「シンジとアスカの鋼鉄の赤い糸?(前編)」
今日、日曜の午後4時。
シンジとアスカがお互いの気持ちを告白した日から丁度1週間目に当たるこの日。シンジはいつも通りリビングの椅子で雑誌を読み、休日をゆっくりと満喫していた。
「ねぇ〜、シンジぃ〜。ヒマよ〜ぉ。」
同じリビング、クッションを抱えてゴロゴロと転がっていたアスカが不満を言う。
「そんなの、僕にどうしろっていうんだよ。」
今日5回目のこの問いかけに、さすがにもう聞き飽きたといった感じのシンジは、雑誌から目を離さずに言葉を返している。
「だ〜か〜ら〜、なんか面白いことないの〜〜?」
「う〜〜ん、面白いことは自分で探すもんじゃない?」
「えぇ〜〜〜・・・」
(もう、鈍感ねぇ〜)
そう思いつつ、体を大の字にして足をばたつかせて駄々をこねるアスカ。
(!・・・・・ふふふふ、面白い事、見ぃ〜つけた。)
が、なにか面白いことを思いついたのか、直後、ニヤリとその口元が弧を描いた。シンジのこれまでの経験からして、こういう笑みを浮かべる時のアスカはロクな事を思いついていない。
「そうね、じゃあ面白いこと探してこよ〜〜っと。」
そう言い残すと、アスカはピョンと立ち上がり、スキップするようにリビングを後にして行った。そんな妙に嬉しそうに去って行くアスカを尻目に、一抹の不安を覚えるシンジ。
(なんか・・・ヤな予感・・・)
そう思うが、嫌な事をいくら思ったって何が変わるワケじゃない。現実主義のシンジは再び雑誌に目を注ぐ。
・
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(あっ、この腕時計いいな・・・)
雑誌に紹介されている腕時計を物欲しげに見つめるシンジ。
「へ〜え、その腕時計が欲しいんだ〜。」
いつの間にかリビングに戻り、背後にいたアスカが突然声をかけたので、ちょっとびっくりしたシンジだがよほど腕時計が気に入ったのだろう、雑誌から目を離さずに答える。
「うん、一度でいいから、こんなカッコイイ腕時計をはめてみたいよ。」
「ふぅ〜ん、じゃ、コレはめてみて。」
ガシャッ
腕時計の代わりにシンジの左腕にはめられたもの、それは「手錠」。
「んな!?なななにするんだよアスカっ!!」
雑誌を放り投げ、手錠を外そうとするが、当然外れない。なんてったって、外れないから手錠だ。
「面白いこと見つけたのよ。文句ある?」
「こ、こんなことしてどうするつもりだよ!」
「これからあんたはあたしの言いなりになるの。いいわね?」
凄い暴君が現れたものだ。もちろんいいわけがない。しかも、言いなりになれとは言っているものの、アスカは具体的な事は全く考えておらず、ただ、シンジに構って欲しくてやったまでだった。
・・・だが、「手錠」はちょっと考察の余地ありだ。
「なにバカな事言ってるんだよ!外してよ!」
「ほらほら、右手も出しなさい。両手を拘束して初めて手錠なのよ?」
「やだ!」
当然の抵抗を展開するシンジ。己の人権の懸かっている右手を、超反応で後方に上げる。
「こら!男なんだから大人しくしなさい!」
無茶苦茶な事を言いながらアスカがその右手にしがみつくと、その細く美しい腕からは想像出来ないほどの力で引っぱり出し、シンジはだんだんと右手を降ろされて行ってしまう。
(まずいっ!このままじゃ・・・・・・・、そ、そうだ!!)
すると咄嗟に打開策を閃いたシンジは機転を効かせ、アスカが自分の右腕に集中しているのを見計らい、その逆、手錠の掛かっている左腕を思い切り引き上げた。
「あっ!!」
つまり、繋がれていたもう片方の手錠もつられて引き上げられ、アスカは手錠を手から離してしまったのだ。
「ちょっと!返しなさい!」
「じゃあ、手錠のカギと交換だよ。」
「うう・・・それは出来ないわ・・・」
「だったら・・・・・・・仕方ないね!」
ガシャッ
アスカの見せた一瞬の隙を突いて、シンジがもう片方の空いていた手錠をアスカの右手にはめた。
「ああ!なんてことすんのよ!」
「ほら、そのカギで外さないと。」
そう、シンジの行動は計算されていたのだ。この手錠、片方を外せばもう一方も外れる仕組みになっており、つまりアスカは、外したいけど外したら計画がパア、外さないとずっとこのまま、の2択を迫られる結果になったのだ。
だがしかし、さすがは大卒の天才美少女。常人とはひと味違った発想をひねり出す。
(ま、いっか・・・この方が面白そうだし。)
ポイッ
なんと、事もあろうかアスカが手錠のカギを窓の外に投げ捨ててしまった。やはり、IQ180オーバーのこの美少女は伊達ではない。
「えぇ!!!?」
理解を越えたこのまさかの行動に、動揺を隠せないシンジ。
「なななに捨ててるんだよアスカ!!?」
「あんたが手錠かけたんだからね。責任とってよね。」
さらりと言い放つアスカに、シンジの頭はブラックアウトしてしまい、ガックリと膝をついて項垂れてしまった。
今から外に出て探しても無駄だと分かっていた。なにせ昨日は記録的な大雨で地面は泥沼になっており、それに飲み込まれた小さなカギを探すのはとても不可能だろうからだ。
それに、気落ちする決定的な理由がもう一つあった。アスカはまだ知らないもう一つの理由・・・。
「・・・・・アスカ・・・・・なんて事を・・・・・」
項垂れているシンジに、皮肉にもアスカが励ましの声をかける。
「大丈夫よ。これ、玄関のミサトの鞄の中にあったものだから。ミサトが帰ってきたらスペアキー貰いましょ。」
「・・・・・・・無理だよ。」
「え?なんでよ。」
言葉で答える気力も残されていないのだろう。シンジが、無言でその右手をゆっくりと電話に向かって指さす。
「電話?電話がどうしたのよ。」
訝しげな色を浮かべながら、アスカが手錠で繋がれたシンジを引きずって電話の方へと歩み寄って行く。引きずるその光景は、「Air」でミサトがシンジを引きずっていたそれを思い起こさせるようだ。
「ん?留守録?」
電話の前まで来ると、ディスプレイに「留守録1件」と表示されているのが見て分かり、なんだろうと、アスカが再生ボタンを押して見る。
《ピィ―――――ッ メッセージを1件再生します・・・》
《シンちゃんアスカ、元気ぃ?でさぁ、チョッチ悪いんだけど、今日帰れないのよぉ。ドイツでエヴァ6号機の処分が急遽決まってさぁ。だから手続きとかで忙しいのよぉ。てことで!明日の朝には帰ってくるから!よろしくね〜〜ん♪》
《ピィ―――――ッ メッセージを1件再生しました・・・》
「アスカ・・・どうするんだよ・・・」
これを聞けば落ち込むだろうなと、シンジが疲れた声でアスカの行いを断罪するが、先刻述べた通り、天才美少女はひと味違う。
「ミサト今日帰って来ないんだ。面白くなって来たじゃーん!」
「んな!?」
信じられないといった顔でアスカの顔を凝視しているシンジ。
「な、なに言ってんだよ!こんな状態じゃあ、トイレだって、お風呂だって入れないじゃないか!!」
「おーおー、やりがいがあるじゃーーん?」
(ダメだ・・・・・)
ガクッ
IQ180オーバーの美少女の考えには到底ついて行けないシンジは、がっくりと地に両手をついて項垂れるしかなかった。
「ほらほら、立ちなさいってば。」
「いやだ・・・・・なにもしたくない・・・・・」
「立ってっ!!!」
「・・・・・・・・。」
「立ちなさいっ!!!」
「ぐぇぇぇぇ!!分かった!分かったよぉぉ!!」
ダランとしているシンジに襟締めをキメて無理矢理立たせるアスカ。この辺の対処の仕方が「Airミサト」との決定的な違いである。
「せっかくの休みがパアになるでしょうがっ!!」
「うぅぅ、分かったって。」
「そうそう、男は潔くなきゃっねぇ。」
「それで、僕はなにをすればいいんだよ。」
「そうねぇ。どうしようかなぁ。」
「なんだよそれ!!なんの考えもナシにこんな事したのかよ!?」
「いや、あの、それは・・・・・」
ハハハっと笑いながら誤魔化すアスカに、シンジが詰め寄って行くという、なんとも珍しい光景が展開された。
「ひどいよ!少しは後先考えてよ!」
「ま、まぁまぁ・・・」
「ママもパパも無いよ!なんでそうやって本能でしか行動出来ないんだよ!!」
「ぬ、ぬ、ぬわんですってェェェェーーーーーーー!!!」
まるで動物のような言われようをされ、一気に髪の毛が逆立つアスカ。ここまでいい調子で来たシンジだが、そろそろ夢から覚める時間だ。
「元はと言えば、全然かまってくれないあんたがいけないのよっ!!」
「そ、それは・・・」
「なによ!どうせあたしの事なんかどうでも言いんでしょ!!」
「い、いや、あの・・・」
「あの1週間前の言葉はウソだったのね!」
「あ、あれは本当だよ・・・」
「じゃあ、もう一度言ってみて。」
「ええぇぇーー・・・」
「ひどい!!!」
顔を両手で覆い、大げさにその場に崩れ落ちるアスカ。
「バカ!アホ!スケベ!ケダモノぉぉぉー!」
「ちょ、ちょっと・・・!」
「じゃあ、言ってよ。」
泣いていた様子はどこへやら、キッとシンジを見据えている。
「え、えっと・・・・・す、す、す・・・」
「す?」
「す・・・・・き・・・・・やき。」
「うわああぁぁーーーーーーん!!!」
再び号泣もどきをするアスカ。恐ろしいほどの身代わりである。
「汚されたぁぁーーー!!あたしの女心が汚されたぁぁーーー!!」
「ごめん!ちゃんと言うよ!」
「汚されちゃったよぉぉーーーー!!加持さぁーーーん!!」
「わーーっ!言う言う!言うから頼むよ!」
慌てて懇願するシンジ。大声で汚されたなどと言われては適わない。
「・・・・・今度誤魔化したら承知しないわよ。」
「う、うん。」
ピタリと泣きやみ、真剣な顔で言われるシンジは、ゴクリと唾を飲み込む。
「すす、す、好き、だ、よ。」
「ススキ?」
「好き、だ、だだ、よ。」
「須木田タダヨ?誰それ。」
「ああもう!好きだって言ってんだよっ!!」
「合格!!」
ガバッ
「うわっ!!」
いきなりシンジに飛びつくアスカ。まっ赤になってしまった照れ隠しなのだろう。シンジの胸に埋めているものの、見える耳がまっ赤である。
「んふふ〜〜♪」
「ちょっ!アスカ!?」
続けてシンジの胸の中で、アスカが心地よさそうにごろごろと喉を鳴らしながら頬ずりしている。そして、すでに顔をまっ赤にして目を白黒させているシンジを確認すると、上目使いに意地悪い突っ込みをする。
「あれぇ〜〜?シンジぃ。顔が赤いのは気のせいかしら?」
「ずっ、ズルイよアスカ!」
「やぁねぇ。どうして男ってこうエッチでスケベなのかしら。」
ごろごろと頬ずりしながらのアスカが、滅茶苦茶な事を言う。
一方、根拠も無しにスケベだと言われ、今度はシンジがむっとしてしまう番だ。
(・・・アスカがその気なら。)
「よいしょっ。」
「ちょ、ちょっとっ!?」
アスカの体をひょいと持ち上げると、シンジが両手でアスカの脇の下をくすぐり出した。
「これでどうだっ!」
こちょこちょこちょこちょこちょ・・・・・
「や、やめてあはははははははははははははっ!!」
この奇襲にアスカが身をよじらせて抵抗するが、シンジが上手いことその動きに手を合わせているので、アスカは笑い地獄からなかなか抜け出せない。
「さっき言った事を取り消してもらうよ。」
「あはははははははっ、お願いっ、ひはははははっ、やめてっ、あはははははっ。」
「え?なんだって?」
「だ、だめっ、ははっ、はははふはっ、く、苦しいっ、く、くくくくっ・・・」
「アスカ?」
アスカの顔からだんだんと表情が抜けて行く。
「くくくっくくっ・・・く・・・・・くるっ・・・・・・しい・・・・・・」
「アスカ!!」
ようやくアスカが呼吸困難になりかけている事に気付いたシンジが慌ててその手を止めたが、すっかり真っ青になってしまったアスカの顔色からして、結構危険域にまで達していたらしい。
「アスカ!アスカ!?」
「ぜぇ、ぜぇ、ぐるじぃ・・・・・」
「ご、ごめん。大丈夫?」
シンジの肩口に顎を乗せて、ぐったりとしているものの、「笑い死に」という最悪の事態だけは回避できたようである。
「あ、あんたね・・・・・限度ってもんが・・・・・あるでしょ・・・・・」
「ご、ごめん。悪気はなかったんだ・・・。」
が、アスカが一時的に弱ったのも束の間、不意にその蒼い瞳が鋭い閃光を放ち、口元をニヤリと歪ませた。
(チャ〜〜〜ンス。)
「スキありっ!」
パクッ
「うッ!??」
シンジの肩口に顔が来ているのを良いことに、目の前のシンジの耳に軽く噛み付いたアスカ。これはたまらない!この奥の手に、シンジの理性メーターは振り切れる寸前だ。
「ふふっ♪あたしの勝ちね♪」
アスカが果たして何に勝ったのかはよく分からない。
「う・・・・・ぐぐぐっ・・・・・」
そんな勝ち気な顔で耳をくわえているアスカのすぐ横で、何かに必死に耐えるようにその体を硬直させているシンジ。歯は固く食いしばられており、その額には冷や汗が確認できる。
「わっ、わかったよっ・・・・・・ぼ、僕の負けでいいよっ。だからっ、もうっ・・・・・」
「なによ。つまんない男ねぇ。」
「ご、ごめん・・・アスカ。」
「ふんっ。どうせあたしは魅力無いわよ。」
シンジの耳を解放したアスカが、唇を尖らせてぷいっと顔を背けてしまった。
「そ、そんなこと言ってないよ。アスカは可愛いし・・・その、僕には、もったいないくらいだよ・・・。」
「何言ってんの。もっと自信持ちなさいよ。あんたはこのあたしが唯一認めた男なんだから。」
申し訳無さそうな顔のシンジに、見かねたアスカが凛々しい顔で優しく励ましている。
「そ、そっかな。」
照れたように頭に手をやるシンジ。
「でも、もうちょっと積極的でもいいかなって。」
「ご、ごめん・・・。」
またまた申し訳無さそうな顔をするシンジに、相変わらずねぇと、アスカは思わず吹き出してしまった。
「ふふっ。ま、そこがあんたの良いところでもあるんだけどね。」
「・・・ありがとうアスカ。でも、今日はこんなだからね。少しは積極的になれるかもしれないよ。」
繋がれた手錠を指差しながら笑顔で言うシンジ。素っ気なく大胆な事を言われ、当のアスカは顔がまっ赤だ。
「バ、バカ!無理にそうしなくてもいいわよ別に!」
(もう、こいつは・・・・・。大胆なんだか、奥手なんだか・・・・・。)
やれやれと頭に手をやるものの、その顔は笑んでいる。
「じゃ、そろそろ夕飯にしようか。」
「さんせーい!」
もう6時を回っていたのを確認したシンジの提案に、最後は元気良く同意するアスカであった。
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トントントントントントン・・・・・
台所で料理をしているシンジ。その隣りで立っているだけのアスカ。
「なんか・・・ヒマね・・・。」
さすがにただ立っているだけのアスカはつまらない。シンジの料理を手伝えるなら手伝いたかったが、慣れない事をしてせっかくの料理を台無しにしたくはなかった。どんなに意地っ張りのアスカでも、自分の技量ぐらいはわきまえているつもりだ。
ひとまず、手無沙汰なので、シンジの邪魔にならないよう寄り添うと、そっとその腕を絡ませる。少し驚いた素振りを見せるシンジだったが、すぐに優しい顔で受け入れた。
「・・・・・今日は、離れられないね。」
シンジが微笑みながら言う。
「そうね・・・・・シンジは、イヤ?」
何も無い前方の空間を見つめながらそう言うアスカは、いつになく神妙な口調だ。
「それは・・・・・違うと思う。」
「えっ・・・・・違う・・・・・?」
返されたその言葉に、アスカが寂しげな顔でシンジの横顔を見つめる。
「離れられない、じゃなくてさ・・・・・その、離れたくない、かな・・・・・なんて。」
そう言って急に料理の手を早めるシンジは、照れを誤魔化しているのだろう。顔が赤い。
「・・・・・ばぁ〜か。」
そんなシンジに、瞳を潤ませてしまうアスカ。朱に染まったその微笑みは、安堵と嬉しさで溢れんばかりだ。
「アスカは・・・・・どうなの、かな・・・・・」
なにげなく独り言を言うように呟くシンジ。一転して意地悪い笑みを浮かべているアスカはお返しと言わんばかりだ。
「残念でしょうけど、あたしは離れたくないとは思わないわ。」
「・・・・・そ、そうなんだ・・・・・。」
純粋無垢というより、単純すぎるというべきか。まんまとカマをかけられたシンジが、思い切り暗くした表情で俯いてしまった。
「ふふっ♪あんたバカぁ?離れたくないんじゃないの、離さないのよっ!」
とびっきりの笑顔でそう言うと、アスカはシンジの首に抱きつく。
「あっ!ちょっとアスカっ、危ないよっ!」
包丁を手にしているシンジが慌てて作業を中断するが、その顔には先ほどの暗さはすでに微塵も無い。アスカと同様の、心からの笑顔がそこにあった。
「男だったら、抱きつかれながらでも料理ぐらい出来るでしょ!」
「うっ・・・・・そ、そのぐらい、出来て当然だよ。」
「あっ!言ってくれるじゃない!シンジのクセにぃ〜!!」
「くっ、くるしいよアスカっ!」
なんだかんだ言いながら、終始笑顔の2人であった。
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午後8時。
片手を不自由にしながらも、二人三脚の要領でなんとか夕飯を終えた2人。無論、いつもより食べるペースが遅くなってしまったのは必然で、夕飯と同時に時間も食ってしまった。まぁ、それでも2人はイヤな顔ひとつしなかったが。
しかし今、とある問題の壁にぶち当たっている2人は、打って代わって真剣な面持ちである。
そう、手錠をした代償として生じた問題、風呂の事についてだ。お互い好き同士の仲ではあるが、これだけは考え込まざるを得ない。
「・・・・・今日は入らなくてもいいんじゃない?」
「ダメよ!シャワーも浴びない体で寝られるわけないでしょ!」
(なに言ってんのよ!!こんなチャンス二度と無いでしょうが!!)
無精な提案を出すシンジに、とある理由から断固として譲らないアスカ。しかし、このままでは一向にラチが開かないのは必至なので、実行促進委員アスカは仕方なく苦渋の決断を下す。
「・・・・・しょうがない。一人ずつシャワーを浴びましょ。」
「ど、どうやって!?」
「シャワーを浴びる方は服を脱いで、待ってる方は服を着たままバスルームに入るのよ。」
「ええっ!?だって僕も入るんだろ!?」
「そりゃそうよ。だから待ってる方は目隠しするのよ。」
いくらアスカだって花も恥じらう乙女である。さすがに、裸を見られるのは恥ずかしいし、ましてや全裸同士で風呂に入るワケにも行かない。
「う〜ん・・・・・それしか・・・無いのかな・・・。」
「じゃ、決まりね。・・・・・くれぐれも、変なこと考えるんじゃないわよ。」
襲うんじゃないわよと、ジト目で釘を刺すアスカ。
「わ、分かってるよ。」
「まぁ、あんたにそんな度胸は無いことくらい分かってるけどね。」
「はいはい。」
(やったぁぁぁーーーー!!!シンジとお風呂なんてぇぇぇ!!!)
平静を装うアスカだが、水面下では大きな下心が動いているようだ。無意識の内に鼻歌でウキウキウォッチングを歌ってしまっている。
(はぁ、大丈夫かなぁ・・・。)
今にも踊りだしそうなアスカをよそに、一人密かに嘆息するシンジ。立場とセリフがまったく逆だ。
かくして2人は、ハラハラドキドキのシャワータイムを迎えるのであった。
感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構 ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。 |