「終わった・・・・・・全て終わった・・・・・・」
『終わってない』
「もう使徒はいないんだよ」
『いるさ。まだね・・・・・・』
「それでいいのかい?」
『もう決めたことだ・・・・・・・』
いつもここから....
第十一話
”最後の使徒!?”
朝
眠い目を擦りながら、紅茶色の少女が自室から出てきた。
それを迎えるのはエプロン姿が妙に似合う少年。
もはやいつもの朝の風景。
戦いという特殊な状況の中で、二人にとってこの日常はとても貴重なのだ。
「おはよう、アスカ」
眩しい・・・・眩しいのは朝日ではなく、少年の笑顔だったりするので、アスカは少し頬を染める。
「お、おはよっ、シンジ。シャワー浴びてくる」
ドタドタとバスルームに駆け込んで、熱めのシャワーを頭から被る。
(うう・・・・・・まともに顔見れないぃ・・・・・)
わしゃわしゃと頭を擦る。
髪を拭きながら風呂場から出ると、キッチンのテーブルの上には朝食が並んでいた。
そして反対側の椅子にはシンジがニコニコしながら座っている。
アスカは席に着き、朝食を食べ始める。
が、シンジの視線は彼女から逸れることはなかった。
チラっとシンジを見る。こちらを見ている。目を逸らす。
(な、なによ・・・・・なんだってーのよっ!)
どんどん頭に血がのぼり、クラクラしてくる。
「アスカ、今日ヒマ?」
「へ?・・・ヒマだけど」
突然の問いかけに、素直に反応してしまうアスカ。
「出かけない?」
「は?」
「おでかけ」
「誰と?」
「僕と」
「誰が?」
「アスカが」
「何処に?」
「新横須賀・・・・・だけど」
「・・・・・なんで?」
「・・・・・行きたく・・・・・ないの?」
「ま、まーヒマだしね。しょーがないから付き合ってあげるわ」
「ありがと」
朝食を終えたアスカが、自室の鏡の前で服を片手に悩んでいる。
(まったく、急に誘うんだから・・・・・・こっちにも準備ってもんがあるのよ。バカシンジ)
心の中で文句は言っているが、その顔は・・・・・・頬は緩み、口は両端がつり上がり、目尻は垂れっぱなしである。
鼻歌でも聞こえてきそうな程、機嫌が良い。
結局、薄いクリーム色のワンピース。唇には淡いルージュ。
フッと机の上を見ると、ほったらかしになっていたペンダントが眼にはいる。
シンジから渡されたペンダント。
母親の形見。
それは、机の奥のケースにしまってあった筈だった。
「ま、いいか・・・・」
手に取りしばらく見つめた後、首に着ける。
「これって・・・・・・」
そう呟いた彼女の目の前には、巨大な空母が横付けされている。
正規空母「Over The Rainbow」
「ここに来てるって聞いたから・・・・・嫌だった?」
隣で巨大な船体を見上げながら、シンジが言った。
もちろん情報提供者はミリタリーオタクのメガネである。
「嫌なわけ、無いじゃない」
視線はてっぺんを見上げたまま、アスカは答えた。
「そっか、よかった。じゃ、乗ろう」
「いいの?」
「許可は取ってあるから・・・・・」
シンジはアスカの手を取り、空母に乗り込む。
それからアスカは、艦内中シンジを連れ回した。
食堂、エレベータ、そしてエスカレータ。
鮮明に想い出す。
あの日を・・・・・・
<ネルフ本部>
司令室・・・・・
「碇指令!どういうことですか!チルドレン二人がいない時に使徒が来たら・・・・・・」
「大丈夫だ、葛城三佐。問題ない」
「し、しかし・・・・・」
「今はシンジ君の好きにさせてやってくれ。それが唯一我々に出来る償いなのだ」
横に立つ冬月が口を挟む。
「彼から連絡はきたか?葛城三佐」
「ええ、任務完了・・・・・だそうです」
「そうか。君にも彼にも苦労をかけた」
ミサトは、ゲンドウの言葉に一瞬自分の耳を疑う。
ゲンドウは前に組んでいた腕を解き、顔を上げる。
「明後日をもって、NERVは解散する。その後は残務処理に当たってくれ」
「なっ!使徒はまだ・・・・・・」
突然の事に言葉を失う。だが、目の前のこの男が冗談を言うとは思わない。
「問題ない。最後の・・・・・・使徒は、明日だ。葛城三佐、よろしく頼む」
「は、はい・・・・・」
ミサトはそう答えるしかなかった。
<空母OTR>
二人は甲板の上に出てきていた。
頭上には抜けるような青空が広がっている。
そう、あの日そのままに・・・・・・
「ここだったよね」
「・・・・・そうね」
「ここで初めて、アスカに逢ったんだ」
「ここで初めて、シンジに逢ったの」
二人は向き合いながら微笑む。
そう、二人の出会いは・・・・・いつもここから・・・・・・
その時、一陣の風が・・・・・・
彼女のスカートを巻き上げる。
・・・・・・・・
赤くなったシンジは、当然次に来るだろうと思われる衝撃に備えて目を瞑る。
が、
シンジが感じたのは、唇の暖かく柔らかい感触だけだった。
「見物料よ、安いもんでしょ?」
頬を赤く染めた少女が、照れ隠しに呟く。
そんな二人を、青い空が何時までも見守っていた。
いま、ここにある幸せ。
こんな時間が何時までも続きますように・・・・・・
<翌日>
それは、突然起こった。
「パターン青、使徒です!」
「どこ!?」
「セントラルドグマ・・・・・」
「なんですって!?」
モニターには、17thANGELと表示されていた。
「カメラは?」
ミサトが叫ぶ。
「あらゆるモニターが作動しません」
「エヴァは!?」
「両機発進準備完了。弐号機起動中、零号機と初号機は・・・・・・パイロットがいません!」
「なんで!?シンジ君とレイはどうしたの?」
リツコが叫ぶ
「ロストした、と諜報部から連絡が入っています」
「何やってんのよ、アイツらは・・・・・」
「どうするの、ミサト」
「仕方ないわ。弐号機出撃! アスカ、聞こえる?」
モニターに映るアスカに向かって、ミサトが話し掛ける。
『やっと出番が来たのね』
「そうよ、シンジ君達がいないから一人でお願い。何とか頑張って・・・・・・」
『まったく、シンジは何やってんのよ。・・・・・・・OK、ミサト。これで終わりにするわ』
モニターに移るアスカの横顔に、今までにないたくましさを感じる。
それは支えてくれる者が居るから・・・・・・・・
弐号機は、ものすごい速さでセントラルドグマを降りていった。
下に着くと、既に開いていた大きなドアの向こうに、張り付けにされた巨人とその前に浮かぶ人影が見える。
「あれが、使徒・・・・・最後の・・・・・・」
アスカはレバーを握り直すと、弐号機を走らせた。
ドアをくぐる。
その向こうに待っているのは、
天国か地獄か、
それとも・・・・・・辛い現実なのかもしれない。
第十一話 終
後書き
どうも、駄文書きのSHINです。 さてさて、次回最終話です。
連載始めて2ヶ月ちょい。早いものです。次回は短くなりそう・・・・・・・しかも難しそう。
少し遅れるかもしれませんが、しばしお待ちを。
感想くれたら早くなるかも・・・・・・・・返送率100%!
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