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新年会やるわよ
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BY たっちー







「新年会やるわよ!!」

マンションのリビングに入ってくるなり、葛城ミサトはそう宣言した。
テレビでドラマを見ていた惣流・アスカ・ラングレーと、
S−DATを聞いていた碇シンジが反応するまでに一瞬の間があった。

「新年会って・・・、忘年会やったじゃない(ですか)」

例によって二人は見事にユニゾンしている。いいかげんうんざりしているようだ。
それというのも、ここコンフォート17マンションの葛城家でやった忘年会が
すさまじいものだったからだ。
忘年会の参加者はミサト、加持、リツコ、レイ、トウジ、ヒカリ、ケンスケ、
そしてアスカとシンジの9人のはずだった。
しかし、トウジ、ヒカリ、ケンスケの3人が帰った後、
オペレーター3人衆、日向、青葉、マヤが酔ったミサトに呼び出され、
いつのまにか、シンジもアスカもレイも酒を飲まされることになった。
当然、三人に飲ませ始めたのはミサトだった。
アスカとレイは早々に酔っ払ってダウンしたが、シンジは思いのほか酒に強い体質らしく、
あまり酔わなかった。
しかし、酒に強かったことがシンジには災いした。
延々と愚痴を聞かされたのだ、日向に。
もともと絡み酒なのか、ミサトと加持がよりを戻したことが面白くないのか、
日向はすごいピッチで酒を空け、シンジに絡みだしたのだった。
酔った日向さんには近づきたくない――シンジは忘年会の出来事を思い出して、
再びあんな目には遭いたくないと痛切に思った。


「あら、家でやるんじゃなくてネルフの新年会よ。
 費用は全部ネルフ持ちよ!ただで飲めるのよー!!」

あきれるシンジとアスカを無視してミサトは一人で盛り上がっていた。

「どうすんのよ、シンジ。参加するの?」

一人盛り上がるミサトを横目で見ながらアスカが小声でシンジに訊いた。

「うーん・・・。できれば出たくないんだけど。
 ネルフの新年会じゃ顔を出さないわけには行かないだろうね」

シンジはしぶしぶそう答えた。

「ふーん、そう。シンジが行くんなら私も行こっと」

アスカのその言葉にシンジは目を白黒させた。

「な、何で僕が行くなら、なんだよ?」

「な、何でってそれはシンジといっしょにいたい、じゃなくて、
 あ、あんたが行くのに残ってたら食べるものがないじゃない」

アスカは赤くなって、思い切りどもりながら答えた。

まーったく、あの二人あいかわらず進展してないのね・・・。
ここはお姉さんが一肌脱ぐとしますか。
――シンジとアスカがミサトの様子をうかがっていたように、
ミサトも二人の様子をうかがっていた。
ミサトはとうの昔に二人がお互いに抱いている想いに気付いていた。
普段のからかいも、より互いを意識させるため。
二人の普段の態度は微笑ましいものではあるが、端から見ていてやきもきさせられる。

忘年会では失敗したけど今度こそ、二人をくっつけてやるわ!

ミサトは忘年会をきっかけに二人を付き合わせるつもりだった。
忘年会でのミサトの計画は次のようなものだった。

・二人に酒を飲ませる。
・二人が大胆になる。
・二人が想いを打ち明けあう。

というものだった。(計画といえるのか?)
しかし、アスカが思いの他、お酒に弱かったのと、
日向の暴走のためにその計画は頓挫した。

しかし、今度こそ、今度こそ二人をくっつけてみせるわ!!

別にシンジとアスカを付き合わせる必要性はないのだが。
シンジとアスカの曖昧な関係がミサトには気に入らないのだ。
いらいらするのだ。
面白くないのだ。

その感情が自分と加持の関係を思い起こさせることによるものであることに
ミサトは気付いていない。



さて、新年会当日。

「・・・新年あけましておめでとう。
 ・・・皆、飲みたいだけ飲め!飲まないなら帰れ!!!」

司令碇ゲンドウの相変わらずの高圧的な言葉に一瞬、静まり返る会場。

「そ、そんなわけで今日は無礼講よん。みんな楽しんでね。
 それじゃ、かんぱ〜い!」

場をとりなすような幹事ミサトの陽気な音頭で新年会は始まった。

この新年会の会場にいる未成年はシンジ、アスカ、レイの3人だけ。

何となく居心地の悪いシンジとアスカは会場の隅の方でいっしょに料理を食べていた。

「やあ、シンジ君。楽しんでるかい?」

そう言ってシンジとアスカに近寄ってきたのは青葉とマヤだった。
後ろにばつが悪そうな日向がついてきていたりする。

「あ、青葉さんとマヤさん。それに日向さんも」

「シンジ君、忘年会では悪かったね」

日向はそういって頭を掻いた。

「いえ、日向さん。別に気にしてませんから」

とりあえずそう言っておくシンジ。

「しかし、シンジ君って結構アルコールに強いのね」

マヤはそう言ってシンジに空のグラスを持たせるとビールを注いだ。

「ちょ、ちょっとマヤさん。僕、未成年なんですけど」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ」

マヤはすでに酔いが回り始めているらしい。

オペレーター三人というかマヤに絡まれるシンジをアスカがにらみつけていた。

あの、ショタコン女!殺す!!

「どうしたの、アスカ。・・・あ、シンジ君が取られて面白くないんだ」

そう言ってアスカに近づいてきたのはミサトだった。

「べ、別にそんなことないわよ!」

プイッと横を向くアスカ。
内心はバレバレである。

「まあまあ。これでも飲んで落ち着きなさいよ」

そう言ってミサトはアスカに「オレンジジュース」を手渡した。
アスカはそれに口をつけてみて、

「あれ、このオレンジジュースおいしい」

「そうでしょー。どんどんいきなさい」

もちろんミサトがアスカに飲ませたのはただのオレンジジュースではない。
オレンジジュースとウォッカのカクテル「スクリュードライバー」である。
レディキラーとして有名な奴だ。


アスカが適度に酔い始めたと見たミサトはいきなり核心をついた。

「アスカはシンジ君のこと好きなんでしょ?」

すでに酔っているアスカ。

「えー。嫌いじゃないけど―。」

「嫌いじゃないならどうなの」

「んー。でも、なんかいつもうじうじしてるし。
 はっきりしないし。それに・・・、」

「でも、嫌いじゃないんだ?」

「そうなんだけどー。でも恋愛対象とは違うっていうか。
 でも、そういう可能性がまったくないわけでもなくて。
 それにあいつの方もあたしのことどう思ってるのかはっきりしなくて、
 えーと、えーと」

はっきりしないアスカについにミサトが切れた。

「もう、何言ってるのよアスカ!らしくないわね!!
 ああ、シンジ君。そんな連中ほっといてちょっとこっちに来なさい!!」

オペレーター三人衆、というかマヤから開放されるチャンスがきたと思って、
シンジはのこのことやってきた。

「シンジ君!あんた、アスカのことどう思ってるの!?
 はっきりしなさい!!」

予想外のミサトの言葉にシンジはたじろいだ。

「え、えっと、どう思ってるって・・・」

「アスカのこと好きなんでしょ!?」

「え、えー!?いや、あのその嫌いじゃないですけど
 でもアスカの方はどうなのかなって・・・」

シンジの曖昧な態度に今度はいいかげん酔っているアスカが切れた。

「あ・ん・た・の!そういううじうじしたところが嫌いなのよ!!」

アスカはそう叫ぶとその場から、走り去った。

「あ、待ってよ、アスカ!!」

シンジがその後を追った。

「葛城さん、これで良かったんですか?」

この日、酒を口にしていなかった日向がミサトの目論見に気付いて尋ねた。

「あたしたちにできるのはここまでよん。
 後はあの二人次第ねー」

ミサトはそう言ってニカッと笑った。



「待ってよ、アスカ!」

アスカにようやく追いついたシンジがその手首をつかんで引き止めた。

「離してよ!!」

「いやだ!!」

シンジはそう言ってアスカを抱きしめた。
アスカの体が硬直する。

「こんな、酔った状態では言いたくなかったんだけど・・・。
 僕はアスカのことが好きだ。ずっと好きだったんだ」

「シンジ・・・」

「ごめん。僕がはっきりしないばかりにアスカに不安な思いをさせて」

「ううん。シンジが好きって言ってくれてうれしかった」

シンジはアスカを抱きしめる腕にさらに力をこめた・・・。



それから数日後。コンフォート17の葛城家では。

「はい、シンジ。あ〜ん」

「あ―ん」

「おいしい?」

「アスカが食べさせてくれるんだもの。
 おいしいに決まってるじゃないか」

「それじゃ、今度はあたしに食べさせて」

「うん。はい、アスカ。あ〜ん」

「あ〜ん」

「おいしい?」

「シンジが作ってくれた料理だもの。
 おいしいに決まってるじゃない」

自分の感情に素直になったシンジとアスカが食べさせっこをしていた。

「何でこうなるのよ〜!!!」

目の前でアツアツ振りを見せ付けられているミサトの叫び声が、
空しく夜空に木霊した。






Fin



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後書き

どーも、たっち―です。

忘年会ネタが間に合わなかったので新年会ネタで書いてみました。
強引にシンジとアスカをくっつけた挙句、自滅するミサト。
お約束の展開になってしまいました。

それでは。

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マナ:葛城さんたら余計なことを。(ーー)

アスカ:さすが保護者ね。見直したわ。(^^v

マナ:あのままほっといたら、2人は自然消滅したかもしれないのに。

アスカ:するわけないでしょっ! 時期がちょっと早まっただけよっ。

マナ:絶対シンジは騙されてるわっ。

アスカ:どんなにシンジが幸せかは、その後のアタシ達の生活をみればわかるでしょ。

マナ:葛城さんもこれに懲りて、今度は2人を引き離しにかかってくれないかしら。

アスカ:そんなことしたら、弐号機で踏み潰すっ!(ーー#
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