「ドイツから国際電話。アスカに、お母さんから・・・・」

 

 

いつもここから....

第十話

“最後の決意!?”

 

 

 

受話器を受け取り話し出すアスカ。(以下の会話はドイツ語)

『アスカちゃん、元気にしてる?』

「まあね。そっちはどう?」

『アスカちゃんが居なくなってつまんないわ。いつ帰ってくるの?』

「う〜ん、それが・・・・・」

 

『ふーん、帰りたくないの?仲のいい男の子でも出来た?』

「あ、アイツはそんなんじゃ・・・・・」

『へぇ、じゃあ帰ってきても問題ないわよね』

「あのっ、でも・・・・・わっ、私には将来を誓い合った人がいるのっ!だから帰れないわっ!」

『そーお?!お幸せに〜〜。結婚式には呼んでね。あと挨拶にも来なきゃダメよ?』

「わ、わ、わかってるわよっ!またねっ。それじゃ!」

 

Pi (ドイツ語終了)

電話を切ると、溜息が出る。

 

「家族の会話・・・・いいね」

「ま、うわっつらわね。表層的なもんよ。ホントの母親じゃないし・・・・・」

アスカは肩をすくめる。

 

「あのさ・・・・・・将来を誓い合った人って、だれ?」

「へ・・・・?」

アスカはキョトンとしていたが、みるみる絶望的な表情へと変わる。

アスカはもちろん、ミサトでさえ、シンジがドイツ語が解るということなど聞かされてはいない。

 

「あ・・・・アンタ、ドイツ語わかるの?」

 

シンジは頷いた。それと同時に、アスカは亜音速で部屋へと駆け込む。

あとには、呆然としているシンジと、ビール片手に必死で笑いを堪えているミサトが残されていた。

 

とある日常の光景・・・・・

 

 

 

<数日後>

 

黒い部屋。

ゲンドウは、円形に浮かび上がったゼーレのモノリスに囲まれていた。

 

『碇、計画は順調のようだな』

「はい、問題ありません」

『ふ、その言葉は聞き飽きたよ。君の計画はどうだ?』

 

「何のことです?」

『しらをきる必要はない。君の目的が何かはしらんが、そんな事をしていると命がいくつ在ってもたりんぞ?』

 

「お言葉の意味が分かりませんが・・・・・」

『まあ、いい・・・・・君に何を聞いても無駄のようだな』

 

その時、ゲンドウに使徒出現の報告が入る。

 

「使徒が出現しました」

『よかろう。行きたまえ』

「はっ」

ゲンドウは立ち上がり、ドアを開けて光の中へ消えていった。

 

 

ドアが閉まり、再び漆黒の空間が広がる。

『キール議長、カヲルの行方はつかめたのか?』

『いや、まだだ。だが、どうもネルフは接触していないらしい』

 

『どうするのです?これでは我々のシナリオが・・・・・』

『大丈夫だ。エヴァシリーズは既に完成している』

『では、これが最後の使徒ということになるな』

『うむ、我々のエヴァ9機に出撃命令だ』

 

『約束の時は近い・・・・・』

『そういうことだ・・・・・・』

 

『『『『『『『『シナリオどおりに・・・・』』』』』』』』

いつもの合い言葉を残し、全てのモノリスは消えていった。

だが老人達は、既にシナリオ通りではないことに気付いているのだろうか・・・・・・

痴呆かもしれない。

 

 

 

携帯電話のスイッチを切る。

「使徒を肉眼で確認、か・・・・」

車を走らせながら、作戦部長ミサトは誰に言うでもなく呟く。

その顔には、悲しみが広がっていた。

外には、大きな光る輪が、森の上を漂っている。

 

 

司令室

薄暗いその部屋には三人の人影があった。

「どうする?シンジ」

顎に手を当てて考え込んでいる少年。

 

「ゼーレの動きか・・・・・・でも、綾波を殺すわけにはいかない。計画通りに進めよう」

「わかった。だが良いのか?」

「僕は、このままでいるのは辛いんだ。・・・・・・後のことは、よろしくお願いします」

「ああ、任せておきたまえ。シンジ君」

「ありがとうございます。・・・・・・失礼します」

 

ドアから出ていくシンジ。

 

「シンジ君は、大きくなったな。碇」

「ああ・・・・・・」

ゲンドウはいつものポーズを崩さなず答えた。

「大きくなりすぎだ。彼は、本当に辛いことを受け止めるには子供すぎる。我々大人の責任だ・・・・」

「だが後悔しても仕方がありませんよ。せめて最後に、父親としてシンジの力になろうと思います」

「・・・・・父親として、か。お前の口からそんな言葉を聞くことになろうとは・・・・・・」

「人は変わるのもです。冬月先生」

そう言って、メガネを押し上げる。

 

「それも、シンジ君のおかげだな・・・・・・」

寂しそうに、冬月は呟いた。

ゲンドウはリツコと、極秘内線で話をしていた。

 

 

 

「さあ、行こう。初号機、カヲル君、力を貸して・・・・・・・」

紫の鎧で覆われた巨人の目が、鈍く光る。

 

「初号機、弐号機、起動しました」

「両機発進準備OK!」

オペレーターがミサトの指示を仰ぐ。

ミサトは怪訝そうな顔で隣に立つリツコに話し掛ける。

「零号機は?どうしたの?」

「緊急検査中よ。碇司令の命令でね」

「どういうこと?」

「さあ・・・・・?」

リツコは手に持った資料の束をめくりながら、無関心のように答えた。

だが、ミサトには分かる。彼女と長く居るからこそ、本音と建前の区別がつくのだ。

「いいわ。初号機はオフェンス、弐号機はバックアップ。出撃!!」

 

アスカのわめき声を無視して、初号機は使徒の側、弐号機は第三新東京市の街中でリフトオフする。

 

その時・・・・・

使徒が、その輪を解き、初号機に襲いかかった。

だが、初号機は動けない。いや、動かないのか・・・・・・・・

それが当然とでもいうように、あっさりと使徒が初号機の左胸に接触する。

そして、その部分から使徒が浸食を開始する。

「使徒が積極的に一時的接触を試みているの?」

「シンジ君!!」

もちろんそれはパイロットであるシンジにも襲いかかる。

しかし少年は、胸を浸食されながらも、微動だにしない。

 

 

「初号機生体部品、浸食されています」

「アスカ、出撃よ!どうしたの!?」

『動かない・・・・・動かないのよっ!!』

発令所のモニターには、俯きながらレバーを必死に動かすアスカの姿が映っていた。

 

 

初号機、シンジの意識内・・・・・

 

シンジは、紅い海の上に立っている。

そして、その中からもう一人の自分が出てきた。

 

「僕と一つにならない?」

「君は、もう一人の僕?」

「僕は僕さ」

「そう・・・・・」

 

「苦しい?」

「・・・・・・・」

「痛い?」

「・・・・・・・」

「逃げるの?」

「・・・・もういやなんだ」

「また逃げるの?」

「いやなんだよ・・・・・」

「解放されるの?」

「そう、解放される。全てから・・・・・」

「それでいいの?」

「いい、それでいい・・・・・」

「僕と一つにならない?」

「僕は・・・・・・」

 

もう一人のシンジが近づいてくる。

だが、紅い光に遮られた。

その顔に驚きの色が浮かぶ。

「ATフィールド!?」

 

「まだ、シンジ君を連れて行かれては困るんだ」

どこからか声が響き、もう一人のシンジが崩れ落ちていく。

シンジはその光景を、ただ憮然と見つめていた。

 

「シンジ君、予定より早い。僕はもう行かなくちゃ・・・・・・」

「もう?」

「僕が消えたことで、計画が狂ったんだろうね」

「そうか・・・・・お別れだね」

「力は残していくよ。君の計画に必要だ・・・・・・・」

「ありがとう、カヲル君」

「いいよ、シンジ君。君に逢えて嬉しかった」

 

「僕もだよ・・・・・」

 

 

 

「パターン消えました!!」

「使徒、消滅!」

オペレーター達の指が忙しなく動く。

「消えた?」

「どういうこと?」

ミサトとリツコが顔を見合わす。

モニターには、たたずむ初号機が映し出されていた。

胸に刺さるように接触していた使徒の姿は、既に無い。

 

「シンジ大丈夫なの?」

「碇君・・・・・」

心配そうな二人の声が、初号機に届く。

「大丈夫だよ。アスカ、綾波」

シンジはゆっくり目を開けると、微笑んだ。

 

 

ピーーーーッ!

発令所内に電子音が鳴り響く。

「飛行物体接近中。距離三万。1・・・2・・・3・・・・・9体です」

「使徒?」

「パターンオレンジ、確認できません」

「でも、使徒ってあと一体なんじゃないの?」

ミサトとリツコにも、不安と疑問の表情が重なる。

 

指令席のゲンドウは、相変わらずのポーズをとっていた。

「早いな、委員会の反応は・・・・・・・」

「ああ・・・・・」

「いいのか?」

「かまわん」

 

 

「目標物体、上昇中!速い・・・・・宇宙空間に出ます」

 

「な!?目標消滅しました!」

「消滅?どうしたのかしら」

「なんなの、いったい・・・・・」

もう発令所は大混乱だった。

その中に、ゲンドウの命令が響きわたる。

「MAGIから、先ほどの情報を削除しろ!探知機のミスだ!!」

納得いかないという表情のまま、発令所は落ち着きを取り戻した。

 

「委員会が黙ってないぞ。碇」

「我々は何もしておらん。それに、老人達も自分の愚かさに気が付くだろう。既に刺客は差し向けてある」

「彼か・・・・・・」

「ああ・・・・・」

「終わったのか?」

「いや、始まったのだ。これから忙しくなりますよ、冬月先生」

「先生か・・・・・」

冬月は誰にも聞こえないように、そっと呟く。

 

 

シンジは初号機から降りると、溜息をひとつ吐いた。

 

 

自分の右手を見つめ、・・・・・握りしめた。

 

そして、自虐的な笑みを浮かべる。

 

それが何を意味するのか・・・・・・

 

   使徒は、あと一体。

 

   少年のシナリオが、動き出した・・・・・・・

 

第十話 終

 

 

〜〜後書き〜〜
毎度毎度、駄文に付き合っていただき、ありがとうございます。
なんだか強引なストーリー展開が目立ってきたのが、自分でも分かります。(汗)
もうクライマックスです。あと二話ほどで終了予定!<たぶん短いですけど・・・・・・
感想、励まし、文句、注文等のメールくれると、とっても嬉しいです。
あと少し、皆さん付き合って下さい。   SHINでした。


マナ:アルミサエルはいいけど、最後の使徒はどうなるのかしら?

アスカ:やっぱり、カヲルが出てくるんじゃない?

マナ:でも渚くんって、仲間でしょ?

アスカ:仲間のカヲルと、使徒のカヲルが一緒とは限らないんじゃない?

マナ:それはそうだけど・・・。

アスカ:シンジはいったい何を考えてんのかしらねぇ。

マナ:なかなかわからないわね。

アスカ:でもさ。きっと今回は、うまくやってくれると思うわ。

マナ:信じたいわねぇ。

アスカ:アタシも頑張ってシンジを応援しなくちゃっ。
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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