これは「初デート」の続編です。


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KISS
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BY たっちー








ある日曜日の午後、僕はいつものようにアスカと二人っきりでリビングにいた。

ミサトさんは今日も仕事とかで「ネルフ」に行っている。

それまでしていた他愛無いおしゃべりが何となく途切れたとき・・・。

僕は隣に座っていたアスカの手を握った。

「アスカ・・・」

僕はアスカの青い瞳を見詰めた。

「シンジ・・・」

アスカも僕の目を見詰め返してきた。

アスカが眼を閉じた。

そして二人の顔が近づいて・・・・・・、


「プ、プププ」

突然アスカが笑い出した。

「や、やっぱりダメ!(クスクス)」

「えー。何でだよ」

僕は不満げな声を出してしまった。

「だ、だってシンジってば急にまじめな顔になるんだもん」

「・・・」

プイッ。

僕は笑われるのが面白くなくてそっぽを向いてしまった。

「あれ、シ〜ンジ〜。怒っちゃった?シ〜ンジ〜、シンジくーん」

「べつに。・・・僕とはキスしたくないってことだろ」

ぼくは横を向いたまま、答えた。

「やっぱり怒ってる。そうじゃないのよ。したくないわけじゃないんだけど。
 なんか、ほら、変に緊張しちゃって」

アスカが必死に弁解してる。

「僕だってそうだよ。勇気を出してキスしようと」

「で、でもさ、何か変じゃない?さっきまで自然にしてたのに。
 いきなりキスするぞって感じになって」

「そ、そうかな」

「ごめんね」

はにかみながら謝るアスカに僕はそれ以上迫れなかった。

セカンドキス――あ、サードキスってことになるのかな――は後一歩のところで
失敗に終わった。



最初のキスはもう2年以上前、あの戦いの最中だった。

「ねえ、シンジ。キスしようか」

「どうして?」

「退屈だからよ」

「退屈だからってそんな」

「お母さんの命日に女の子とキスするのイヤ?天国から見てるかもしれないからって」

「別に」

「それとも怖い?」

「怖くないよキスくらい」

「歯、磨いてるわよね?・・・じゃ、いくわよ」

そして、僕達は初めてのキスをした。

でも、あの時はお互いに相手のことを異性として意識していなかったし、
「暇つぶし」のための心の通い合わないキスだった。
あれをファーストキスと呼ぶのはちょっと悲しかった。
でも今にして思えば、あの時すでに内心はアスカのことが気にはなっていたのかもしれない。

2回目のキスは一ヶ月前。二人の初めてのデートのときだった。
デートの最後に僕はアスカに告白し、アスカはそれを受け入れてくれた。
その時、僕らは初めての心のこもったキスをした。

あれから、一ヶ月。いい雰囲気までは行くんだけど、どちらかが
――アスカの方が多かったけど――、緊張に耐えきれなくてキスをするまでには
いたらなかった。



「どうしたんや、シンジ。朝っぱらからさえない顔をしてからに」

翌朝、そう話し掛けてきたのはトウジだった。

「トウジ・・・。トウジはもう洞木さんとキスしたのかな?」

トウジは、アスカと僕が付き合い始めたのと同じ頃、洞木さんと付き合い始めた。

「な、ななな、突然何言いだすんや!?」

「・・・いや、なんとなく」

「ふーん。さては嫁さんと上手くいっとらんのやな」

トウジってば、普段は鈍感なくせにこんなときだけ変にカンが働くんだよな。

「そんなわけじゃないけど・・・」

「なら、ええやんか。せ、接吻なんか自然にできるときはできるもんや」

トウジはそう言って僕の背中をバンッと叩いた。

でも、何か上手くごまかされたような気がするな。
トウジは洞木さんとキスしたこと無いのかな?



次の日曜日、僕はアスカとデートした。

意識するからいけないんだ。なるべくキスのことは忘れよう・・・。

僕は自分にそう言い聞かせた。

今日も暑い日だった。
まあ、今の日本は一年中暑いんだけど。

僕達はアイスクリームを買って公園をぶらぶら歩いて、
適当なベンチを見つけるとそこに座った。

「ねえ、一口ちょうだい」

アスカは僕のチョコミントを食べたがった。

「うん、いいよ」

ぺロ。

「うん、おいしい」

アイスクリームをなめるアスカの姿に僕はわけも無くどきどきした。

「あたしのも食べてみる?」

「それじゃ一口もらおうかな」

カプ。

僕もアスカのラベンダーのアイスを一口食べた。

「ねえ、シンジ。コレって間接キスだよね」

アスカが突然そんなことを言い出した。

「あ、うん。そういえばそうかな」

アスカ、どういうつもりでそんなことを言い出したんだろう。

「これぐらいなら平気なのにね」

アスカはそう言うとクスッと笑った。

かわいい。アスカの笑顔を見て僕はそんなことを考えていた。

でも、せっかくキスのことを忘れようとしてたのに。
僕の頭はまた、キスのことでいっぱいになってしまった。



それから僕達は何事も無かったようにデートを続けた。

「あ、このペンダントかわいい」

ウインドショッピングをしているとアスカがとあるショーケースの前で立ち止まった。

アスカが見ているのはハート型のペンダントトップのついているペンダントだった。
千円か・・・、これくらいならプレゼントできるな。

「それくらいなら僕が買ってあげるよ」

「えー、ほんと。ありがと。大事にするね」

アスカはさっそく買ったペンダントを身につけると僕に腕を絡ませてきた。
使徒と戦ってた頃はアスカの方が背が高かったんだけど、
何時の間にか僕の方が背が高くなっていた。
まあ、腕にぶら下がるってとこまでは行かないけど。

もう夕暮れが迫っていた。
僕の中では「キス」という言葉が意識されて、妙に緊張した気分になっていた。

「ねえ、シンジ。また、キスのこと考えてたでしょ」

アスカは組んでいた腕を外すと腰に手を当てて正面から僕を睨みつけてきた。
僕の緊張がアスカにはわかったのかもしれない。

「そ、そんなことないよ」

とりあえず、否定してみたけど、

「うそついてんじゃないわよ」

やっぱりアスカにはわかっちゃったみたいだ。

「シンジは考えてることがもろに態度に出ちゃうからね。
 あたしにはそれがすぐにわかっちゃうのよ。
 だから、こうして歩いてるとなんか照れくさくって」

僕はそっぽを向いて話し始めた。

「ぼくだって、できるだけ意識しないようにしてたんだよ。
 ・・・でも好きな娘にキスしたいって思うのはいけないことなのかな?」

「そ、そんなこと言ってないじゃない!
 あ、あたしだってシンジのこと好きだし、キスもしたいと思うよ・・・。
 でもさ、なんか意識すると恥ずかしくなっちゃって」

アスカは泣き出しそうな顔でそう言った。

「アスカ・・・」

「だから、だからね。変に意識せずに自然にできるといいな。
 はじめてデートしたときみたいにさ」

「そ、そうだね」

そうだよ、なにも、あせる必要なんか無いんだ!

「わかってくれた?」

「うん、これからもずっといっしょにいるんだし、あせらないことにするよ」

「うん、そうしてくれるとうれしいな」

「それじゃ、帰ろうか」

僕達はまた腕を組んで歩き始めた。



コンフォート17に近くまで来たとき、

「ねえ、シンジ」

突然アスカが話し掛けてきた。

「何?」

僕がアスカの方を振り向くと、

チュッ。

いきなり、アスカが背伸びしてキスしてきた。

「ア、アアア、アスカ!」

僕は瞬間的に顔に血が上ってくるのを感じた。

「えへへ、何となくさ、急にキスしたくなっちゃって」

アスカがそう言って照れ笑いした。

「迷惑だった?」

「そ、そんなこと無いよ、突然で驚いたけど、う、うれしいよ」

「こ、今度はさ、あんたの方からムードを盛り上げてキスしてよね」

アスカは恥ずかしいのかそっぽを向いたままそう言った。







Fin



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後書き

どーも、たっち―です。

「初デート」の続編「KISS」をお送りします。
再び甘い世界を堪能していただけたでしょうか?
キスを意識しすぎてぎこちないシンジを書いてみました。
しかし、展開に行き詰まるとトウジを出してるような気がするな、俺って。

それでは。

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アスカ:うーん・・・キスってやっぱし照れちゃうわね。

マナ:じゃ、しなけりゃいいじゃない。(ーー)

アスカ:やっぱ、自然に・・・が、いいわよね。

マナ:自然消滅?

アスカ:消滅してどーすんのよっ!

マナ:キスくらいで、盛り上がらないでよねっ。

アスカ:ごっめーん。アンタはする相手がいないのよね。

マナ:(ーー#
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