ゼファーに乗ったシンジ、
飛竜に乗ったセツナと響、
ムァ・ガルドに乗ったアスカ、ミライ、ヒカリ
三組が向かっている場所は一つ、霊峰と言われたゼノム山である。
霊峰ゼノム山には魔族の長:マザーの心臓を封印した要石が祭られていた。
『マザー』とは今から千年前、魔族の故郷:魔星ヒアデスから多くの魔族を引き連れて
ファルガイアを滅亡させる為に、各地を襲撃した『魔族の母』と呼ばれる存在である。
当時の三大強国を始めとした連合軍は、魔族を壊滅寸前まで追い込み、マザーは封印した。
その際、それぞれの国は『要石』にマザーの心臓を封印した魔力を注ぎ、各地へ隠した。
しかし、ゼノム山を襲撃した魔族が第一の封印:ジオフロントの要石を破壊してしまった。
魔族達はそこに前線基地を建設し、誘拐したジオフロントの王子:ルリを閉じ込めた。
魔族は、そこの警備を四人の魔族と魔物に任せ、本拠地である南の大陸に戻っていった。

・・霊峰ゼノム山
ゼノム山は年中雪に覆われ、常人では頂上に向かうのは不可能とまで言われていた。
そこに建てられた魔族の前線基地はある意味、無敵の要塞である
そして、ココを任されたのは四人の魔族なのだが、この四人の異名は『四馬鹿』だった。
鉄球を振り回す事しか攻撃方法がない大喰らいの魔族:トウジ
剣と銃を扱うが、とても女性とは思えないほどの貧乳の女性魔族:マナ
魔力を操るが、盗撮や覗きを趣味とする最低最悪な魔族:ケンスケ
ここまではハッキリ言ってロクな戦力ではない。
しかし、問題は最後の一人であった。
大鎌を片手で軽々と持ち、その俊足は無音で敵を狩ると言われている女傑:レイである。
以前にシンジ達はこの『三馬鹿』とレイと戦った事がある。
たまたま戻っていたセツナも加わり、追い返す事に成功したのだが、損害は酷かった。
と言っても、原因は魔族のせいではなくシンジやアスカ、セツナだった。
ケンスケがアスカやヒカリを盗撮するは、マナはシンジに押し寄せるは、
トウジはヒカリをさらおうとするなどした為、流石のシンジ達もマジ切れしたのだ。
シンジとアスカはARMを乱射し、セツナは闇の秘術を連発した為、魔族軍は壊滅した。
ところが、この時にレイが増援として現れた事で事態は一変する。
実力的には問題なかったが、兜が割れたレイの素顔はシンジの母:ユイを似ていたのだ。
その上、血の色が人間と同じ赤い色をしたレイ・・撤退した後も、疑問は残った。
・・とにかく、そんな四馬鹿(正確には三馬鹿だけでレイは単独行動)が宴会していた頃、
牢屋ではルリが脱獄したという緊急事態が起きていたのだった。

WILD・EVA 〜ワイルド・エヴァ〜
プロローグW 捕らわれた王子の脱走

・・翡翠 ルリ・・
お分かりだろうが、セツナの弟でジオフロント王位継承者、そしてミライの婚約者である。
翡翠家の歴史を遡っても、ルリ以上の魔力を持ち主はいない程の魔力を秘めていた。
お兄ちゃんっ子でセツナが旅立とうとした時、自分も行こうと思ったのだが、
やや気弱な性格が災いして、一緒に行く事が出来なかった。
ルリもまた、神行法を会得していたが、セツナの半分程しか使いこなす事ができなかった。
ルリはどちらかと言うと魔力による法術戦を得意としていたのも理由の一つである。
本来はヒカリと同じく杖を所持するルリだが、実際に持っているのは三叉戟だった。
これは接近戦も行える事を考慮し、なおかつ杖としての役割も果たせるからであった。
ルリの三叉戟:紫煉は海の神が持っていたと言われている今だ謎だらけの三叉戟である。
そんなルリの守護獣は・・常人より多いので登場するごとに紹介しますが、
主な守護獣は『海』を司るルカーディアと『星』を司るリグドブライトである。
ルカーディアはファルガイアの海を守護し、ガーディアンロードをも越える力をもつ海龍。
リグドブライトは隕石の姿をした守護獣で星々の光を集める事ができる。
そんなルリは現在、魔族に捕らわれているが、これは城を出る為にわざと捕まったのだ。
腕は縄で縛られていたが、足の方は縛られていなかった為、脱走は容易であった。
ルリは無事にゼノム山から脱出する事が出来るのか?

・・魔族前線基地
役立たずと言われ続けた三馬鹿は支部長昇任の祝いで騒いでいた頃。
タッ・・
すぐ横にある洞窟の入り口にルリが降り立った。
「フゥ、なんとかココまで成功っと。・・ココからが本番だ・・行くぞぉ!」
ルリは洞窟の中に入っていった
シュタッ・・
「・・。」
シュンッ・・
後ろから真紅の鎧を纏った少女が追いかけているとも知らず・・

・・ゼノム山 洞窟
洞窟の入り口は要石が置かれていた場所の奥に開かれていた。
「よりによってあんな奴等に破壊されるなんて・・要石も哀れだよね・・。」
とりあえず、要石があった場所で手を合わせるルリ。
「ココから下まで・・早くても三時間・・術士じゃなかったら凍死してるよね。」
ボッ・・
ルリは手から炎を出す。
「水や風の守護獣を持つシンジさんや兄さん、火の守護獣を持つアスカさんも平気かな。
ミライちゃんにはディアブロがあるし、ヒカリさんは術士だし・・うん、僕等は無敵!」
グルルルル・・
ルリの前に魔物が出現した。
「来たね・・僕だっていつまでも兄さんに頼っていられない。・・僕も戦うんだ!」
ルリも紫煉を取り出し、手首の縄を斬り、構えた。
「海の神よ・・我に勝利の加護を・・いざ!」
ダッ!・・ズバッ!
ルリは魔物に向かって駆け出し、敵を薙ぎ払った。
グォォォォォォォ!
魔物:ジラモンスターが水の呪文ハイドロランチャーを放とうとする。
「ハイドロランチャー・・悪いけど頂くよ。」
ブゥゥゥン
ルリの左手にモニターの様な物が出現した。
「ダウンロード!」
シュゥゥゥゥゥゥン
ジラモンスターに光を当て、ジラモンスターのデータを奪い取った。
ピピピッ・・
≪≪GET・・ハイドロランチャー≫≫
「よし♪・・ついでに君の弱点の技も調べさせてもらったよ。」
魔物が後ろに引く。
バジジジジジジ・・
ルリの周辺に電撃が走る。
「行くよ・・エレクトリッガー!!」
バーーーーーーーーーーー!!
電撃が大爆発を起こし、周りを巻き込んだ。
スゥゥゥゥゥゥ・・
電撃が消えると周りは吹き飛んでいた。
「フゥ・・このまま無事に下まで行ければ良いけど・・とにかく急ごう。」
ルリは足を速めた。

・・魔族前線基地
「何やて!?ルリ王子が逃げ出した!?」
グルルルル・・
「ちょっと!どうするのよ!」
「とにかくルリ王子を追うぞ!・・って、レイはどうした?」
「便所ちゃうか?」
「そんな事より、急ぎましょう!」
ようやくルリが脱走した事に気付いた三馬鹿はルリの追跡を開始した。

・・ゼノム山洞窟
グルルルルル・・
入り口に向かう為の道周辺は完全に魔物で囲まれていた。
「まいったなぁ・・どうしよう。」
『マスター・・。』
シュゥゥゥン・・
ルリの後ろにリグドブライトが出現した。
「リグド、君の光で魔物の気をそらせる?」
『可能ですが、下手をすれば我が光が魔物を強化する恐れが・・。』
「大丈夫。あの程度ならパワーアップしても、倒せるよ。」
『・・了解した。』
リグドブライトは魔物の上空に浮かび上がった。
『スタープリズム!』
パァァァァァァァ・・
リグドブライトが放った光に気付いた魔物はそのままリグドブライトの方に移動した。
「今だ!」
ルリはそのまま道に向かって走った。

・・ゼノム山洞窟 入り口前
「ここまで来ればもう・・。」
バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「ウワッ!?」
ズドーーーーーーーーーーン!
入り口から強力なビーム砲が飛び出し、ルリがいた所の壁が粉々に砕けた。
『・・。』
入り口から入ってきたのは青いダブルピラミッド状の物体(魔物?)だった。
「これも魔物?」
『・・バカな。』
リグドブライトが戻ってきた。
「リグド、どうしたの?」
『コイツはラミエル。天使に使える神の使い・・なぜ、魔物の味方に。』
「考えても仕方ないよ・・行くよ!」

・・???
巨大な水槽に浮かぶ謎の物体
その水槽の前にある玉座に銀髪の少年が座っていた。
トットットット・・
その部屋に蒼い鎧を纏った騎士が入ってきた。
『カヲル王子。ジークフリード、ただいま到着しました。』
「ご苦労様。それで、現状は?」
『ハッ、第一の封印を破壊した為、まもなくマザーの苦しみが緩まるでしょう。』
「なるほど・・それで、他の封印の在り処は?」
『現在はまだ不明です。アルハザード、ベルセルクが捜索しております。』
「そう・・そういえば、ジオフロントの王子から奪った『涙のかけら』は?」
『現在、フォトスフィアのエネルギーに変化するよう調整しております。』
「早急に頼むよ。・・我等魔族がファルガイアを制圧する日も近い。」
『ハハッ!』
「それともう一つ。例の計画はどうだい?」
『ハッ、使徒の培養は既に第六使徒まで進んでおります。』
「そう・・それで出来上がった使徒は?」
『残念ながらサキエルは敗れました。シャムシエル、ラミエルはゼノムの配備しました。』
「分かった・・下がってよい。」
『ハッ。』
ジークフリードは部屋を出て行った。
『マザー・・もうすぐだよ。・・もうすぐ甦らせてあげるからね・・。』

・・ゾノム山洞窟 入り口前
バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「クッ・・どうすればあの攻撃を防げるかな。」
岩陰に隠れて作戦を練るルリ。
「・・そうだ。リグド、リフレクター作れる?」
『可能だが?』
「ちょっとした賭けになるけど・・いい?」
『・・了解した。』
「行くよ・・1・・2・・3!」
ルリは岩陰から姿を現した。
バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
ラミエルはルリに向かって光線を放つ。
「・・今だ!」
『リフレクトウォール!』
ルリの前に張られた透明の壁が光線を防いだ。
「そのまま・・お返しだーーー!」
バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
跳ね返った光線はそのままラミエルに向かい・・
ジュゥゥゥゥゥゥゥ・・
音を立ててラミエルは消滅していった。
「やった!」
パキーーーーーン!
壁もまた、音を立てて砕け散った。
『・・あと、数秒長かったら危険だった。』
「これで山から抜けられる。」
・・そうはいかないわ。・・
「!?」
フッ・・
入り口の前にレイが現れた。
「レイさん!」
なぜか『さん』付け。
「・・やっぱりあの程度の縄では貴方の動きは止められなかったわね。」
「悪いけど僕は帰らせてもらいますよ。・・お世話になった貴方を倒してでも!」
ルリはレイに向かって紫煉を構える。
「いいわ・・来なさい。」
レイもまた、大鎌をルリに向かって構えた。

・・海の上
「!?」
「セツナさん?」
「今、魔力を感じた・・ルリと誰かが戦ってる。」
「!?」
「響、急げ!」
「ハイ!」
バサッ・・
響は飛竜のスピードを上げた。

・・洞窟
「クッ・・。」
ルリはレイの前でフラついていた。
「そんな・・どうして・・魔族の貴方が・・。」
ドサッ・・
そう呟いて、ルリは気を失った。
「・・。」
レイは無言でルリを抱き上げ、前線基地に戻っていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・“本編予告”・・・・・・・・・・・・・・・・・
ゼノム山の近くにあるバスカー集落に辿り着いたシンジ
そこでシンジは、アスカ達と再会し、セツナ達もゼノム山に向かっている事を知る
ゼノム山で対決するシンジ達とレイ・三馬鹿
しかしそれは、これから起きるファルガイア全域を巻き込む戦いの始まりでしかなかった
・・・・・・・・・・・・・・・・WILD EVA・・・・・・・・・・・・・・・・
近日、本編スタート!


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