下に着くと、既に開いていた大きなドアの向こうに、張り付けにされた巨人とその前に浮かぶ人影が見える。

「あれが、使徒・・・・・最後の・・・・・・」

アスカはレバーを握り直すと、弐号機を走らせた。

ドアをくぐる。

 

いつもここから....

最終話

命の選択を!”

 

 

二号機が地面に踏ん張り、ブレーキをかけた。

と、同時に右手を伸ばす。

宙に浮く”使徒”に向かって・・・・・・・

 

ゆっくりと振り返る。

 

つかむ。

 

赤い腕が・・・・・

 

その手の中には、

 

少年・・・・・・・

 

 

「!!」

彼女の瞳が大きく開かれた。

驚愕・・・・・

 

「シン・・・・ジ!?」

 

「待っていたよ。アスカ」

少年は微笑み、優しく語りかける。

 

歌はいいね

 

「な、なんでシンジが・・・・・・・」

 

「それは、僕が使徒だから・・・・・」

 

「!・・・・そんな・・・・・」

 

歌は心を潤してくれる 

 

「最後の使徒・・・・・」

 

リリンの生みだした文化の極みだよ

 

「うそ・・・・・・・」

 

 

「これで全てが・・・・終わるんだ」

 

カヲルでいいよ。碇君

 

「・・・・・・・」

俯いた彼女の表情は、もう見えない。

 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

 

「なんで・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「なんでっ、シンジが死ななくちゃいけないのよっ!」

 

「・・・・・・・」

 

僕は君ともっと話がしたいな

 

「なんで・・・・・なんでよ・・・・・」

 

「それは・・・・・僕が望んだこと」

 

一次的接触を極端に避けるね、君は

 

「!!?」

 

「毎晩・・・・・・夢を見るんだ・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「みんな、消える夢・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「そして僕だけが残る」

 

「・・・・・・・」

 

「ぼくが、消したんだ」

 

「・・・・・・・」

 

「すべてを・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

怖いのかい?人と触れあうのが

 

「怖いよ」

 

「夢の話でしょ?」

 

「・・・・・どうかな」

 

「どういうこと?」

 

「僕はもう死んだよ。今まで、生きているフリをしてただけ・・・・・」

 

「え・・・・・?」

 

他人を知らなければ、裏切られることも、たがいに傷つけあうこともない

 

「今まで、周りに流されて生きただけ」

 

「・・・・・・・」

 

でも寂しさを忘れることもないよ

 

「ただ、言われるままに生きただけ」

 

「・・・・・アンタ、バカぁ!」

 

「・・・・・・・・・」

 

「アンタ生きてるでしょ。これから生きればいいじゃないっ!」

 

 

つねに人間は心に痛みを感じている

 

「僕はもう人間じゃない。使徒だ」

 

「!」

 

心が痛がりだから、生きるのもつらいと感じる

 

 

「人類の、ネルフの、そして・・・・・アスカの敵だ」

 

 

ガラスのように繊細だね。とくに君の心は・・・・

 

 

「・・・・そんなこと、どーだっていいのよ!」

 

「・・・・・・・・」

 

好意に値するよ

 

「アンタは碇シンジでしょ!」

「・・・・・・・・」

 

 

好きってことさ

 

「それでいいじゃない!」

 

 

「・・・・・・・そう、好きだよ」

 

「え?」

 

人間が嫌いなのかい?

 

「ずっと好きだったんだ・・・・・・アスカ」

 

「な・・・・なにをっ・・・・」

 

僕は      

 

「僕は、君の逢うために生まれてきたのかもしれない」

 

「シンジ・・・・・・」

 

「でも・・・・・・」

 

待っていたよ、シンジ君

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「だからこそ、自分が許せなかったんだ」

 

なんぴとにも犯されざる、聖なる領域

 

「・・・・・・・・」

 

「僕の血が、意志が、存在が・・・・・」

 

心の光

 

「・・・・・・・・」

 

「死ぬことを・・・・殺されることを、求めていた」

 

 

リリンにもわかっているんだろう。誰もが持っている心の壁だということを

 

 

「・・・・・・え?」

 

「怖かったんだ。この世界が・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「流されていくこの世界・・・・・!」

 

 

僕が生き続けることが、僕の運命だからだよ

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「イヤだったんだ・・・・・・・だからコワした」

 

 

結果、人が滅びてもね

 

「・・・・・・・・・・・」

 

「でも、何度やり直しても・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・え?」

 

「悪夢は消えない。何度世界を救っても・・・・・・・・」

 

「な・・・・・なに?」

 

「そして気付いたんだ。悪夢が消えないなら、僕が消えればいい」

 

生と死は等価値なんだ

 

「な、なにを・・・・・・・」

 

「それが”唯一の自由”という意味」

 

「・・・・・シン・・・・ジ?」

 

「僕の犯した罪を償うには・・・・・・これしかないよ」

 

「なにを・・・・・言っているの?」

 

遺言だよ

 

「・・・・・・・遺言だよ」

 

「!!」

 

 

シンジは上を見上げる。

赤い瞳の少女が、悲しそうに立っていた。

頬を伝う涙を気にもせず、ただ少年を見つめている。

彼女に微笑む。

 

そして弐号機・・・・アスカに・・・・・・

 

 

ゆっくり目を閉じ

 

そして

 

 

 

「さあ、僕を・・・・・消してくれ」

 

「・・・・・・・・いや」

 

「アスカ・・・・・・」

 

「アンタだけ死ぬなんて、絶対許さないわよ。バカシンジ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「アタシを・・・・・・一人にする気?」

 

「大丈夫だよ」

 

「大丈夫じゃないわよっ!!そんなの・・・・・・・」

 

アスカは手を開こうと、レバーを動かす。

「そんなの絶対イヤっ!」

 

 

だが、弐号機は握ったまま。

 

 

自分の手じゃない感覚・・・・

「なんでっ!どうして動かないのよっ!」

ガチャガチャと動かす。

 

 

「ダメッ!!絶対ダメぇぇぇっっ!」

 

 

  君たちには未来が必要だ

 

「ごめんね、アスカ」

 

「イヤっ!シンジっ!!」

 

 

ありがとう       

 

「ありがとう。君に逢えてうれしかったよ。・・・・・アスカ」

 

「やだっ!イヤだよっ!・・・シンジっ、シンジぃ!」

 

 

 

 

 

 

 

そして    

 

 

鈍い音と共に    

 

LCLに波紋が広がる    

 

 

 

 

湖の畔に

 

 

首の無い天使の像が

 

佇んでいた。

 

 

 

 

 

最終話 完 

 


後書きは長くなりそうなので『投稿作家様のコーナー』で!

いちおう終了なので、読まれた方は感想お願いします。


マナ:ガーン。(TOT)

アスカ:最後のシ者って・・・いやぁぁぁぁぁっ!!!(TOT)

マナ:まさか、こんな真相だったなんて・・・。

アスカ:これは、夢よ。きっとそうよっ! 夢よっ!

マナ:で、でもさ。エピローグがあるとかないとか・・・。

アスカ:わかったわっ!

マナ:なにが?

アスカ:あれはシンジじゃないのよっ!

マナ:どういうこと?

アスカ:シンジのお面を被ったマナだったのよっ!

マナ:もし、本当にそうだったら。わたしは許さないわ。(ーー#
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感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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