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悪魔と天使と
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BY たっちー



第2話 「予兆」






「ふーん・・・。それは困ったことだね、シンジ君」

シンジの夢の話を聞いても渚カヲルはいつものように微笑を浮かべたままそう言った。
カヲル君の笑顔を見るとなんとなくホッとするんだよな――カヲルの笑みを見てシンジはそう思った。
今シンジ達の「形而上生物学第1研究所第3部」は中心メンバーの日向マコトと青葉シゲルが
「ネルフ」のドイツ支部に出向しているため(中心メンバーも何も全員で4人しかいない部署だが)、
今はシンジとカヲルの二人で細々と研究を続けていた。

「しかし、夢を見ない方法なんて、僕にもわからないな。
 僕のほうが教えてほしいくらいさ・・・」

カヲルの口調が少し変わったのに気づいて、シンジは怪訝な顔をした。

「カヲル君?」

「ん?いや、僕にもそんなこと全然わからないってことさ」

何かはぐらされた気がするが、シンジは気にしないことにした。

「それで、シンジ君。
 今度の日曜日に冬月先生の所にいくんだね?」

カヲルも大学で冬月の研究室にいたため、冬月のことを「先生」と呼ぶ。

「うん。カヲル君もいっしょに行く?」

言ってしまってから、シンジは自分の臆病さが恨めしくなった。

独りで相談に行くことが怖い自分。
綾波に自分の気持ちを打ち明けられない臆病な自分。
綾波とカヲルの関係を知りながら仲を取り持とうとする間抜けな自分。

「そうだね、先生の家にはずいぶんとご無沙汰だね。
 久しぶりに遊びに行こうか」

カヲルはシンジの内心の葛藤も知らぬげに軽い調子で言った。



その夜見た夢はいつもの夢とは違っていた。

人型の怪物が自分を見下ろしていた。

頭部はなく、髑髏のような顔(?)が胸の真中に張り付いていた。
顔の下には紅く光る玉。

使徒「サキエル」―何故かそんな単語が思い浮かぶ。

何をするわけでもなかったが、その奇怪な姿だけで飛び起きるには充分だった。

「何だったんだ、今の夢は?」

今の夢を思い出してみる。

「怪物の夢なんて・・・。
 子供じゃあるまいし」

その時、隣の部屋が一瞬騒がしくなった。

「わあ!!!」
「きゃあ!!!」

ドタン、バタン!

そして静寂。

枕もとの時計を見てみる。
午前2時30分。

確か隣はOLの一人暮らしだったよな。
でも、確かに男の声も聞こえた。

痴話ゲンカかな・・・。
急に静かになったな・・・。
死んでたりしたらいやだな・・・。

少し待ってみたが、やはり物音は聞こえない。

「しかたないな」

シンジはパジャマ代わりのTシャツの上に一枚羽織ると部屋を出て、隣の部屋の前まで行ってみた。

表札には「洞木」とあった。

「ホラキってよむのかな?」

とりあえず、チャイムを押してみる。
何の反応もない。
ドアノブを回してみると鍵はかかっていないようだ。

「あのー・・・。隣の碇といいますが・・・」

シンジはおそるおそる真っ暗な部屋に入っていった。

「あのー・・・。生きてますか?生きてたら・・・」

闇に目が慣れてくる。
壁を背にしてベッドの上でヒトが座り込んでいた。二人。
ただ、呆然と虚空を見つめていた。

「あのー・・・」

シンジはもう一度声をかけてみた。

「ば、化けもんや・・・」

男の方がうつろな声で口にした。
その声でようやく女の方が正気に返った。

「誰!?」

シンジの姿に気付き、掛け布団で前を隠す。
どうやら、「してた」最中だったらしい。

「あ、あの隣の碇といいますが・・・。
 悲鳴が聞こえたんで、その・・・」

シンジの方がおろおろした声で答えた。すると、

「シンジ、シンジか?今の、今の化けもんみたか!?」

聞き覚えのある声でそう言って、男の方がシンジに詰め寄ってきた。

「えっ?ト、トウジ?何でここに?」

確かに男はシンジの友人、鈴原トウジだった。

「ト、トウジ。とりあえず服着てくれないかな?話はそれから・・・」

「お、おう。わかったわ」


それからしばらくして、三人は洞木家のリビングにいた。
トウジと洞木ヒカリの話をまとめると次のようなものだった。

シンジの部屋にトウジが何回も遊びに来ているうちに隣に住むヒカリと知り合った。
その内に何となく口を利くようになり、いつしか付き合い始めた。
今日は、トウジが「遊び」に来たところ、急に「化け物」が現れた。
そして何時の間にか「化け物」は消えていた。

そう説明するトウジの横でヒカリは耳まで真っ赤にして俯いていた。

「ふーん、最近トウジの付き合いが悪くなったと思ったら、こういうことだったんだね。
 でも、隣に『遊び』に来てたとはねー」

シンジは二人をからかってみたくなった。
案の定、トウジはひどく慌てた。

「ち、ちゃうわい。そ、そんなことより、あの化けもんなんやねん!?」

「化けもん」という言葉にシンジの顔が凍りついた。
トウジの説明からその「化けもん」の姿はシンジの夢に出てきた「サキエル」に
間違いなかった。しかし、その「化けもん」の夢を見たとは言えなかった。
トウジだけならともかく、よく知らないヒカリの前では。

「さ、さあ。僕にはなんとも言えないけど」


「それじゃ、おやすみ」

しばらくしてシンジは自分の部屋に戻った。
今度はいい夢を見れることを願いながら。



次の夜。
シンジはまた、夢を見た。

人型(?)の怪物が自分を見下ろしていた。

異様に太い尻尾を持ったカブトガニが体を起こしたかのような姿。
腕にあたる部分からは光る鞭のようなものが伸びて、ひらひらと宙を舞っていた。

使徒「シャムシエル」―

何をするわけでもなかったが、その奇怪な姿だけで飛び起きるには充分だった。

「また怪物の夢か・・・」

でも、二晩続けて怪物の夢を見るなんて・・・。これもいままでの「夢」の続きなのか?

呼吸を整えながら周囲の気配を探ったが、何も感じなかった。
どうやら、今度は隣部屋のヒカリのところには「現れ」なかったらしい。


その後も怪物の夢を見る夜が続いた。

使徒「ラミエル」
使徒「ガギエル」


シンジにはわからなかった。
何故、怪物の名がわかるのか。
何故、怪物が使徒―神の使いと感じるのか。

シンジは知らなかった。
「シャムシエル」が友人、相田ケンスケのところに、
「ラミエル」が想い人、綾波レイのところに、
「ガギエル」がまだ名前も知らない青い瞳の女性のところに現れたことに。

そして、シンジは気付いていなかった。
まったく同じ夢を渚カヲルが見続けていることを。












続く



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後書き

どーも、たっち―です。


あいかわらず、ストーリーが進まない(^^;)
アスカもレイも未だ登場せず。
マナですか?登場する機会はあるのかな(^^;)

それより膨らませすぎたストーリーを上手くまとめられるのだろうか(ToT)

それでは。

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マナ:この夢って、いったい・・・。

アスカ:どんどん使徒の名前が出てきてるわね。

マナ:シンジだけじゃなくて、あっちこっちに予兆みたいなのが出てるような。

アスカ:思ってたより、一気に話が壮大に展開していきそうね。

マナ:気になるとこがいっぱいあるもんね。

アスカ:アタシがまだ出てないとことか?

マナ:あなたは、まだまだよ。

アスカ:なんで、わかんのよ?

マナ:悪の総大将は最後の最後って決まってるもん。

アスカ:誰が悪の総大将よっ!!!

マナ:じゃ、悪の手下のショッカー?

アスカ:もっと嫌っ!!!(ーー#
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