ゴゴゴゴゴゴ・・
「・・。」
シンジはかすかに震えていた。
ルシフェル(ゼロ)の姿は紛れも無い天使だが、
黒い翼・手に持った神殺しの槍・真っ赤な瞳・・悪魔の様な姿とも言えたからである。
『(シンジ・・秘めた力を引き出してみろ。)・・いくぞ。』
ヴゥゥゥゥゥゥン・・
ゼロの前に無数の黒い珠が現れた。
『コイツを・・受けてみろ!』
シュゥゥゥゥゥゥン
珠が集まり、巨大な塊になる。
『魔黒蹴撃弾!!』
バーーーーーヒュン、ヒュン、ヒュン
ゼロは塊を勢いよく蹴り、蹴った瞬間、破裂した無数の黒い光がシンジに襲い掛かった。
「くっ!?」
シンジは第一波を避けた瞬間。
ガガガガガガガ・・
「ウワーー!?」
光の軌道が変わり、シンジに直撃した。
『ギリギリじゃ、この技は避けれないぜ。『完全に』避けなきゃな。』
「イテテ・・。」
シンジが起き上がると第二波が迫っていた。
「今の僕じゃ、避けるのは無理・・なら!」
シンジは『光剣』を消した。
「閃光破!!」
シンジも手から光の波動を放ち応戦する・・だが、
『・・隙だらけだ。』
ドカッ
「ガッ!」
ザーーーー・・
ルシフェルが後方に回り、シンジを回し蹴りで吹き飛ばした。

・・オペレータールーム
そこにはおなじみのスタッフやアスカ達・マナ・トルマ・そしてカヲルが居た。
なお、サンは保安部に所属する事になったので、不在。
「シンジ!?」
「どう?母さん。」
コンピューターを動かしているナオコ。
「・・凄いわね。まさに、使徒そのものよ。」
「シ、シンジだって凄いわ!」
「確かにシンジ君も強いのは分かるわ・・でも、今のゼロ君には到底敵わない。」
「そんな・・。」
「お兄ちゃん・・。」
みんなが会話をしている間、ユイはずっと渋い顔をしていた。
理由は昨日にさかのぼる。

・・昨夜 司令室
そこにはゲンドウ・ユイ・冬月・そしてゼロが居た。
「特別訓練室を貸してほしい?」
「うん。」
「どうして?」
「シンジのためさ。」
「シンジ君の?」
「・・話してみろ。」
「・・俺のタイムリミットが予定より早そうなんだね。」
「「「!!?」」」
「その前にどうしてもやっておきたい事があるんだ。」
「やっておきたい事?」
「・・シンジの中に眠る『使徒』の力を呼び覚ます事。」
「シンちゃんの?」
「シンジは時空を越えた影響で『使徒』の力を身に付けたのは知ってるよね?」
「・・ああ。」
「本来、ルシフェルはシンジのはずだったのに、何だかの理由で別の生命体が生まれた。」
「それがアナタなのね。」
「そう。でも、かわりに別の力を身に付けた。」
「別の力?」
「それをシンジから引きずり出す。そのために・・。」
「・・許可しよう。」
「ゲンドウさん!?」
「ゼロがそれを望むのなら仕方ない。」
「・・ありがとう、親父。」

「・・ゼッ君。」
ゼロの無茶を止められなかったユイは悔しかった。

・・特別訓練室
「はぁ・・はぁ・・。」
『どうしたシンジ。その程度じゃ、俺は倒せないぜ。』
バチバチ・・
「まだまだ!雷哮!!」
『無駄・・!?』
電撃がゼロの頬をかすめる。
『なるほど・・ATフィールドを混ぜたか・・だが!』
バギッ!!
特殊金属でできた床が一気に砕けた。
『今度はそうはいかないぜ。』
ウゥゥゥゥゥゥ!
(空中に未確認飛行物体接近!第十使徒サハクイエルと思われます。)

・・オペレータールーム
「アスカちゃん達はエヴァに乗って待機してて。・・キョウコ、ナオコさん。」
「分かってるわ。もうできてる。」
「ならいいわ。今回はサキちゃんとライル君はWエントリーで行きます。」
「初号機には誰が?」
「・・僕だ。」
「カヲル君、お願いね。」
「はい。」
「シンジ達はどうするの?」
「二人にはこのまま戦ってもらうわ。・・トルマ、お願いね。」
「分かってるよリツコ。ここは任せてくれ。」
「アナタの言葉なら安心ね。」
トルマ・ユイ・ナオコ・マナを除き全員移動した。・・マヤは心配そうだったが。

・・女子更衣室
「・・どう思う?今回のゼロ。」
「分からない・・でも、なにか変だったね。」
「レイナも思った?」
「・・もしかして、ゼロ、死ぬ気じゃあ。」
「ま、まさか。」
「・・。」
「レイ?」
「・・その可能性はあるわ。」
「「「!!」」」
レイの一言に驚くアスカ・レイナ・サキ。
「・・昨日、司令室でゼロが司令達と話してるのを聞いたの。」
「な、なんて言ってたの?」
「・・タイムリミットが予定より早そう・・。」
「う、嘘・・。」

・・男子更衣室
「じゃあ、今回の特訓って。」
「・・ゼロがシンジ君の力を目覚めさせるために始めた事さ。・・自分の命と引き換えに。」
「・・。」
「僕等は彼等の負担になるわけにはいかない。・・だから。」
「ここで負けるわけにはいかない。」
「でも、今回は誰が浄解を?」
「僕かヒショウの予定だ。」
「・・時間だ。行こう。」
「はい。」

こうして、シンジとゼロが居ない戦闘が今、始まる。

・・特別訓練室
そんな事で俺に勝てると思うか?
「・・。」
『このままじゃ・・死ぬぜ。』
「!」
『・・。』
「(・・さっき、ATフィールドの攻撃が効いた。・・ゼロと似た力・・。)」
『・・。(どうやら、気付いたみたいだな。)』
「(・・お願い、僕に力があるなら・・目覚めてくれ!)ハァァァァ!!」
バギッ!!
シンジが立っている床も砕ける。

・・オペレータールーム
「何・・これ・・。」
ナオコがシンジの変化に驚く。
「・・ついに来たか。」
トルマが呟いた。

・・特別訓練室
シュゥゥゥゥゥン
シンジの髪が淡い金色に変化していく。
バッ
続いて、背中に純白の翼が生える。
左半身に模様の様な刺青が浮かび目の色も黄色に変わった。
『(・・間に合った。)』
『・・これは。』
『それがお前の使徒の姿・・『セラフィム』だ。』
『セラフィム・・。』
『・・いくぞ。』
『・・うん。』
ゴゴゴゴ・・
バキッ!
訓練室の至る所にヒビが入る。

・・オペレータールーム
「・・凄い。」
「ATフィールドがここまでの力を・・。」
「・・。(ゼロ・・お前の最後の戦い、ここで見届けさせてもらうぞ。)」
「・・シンちゃん。・・ゼッ君。」

・・特別訓練室
シュゥゥゥゥゥン
ルシフェルの左手にエネルギーが集まる。
『喰らえ!煉獄黒龍波!!』
ギャオーーーーー!!
先程とは違い、龍の形の黒い気が一気にシンジ・・セラフィムに襲い掛かる。
『・・いくよ。』
バチバチバチ・・
セラフィムの両手にエネルギーが集まる。
『闘気神光斬!!』
ヒュン、ヒュン・・シュゥゥゥゥゥン
セラフィムが両腕を振った瞬間、光の刃が×字の形を保ちながら駆け抜ける。
ズガガガガガガ!!!
二つの力がぶつかり合い、激しい爆発が起こる。
『クッ!?(想像以上だ。)』
『(今だ!)行けーー!閃光白龍波ーーーー!!』
ギャオーーーーー!!
セラフィムの右手からルシフェルとは違う白い龍の気が放たれ、ルシフェルに向かう。
『・・。(シンジ・・後は頼むぜ。)』
『!!』
ズガーーーーーーン!!
白龍はルシフェルに直撃し、そのまま壁に衝突・爆発を起こした。

・・オペレータールーム
「ゼロ君!!」
「「「・・。」」」
マナが叫ぶ中、ユイ達は黙ってそれを見届けた。
特にユイは、涙を堪えるのに精一杯だった。

・・地上 弐号機エントリープラグ内
「な、何!?今の揺れ。」
『どうやら、シンジ君も力に目覚めたみたいだね。』
『力?』
『それはいいけど、そろそろ来るよ。』
『こっちはこっちの仕事に集中しよう。』
「・・そうね。」
『準備はいい?』
「こちら弐号機よ。準備いいわよ。・・ね、エキル。」
“もちろん♪全開バリバリよ!!”
エキルとは弐号機に入っているガキエルの愛称である。
『・・零号機、準備OKです。』
『壱号機も大丈夫です。』
『こちら初号機。僕とアダムも行けます。』
『参号機です。僕達もいつでもいいですよ。』
『こちらは四号機。準備完了しました。』
『了解、全機スタンバイ・・GO!!』
零・初・壱・弐・参・四号機が一斉に走り出した。

・・特別訓練室
シュゥゥゥゥン・・
ルシフェルはゼロの姿に戻った。
『ゼロ!?』
セラフィムは倒れているゼロを抱き起こす。
「・・シンジ・・できたじゃんかよ・・。」
『ゼロ・・さっきの言葉、・・まさか、わざと・・。』
「・・いいや・・避けきれなかったからな・・。」
『・・。』
「イッテェ〜・・ったく、想像以上だよ、お前は。」
ゼロは痛がりながらも起き上がった。
『ゼロ・・。』
「・・何してる。さっさと地上に行ってこい。」
『えっ?』
「みんなが・・待ってる。・・お前なら、容易に浄解が使える。・・人間なんだからな。」
『・・分かった。』
バッ・・
爆発でできた穴からセラフィムは飛んでいった。
「これで・・俺の役目は・・終わ・・った・・。(アダム・・約束は・・守った・・ぜ・・。)」
ドサッ
ゼロは崩れるようにそこに倒れた。

・・オペレータールーム
「ユイ!ゼロ君の体が限界を超えてるわ。急いで病院に運ばないと・・。」
「トルマ君!!」
「もう連絡しましたよ。あと5分ぐらいで着くそうです。」
「そう。・・私達も行きましょ。」
「了解。」
「マナちゃん。貴方は?」
「ワ、ワタシも行きます!」

・・特別訓練室
「ゼッ君!!」
ユイ・ナオコ・マナが部屋に着き、ゼロに駆け寄る。
「「「!?」」」
ゼロの体は、既にヒビだらけで、左腕は完全に砕けていた。
「ゼロ君!?」
「マナちゃん!今、下手に触ったら取り返しがつかなくなるわ!」
「で、でも!」
(ユイさん、ナオコさん、医療班が到着しました。)
こうして、ゼロは病院へ運ばれた。

・・地上
「カヲル!ヒショウ!さっさと、浄解しなさいよ!!」
「・・ゴメン、どうやら僕にはできないみたいだ。」
「おそらく、あの力はゼロにしかないみたいだ。」
「何ですって!?」
“アスカ!早くしないと、装甲が持たないよ・・。”
バキッ
「「ウワーー!!!?」」
「サキ!?ライル!?」
『参号機の装甲が損傷!このままじゃもちません!』
『アスカ!もっと気合いれなさい!!』
「んな無茶な!!」
『待って!・・何かがそっちに向かってるわ!』
「今度はなんなのよーー!!」
シュピィィィィン・・
サハクイエルの一部が切り裂かれた。
「何?」
空に白い翼の天使が舞っている。
『ATフィールドと・・『天』の『道』反応!?・・シンジ君です!』
「シンジ・・あれが?」
「・・綺麗。」
『みんな・・もう少し頑張って。』
シュゥゥゥゥン・・
セラフィムの両手に光が集中する。
『シャイニング・・レイン!!』
ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン、ヒュン
無数の光がサハクイエルを貫く。
「・・軽くなった。」
「流石シンジ君、やっぱり好意に値するね。」
「カヲル・・お前なぁ。」
「碇君・・綺麗。」
『みんな、サハクイエルを降ろして。』
ドスーーン・・
『(ゼロ・・今度は僕が頑張る番だ。)ハァァァァ・・。』
パシャッ
コアが崩れて、中から少年が出てくる。
シュゥゥゥゥン・・
「よし。」
『ご苦労様、シンジく・・なんですって!?』
「どうしたのよ?ミサト。」
『みんな大変よ!!ゼロ君が!!』
「えっ!?」

・・病院
ゼロの病室に走るシンジ達
「ゼロ!!」
病室に居たのは涙を零すユイとマナ・・ベッドで眠る左腕の無いヒビだらけのゼロだった。
「母さん・・。」
「ゼッ君・・もう動けないって。」
「えっ?」
「細胞も神経もズタズタで生きてるのが、不思議なくらいだって・・。」
「それじゃあ・・。」
「・・後は・・もう死期を待つしかないって・・。」
『!!』


マナ:ちょっと待ってよ。人になるんじゃなかったの?

アスカ:なんか、凄く心配な引きになってるわね。(ーー;

マナ:どういうことよ? どーなってんの?

アスカ:アタシにもわかんないわよ。

マナ:死期を待つって・・・生まれ変わりを待つんじゃないの?

アスカ:もぅっ! こんなとこで引きが入ったら、わけわかんないじゃないのーっ!

マナ:無事だといいんだけど・・・。

アスカ:祈るしかないわね。

マナ:なむぅ。

アスカ:アンタ、その祈りはなんか違うわよ?
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