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初デート 〜あいつが初めて誘ってくれた〜
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BY たっちー







「うん、OK! 」

グリーンのワンピースを着、口紅を塗って姿身の前でポーズをとってみた。

「やっぱり、あたしっていけてるじゃん。えへへ」

この前のアイツからの誘いを思い出すと自然と頬が緩む。


『ア、アスカ。映画のタダ券手に入れたんだけど、いっしょに見に行かない?』

『映画?何であたしがあんたと行かなきゃいけないのよ?』

『いや、ほら、この前の期末テスト、アスカが勉強教えてくれたおかげで結構いい点
 取れただろ?そのお礼にさ』

『はいはい、わかったわよ。行ったげるわよ、しょーがないわね、バカシンジ』


まったく、ここまで来るのにずいぶん時間がかかったわよねー。

戦略自衛隊の「ネルフ」侵攻を撃退し、サードインパクトを阻止してから、
もう2年が経っている。
あたしとシンジは第3新東京市立第壱高校に進学していた。

量産型エヴァに陵辱されそうになったあたしと弐号機をアイツが助けてくれてから2年。

あたしはあの時、自分がシンジのことが好きだったことに気付いた。
あの時惚れ直したといってもいいのかもしれない。

でも、アイツは自分の命を危険にさらしてまであたしを守ってくれたのに、
その後もはっきりした態度を示してくれなかった。

結局、この2年間は友達以上、恋人未満の関係を続けてきた。

この2年の間、あたしは相変わらずモテまくったし、
アイツもずいぶんたくましくなって、ラブレターの1つや2つはもらったらしい。

でも、これで曖昧な関係も終わる。いや終わらせてみせる。
一歩も二歩も進んでやる。

最低でも、アイツから「好きだ」の一言は言わせてやるんだ。
あたしはそう強く決心していた。

「あーら、アスカ。ずいぶんとオシャレしてるわねー」

あたしの思考はその言葉で中断された。
いつの間に背後の迫られていたのだろう。
葛城ミサト―あたしたちの上司兼同居人だ。

「はは〜ん。さては、シンジ君とデートね」

図星。
でも、ミサトのその言葉をあたしは思わず否定してしまった。

「ち、違うわよ、バカ。ただ、二人で映画を見に行くだけよ!!」

ちょっと、自己嫌悪。否定する必要なんかないのに。

「あらん。それは立派なデートよん。
 ついに二人もカップルかしら?」

ミサトのからかいに条件反射的につい否定してしまう。

「バ、バカなこと言わないでよ!!」

ミサトはあたしの言うことを無視した。

「でもねー、アスカ。1つ忠告しとくけど〜、ああ見えてもシンジ君も男の子だからね〜。
 強引に迫られても簡単に許しちゃだめよん。ん、まあ、そうなったら教えてねん。
 それじゃ、あたし仕事に行って来るわね。帰りは多分遅くなるから」

言いたいだけ言って、ミサトは出て行ってしまった。

「まったく。三十路女がうるさいわねー。って、もうこんな時間?
 バカシンジのことだから1時間位前から待ってるかも・・・
 あたしも早く行かなきゃ!!」

あたしはもう一度服装をチェックして家を飛び出した。



待ち合わせ場所に行くと案の定シンジはもう来ていた。

「待たせたわね。バカシンジ」

周囲からあたしに視線が集まってくるのを感じるけど、そんなの無視よ無視!
でも、せっかくオシャレしてきたんだから。
シンジには誉めてほしいな。
シンジはボーっとして何も言ってくれなかった。

「なによ。黙っちゃって」

するとシンジはちょっと赤くなりながら、あたしが期待していたことを言ってくれた。

「いや、あの、アスカ。今日は何かいいね。うん。すごくかわいいよ」

シンジがかわいいって言ってくれた!うれしいよー。
でも、あたしはぶっきらぼうに、

「あ、ありがと」

としか言えなかった。でも、ちょっと顔が熱いかも。

「うーん、映画までにちょっと時間があるね。何か食べようか?」

ふーん。こういうところは男の子ね。ちゃんとエスコートしてくれるんだ。

シンジが連れて行ってくれたのはちょっとオシャレなオープンカフェだった。

何を注文するかちょっと迷ったけど、あたしはストロベリーパフェ、
シンジはチョコレートパフェを注文した。

「でもこの前のテスト、結構がんばったじゃない」

「いや、あの、アスカのおかげだよ。」

そんなことを言ってる間に注文したパフェがきた。

他愛無いおしゃべりをしていると、シンジのほっぺにクリームがついていた。

「クリームついてるわよ」

ひょい、ぱく。

あたしはシンジのほっぺのクリームを指先で取ると自分の口に運んだ。

「あ、ご、ごめん」

シンジはそう言うと真っ赤になった。
ふーん。かわいいじゃん。
あたしはちょっとしたいたずらを思いついた。

「シンジ〜。あ〜ん」

あたしはそう言ってスプーンで自分のパフェをひょいッとすくってシンジの口元に
近づけた。

「え、ええ〜!?」

シンジはさらに赤くなりながらも、口を開けた。
ここで、

『うそよー』

と言って自分で食べるつもりだった。つもりだったんだけど・・・。
スプーンを自分の方に持ってくる前にある視線に気付いた。
その視線の元を辿っていくとそこには、

「あーんやて?デートか?デートなんか!?」
「アスカ?いつの間にシンジ君とそんな仲に?ふ、不潔よー」

ヒカリと鈴原がいた。

「ト、トウジと洞木さん!?どうしてここに?」

シンジも慌てていた。

「こ、これは、その、勉強を教えてもらったお礼に映画を見に行くだけで。
 デ、デートとかじゃ!」

シ〜ンジ〜、そんなおもいっきり泡食ってるんじゃないわよ!!

「ふーん。センセ、こないだのテストずいぶんええ点取ったと思っとったら、
 嫁さんに教えてもらったんか。さすが、夫婦仲がええのー」

ほら、もう。ジャージバカが調子に乗っちゃったじゃない!
あれ、でもなんで、ヒカリと鈴原がいっしょにいるの?もしかして・・・、

「ヒトのこと、どーこー言ってるけど、あんたたちはどーなのよ?
 あんたたちこそデートしてるんじゃないの?」

どうやら反撃に成功したようだ。ジャージバカの口撃がピタッと止まった。
次の瞬間、ボンッという音が聞こえそうなほど二人は真っ赤になった。
良かったわね、ヒカリ。よーやく想いが通じたみたいじゃない。
でも、このチャンスは利用させてもらうわよ!

「ほら、行くわよ!シンジ!」

二人が再起動する前にあたしはシンジの手を取るとその場から脱出した。

うーん、でもヒカリはともかく鈴原に見られたのはまずいわね。
絶対、学校中に言いふらされるわ!!
あ、でも、うっとうしい連中がいなくなるのはいいかも。
これで全校公認のカップルってわけね。

あたしがそんなことを考えていると、

「アスカー、もう大丈夫だから、歩こうよ」

シンジがそう言ってきた。

そうね、とりあえず脱出に成功したわ。
・・・そういえば、シンジの手を握ったまま、ここまで走ってたんだわ。
なんか恥ずかしいけど、うれしい。

「そういえば、映画館はこの近くだよ」

シンジは握ったあたしの手を離さないまま歩き始めた。
ちょっと恥ずかしいけど、うれしい。

その日、映画館で上映されていたのは、

『鉄拳のドラゴン』

とかいうカンフーアクション物だった。
観る前は、

女の子をこんなのに誘う〜?

とちょっと不満だったのだが、観てみるとすごく面白かった。
スリル満点のスタントシーンでは思わずシンジの手を握り締めてしまった。

「思ってたより面白かったわ」

「そう、良かった」

そんなことを話しながら映画館を出ると晩御飯を食べるのにはまだ早い時間だった。


「公園にでも行こうか」

ということになって、コンフォート17近くの公園まで、
ぶらぶらと歩いていくことにした。

夕暮れの公園って、何か結構いい雰囲気。
でも、なんだろ?シンジの奴、ずいぶんと緊張してるみたい。
もしかして・・・、告白してくれるつもりなのかな?

公園のベンチに座ってあたしも緊張しながら噴水をみていると、
はたして、隣に座ったシンジがあたしの手を握ってきた。

「アスカ・・・」

「な、なに?」

あ、あたしの声、裏返っちゃってる。

「ぼ、僕はアスカのことが好きなんだ。ずっと前から好きだったんだ。
 こ、こんな僕でよかったら、つ、付き合ってください!!」

言ってくれた。あたしが一番言ってほしかった言葉。待っていた言葉。

「も、もちろんよ。ずっと、ずっと待ってたんだからね!!」

あたしは思わずシンジに抱きついて泣き出してしまった。

どれくらい時間が経ったのだろう。
シンジの手があたしの頬に添えられた。
あたしは顔を上げてシンジの顔を見つめた。
シンジの顔が近づいてくる。
あたしは思わず、目を閉じた。

あたしの人生で2回目のキス。
シンジとの2回目のキス
そして、初めての心のこもったキス。

シンジと知り合えてよかった。
シンジを好きになってよかった。











Fin



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後書き

どーも、たっち―です。

「初デート」アスカバージョンをお届けします。
何となく「甘い」のを書いてみたくなってやってみました。どうだったでしょう?
シンジバージョンおよびトウジandヒカリバージョンも(いずれ)書いてみたいと
思っています。

それでは。

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アスカ:いいっ! いいわっ!(*^^*)

マナ:なによぉっ! べたべた、あまあまじゃないのぉーっ!(ー.ー)

アスカ:そこがいいんじゃない。(*^^*)

マナ:最後にキスまでしてるぅぅぅっ!(ー.ー)

アスカ:そこがまたいいんじゃない。(*^^*)

マナ:もっと、鈴原くんに邪魔して貰うように頼んどかなくちゃ。

アスカ:あまいっ! アイツにはヒカリを監視役につけてるから、大丈夫よっ!

マナ:あーん。見せ付けられるだけなんて、いやぁぁっ!(TOT)
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