ぺたん・・・ぺたん・・・

「・・・」

ぺたん・・ぺたん・・

「・・・(うずうず)」

ぺたん・・・

「えいっ」


ふみぃっ!!!


「!?」

ぱたん・・・






『緊急指令!レイちゃん出動!?』

*この作品はマダマニアウサさんの名著、『Evangerion Remember14』の外伝に登場する リトルゴジラ・レイちゃん主役のお話です。 じたばた・・・じたばた・・・ 倒れ込んだままパタパタと短い手足を動かしているリトルゴジラ・・・の着ぐるみ。 その様子を微笑んで見ていたアスカだったが、その中からすすり泣きが漏れ始めたのを聞き、 慌てて尻尾を踏んでいた足をどけた。 自由に動けるようになったリトルゴジラが体を起こす。 かぽっ 頭部が外れると、そこには鼻を赤くして半べそをかいた蒼髪の少女ーー綾波レイが 紅い目を潤ませてアスカを見つめていた。 「ぐすっ・・・アスカ、どうしてそういうことするの?」 いまにもわっと泣き出しそうなその様子に、アスカは慌てて弁解を始めた。 「ご、ゴメンねレイ。あのずるずると引っ張られるしっぽを見てたらつい・・・」 「・・・ぐすっ」 「あぁっ!泣かないでぇ!」 そうやって一悶着起きていたところに、シンジが通りかかった。 「あれ、レイはまたw型装備着てるんだ。・・・何で泣いてるの?」 シンジがひょいっとレイの目を覗き込んだ。 そんな彼に、レイは鼻をすすり上げながらアスカを指してみせた。 「アスカが、尻尾踏んで、私転んで、それで・・・」 途切れ途切れなその言葉と赤い鼻。 そこから大体の見当をつけたシンジがくすっと微笑う。 「そっか・・・痛かった、レイ?」 「痛い・・・ええ、私、痛かった・・・」 ぎゅっ 短い手足を精一杯駆使してシンジにすがりつくレイ。 そんな『妹』に向かって優しい笑みを浮かべながら、シンジはレイの赤い鼻に手をやった。 「ほら、痛いの痛いの飛んでけ〜〜・・・はい、もう大丈夫。痛くないだろ?」 「・・ぐす・・ウン・・」 しゃくりあげる少女とそれを慰める同年代の少年。 一見したところ恋人同士に見えなくもない二人を見て、 横にいるアスカがぷぅっとふくれた。 「レイ!さっきのは謝るから、そろそろ泣き止みなさいよぉ」 「・・・アスカ、私のこときらい?」 「じゃなくてっ!あぁあ!もう、泣かない!!!」 またもやぐずり始めたレイにずいっと近寄り、アスカはその顔を引き寄せた。 スカートのポケットから出したハンカチで、その顔を少し乱暴に拭っていく。 「うぎゅぅ・・・」 「これでよしっ!もう大丈夫でしょ、レイ?」 アスカは腰に手をやってレイに笑いかけた。 そのあけっぴろげな笑顔に、レイは思わずこくりと頷く。 「うんうん。それじゃ、今から訓練よね?はりきっていこー!」 アスカがレイの(きぐるみの)手を引っ張って歩き始める。 その半歩あとをシンジがついていく。 そんないつもの構図の中、レイは心の中でなんとはない嬉しさを感じていた。 (碇君とアスカ・・・いつもどおり・・・たのしい) かぽっ 「がおーーー♪」 「きゃっ!?もぅ、いきなりリトル化するんじゃないの!」 「ははは・・・」 「始めましょう♪」 「はい、LCL注入☆」 「・・・エントリープラグ挿入(汗)」 「・・・パルス、神経接続ともに異常なし(汗)」 ただの実験だと言うのに、なんとも嬉しそうなリツコ&マヤ。 その横でひきつった顔で淡々と報告を続けるシゲル&マコト。 そんな彼らの目の前にいるのは・・・ ”がぉーーー” ”がおぉぉ♪(やっぱコレってけっこう楽しいじゃん)” ”・・・(こんなん、EVAじゃないやい)” 例の特殊装備を施した三体のEVAであった。 知らない方のために説明しておくと(いないとは思うが)、 零号機:初代ゴ○ラ 弐号機:平成版ゴ○ラ 壱号機:スペースゴ○ラ という豪華ラインナップ(?)なのである。 「ほら、シンジ君も『がぉー』って言いなさいよ♪」 ”なんでですか!” ミサトの茶々にシンジが半ギレする。 そんな彼にリツコが笑いを含んだ声で指令を出した。 「それもしょうがないわね。シンジ君はこのときだけ特別シンクロ率が低いんだから・・・ 身も心もゴ○ラになってもらわないと。遊びじゃないんだから真面目にやりなさい」 ”・・・(遊んでる・・・絶対遊んでる・・・)” ずずぅぅん、とばかりに沈み込むシンジ。 ”言えばいいのに” ”けっこう楽しいわよ、シンジ♪” レイとアスカからも通信が入った。 その向こうでは、二匹のリトルゴジラ(の着ぐるみを着たレイとアスカ)が 頭を左右にふりながら楽しそうに『がおー、がおー』とやっている。 ”・・・” 「初号機、シンクロ率低下。起動指数ぎりぎりです」 「シンジ君、言いなさい」 「いいましょ、シンジ君」 「ほら、言っちゃえ♪」 ”いいましょう?” ”シンジ?” そのとき。 シンジが遂にキレた。 ”裏切ったな!みんなみんな、僕の気持ちを裏切ったんだぁぁぁぁぁぁ!” エントリープラグの中でばたばたと暴れだすシンジ。 「シンクロ率さらに低下!」 「パイロット、激しい心理圧迫が認められます!」 それを聞いたリツコがこめかみを抑えながら首を振った。 「本当に・・・シンジ君はこれには向いていないようね、残念だわ。 接続をカット。”微弱”電流で彼の沈静化を(くすっ)」 「はい♪ぽちっとな☆」 マヤが目の前のボタンを押した。 バリバリバリバリ!!! ”あんぎゃぁぁぁぁ!!!・・・(ガク)” じゅぅ・・・ 気化したLCLが気泡となって立ち上る。 ぱったりと気を失ったシンジに満足げなマヤ&リツコ。 ”ちょっと!シンジに何したのよ!!!” 「ちょっと”微弱”電流で静かになってもらっただけ。大丈夫、心臓は動いてるわ」 アスカの抗議の声に、リツコは満足げな笑みで返した。 ”どこが”微弱”よ!LCLが気化してるじゃない!LCLの沸点考えなさいよ!!!” 「まぁまぁ、実験続けましょう?」 マヤがにっこりと微笑む。 とても数秒前に○○○○○ボルトの電圧を(嬉そーに)かけた人物とは思えない。 ”こぉのマッドサイエンティスト!人殺し!” 「いや、死んでないって」 こっそりツッコミを入れる某オペレーター。 お決まりの台詞以外を言えて実はちょっと嬉しいシャイなロンゲのお兄さんだ。 ちなみにこの解説は物語に何ら影響しない。 ”シンジになんかあったらどーすんのよ!?アンタたちなんか・・・かはッ!?” 盛んに文句を言っていたアスカが、突然大きく目を見開いた。 笑って聞き流していたリツコがそれをいぶかしんで尋ねる。 「アスカ?どうしたの?」 ”カ・・・グゥッ・・・” ”アスカ?アスカ!?” 苦しそうに体を丸めて悶えるアスカ。叫ぶレイ。 オペレーター’sが慌てて声を上げる。 「パルス逆流!!!」 「シンクロ率、急激な上昇を遂げています!」 「エントリープラグ強制排出・・・し、信号受け付けません!?」 ケージではアスカの体の動きに合わせてゴ○ラ(弐号機)が体を蠢かせる・・・と、 急にその動きが止まった。 「・・・アスカ?」 ミサトが恐る恐る問い掛けてみる。が、彼女からはなんの反応も返ってこない。 さらに重ねて問いかけようとした・・・その瞬間。

クワァッ!

ゴ○ラ(弐号機)の口が大きく開いた! 「「「「・・・え?」」」」

がしがしがしがし・・・・

発令所の人々があっけに取られる中、ゴ○ラ(弐号機)は素晴らしいスピードで 都市部につながる射出口をよじ登っていった。 そんな中、一段高いところでその様子を観察していた冬月&ゲンドウはと言えば・・・ 「・・・芦ノ湖以来だな(『マナとシンジのファーストデート』参照)」 「あぁ、間違いない。キョウコだ」 どこかで聞いたような台詞を繰り返していた。 そしてそれからまもなく。 地上は未曾有の混乱に包まれることになる。

ガオォォォォ!!!

「ゴ、ゴジラだ!!!」 「何でゴジラが!?嘘だろ!?」 「わぁ、かいじゅうさんだぁ」 「ほら!はやく逃げるわよ!!!」

ドシン・・・ドシン・・・

キィィィィン・・・・ 「目標補足、ミサイル射出!!!」 ドン!・・・シュゥ・・・ 「・・・なんて野郎だ!ぜんぜん効きやしねぇ!」 「こいつぁ俺達じゃ・・っておい!」 「う、う、うわぁぁぁぁぁぁ!?」

バキッ!!!ヒュゥゥゥ・・・ズドォォォン・・・

昼日中、街のど真ん中を怪獣の巨体が行進していく。 時折飛んでくる戦自の戦闘機やヘリを叩き落しながら。 炎こそ吐かないものの、街は大パニック、辺りは火の海。 そう、それはまさしく・・・ゴジラそのものだった。 「・・・大変なことになったわ」 頭を振るリツコ。 『あんたのせいでしょうが!!!』というつっこみを入れたい気持ちを抑え、 ミサトが尋ねる。 「原因は?」 「おそらくは、弐号機の中のキョウコ博士の魂がアスカの怒りに反応したんでしょうね」 「何とか止められないの、あれ」 「キョウコ博士が覚醒してしまった以上、私の力では無理。外部からは干渉できないのよ。 エネルギーは無尽蔵、戦自は役立たず・・・処置なしね」 淡々と語るリツコ。 ・・・だが、その眼に喜色が浮んでいるのは何故だろうか? 「素敵ですね、センパイ」 「分かってるじゃないマヤ。そう、これこそがゴジラ!セットやCGでは出ない本当の迫力なのよ!!! ・・・もしシンジ君に意識があったら、壱号機(スペースゴジラ)で出撃してもらえたのに・・・惜しいわ」 「「「「「・・・」」」」」 マッドな上に特撮マニア。 そんなとこまで堅い絆で結ばれた師弟に発令所は声も出ない。 だが、その沈黙をレイが破った。 「ふざけないで」 冷たい声の中に怒りの炎が燃えている。 ・・・だが、モニターの中の彼女はあいも変わらずリトルゴジラ。 「アスカを助けて。赤木博士」 モニターに鋭い視線を向けるレイ。 ・・・それでも、彼女はリトルゴジラ。 「もぅ、怒っててもカワイイ♪」 マヤの眼からはハートマークが離れない。 その一方、リツコはさすがに技術部を束ねるだけあって向こうの世界にイッテばかりではなかった。 「そうは言ってもレイ。一度怒りを覚えた魂を押さえ込む方法は・・・」 「・・・いや、方法はある」 低い声が発令所に響く。 その声に、誰もが上を振り仰いだ。 「「「「「司令!?」」」」」 「方法はある。そしてレイ、それにはお前の力が必要なのだ」 「・・・わたし?」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「分かったな、レイ。アスカを救えるのは、お前しかいないのだ」 「はい(アスカ・・・私、頑張る)」 「娘を・・・頼む」 かぽっ! ・  ・  ・  ・  ・  ・  ・ さて、第三東京市。 慌てふためく人々を慎重によけ(ここらへんはまだ良識が残っているらしい)、 巨体を揺らしながらゴ○ラ(弐号機)は我が物顔で辺りを歩き回っていた。 その後ろには累々と横たわる戦自の戦闘機、ヘリ、戦車の残骸・・・ 「せ、戦自が全く相手にならない・・・」 「こりゃ使徒ってのより面倒じゃないのか!?」 「ネルフは出てこないし・・・」 「やばいって!!!」 もう、だれもそれを止めることは出来ない・・・そんな思いが人々の頭を掠めたとき。 その行く手に小さな影が立ちふさがった。 「あ・・・」 「あれは・・・」 ぎざぎざの背びれ。 尻尾。 そして爬虫類に似たその顔。 「ゴジラ・・・ゴジラだ!」 「あんな小さいのが?」 「そうだよ、知らないのか!?あれはリトル・ゴジラ・・・ゴジラの子供だよ!!!」 その頃、発令所では一同が固唾を飲んでその光景に見入っていた。 ゲンドウの考え、それはリトルゴジラ(レイ)を出すことによってゴ○ラ(弐号機)の 気を静め、おとなしくさせようというものだったのだ。 「碇、勝算はあるのか?」 「キョウコは怪獣映画が大好きでした。その彼女がこのシチュエーションで取る行動は一つ・・・」 ぺたん・・・ぺたん・・・ リトルが歩き始めた。 おぼつかない足取りは見る者の保護意識を煽る。 その向かう先は、ゴ○ラ(弐号機)。 ”・・・” ゴ○ラ(弐号機)の動きが止まった。 じっとリトルに目を注ぐ。 ぺたん・・・ぺた・・こけっ! 転ぶリトル。 ネルフの廊下と違ってでこぼこの多い路上では、非常に歩きにくいのだ。 ふらふらしながらも、何とか立ち上がる。 (アスカ・・・待っててね・・・) その想いが周囲にも伝わるのか。 周りの群集はただただ息を潜めて、小さな怪獣の動きに注目していた。 そして・・・遂に。 リトルがゴ○ラ(弐号機)のもとに辿り着く。 ””・・・”” あまりにも大きさの違う二つのシルエット。 無言のまま見つめあう両者。 息詰まる緊張感。 かぽっ レイが頭部を外した。 目の前の、山のような弐号機を真っ直ぐに見上げる。 「・・・アスカのお母さん。きいて?」 「いま、あなたの中にはアスカがいる」 「このままあなたが暴れていてはアスカが悲しむの」 「だから・・・おねがい。止まって、欲しい」 顔だけ出したレイが静かに語りかける。 ・・・そして。 ・・・スッ・・・ ゴ○ラ(弐号機)がその両手をレイに向けた。 じわじわと近づく大きな手。 その手がレイを覆う。 「・・・っ!」 思わず目を閉じるレイ。 彼女が次に感じたのは・・・浮遊感だった。 「え?」 こわごわと開けた眼一杯に、ゴジラの顔。 だが、その奥に光る瞳はひどく穏やかだ。 レイの小さな体を大切そうに引き寄せ、ゆっくりと頬擦りする。 「わたしが、わかるのね」 摺り寄せられる巨大な頬に、両手を広げたレイがぺたんと抱きつく。 そしてその時、弐号機の外部スピーカーの接続が復活した。 ”レイ!?レイ、そこにいる?” 「アスカっ!」 ”よかった・・・ママを止めてくれたのね。ありがとう、レイ” 「ううん・・・よかった・・・アスカ」 瞳を少し潤ませ、レイが微笑みかけたその時・・・

どしーん

「「わっ!!!」」 ゴジラ(弐号機)が突然動き始めた。 その巨大な手のひらの上ですってーーんとばかりにこけるレイと、 エントリープラグ内でシェイクされるアスカ。 「ちょっとママ!今度はどうしたのよ!?」 「・・・痛いの・・・」

どしーん・・・どしーん・・・

そしてリトルを抱えたまま、ゴ○ラ(弐号機)はどこへともなく歩いていった・・・ 「止まれ、止まれ、とっまっれぇぇぇぇ!!!!!!」 「・・・そう、もう駄目なのね」 「レ・イ!!!」 「・・・碇君が呼んでる・・・」 「トリップすんじゃないわよぉぉぉぉぉっ!」

どしーん・・・どしーん・・・

「碇。彼女(たち)はどこへ?」 「おそらくは海でしょう。映画のラストもそうでしたから」 「で、どうやって回収するつもりかね?」 「・・・」 「まさか、考えていなかったとは言うまいな」 「冬月先生、後は頼みます」 「・・・待てぇぃ!!!」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ その後、ゴ○ラ(弐号機)&レイは溺れる直前で、目を覚ましたシンジの壱号機によって回収された。 この事件以後、弐号機のレイを見つめる視線がことのほか優しくなったことに気づいた者は誰もいない。 <終> <あとがき> マダマニアウサさんに捧げる・・・にしては随分と舌っ足らずな文章になってしまいました。 これだけ設定をお借りしておきながら生かしきれない・・・駄作でございます。 どうかご勘弁を。


マナ:リトルゴジラ・レイちゃん。アスカを助ける為に、よく頑張ったわねぇ。(・;)

アスカ:ファーストは今回は良しとするわよ。あの髭・・・何考えてんのよっ!

マナ:そういや、下手したらリトルゴジラ・レイちゃん。もうちょっとで溺れるところだったかも。(@@)

アスカ:アタシも道連れになるとこだったのよっ!

マナ:そういえば、アスカも弐号機に乗ってたのね。

アスカ:止まれ、止まれって、シンジみたいなことしちゃったじゃないの・・・。

マナ:ま、助かったんだから、いいじゃない。

アスカ:でもさ。助けて貰って言うのもなんだけどさ。

マナ:ん?

アスカ:弐号機がファーストのことを優しく見詰めるって嫉妬するわね。

マナ:じゃ、アスカは代わりに碇司令に優しく見詰めて貰ったら?

アスカ:気持ち悪い・・・。(TT)
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