年から発せられたものではなかった。

「なんだ、ミサト・・・」

ベッドを挟んで反対側に、ネルフの制服を着たミサトが立っていた。疲れと心配からか、顔色が悪い。

「アスカ・・・・帰りましょ。あなた・・・無理しすぎよ。」

「いや・・・・アタシはここにいる・・・・」

ミサトに言ったのか、それともシンジに言ったのか・・・・・アスカは、少年の寝顔を悲しそうに眺めていた。

「このままじゃ、あなたが入院しちゃうわよ」

「でも・・・・・」

「シンジ君のことは、先生に任せましょ。また来ればいいじゃない」

「・・・・・うん」

アスカは立ち上がり、部屋を出ようとするミサトに着いていく。しかし、その視線は部屋を出るまで、シンジから逸れることはなかった。

少年の笑顔に、また逢えることを祈って・・・・・

 

 

 

そして、三日後

ミサトの運転する、ブルーの車が道路を走っていく。制限速度など、どこ吹く風である。

助手席にはアスカが座っている。窓の外を流れる風景を眺めているが、その顔に笑顔はない。

 

アスカは、病院から帰った日から、必要なとき以外は、部屋にこもっていた。

原因はわかっていた。シンジのことだ。

 シンジのことを避けていた自分

 シンジがディラックの海に取り込まれても何もできなかった自分

 今度のことも、元はと言えば、自分を庇ったため・・・・・・

 後に残るのは、後悔・・・・・・

アスカが、日を追うごとにやつれていくのは、ミサトにもわかった。

だが、どうしようもない。

そんなとき、葛城家の電話が耳障りな音をたてる。

シンジの意識が戻ったとの知らせ。ネルフからだった。

受話器を叩きつけたミサトは、『許可無く入ったら殺す』と書かれたフスマを開け、事情を話し、病院に急いだ。

 

病院に着くとシンジの病室まで猛ダッシュ。「廊下を走るな〜」という白衣の天使の叫び声は、奇人の如き二人の女性の耳には入らない。”碇シンジ”と名札のついたドアを乱暴に開けるアスカ。

ゴチーン!☆!☆!!

「「イッタ〜い!」」

同時に出てきたリツコに、思いっ切りぶつかってしまった。

「リツコ、シンジ君は?」

尻餅をつきながら頭をさする二人を見て、少し冷静さを取り戻したミサトが聞いた。

「いたたた・・・・シンジ君ね・・・・ちょっと二人とも話があるんだけど」

「あたた・・・・そんなの、シンジに逢ってからでもいいでしょ。」

「それがね〜。今、面会謝絶なのよ。」

「ちょ、ちょっと・・・・意識は戻ったんじゃないの?」

「体はもう大丈夫なんだけど、精神不安定でね」

 

病室の前のベンチに腰掛けて、買ってきたコーヒーをすすると、

「やっぱ、コーヒーはUCCに限るわね」

場を和ませようとして言ったリツコだが、青鬼と赤鬼に睨まれ、少し・・・・いや、かなりビビった。

「それで、シンジは?」

アスカが聞いた。

 

「シンジ君ね、話し掛けても全然反応しないのよ。ずっと、”ごめんなさい”とか”ゆるして”とか呟いてるだけで。」

「そう・・・でも、逢ってみないとどうしようもないでしょう」

「まあ、そうなんだけど・・・・」

リツコは立ち上がると、二人を病室に入れた。

 

部屋には、ベッドが一つ。そこにはシンジが、いわゆる体育座りというやつで、膝を抱えて座っていた。

「シンジ君・・・・」

ミサトが話し掛けるが、シンジの反応はない。

「(ぶつぶつ)・・・・ごめんなさい・・・もう、ゆるして・・・・(ぶつぶつ)」

虚ろな瞳でそう呟くだけだった。アスカは、少年の正面に立つと腰に手を当てて、大きく息を吸い込んだ。

「バカシンジ!さっさと帰ってきなさいよね!」

 ビクッ

少年は目を見開いた。

「あ・・・そんな・・・何で・・・・」

「?シンジ?」

「わーーー!!もう許して!!許してよ!!」

シンジは、頭を抱えて叫んだ。

「ちょっと・・・シンジ!!」

胸ぐらを掴み、ガクガクと前後に揺さぶる。

「ごめん!!ごめんなさい!!」

「シンジ!シンジ!!」

「もうやめて!ゆるして!!」

「アスカ、やめなさい」

ミサトがアスカを羽交い締めにし、病室から連れ出す。リツコは、注射器を取り出すと、シンジに鎮静剤を打った。

 

「シンジ・・・・・」

既に半べそ状態のアスカは、ミサトとベンチに座っていた。

 

その後、二人はリツコに説明を受けた。

彼女は話では、シンジは使徒の攻撃によって、辛い記憶を引っぱり出されて、それにより精神崩壊寸前だという。

アスカには心当たりがあったが、どうすることもできなかった。

結局、ここにいてもどうしようもないということで、アスカとミサトはいったん引き上げることにした。

家に着いてからも、アスカは泣きやむことがなかった。

 

アスカは想う。

いつからこうなったんだろう・・・・・

いつから狂ってしまったんだろう。

今日見た少年は、アスカの知っているシンジではなかった。

シンジの弱い部分を、初めて見た気がする。

いつもは、強がっていても・・・・・

 

そう、まだ14才の少年なのだと・・・・・・

 

 

シンジが病院を抜け出したとの知らせが来たのは、その日の夕方だった・・・・・・

 

 

第五話 終

 

あとがき

すいません、遅くなってしまいました。

言い訳させていただくと、先日PCが、ぶっ壊れまして・・・・

後から書こうと思っていた感想メールをくださった方々のメールアドレスが吹っ飛んでしまいました。

って言っても、片手で数えるくらいしかいませんが・・・・数の問題じゃないですね。ごめんなさい!

このバカなSHINにもう一度チャンスを!!誰でもいいので感想ください。お返事、すぐ書きます。

あ、そう言えば前回の予告まで進んでない(汗・・・)すいません!すいません!(泣)m(T_T)m


マナ:まさか、シンジがこんなことになっちゃうなんて・・・。

アスカ:アタシを守る為にシンジが・・・。どうしよう。

マナ:精神的な問題となると難しいわねぇ。

アスカ:このままエヴァシリーズが来るまで、アタシの時みたいに壊れちゃうのかしら。

マナ:そうっ! それよっ!

アスカ:なに? え? それ?

マナ:シンジがこのまま病室から出れなかったら、ホモ使徒の餌食にならないわっ!(^^v

アスカ:なーるっ! \(^O^)/

マナ:万事解決よっ! アハハハハハハっ!(^^v

アスカ:本当だわっ! ワハハハハハハっ!(^^v

レイ:あなた達。間違ってる気がする。(ーー)
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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