いつもここから....

補完章:3

”ReSTART”

 

 

 

 

 

「アスカ、仕方なかったのよ。貴女は悪くないわ・・・・・・」

「ミサト・・・・・・・」

「どうしようもなかったのよ。シンジ君は・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 

 

プシュッ

軽い音がして、扉が開く。

「ただいま・・・・・・」

アスカは、静かにそう呟いた。

『おかえり・・・・・』

そう言いながら、部屋の奥からいつも顔を出す少年の姿を思い出す。

また、ひょっこり現れるのではないかと、しばし待つ....

 

静寂

 

耳が痛くなるほどの無音の中で、アスカは歯を食いしばりながら俯いていた....

 

 

 

 

ネルフ本部

無駄に大きな暗い部屋に、現ネルフ本部のトップ達が集まっていた。

重苦しい空気が漂っている。

 

「司令は、知っておられたのですね!? シンジ君のことを・・・・・」

「ああ・・・・・」

「なぜ?わざわざアスカにやらせたのですか!?酷すぎますっ!」

感情を抑えられないかのように、ミサトはゲンドウに喰ってかかった。

「仕方がなかったのだ、葛城三佐。それがシンジ君の希望だったのだからな。我々では、シンジ君を殺すことは出来なかったのだよ」

冬月副指令が、黙っているゲンドウの代わりに答える。

「し、しかし・・・・・・」

 

「葛城三佐」

「ハッ」

ゲンドウが話し始めた。

「私は、12年前シンジを捨てた。親であることを止めたのだ。君にもシンジにも苦労をかけた。せめて最後ぐらい、シンジに父親らしい事をしてやりたいと思っている。協力してくれないか・・・・・・」

ミサトは言葉に詰まった。

あの司令からこんな言葉が出てこようとは、思いもよらなかったのだ。

「は、はい・・・・」

「ありがとう・・・・・・・・・入ってきてくれ」

その言葉を合図に、ドアが開き二人の女性が現れる。

「この方々は?」

「私の妻である碇 ユイと、アスカ君の母親である惣流 キョウコ君だ」

「「はじめまして」」

「な、なぜ・・・・・」

「この二人は初号機と弐号機のコアに溶けていたのよ。それをサルベージしたの」

隣にいたリツコが説明した。

「あなたがしたの?」

「いいえ。ユイさんはシンジ君が、キョウコさんをサルベージしたのは・・・・・・・フィフスチルドレンよ」

「フィフス!?」

「そう・・・・・・シンジ君に力を渡した。そしてこの計画の加担者よ」

 

「葛城三佐」

「はい」

「辛い記憶は、我々大人が背負えばいい。子供達には背負わせるべきでは無いのだ」

「はい」

「我々NERVの最後の仕事だ。よろしく頼む」

「了解しました!」

 

薄暗かった部屋に、一気に明かりが灯る。

多数のディスプレイに、文字と数字の羅列が並ぶ。

部屋は一気に慌ただしくなった。

「葛城三佐、マルドゥック機関の方を処理してくれ」

「はっ!」

「赤木博士、彼に連絡だ」

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

ターミナルドグマ

十字架に張り付けにされた巨人の前に、一人の少年が浮かんでいる。

銀髪の少年...

そして、それを見つめる紅い瞳の少女....

 

「シンジ君の事が気になるのかい?彼は、ここのLCLに溶けているよ」

「・・・・・助かるの?」

「それは・・・・・・彼の意志次第だね。シンジ君の深層意識には、きっと生きる意志があると思うよ」

「・・・・・・・・」

「君にもあるのかい?生きる意志が・・・・」

「わからないわ」

「・・・・・・・・・・」

「でも、碇君には・・・・生きていて欲しい」

「君は・・・・僕と同じだね」

 

カヲルは張り付けの巨体に近づくと、その大きな白い左胸に、腕を突き刺した。

巨体が、淡い光を放ち始める。

 

「何をするの?」

「補完・・・・・・・シンジ君の計画も、これで終わる」

「・・・・・サードインパクト!」

「そんなモノではないさ。このアダムは本物ではないからね。・・・・・・・・ちょっと、人々の記憶を操作するだけだよ。それも、この都市に限られるだろうね」

「・・・・・・・・」

「そして、彼は消えるだろう・・・・・」

「・・・・・・・・」

「ふふ、心配しなくてもいいよ。僕がちょっと彼のシナリオを修正することになってるんだ。ネルフの力を借りてね」

「・・・・・・・・」

「彼は、優しすぎるからね」

「・・・・・えぇ」

 

そして、第三新東京市全体を光が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

『アスカ、アスカ・・・・・』

 

「シ、シンジっ!?」

 

『うん・・・・・』

 

「ア、アンタ・・・・・なに、やってんのよっ」

 

『アスカ・・・・』

 

「帰ってきなさいよ。はやくっ!!」

 

『それは・・・・出来ないんだ』

 

「なんでっ!?」

 

『聞いて、アスカ』

 

「・・・・・」

 

『僕は、何度も、やり直したんだ。

 使徒との戦いを・・・・・

 いや、使徒なんて、どうでも良かった。

 アスカに逢いたかっただけかもしれない・・・・

 何度も君と出会って、何度も別れた。 

 でも、それは間違ってたんだと思う。

 人は、過去に縋っちゃ、いけないんだ。

 苦しみは無くならない。

 哀しみは無くならない。

 憎しみは無くならない。

 だからもう、終わりにする・・・・・』

 

「アタシじゃ、シンジの力になれないの?あの時、好きだって言ってくれたじゃない!」

 

『うん、好きだった。

 これは、嘘じゃない。でも・・・・・

 でも僕が愛した女性は、一人だけなんだ・・・・・

 僕は、君と彼女を重ねていたんだと思う。

 僕は、彼女に謝りたかっただけなのかもしれない。

 彼女に、もう一度逢って、ごめんなさいって・・・・・

 内罰的だ・・・って、怒られるかもしれないけど・・・・・・でも・・・・・・

 ・・・・でも、ダメだよね。・・・・・酷いよね。君は、彼女じゃないのに・・・・・』

 

「そう・・・・・・」

 

『ごめん。こんな事に巻き込んじゃって・・・・・』

 

 

「別に・・・いいわ」

 

 

 

『最後に、罪滅ぼし・・・・』

 

「えっ?」

 

『持っていってあげるよ。 君の憎しみも、苦しみも、辛い記憶も・・・・全部・・・・』

 

「なっ、なにを!?」

 

『もう、苦しまなくてもいいんだよ。アスカ』

 

「なんでっ?消えていく・・・・・」

 

『嫌なことは忘れて・・・・きっと、幸せになれるから・・・・・』

 

「そんな、シンジっ、消さないで!!」

 

『さよなら』

 

「イヤ、忘れるなんて・・・・・シンジを忘れるなんてイヤ!」

 

「待って、シンジ・・・・・」

 

『さよなら、アスカ』

 

 

「消さないで・・・・・・アタシの中のシンジを消さないでっ!!!」

 

 

 

 

「い・・・・・・や・・・・・・・・・・・・・・・・・シ・・・・・・・・・・・・ンジ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

そして

大きな力を持ち、大きな心の傷を持った少年は、

 

人々の記憶から

 

彼女の心から

       姿を消した.....

 

 

 

 

 

 

少年と少女を中心とした、長い物語は、とりあえずこれでおしまい。

 

 

これからの二人がどうなっていくのかは、誰にも解らないかもしれない....

 

 

しかし、きっとまた二人は巡り逢うだろう。

             

 

そう遠くない未来...

 

  

いつかどこかで....

 

 

 


 

NEON GENESIS EVANGELION

新世紀エヴァンゲリオン

原作:GINAX

 

 

SIDE STORY

 

『いつもここから....』

 

プロローグ:               
  一   ”日常”
  二   ”星空”
   三   ”罪と罰”

本 編:             
      第一話 ”アスカ、来日?”
   第二話 ”プライド!”
        第三話 ”子供達に休息を!”
       第四話 ”彼女の傷跡!?”
     第五話 ”心の痛み!?”
     第六話 ”使徒?親友?”
                第七話 ”あなたの居場所は何処ですか?”
     第八話 ”夢と現実!?”
     第九話 ”待ち人、きたる”
      第十話 ”最後の決意!?”
     第十一話 ”最後の使徒!?”
     最終話 ”命の選択を!”

補完章:              
       1   ”In her Heart”
       2   ”In his Heart”
       3   ”ReSTART!!”

over....

 

 

 

提供

 

SHIN

『TRIDENT』所属

 

 


 

 

 

ReSTART

 

 

 

 

 

 

「アスカ!!」

 

「はっ!・・・・・う〜ん、なんだ、レイか・・・・」

 

「なんだ、じゃ無いでしょっ!早く起きないと遅刻よ!」

 

「う〜〜ん」

 

「まったく、幼なじみのアタシが折角起こしに来てあげてるのに」

 

「うん、ありがと。あと五分・・・・・・くぅー」

 

「寝てんじゃなぁぁい!!」

 

 

 

<玄関>

「ほら、スカート曲がってるわよ」

 

「わかってるわよ、レイ。さっさと行きましょ、時間無いんだから」

 

「誰のせいだと思ってるのよ」

 

「・・・・・・いってきま〜す。ママ」

 

「まったく・・・・・・・いってきます、おばさま!」

 

「いってらっしゃい。アスカ、レイちゃん」

 

 

 

<通学路>

タッタッタッタッタッ

「まったく、アスカのせいで遅刻寸前だわ」

 

「もう、それはさっきから謝ってるじゃない」

 

タッタッタッタッタッ

「やあ、お二人さん。今日も元気だね」

 

「カヲル、アンタも相変わらずねぇ」

 

「そうそう、今日転校生が来るらしいよ」

 

「ここも来年には遷都して首都だしね。これからもっと増えるわよ」

 

「どんな子かな?僕好みだったらいいなぁ」

 

「アタシ好みだったらいいわねぇ」

 

「カヲル、レイ・・・・・アンタら・・・・・」

 

 

 

 

<第一中学校:教室>

「今日は転校生の話題でもちきりね」

「相田君の情報によると、男の子らしいわよ」

「ねぇ、どんな子かな?」

「アスカは、どんな子だと思う?」

「どうだっていいわよ。男なんてバカばっかりなんだから・・・・」

「・・・かなりひねくれてるわねぇ、アスカ」

 

ガラっ

「きりーつ、礼!着席」

 

「「「「おはようございます!」」」」

 

「喜べ、女子、あと一部の男子! 今日は噂の転校生を紹介するっ!  ・・・・入っていいわよ!」

 

 

ガラっ....

 

 

 

ヒソヒソ・・・・・「か、可愛い・・・・」「ほそーい」「綺麗な顔・・・」「やだ、かっこいいかも・・・・」「このクラスの男共よりはマシね」「ファンクラブができるわね」「・・・いい気になってんじゃないぞ・・・・」「まさか惣流さんも・・・」「それは無いだろ」「惣流さんは男嫌いだからな」「売れる、売れるぞぉ〜」「ふふふ、僕好みだね」「ふん、なんやねん。ヒョロヒョロしおってからに」・・・・・ヒソヒソ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「碇 シンジです」

 

 

 

 

 

「ふ〜ん......冴えないわね」

 

 

 

 

 

 

 

終劇

 

 

 

 


〜後書き〜

長らくお待たせいたしました。やっと書き終えました。
ReSTARTを書こうか迷ったんですが、とにかくハッピーエンドを目標に・・・・といことで。
いろいろ謎を残したことは・・・・・・御容赦ください。
ご質問には、メールをくだされば出来る限り答えていきたいとおもいます。

長期にわたり、私の駄文に付き合ってくださった皆様、まことにありがとうございます。
これをもちまして、補完之章をふくめた『いつもここから....』は、終了とさせていただきます。

それでは、次回作でお会いしますことを楽しみにしております。


アスカ:全てが初めから始まるのね。

マナ:アスカの記憶もなくなって、めでたしめでたしだわ。

アスカ:どうしてよっ! アタシは記憶も持って行きたかったのにっ。

マナ:だって、それじゃフェアじゃないでしょ。

アスカ:フェアもなにも、またアタシとシンジの愛の物語が始まるのよっ。

マナ:今回はそうなるとは限らないでしょ。

アスカ:なるのよっ!

マナ:どうして言い切れるの?

アスカ:だって、いつもここから2人の物語は始まるんだから。
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