・・ネルフ
別室に集まっているユイ、ミサト、リツコ。
「ゼロ君が行方不明!?」
「・・ええ、集中治療中に突然。
今、イスラちゃん、フェイル君、レイリスちゃんが探してるんだけど・・。」
レイリスとはレリエルが浄解された姿でレイリス=ナイトと言う。
「シンジ君達には?」
「話してないわ・・話せないわよ。」
「・・そうですね。」
「先輩!」
マヤが慌てて入ってくる。
「マヤ、どうしたの?」
「これ・・。」
マヤの手には紅い珠・・の一部が握られていた。
「これは・・コア!?」
「突然、私の手の平に降りてきたんです。」
「・・マヤちゃん、ちょっと調べさせてもらえる?」
「は、はい。」
マヤはユイにかけらを渡した。

・・数分後
「思ったとおりだったわ。」
「どういう事ですか?」
「これは・・ゼッ君のコアよ。」
「「「!?」」」
目を大きく開く三人。
「この様子だと、彼にとって大切な人に届く様になってるみたいね。・・3人に。」
「じゃあ・・あと二人の元にも。」
「そう言う事になるわね。」

・・マンション マナの部屋
パァァァァァ・・
淡く輝く紅いかけらがマナの元に届いた。
「・・綺麗。」
そう呟いて、マナはかけらをとった。
『・・マナ。』
「ゼロ君!?」
『・・俺は・・ずっと・・そばに・・いるよ。』
言葉が聞こえなくなると・・光も消えていった。
「・・ゼロ君。」
ギュッ・・
マナはかけらを両手で覆い、胸に抱いた。
「・・ワタシ、頑張るから。」
翌日、最後の一つがサンの手元にある事が分かった。

・・数日後 ネルフ
「エイツチルドレン!?」
「ええ、正確には立候補なんだけどね。」
「立候補って・・まさか。」
「そうよ。」
入ってきたのは・・。
「マナ!?」
「マナちゃんには、ゼッ君の代理で参号機に乗ってもらいます。」
「参号機に?」
「この間、整備と最終調整が終了して後方支援型に改良したの。」
「(・・でも母さん、参号機には)」
「(分かってるわ。・・彼女が乗るのはバルディエルの件が済んでから)」
「それで、3日後に行なわれる参号機の起動実験に参加してもらうからそのつもりで。」
「はい!」
「あの・・。」
「何?ライル君。」
「・・僕等にも何か出来る事はありませんか?」
「そうだよ!アタシ達だってチルドレンなんだよ!」
「アタイも同意見だ。」
サキとサンもライルに続く。
「あなた達の気持ちは分かるわ。
・・そのために今、中国支部が貴方達用のエヴァを開発してるわ。」
「本当ですか!」
「ええ。だからもう少し我慢して。」
「・・分かりました。」
「は〜い。」
「分かったよ。」
3人とも納得したようだ。

・・太平洋上空
十字架に貼り付けられた参号機を運ぶヘリ。
「前方に積乱雲。」
「気にせず進め。」
積乱雲に突っ込むヘリ。
・・しかし、その正体が第十三使徒バルディエルだとは知る由も無かった。
そして、バルディエルが参号機に憑依した事も気付く事は無かった。

・・3日後
「・・大丈夫かな?」
「平気よマナ、ヤバくなったら助けに行くから・・ね?」
アスカがマナに激励をかける。
「う、うん。」
「行く必要がなくなったわ。」
ユイが入ってきた。
「おばさま。」
「どういう事ですか?」
「アスカちゃん、戦闘準備。バルディエルが現れたわ。」
「嘘!?早すぎます。」
「シンちゃん達は先に行ったわ。アスカちゃんも行って頂戴。」
「了解!」
「マナちゃんは私と一緒に来て。」
「はい!」

・・地上 第三東京・松代間
「おまたせ!」
アスカがシンジ達と合流した。
「ねぇ、なんでバルディエルが動いてるのよ?」
「僕にも分からないよ。」
「・・少なくても、今回はパイロットが居ないのは確かね。」
「じゃ、思いっきり戦えるって事ね・・前回での恨み、晴らしてやるわ。」
アスカは前の世界でボロ負けしたのを気にしているようだ。
「・・来た。」
ヒショウが呟き、みんなが正面を見た。
参号機は夕日をバックに無気味に目を光らせていた。
「あれ?参号機って後方支援用に改良されたんじゃ?」
『そうよ。』
ユイがモニターに映る。
『参号機用の特殊なオプションがあるんだけど、今はそれを外してるのよ。』
「つまり・・。」
『普通のエヴァと変わりは無いわ。・・ただ、軽量化したからその分動きは早いわ。』
『・・今回の任務は使徒の殲滅だ。・・だが、目標はコアのみ。他はあまり傷付けるな。』
ゲンドウがエヴァ各機に指令を出した。
「「「「「「了解!」」」」」」
『シンジ、指揮はお前に任せる。』
「うん、分かったよ。」
『・・任せたぞ。』
通信が切れた。
「シンジ、どうするの?」
「う〜ん・・。」
「待ってお兄ちゃん。何か様子が変だよ。」
「えっ?」
グググググ・・
参号機(バルディエル)が突然苦しみだした。
「どうなってるの?」
『・・シンジ。』
「!?」
『シンジ・・今だ。』
「(ゼロ!?今何処に!)」
『参号機の・・プラグの中だ。』
「(なんでそんな所に!?)」
『ヘヘ・・コイツの改良でお前達が苦戦すると思ってな。・・今の内にコアを砕け!』
「(でもどうやって?)」
『お前の心に聞け・・感じるんだ。・・俺の残したものを。』
「(君の残したもの?)」
「シンジ、どうしたの?」
「碇君?」
「・・。」
ピィーーーン
「(これか!)」
パァァァァァァァ!
初号機の右手に現れたのは真っ赤に染まった二又の槍だった。
「ロンギヌスの槍!?」
『ソイツで・・コアを貫くんだ!』
「(でもゼロは?)」
『心配するな。プラグにさえ当たらなければ、問題ない。』
「(・・分かった!)みんな離れて!」
「わ、分かったわ。」
アスカ達は参号機(バルディエル)から離れた。
「行っけーーーーーーーーー!!!!!」
シュゥゥゥゥゥゥゥン!
シンジはロングヌスの槍を参号機(バルディエル)に向かって投げつけた。
ドスッ!!
槍は腹部にあるコアを貫通し、後ろの山に突き刺さった。
「やった!」
ベチョッ!
「な、何あれ?」
コアから液体の様な物が下に落ちた。
液体は人の形になるが、まるでヘドロの様にドロドロとしている。
「あれがバルディエルか。」
「こんなの踏み潰しちゃえば・・。」
「駄目だアスカ!」
「何で?」
「アレを見て。」
ジュゥゥゥゥ・・
「じ、地面が熔けてる。」
「バルディエルは霞を司る使徒。でも、状態が保てず異常変化を起こしたんだ。」
「今近づけば、エヴァでもドロドロだね。」
「じゃあ、どうすればいいのよ!」
『・・シンジ。』
「(ゼロ。)」
『外に出てきてくれ。』
「(分かった。)」
プシュゥゥゥッ
シンジはプラグから出て、下に降りた。
そこには初めて会った時に着ていた服を纏ったゼロが居た。
「ゼロ・・。」
「シンジ・・最後の時が来た様だ。」
「!?」
「俺の命はもう僅かしか無い。」
「そんな・・。」
ト・・ト・・
ゼロはフラフラとシンジに近づく。
「お前に俺の力の全てをやる。」
ゼロはシンジに寄り掛かった。
「ゼロ!?」
「シンジ・・俺は・・お前が・・羨ましかった。」
「えっ?」
「なんで俺は使徒だったんだ・・どうして人間として生まれてこなかったんだ。」
ゼロは涙をポロポロと流し始めた。
「そうすれば・・お前や・・マナ達ともっといろいろな所に行けたのに・・。」
「ゼロ・・。」
「なんで・・人として・・生まれてこなかったんだ・・ちくしょぉ・・。」
「・・。」
「シンジ・・頼む・・マナやサン・・マヤ姉を・・守ってくれ。」
ドサッ・・
ゼロはそのまま横に倒れた。
「しっかりして!」
シンジが抱きかかえるが・・ゼロの瞳には既に光はなかった。
「最後に・・もう一度・・会いたかったぁ。」
ゼロの『冥』のオーラがシンジの中に入っていく。
そしてオーラがシンジの中に全て入った瞬間
ピシピシピシピシピシピシ・・
ゼロのヒビが全身に行き渡った。・・そして
「・・じゃあな・・シン・・ジ・・。」
パキーーーーーン!
ゼロの体は・・ガラス細工の様に粉々に砕け散り、風に乗って消えてしまった。
・・パサッ
残ったのはゼロが着ていた服だけだった。
「ゼ・・ゼローーーーーー!!」
シンジはゼロを支えていた拳を握り締めて、叫んだ。

・・ネルフ
「そ・・そんな・・。」
「ゼロ君・・。」
「イ・・イヤァァァァァァァ!!」
ゼロの消滅を見て、泣き崩れるサン、マナ、マヤ
そして、ユイ達も涙を流していた。

・・地上 第三東京・松代間
ジュゥゥゥゥゥゥゥ・・
バルディエルの溶解液の音が響いている。
「・・ゼロ。」
シンジが立ち上がった。
「僕は・・君の分も・・。」
シンジはバルディエルを見る。
「戦う!!」
シュゥゥゥゥゥ・・
シンジのオーラが純白から灰色に変化した。
グォォォォォォォ!
バルディエルがシンジに襲い掛かる。
「シンジ!逃げて!!」
「僕は逃げない!・・絶対に・・諦めない!!」
パァァァァァァァァ!
「ハァァァァァァァァァァァァ!!!!」
シンジの姿が変わった。
セラフィムでもルシフェルでもない姿に・・。
翼が12枚ある灰色の天使に。
「あれは・・ルーチェ!?」
「ルーチェ?」
「天使の中でも最高位・・いや神をも越える天使だ。」
「じゃあシンジは・・。」
「神を・・越えた。」
『・・絶対零度の冷気よ。・・かの者に氷の包容を与えよ。』
シンジの左手に青いオーラが集まる。
『アブソリュート・エンド!!』
ヒュゥゥゥゥゥゥゥ!!
シンジの左手から吹雪が放たれた。
ピキピキピキピキ・・
バルディエルが氷に覆われていく。
「氷の『道』!?」
「お兄ちゃんは『天』のはずだよ!?」
「いや違う!・・あれは・・神のスペル!?」
「なんだって!?」
『・・古より伝わる炎よ。・・我が前の敵を焼き尽くせ!』
今度は赤いオーラが集まった。
『エンシェント・エクスプロ−ジョン!!』
ドカーーーーーーーーン!!!
シンジが赤いオーラを空に投げると、空間の穴が現れ、
そこからレーザーの様な炎がバルディエルを吹き飛ばした。
「やった!」
「待って・・まだ生きてるよ。」
「じゃあ浄解を。」
『まだ終わってない。』
「えっ?」
シュゥゥゥゥゥゥゥ・・
なんとさっきと同じバルディエルが何体も現れた。
『・・極限なる烈風よ。・・我に従いて・・敵を飲み込め!』
シンジを中心に竜巻が現れた。
『フィアフル・ツイスター!!』
ゴォォォォォォォォォォ!!
竜巻が巨大化し、バルディエルを一ヵ所に集めた。(何匹かは消し飛んでしまった)
『ハァァァァァァ!!』
最後に右手に白、左手に黒いオーラがさっき以上に集まる。
「シンジ君・・次で決める気だ。」
ブゥゥゥゥゥゥゥン!
オーラが剣の形に変化した。
『・・行くよ!』
シンジは剣の柄同士を合体させた。
グルルルルルル・・
バルディエルが一体となった瞬間。
タタタタタタ・・
尋常じゃない速さでシンジは突っ込んだ。
『喰らえバルディエル!これが僕の・・僕とゼロの力だ!!』
シュィィィィィン!シュィィィィィン!
『ゴット・オブ・トライデント!!』
シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン、シュン
・・パァァァァァァァァン!!
バルディエルはコアが封印された状態で残りは跡形も無く消し飛んだ。
「信じられない・・一瞬で10発の斬撃を与えるなんて・・」
『・・。』
シンジは人間の姿に戻った。
フラッ・・ドサッ
そのままシンジは倒れ込んだ。
「シンジ!?」

回想
「なあ、シンジ。」
「ん?」
「使徒の魂も輪廻転生すっかなぁ?」
「え?」
「だってさ。俺、もうじき死んじまうからさ。どうも気になるんだよねぇ。」
「・・。」
「もしかしたら、このまま俺の魂が消えちまうかもな。」
「・・できるよ。」
「シンジ?」
「きっと転生できるよ。だって、君は僕だろ?僕は人だから大丈夫だよ。」
「・・サンキュな、シンジ。」
回想終了

「(ゼロ・・きっと・・また会えるよね?)」
『・・当たり前だろ。』
シンジにはゼロの声が聞こえたような気がした。
そしてシンジは、そのまま気を失った。

その後、バルディエルは参号機のコアとして自らの罪を償う事にした。
マナは一時期、ショックで寝込んだが、ゼロのコアに慰められ、エイツチルドレンとして
がんばる事にしたのだった。
だが、このコアには秘密がある事をまだ誰も知らなかった。


マナ:バルディエルは倒せたわね。

アスカ:そのかわり、ゼロがいなくなっちゃったわ。

マナ:コアになにか秘密があるみたいだけど。

アスカ:いったい。なんだろう?

マナ:なにかを残してくれたのかな。

アスカ:きっとまた会えるって言ってたし・・・なんか意味あり気よねぇ。
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