投稿小説 クリスマスプレゼント


2015年。
世界は、慢性的な不況に包まれていた。
ほぼ、全ての国が高い失業率を抱え、政治・経済の不安定を当たり前のように含んでいた。
しかし、時間は非常なまでに流れるもの。
不況だろうが、戦争してようがクリスマスはやってくるのであった。
そして、それはここ第3東京市でも同じあった。


「ふう、これで終わりっと」
と、店の裏手でビールケースを積み上げている一人の少女。
名前は、惣流アスカ。
まだ、15歳の少女である。
「おっ、もう仕事が終わったのかい惣流さん」
「あっ、店長。どうも」
「いやいや、毎日よく働くね。そうそう、今日が給料日だったな。ほい、今月分」
「どうもありがとうございます」
「しかし、惣流さんも大変だね。お母さんが病気だから」
「仕方ないですよ。それに、順調に回復してますから」
「そいつはよかった」
「それじゃあ、私はこれで」
そう言って、家路につくアスカ。
「ただいま〜!」
「あっ、アスカちゃん。お帰り……ごほっごほっ」
「キョウコママ!ダメよ。まだ、起きちゃ」
「でも、娘を出迎えるぐらい……」
「と・に・か・く、お布団に入るの」
「ええ、わかったわ」
アスカに言われて布団に入るキョウコ。
「そうそう。今日、玄関にこんなものがきていたわ」
アスカ宛の封書を渡すキョウコ。
「手紙?誰かしら」
怪訝に思いつつも、中をあけるアスカ。
そこには、一枚の手紙と招待状が入っていた。
『12月24日、碇財団会長邸においてクリスマスパーティーを行ないます。この度、貴女様はパーティーのゲストとして御招待をいたしたいと思います。もし、御時間に都合がつくのであれば、ぜひ碇会長邸まで起こし下さいませ。  碇シンジ』
「……碇シンジ。ああ、シンジ」
と、幼馴染みのシンジからの手紙であった。
「あら、シンジ君からの手紙なの?」
「ええ。小学生のころまでは、同じ学校に通っていたわね。中学に入る時に、あいつは私立に進んだけど。なんか、クリスマスパーティーやるから来てくれって」
「じゃあ、いってらっしゃいよ」
「でも、私はバイトがあるから……」
「クリスマスぐらいは、あなたも楽しみなさい。悪いことじゃないわ」
「ママ……」
涙ぐむアスカ。
「そうそう、あなたにプレゼントがあるわ。ママが、パパからもらったものよ」
と、起き上がりタンスの引き出しから小さな鈴のついた一本の赤いリボンを取り出した。
「これは……」
「昔、パパからもらったリボンよ。これにはね、魔法がかかっているのよ」
「魔法……?」
「そ、魔法。でも、その人にとって一生に一度。しかも、クリスマスにしか効果がないのよ」
「そうなの。ちょっと信じられないけど」
「とにかく、持っていきなさい。きっと、あなたの助けになるわ」
「ありがとう、ママ」


それから数日後。
時は流れ、12月24日になった。
ここ、第3東京市にある高級住宅街の碇財団会長邸でクリスマスパーティーが催されていた。
「ここか……本当に大きな家ね」
と、惚けた表情で見るアスカ。
「いらっしゃいませ。失礼ですが、招待状をお持ちですか?」
そこへ、タキシードを着た初老の執事が話し掛けてきた。
「あっ、すみません。これです」
招待状を渡すアスカ。
「確かに……。では、こちらへ。御案内します」
「はあ……」
そして、屋敷の一室に案内されるアスカ。
「しばらく、ここでお待ち下さい」
一礼して部屋から出ていく初老の執事。
「あ、あの……」
呼び止めようとしたが、執事はさっさと部屋から出ていった。
「一体、なんなのよ……」
当惑するアスカ。
しばらくして、ドアがノックされた。
「あっ、はい。どうぞ」
反射的に返事をするアスカ。
『ガチャ』
ドアを開け、入ってきたのはアスカと同じくらいの年頃の青年であった。
「やあ、久しぶりだねアスカ」
「……!?も、もしかして、シンジ」
久しぶりにあう幼馴染みに驚くアスカ。
「どうやら来てくれたみたいだね」
「え、ええ……。それより、突然どうしたの。こんな招待状なんか送って」
「迷惑……だった」
「ううん。うれしいわ。最高のクリスマスプレゼントよ」
「そうか。それはよかった。気に入ってもらえなかったらどうしようかと思ったよ」
「そんなことないわ……。でも、私にはあなたにあげるプレゼントがないわ……。あなたと違って、私は貧乏な人間だから」
「そんなことないよ。アスカが来てくれただけで、僕にとって最高のプレゼントだよ」
「シンジ……」
涙を流すアスカ。
「あっ、な、泣かないでよアスカ」
慌ててアスカを抱き締めるシンジ。
「ご免ね……。でも、嬉しくて……」
「アスカ……本当は、もっと早く君に告白したかった。でも、僕に勇気がなくて……」
「そんなことない……そんなことないわ」
「それじゃ、パーティー会場に行こうか」
「待って。私もシンジに渡すものがあるの。ちょっと、目をつぶってくれる」
「!?」
当惑しつつも、目をつぶるシンジ。
「もういいわよ」
目をあけるシンジ。
「アスカ?」
「今の私には、これしかないから……」
そこには、首に鈴のついた赤いリボンをつけたアスカがいた。
「私からシンジへのプレゼントは私よ。もらってくれる、お嫁さんに」
「アスカ……もちろんだよ!小さいころの約束を覚えていてくれたんだね」
「ええ。いつも言っていたものね。私をお嫁さんにするって」
「やっぱり、招待状を送ってよかったよ。さあ、パーティー会場に行こう」
「よろこんで」
シンジの腕に寄り添い、パーティー会場に行く二人。
その日のクリスマスは、アスカにとって最高のクリスマスとなった。
(FIN)


%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
あとがき
ども、暗黒騎士ソードです。
少し早いですけど、今回はクリスマスネタをかいてみました。
実は、クリスマスネタはあんまり書いたことないんですけどね。
それでは、皆様もよきクリスマスを。


マナ:『プレゼントは私よ』ですってーーーーっ!

アスカ:最高のプレゼントよっ。(*^^*)

マナ:よく受け取ってくれたわねっ!(ーー#

アスカ:こんな素敵なプレゼントだもんっ。

マナ:なにが、首にリボンよっ!(ーー#

アスカ:ばっかねぇ。鈴のついたを忘れてるよ?(*^^*)

マナ:自分でやってて恥かしくないわけぇっ!?(ーー#

アスカ:そのリボンのついた箱はなに?

マナ:わたしを入れて、シンジに送るのっ! かーいいでしょ?

アスカ:一緒じゃないのよっ!

マナ:首に鈴つけた、ドラ○もんと一緒にしないでーーーっ!

アスカ:D型装備と一緒にするなっ!!
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