・・ゼロの意識の中
「・・。」
意識の中でも眠りに付いているゼロ。
「・・居るんだろ?」
フッ・・
ゼロが起き上がると、紅い右目と蒼い左目を持つ銀髪の男性が現れた。
「約束通り、シンジを覚醒させたぜ。・・アダム。」
『・・すまない。お前を犠牲にする事になった。』
「別にいいさ。元は居ない存在のはずが暴れたり、楽しんだりできたんだ。」
『・・。』
「それに・・人間は消滅させるに値しない事も分かった。・・それだけで充分だ。」
『・・おそらく、お前の肉体はもってあと半月だろう。』
「そっか・・あ〜あ、もう少し遊びたかったなぁ〜。」
『ゼロ・・お前。』
「シンジを頼むぜ。」
『・・分かった。』
フッ・・
アダムが消えた。
「もし死んでも、俺は生き続けるさ。みんなの中に・・な?シンジ・・。」
そう呟いて、再びゼロは眠りについた。

・・翌日 現実世界
「・・あっ、マナ。」
「シンジ君。・・ゼロ君は?」
「ううん。まだ、起きないよ。」
「・・いや、起きてるぜ。」
「「!?」」
ゼロがゆっくりと起き上がる。
「大丈夫なの?」
「まっ、一応な。」
「みんな揃ったし、そろそろいいかな?」
病室にはチルドレンや元使徒、マナが集まっていた。
「明日はレリエルが来る。その後が・・バルディエルだ。」
「あの・・そのバルディエルに何か問題でも?」
「ソイツが俺の最後の相手だ。」
『!?』
「ゼロ!?お前、何考えてるんだ!?」
「そうですよ!そんな体で戦ったら・・。」
「ああ・・間違いなく死ぬな。」
「・・。」
「シンジ・・アンタまさか!?」
「・・うん。知ってたよ。」
「何で言わなかったのよ!!」
「俺が口止めした。・・いまさらだけどな。」
「つまり、お前は自分の命を引き換えにするつもりなのか?」
「まさか・・そんな・・。」
「サクルの言うとおりだ。・・俺に残されたのはわずかだ。」
「駄目!!」
マナが叫んだ。
「約束したじゃない!絶対に帰ってくるって・・。」
「マナ・・。」
「・・ゼロ君なんか大嫌い!!」
マナはゼロの病室から飛び出した。
「・・良かったの?」
「ああ・・これでいいんだ。」
「納得いかないけどね・・正直。」
「お前の考えは正しいよ。俺の方がイカれてるだけさ。」
「ゼロ・・。」
「ところで、レリエルの対策は考えたのか?」
「今回は『道』は使わないでエヴァのATフィールドでいこうと思う。」
「なるほどね。・・そういえば、明日だよね?伍号機のロールアウト。」
「うん、ギリギリ間に合ったよ。」
「・・頼んだぜ。俺の代わり。」
「僕に君の代わりはできない。僕は僕さ。」
「・・そうだったな。」
シンジ達が病室を出て行った。
「・・さてと。」
ゼロは左胸に右手を当てた。
「(結局俺は、マナのために何もできなかった。・・せめて、コイツは渡しておくか。)」
手を当てた部分から紅い珠が出てきた。
「(これで・・後戻りはできないな。)」
ピシピシ・・
ゼロの左胸にヒビが入った。
コンコン・・
「はい。」
「ゼロ君、大丈夫かい?」
「ええ・・まだ・・薬が・・効いてるみたい・・グッ!」
ゼロはその場でうずくまる。
「いかん。君、早く薬を。」
「はい!」
実は、ゼロはヒビが入るたびにその激痛に耐えねばならないのだ。
しかも、日に日にヒビは増えている為、麻酔でも抑え切れなくなっているのだ。

・・マンション
「・・マナちゃん。」
「あっ・・マヤさん。」
マナの部屋にマヤが入ってきた。
「マヤさん・・ワタシ、ゼロ君に『大嫌い』って・・。」
「・・アナタの気持ちは分かるわ。・・でも、一番辛いのはゼロ君本人よ。」
「分かってるんです。・・でも。」
スッ・・
マヤはマナを抱き締めた。
「待ちましょう・・大丈夫よ。・・きっと。」
「・・はい。」

・・外
ジオフロントの湖を眺めるシンジ。
「シンジ君。」
「カオル君。」
そこにカヲルがやってきた。
「ねえカヲル君。本当にゼロは・・。」
「前にも言った筈だよ。・・もう手遅れだって・・あと、4日早ければ・・。」
「・・ところで、昨日言ってた『気になる事』って?」
「・・ゼロの体の劣化が激しいんだ。」
「!?」
「おそらく・・予定より早まるだろう・・。」
「・・。」
グッ
シンジは握り拳を作った。
『お前達が悲しむ事は無い・・。』
「誰!?」
シンジ達が向いた先にいたのは・・。
「・・アダム。」
「えっ!?」
『久しいなタブリス・・いや、カヲルと言った方が正しいな。』
「悲しむ必要がないって・・どういう事ですか!」
『碇シンジよ・・ルシフェルは・・ゼロは自らの道からこの選択をしたのだ。
 己の生きる道を捨て、お前達を導く道を・・。』
「そんな・・。」
『・・ゼロはお前に感謝していた。』
「えっ?」

・・数ヶ月前 ゼロの意識
『・・ゼロよ。・・本気で言っているのか?』
「ああ・・俺は命を捨ててでも、シンジ達に道を示すつもりだ。」
『しかし、ルシフェルになればその分、肉体は劣化する・・それでもかまわんのか?』
「アダム・・俺は元は『イナイ』存在だ。・・せめて、『イル』存在の道標になりたいんだ。」
『・・例え、自分が犠牲になってもか?』
「ああ・・。」
『・・なら、一つ約束しろ。』
「?」
『シンジを覚醒させるのだ。でなければ、使徒の先の者には勝てん。』
「・・分かった。」
『・・もう一度聞く。・・覚悟はいいな?』
「アダム。俺は分身体として、シンジの役に立ちたいんだ。
俺を友として接してくれたアイツの・・。」
ゼロの表情が辛そうながらも笑顔になった。
・・回想終了

「・・そんな事が。」
『彼を思うのなら・・強くなれ。・・そして、歴史を変えてみせろ。』
「・・分かったよ。」
『カヲル・・お前も遊びはここまでにしておけ。』
「・・肝に命じておくよ。」
『では・・我はエヴァに戻っている。』
フッ・・
アダムの姿が消えていった。

・・翌日 ネルフ
「来ました!レリエルです。」
「パターンはオレンジのままです。」
「レリエルにミサイルを撃って。」
バシュンバシュン・・
モニターにレリエルに向かってミサイルが飛ばされる映像が映る。
「パターンが青になりました。球体の真下です。」
「了解よ。シンジ君、レイナちゃん、レイ、アスカ、ヒショウ君、カヲル君、出撃よ。」
「はい!」
「いいですよ♪」
「了解。」
「いいわよ!」
「OKです。」
「いつでもどうぞ。」
それぞれがミサトの言葉に返事を返した。

・・地上
ガシャンッ!!
「初号機、リフトオフ!!」
「続いて零、壱、弐、四、伍号機、リフトオフ!」
カヲルの伍号機は黄金色をしている。(某ガンダムの百○と同じ)
『今回は『道』抜きで行くわよ。』
「「「「「「了解!!」」」」」」
エヴァは六方に別れ、六角形の陣形になった。
「行くよ。・・フィールド全開!!」
キィィィィィィン!!
初号機を始めに、次々とATフィールドでレリエルを囲む。
結果、レリエルは影を広げる事を遮られ、みるみる内に膨らみだした。
「(今だ!)ハァァァァァァ!!」
ヒュン・・ズバッ!
カヲルがフィールドの形を槍に変え、コアのある部分を切断した。(カヲル君、初手柄)
「シンジ君!」
「分かった!」
シンジはカヲルの言葉に反応し、コアを浄解した。
「良し!」
『ご苦労様、全員退却して。』
「了解!(そういえば、母さんどうしたんだろう?)」

・・病院 特別病棟
ピ・・ピ・・ピ・・ピ・・
集中治療を受けているゼロ。
しかし、その瞳がうっすら開いている事は誰も気付かなかった。
「あなた達は彼にどんな生活をさせたんですか?」
診察室らしき場所で医者の話を聞くユイ
「・・。」
ユイは沈黙を続けていた。
「・・まあ、ネエルフには言えない理由があるのは知っていますから深くは聞きません。」
「すいません。」
「・・ところで、一つだけ気になる点が。」
「何ですか?」
「以前の検査では存在した物が先程の検査では発見されなかったんです。」
「それは?」
「みなさんが『コア』と呼んでいる・・いわば心臓です。」
「!?」
「医学的にはありえませんが・・事実です。」
「・・じゃあ。」
「ええ・・今の彼は感情はありますが、実際は『抜け殻』に近い状態です。」
「そんな・・。」
「先生!大変です!!」
「どうした?」
「患者が・・伊吹ゼロ君が居ないんです。」
「何打と!?」
「!?」

・・上空
『・・。』
右手に紅い珠を持ち、ルシフェル形態もなり浮かんでいるゼロ。
『・・届け。』
ヒュゥゥゥゥゥ・・ピィン!
珠は三つに別れ、飛んで行った。
『・・じゃあな。』
フッ・・
ゼロは霞の様に消えた。


マナ:最後のシーンはなに?

アスカ:ゼロ、とうとう消えちゃったのかしら?

マナ:それはないんじゃない? まだバルディエルが残ってるもん。

アスカ:うーん。じゃぁ、何処に行ったんだろう?

マナ:わかんないなぁ。なにかを残すためなんだろうけど。

アスカ:謎が多いわね。彼は。
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