これは「初デート」をシンジの視点で書いたものです。
できれば「初デート 〜あいつが初めて誘ってくれた〜」もお読みください。


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初デート 〜シンジの思い〜
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BY たっちー







『ア、アスカ。映画のタダ券、手に入れたからいっしょに見に行かない?』

『映画?何であたしがあんたと行かなきゃいけないのよ?』

『いや、ほら、この前の期末テスト、アスカが勉強教えてくれたおかげで結構いい点
 取れただろ?そのお礼にさ』

『はいはい、わかったわよ。行ったげるわよ、しょーがないわね、バカシンジ』


僕はこの前アスカをデートに誘った時のことを思い出していた。

戦自の「ネルフ」侵攻を撃退し、サードインパクトを阻止してから、もう2年が経っている。
アスカと僕は第3新東京市立第壱高校に進学していた。

量産型エヴァに陵辱されそうになっていたアスカと弐号機を助けてから2年。

僕はあの時、自分がアスカのことが好きだったことに気付いた。

でも僕がもう少し勇気を出してもう少し早くエヴァに乗っていれば、
アスカをあんな危険な目にあわせずにすんだのに・・・。
自分にはアスカと付き合う資格なんかないんだ。
そう思うとアスカに自分の気持ちを打ち明けることができないでいた。

結局、この2年間僕たちはそれまでと同じような関係を続けてきた。

この2年の間、アスカは相変わらず、もてまくったし、
何故か僕も、ラブレターをもらったりした。

でも、僕はアスカへの想いを捨てられないでいた。
いや、ますます強くなっていったといってもいい。

この前のテストでいい点が取れたことはデートに誘う絶好の口実になった。
思っていたよりあっさりとOKの返事をもらえた事がうれしかった。

今日こそアスカに告白するんだ。
僕はそう強く決心した。



待ち合わせ場所に来てからそろそろ一時間。
まあ、一時間も早く来ちゃった僕が悪いんだけど。

「待たせたわね。バカシンジ」

その声に顔を上げると目の前にアスカが立っていた。

あ、アスカ、化粧してるんだ。
素でもかわいいけど、ほんとにきれいだ。
それにグリーンのワンピースもすごく似合ってる。

「なによ。黙っちゃって」

僕がボーっと見ていると、アスカが拗ねたような口調でそう言った。

「いや、あの、アスカ。今日は何かいいね。うん。すごくかわいいよ」

僕が慌ててそう言うと、

「あ、ありがと」

と照れたような笑みを浮かべてそう答えてくれた。


「うーん、映画までにちょっと時間があるね。何か食べようか?」

僕はアスカを先日見つけたちょっとオシャレなオープンカフェに連れて行くことにした。

何を注文するかちょっと迷ったけど、アスカはストロベリーパフェ、
僕はチョコレートパフェを注文した。

「でもこの前のテスト、結構がんばったじゃない」

「いや、あの、アスカのおかげだよ。」

そんなことを言ってる間に注文したパフェがきた。

他愛無いおしゃべりをしていると、

「クリームついてるわよ」

ひょい、ぱく。

アスカは僕の頬に付いていたクリームを指先で取ってくれると自分の口に運んだ。

「あ、ご、ごめん」

僕はそう言うと恥ずかしくなって俯いてしまった。
多分僕の顔、真っ赤だ。

ア、アスカ、何で平然とそんなことができるんだよ〜。

するとアスカは何故かニヤニヤ笑いながら、

「シ〜ンジ。あ〜ん」

そう言ってスプーンで自分のパフェをすくうと僕の口元に近づけてきた。

「え、ええ〜!?」

ア、アスカの方から積極的にこんなことをしてくれるなんて!
僕は恥ずかしかったけど「あーん」と口を開けた。
ちょっと、ニヤニヤ笑いが気にはなったんだけど。

でも、待っても待ってもアスカはパフェを僕の口には入れてくれなかった。

それより、何か横から視線を感じるんだけど・・・。

「あーんやて?デートか?デートなんか!?」
「アスカ?いつの間にシンジ君とそんな仲に?ふ、不潔よー」

声の主はトウジと洞木さんだった。

「ト、トウジと委員長!?どうしてここに」

僕は思いっきり慌てた。

「こ、これは、その、勉強を教えてもらったお礼に映画を見に行くだけで。
 デ、デートとかじゃ!」

思わず否定すると、

「ふーん。センセ、こないだのテストずいぶんええ点取ったと思っとったら、
 嫁さんに教えてもらったんか。さすが、夫婦仲がええのー」

トウジはさらに調子に乗ってきちゃった。

でも否定したときにアスカが浮かべた怒ってるような、それでいて寂しそうな
表情はなんだろう?

あれ、でもなんで、トウジと洞木さんがいっしょにいるんだろう?
もしかして・・・、

「ヒトのこと、どーこー言ってるけど、あんたたちはどーなのよ?
 あんたたちこそデートしてるんじゃないの?」

アスカがそう反撃した次の瞬間、ボンッという音が聞こえそうなほど二人は真っ赤になった。

やっぱりこの二人付き合ってたのか。
トウジのお昼って洞木さんが作ってきてくれるお弁当だもんな。

「ほら、行くわよ!シンジ!」

アスカはそう言って僕の手を取ると走り出した。

うーん、でもトウジに見られたのはまずかったかな。
絶対、学校中に言いふらされるよな。
あ、でも、それでアスカに言い寄る連中がいなくなったらうれしいかな。

僕がそんなことを考えている間も、アスカは僕の手を握ったまま走りつづけていた。

「アスカー、もう大丈夫だから、歩こうよ」

そう言うと、ようやくアスカが止まってくれた。
あれ、そういえばこの辺は確か・・・、

「そういえば、映画館はこの近くだよ」

時間もちょうどいいくらいだし、そう言って映画館に向かうことにした。

あれ、何か左手が暖かいな。
あ、アスカの手握ったままだ。
アスカも特に嫌がっていないみたいだから、このまま行こう。
うれしいな。

その日、映画館で上映されていたのは、

『鉄拳のドラゴン』

というカンフーアクション物だった。
観る前は、

「女の子をこんなのに誘う〜?」

とか言ってアスカは不満そうだったんだけど、観てみるとすごく楽しんでくれたみたいだ。
クライマックスでは僕の手を握り締めてきて。
僕はその後は映画どころではなくなって、ストーリーもろくに頭に入ってこなかった。

「思ってたより面白かったわ」

「そう、良かった」

そんなことを話しながら映画館を出ると晩御飯を食べるのにはまだ早い時間だった。


「公園にでも行こうか」

僕がそう言うと、

「いいわよ」

とアスカが答えてくれて、コンフォート17近くの公園までぶらぶらと歩いていくことにした。

夕暮れの公園って、何か結構いい雰囲気だ。
こ、告白するには絶好の場所だよな。

公園のベンチに座るとアスカが急に静かになった。
なんか緊張してるみたいだ。
もしかして、僕が告白しようとしてることに気付いたのかな?

逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ、逃げちゃだめだ!

僕は自分に言い聞かせて、隣に座ったアスカの手を握った。

「アスカ・・・」

アスカは僕の手を振り解こうとはしなかった。

「な、なに?」

「ぼ、僕はアスカのことが好きなんだ。ずっと前から好きだったんだ。
 こ、こんな僕でよかったら、つ、付き合ってください!!」

言えた。二年間言えなかった言葉。言いたかった言葉。

「も、もちろんよ。ずっと・・・、ずっと待ってたんだからね!!」

アスカはそう答えると僕に抱きついてきて泣き出してしまった。
そうか・・・。アスカは僕の告白を待っていてくれたんだ。
僕はアスカを抱きしめた。

どれくらい時間が経ったのだろう。
僕はアスカの頬に手を添えた。
アスカは顔を上げて僕の顔を見つめた。
僕もアスカの青い瞳を見つめた。
アスカが、目を閉じた。
僕はアスカの唇に自分の唇を近づけた。


アスカとの2回目のキス。
そして、初めての心のこもったキス。

アスカと知り合えてよかった。
アスカを好きになってよかった。

これからも、ずっといっしょにいたい。
僕はそう思った。











Fin



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後書き

どーも、たっち―です。

「初デート」シンジバージョンをお届けします。
「初デート」はアスカの視点で書きましたが、シンジはどういう思いで
アスカをデートに誘ったか自分でも気になって書いてみました。

では、二人の激甘デートを目撃したお二人のコメントを。

トウジ「『あ〜ん』やて?なんや背中がむず痒いわ!」
ヒカリ「いつの間にそんな仲に?ふ、不潔よー!!
    (で、でもあたしも鈴原とあんな風にしたいかも)」
トウジ「まあ、お互い気があるんはわかっとったからな。
    いずれはああなるとは思っとったわ」
ヒカリ「鈴原、二人の邪魔しちゃだめよ」
トウジ「当たり前や!二人の邪魔する奴はわいがパチキかましたる!」

次はこの二人のデートの模様を書いてみたいと思います。

それでは。

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マナ:さすがシンジ。洞木さんの気持ちに気付いてなかったなんて。

アスカ:鈍感キングだもん。しゃーないわよ。

マナ:やっとわかったみたいだから、鈴原くんの応援ができるわね。

アスカ:人のことより、自分のことで精一杯よ。

マナ:そっちはどうでもいいわ。(ーー)

アスカ:最重要事項でしょうがっ。

マナ:なんとかして阻止しなくちゃ。

アスカ:ふっ。完成したラブラブフィールドは、そう簡単に崩れないのよっ!

マナ:もう、このシリーズ・・・見たくない。(TT)
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