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エヴァ学園は大騒ぎ!
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BY たっちー



5時間目 「春合宿は大騒ぎ(後編)」






合宿初日の夜

夕食後、「親睦会」という名のコンパをやると日向がシンジ達に伝えてきたので、
シンジ達は部屋を出てプレイルームに行った。
すでにシンジ達3バカ以外はプレイルームに来ていて各々好きなところに座布団を持っていって座っていた。
ミサトの両脇には加持と日向。マヤはリツコの隣に座っており、青葉は一人壁を背にしてギターを抱えていた。
空いている場所は3箇所。
一つはヒカリの隣。もう一つは青葉とレイの間。そして最後の一箇所は、・・・マナとレイの間だった。
トウジは特に何も意識せずにヒカリの隣に座ってヒカリをドキドキさせ、ケンスケは一瞬迷った後しぶしぶ青葉の隣に座った。
もはやシンジが座るところはマナとレイの間しかないのだが、シンジはそこに行くことが躊躇われた。
理由はシンジ自身よくわからない。ただ、「あそこに行くは危険だ」、本能がそう告げていた。

「? 何やってるのシンジ?早くここにおいでよ」

マナがそう言って、自分の隣の座布団をポンポンと叩く。
実際そこしか空いている場所は無いのだからシンジは身の危険を感じながらもそこに座った。

「よっしゃ、みんなそろったわね!それじゃ同好会「ネルフ」の春合宿親睦会を始めるわよ。カンパ〜イ!!」

エビチュの1L缶を掲げてミサトが音頭をとる。

「カンパ〜イ!」

リツコ達大学生達はビールをシンジ達高校生(レイは中学生だが)はウーロン茶やジュースで乾杯した。

「ングッングッングッングッ、プハ〜〜!体を動かした後はヤッパこれよね!日向君、次とって〜」

1Lのエビチュをミサトは一気に飲み干してしまったらしい。

能天気なのはミサトだけでミサトの両隣の加持と日向、そしてシンジ、マナ、レイは異様な緊張感に包まれていた。
他の連中にも緊張が伝わっているのか、時々チラッと視線を交し合っている。

レイが何か言うと口を開きかけた瞬間、

「ブワッハッハッハッハ。いや〜、やっとるかね、諸君!!」

豪快な笑い声と共にいきなり懇親会の席に乗り込んできたのは年の頃60代半ばの老人だった。
垂れ下がった眉。かなり薄くなった白髪をオールバックにしている。
無責任という言葉を受肉させるとこうなるのではないかと思わせる雰囲気を放っていた。

この老人が乱入してきた瞬間、

「ブッ!!」

口に含んでいたエビチュを思わず吹き出してしまったのはミサトだった。

「ケホッケホッ!お、お父さん!突然やってこないでよ!!」

むせながらも抗議するミサト。その言葉にシンジ達は目を丸くした。

「「お父さん?ミサトさんの?」」

シンジとマナの声がユニゾンする。

「そうよ。ミサトのお父さんの葛城博士。元エヴァ学園学長」

淡々と何かあきらめたような口調で説明したのはリツコ。

「つまりここが格安で利用できるのは葛城博士がこのペンションのオーナーだからよ。
 学長をしてた頃はまともな人だったんだけど。退官してから何かはじけちゃったのよ」

最後にはため息をつくリツコであった。
しかし、シンジはリツコの説明の後半は聞いていなかった。

ミサトさんのお父さんか・・・。なんか納得しちゃうな。

一方マナはというと、

「学長?この人がですかぁ!?」

思わず、葛城(父)を指差して大声をあげてしまう。

「そうです!私がエヴァ学園元学長の葛城です。ブワッハッハッハッハ」

高笑いする葛城(父)を呆然と見ていたマナがシンジの耳元で囁いた。

「さすがミサトさんのお父さんだネ」

「やっぱりそう思う?」

そんなシンジ達にズズイッと近づいて葛城博士が尋ねた。

「ところで、君たちが今年の新入部員かね?」

そう言う笑顔にはひとかけらの邪気も感じられない。

「は、はい。碇シンジといいます」

「霧島マナです」

「・・・綾波レイです」

離れた場所にいたケンスケ、トウジ、ヒカリは未だ呆然としたまま声も出せずにいた。

「碇に綾波というと・・・、もしかしてユイ君やルイ君のお子さんかね?」

急に真面目な顔になった葛城(父)に気圧されながらシンジは素直に頷いた。
ちなみにルイとは綾波ルイ。レイの母親にしてユイの双子の妹だ。

「え、ええ。そうですけど・・・」

「そうかそうか、君はあのゲンドウの息子か。あんな男が父親では君も苦労しとるだろう、うんうん」

一人で納得し、再びウワッハハハハと高笑いする葛城博士。

ヒトのことは言えないんじゃないかしら?
ま、こっちは親が親なら子も子だけど。

頭痛がし始めたリツコは声に出さずにそう呟いた。

「父さん達のこと知ってるんですか?」

シンジが思わず身を乗り出した。
これまで、父ゲンドウも母ユイも自分達の過去のことをあまりシンジに語ったことはない。

「もちろん知っておるとも。ゲンドウは昔エヴァ学園でワシのゼミに居ったし。
 それにゲンドウとユイ君とルイ君は「ネルフ」の初期メンバーだし」

葛城博士はあっさりと世間話でもするような口調で言った。

「「「「へ?」」」」

その言葉にミサトも含めた全員が言葉を失った。

「・・・お父さん。今、シンジ君の両親が「ネルフ」の元メンバーって言った?」

ミサトが思わず訊きなおす。

「そうじゃよ。ゲンドウが初代会長じゃ」

とぼけた口調と表情でで父が返事を返す。

「初代会長って中学生の女の子を口説き落としたっていう・・・」

思わず、その話を蒸し返す青葉。

「そうじゃよ。それがユイ君だ」

平然と答える葛城(父)。

そ、そんな・・・。父さんが「ネルフ」の初代会長?それじゃ、「ネルフ」を作ったのは父さん?
か、母さん。なんで中学生で父さんと・・・。父さんがロリコン?

焦点の定まらない目でブツブツと呟き始めたシンジの肩をマナがつかんで揺する。

「ちょっと!しっかりしてよ、シンジ!」

葛城(父)はそんなシンジ達はすでに眼中になく、遠い目をして述懐する。

「ワシの娘にゲンドウとユイ君の息子、ルイ君の娘、ナオコ君の娘がそろうとは。
 これも運命というものかも知れんなあ」

その言葉にこれまで比較的冷静だったリツコが驚いた。

「な、何でそこで母さんの名前が出てくるんですか?」

「もちろん、ナオコ君も「ネルフ」のメンバーだったからじゃ」

またも何のためらいもなく、そう言ってのける。

そ、それで、「ネルフ」のことを話したとき、母さんあんなに慌ててたのね。
シンジ君のことを話したときも。

「せんぱ〜い、しっかりしてくださ〜い!」

シンジ同様、うつろな目でブツブツと呟き始めたリツコをマヤが何とか正気にさせようとしている。

「ん〜、それじゃお父さん、「ネルフ」ができた頃のこと良く知ってるのね?」

素早く立ち直ったミサトに言葉に父は重々しく頷いてみせた。いまさら偉そうな態度をとったところで手遅れなのだが。

「それじゃ、同好会「ネルフ」の目的って何?
 いや、あたしは別にどうでもいいんだけど、気にしてる子がいるから」

そう言ってチラッとシンジを見る。シンジは後ろからマナに抱きかかえられるような格好になっていて、
ようやく正気を取り戻そうとしていた。

「ん〜。「ネルフ」の目的なあ・・・」

このときばかりは歯切れが悪くなる葛城(父)。

「それにはあたしが答えるわ」

突然後ろから声がかかり、シンジの体がビクッと硬直する。

この声、まさか・・・。

シンジが恐る恐る振り返ってみるとそこにいたのは母であるユイ・・・にそっくりだがどこか雰囲気の違う人物。
レイがボソッと、

「・・・お母さん」

と呟き、シンジが、

「ルイ叔母さん!?」

と驚く。シンジの言葉に他の部員達が騒然となった。

「あ、綾波のお母はん?そういやユイさんにそっくりやな。いや、美人やな〜」

ややオバコンの気があるトウジがそんなことを無意識に呟いてヒカリが睨みつけられる。

「叔母さん〜〜?」

尻上がりに高くなるルイの言葉にシンジは慌てて訂正した。

「ご、ごめんなさい、ルイ「お姉さん」。・・・ところでどうしてここにいるんですか?」

「一年程前からここで働いてるのよ。レイには言ってある筈だけど聞いてなかった?」

ルイの言葉にシンジはレイの方を振り返る。レイの返事は「訊かれなかったから」だった。
ちなみにレイは中等部進学と同時にエヴァ学園の女子寮に入ったため、ルイとは一緒に暮らしていない。

「やれやれ、あいかわらずレイったら愛想がないのね。そんなことじゃシンちゃんが振り向いてくれないわよ。
 っと、そうそう。「ネルフ」を作った目的だったわね。「ネルフ」の目的、それは・・・」

ここで意味ありげに言葉を切るルイ。静まり返るプレイルーム。ケンスケがごくりと唾を飲む音がやけに大きく聞こえた。

「それは『世界制服』よん♪」

急にニコッと笑ってそう言うルイにずっこける一同。

「お、叔母さん。そういう冗談は」

シンジの言葉に頬を膨らませるルイ。

「叔母さん、じゃないでしょう?・・・ま、いいわ。でも冗談で言ったわけじゃないのよ」

「それじゃマジで?」

そう訊き直したのはミサト。

「そうよん」

「本気で?」

さらに訊き直したのは日向。

「そうだって言ってるでしょう〜」

ルイの言葉に再び現実逃避するシンジ。

「世界制服って、何考えてるんだ父さん・・・」

そんなシンジの言葉をルイが遮る。

「ちょっと待ってシンちゃん。それを言い出したのはゲンドウさんじゃないわ」

「え?」

「お姉ちゃんよ」

「か、母さん?」

「そうよ」

ルイの言葉に全員、目を丸くして呆然とするしかなかった。
リツコだけは、

世界制服・・・。なんて甘美な響き・・・。

などと考えていたのだが。



懇親会もわけのわからないまま終わって。
全員がそろそろ寝ようとそれぞれの部屋に戻った。
シンジはいったんベッドに潜り込んだが先ほどの懇親会での話もあってか、異様に目が冴えて眠ることができなかった。
シンジは何となく星が見たくなってベッドから抜け出した。

「なんや、シンジ。どこ行くんや?」

すでに寝ていると思っていたトウジに声をかけられてシンジはドキッとした。

「いや、何か眠れなくてさ。ちょっと星でも見ようかと・・・」

シンジの言葉にどことなくつまらなそうなケンスケの声が返ってくる。

「何だ。てっきり夜這いに行くのかと思ってたぜ」

「夜這いって何言ってるんだよ、ケンスケ!!」

シンジの声がわずかに尖る。

「ま、それは冗談としてもや。ええかげんはっきりしたったらどうや」

「はっきりって?」

トウジの言葉に首を傾げるシンジ。何をはっきりさせろって言うんだ?

「霧島のことだよ」

暗闇の中から聞こえるケンスケの声。

「マナ?」

「そうだよ、付き合うなら付き合うでいいかげんはっきりした態度をとれって言ってるんだよ」

「そうやそうや、このままでは霧島がかわいそうやで」

「・・・トウジもヒトのこと言えないけどな」

ケンスケがボソッと呟く。

「なんか言うたか、ケンスケ?」

「別に。・・・それよりどうなんだよ、シンジ?ってシンジ?」

ケンスケとトウジの気がそれた一瞬の隙にシンジは部屋から逃げ出していた。


はっきりさせろ・・・か。勝手なこと言ってくれるよ。

シンジはぶらぶらと廊下を歩きながらさっきのトウジ達の言ったことを思い出していた。

もちろんマナのことが嫌いなわけではない。
最初は強引さに辟易したこともあったが、いまではそんなところさえかわいく感じ始めているのも確かだ。
でも、それが恋愛感情かどうかはシンジ自身わかっていなかった。

「あ、ここから中庭に出られるはずだ」

シンジはとあるドアの前で立ち止まった。
昼の間にトウジ達とペンションの中をグルッと廻ったとき、ここで偶然マヤに会い、

『ここの中庭から見る夜空はほんとにきれいなのよ〜』

と教えられたのだ。

シンジはドアを開けて体を震わせた。
昼間は暑いほどとは言え、まだ4月。夜はまだまだ寒い。

一歩外に出たところでシンジは立ちすくんだ。

そこには一人の少女がいた。
蒼い光に照らされて星を見上げるマナがシンジには一瞬女神に見えた。

きれいだ。

声もなくシンジは立ち尽くしていた。
と、マナが気配を感じたのか、シンジの方を見て次の瞬間ニコッと笑った。

「やっぱり、シンジ来てくれたんだ」

そう言ってマナはエヘヘと笑った。

「やっぱり?」

目を見開くシンジにマナが微笑む。

「何かね、シンジがここに来るような気がしてたんだ」

そう言って再び星を見上げるマナの隣に立ってシンジも星を見上げた。

しばらく無言で星を見上げる二人。

「ねえ、シンジ。あたしのこと好き?」

突然、マナが空を見上げたままシンジに問いかけた。
その声はいつもの明るい調子とは何か違っていて。
それがシンジには妙に愛しく感じられて。

「自分でも良くわからないんだ。でも、好きなのかもしれない」

シンジは素直に自分の気持ちを口にした。

「そっか・・・」

マナの声は寂しいようなホッとしているような。

「マナは僕のどこが好きになったの?」

マナが自分のことを好きなことは間違いないだろう。ことある毎にそう口にしているのだから。
でも自分のどこを好きになったのかはシンジにはまったくわからなかった。

「・・・入学試験の日の事覚えてる?」

マナの言葉にシンジは戸惑う。

「入学試験?」

「うん、あの日のシンジを見てね、あたし、シンジのことが気になってたんだ」

もちろん、シンジには入学前にマナに会った記憶などなかった。

「試験の帰りにさ、シンジ一匹の子猫拾ったでしょ?」

それはシンジも覚えていた。
その日、入学試験が終わったとき校門を出てすぐのところを一匹の子猫がよろよろと歩いていた。
車にでもはねられたのか、右後ろ足を引きずっていた。
受験の緊張から解放されたばかりの学生達の多くはそんな猫に気付きもせず、
気付いた者も「かわいそう」とか言いながらも手を出さずに通り過ぎていった。
そんな中、猫を拾い上げたのがシンジだった。

『その猫どうすんだよ、シンジ?』

一緒にいたケンスケがシンジに訊く。スポーツ推薦のトウジはこの時いなかった。

『ほっといたらかわいそうじゃないか。とりあえず動物病院に連れて行ってその後飼い主を探すよ』

シンジの答えにケンスケが呆れたような声をあげた。

『やさしい奴。飼い主なんか多分見つからないぜ?』

『だったら、僕が飼うさ』

『ほんと、やさしい奴』

結局ケンスケの言う通り飼い主は見つからず、
シンジはその薄いグレーの毛並みと赤い瞳を持つ猫を「カヲル」と名付けて今も可愛がっている。


「そんなことで・・・」

思わず、まじまじとマナを見詰めるシンジ。

「「そんなこと」って、誰でもできることじゃないと思うけどな、かっこいいよ」

マナはそう言うとシンジの瞳を見つめてニコリと笑う。

「で、入学したらクラスは一緒になるし、さらに席まで隣になっちゃうし、な〜んか運命ってものを感じちゃったのよね」

最後にはいつもの冗談めかした口調に戻っていた。

「だから、あたしとシンジが付き合うのは運命なのよ♪」

いつものシンジならば狼狽しまくっていたことだろう。
しかし、神秘的な月の光の中でシンジも普段とは違う心境にあった。

「運命か・・・。運命なんて信じないけどさっきよりもマナのことが好きになったような気がする」

「えへへ、そうそう、ゆっくりと好きになってくれればいいのよ」

そう言ってマナはシンジにもたれかかる。
そのまま二人は寄り添ってしばらく星を見つめていた。

「そろそろ戻ろうか」

5分ほどそうしていただろうか。
シンジがそう言ってマナが頷く。

シンジの205号室とマナの202号室は廊下をはさんで向かい側。

「それじゃ、おやすみ」

部屋の前でそう言って自分の部屋に戻ろうとするシンジ。
その瞬間、シンジの頬にやわらかく温かいものが触れた。

「えへへ、おやすみ」

マナははにかんだような笑みを浮かべてそう言うと202号室に入っていった。

シンジは一人、まだマナの唇のぬくもりの残る頬を手で抑えながら廊下に立ち尽くしていた。



合宿2日目

シンジがボーッとした表情で朝食を食べていると、カウンターで朝食をもらってきたマナが隣に座ってきた。

「シンジ、おはよ♪」

マナの明るい声にシンジは思わず赤くなる。

「お、おはよう、マナ」

シンジの向かいに座っていたケンスケの眼鏡がキランと光る。トウジは食べることに夢中。

「・・・シンジ、何があった?」

妙に低い声でそうシンジに尋ねるケンスケ。

「え、い、いや別に・・・」

何かあったことがもろばれな愉快なほど狼狽するシンジ。
マナはそんなシンジを見て「えへへ〜」と笑うだけでケンスケの問いには答えなかった。


2日目のメインは春合宿の最後を飾るイベント、バーベキューである。
昼食にはいささか早い時間にシンジ達は川原にやってきた。

シンジを除く男どもはバーベキュー用のコンロの組み立てを担当。

シンジと女性陣は食材の準備。
そんな中で手早く野菜の皮をむき、刻んでいくのはもちろんシンジとヒカリ。
マナも特に問題なく食材を準備している。

「マナって結構料理上手なんだね」

シンジの言葉にマナは苦笑した。

「一人暮らししてるから野菜切るくらいはネ。
 でも、シンジの方が上手じゃない」

「へえ、マナって一人暮らしなんだ」

横からそう口をはさんだのはヒカリだ。
1日とはいえ同じ部屋で寝起きして急速に仲がよくなったようだ。

「うん、お父さんたちは第2新東京市に住んでるの」

「それじゃ、晩御飯とかは自分で作って食べてるんだ?一人で食べてるんでしょ? 寂しくない?」

「寂しくないって言えば嘘になるけど。今はまだ一人暮らしの自由ってのを楽しんでるの」

「ふ〜ん・・・。今度さ、ウチに遊びにおいでよ。一緒にご飯食べよ」

「ありがとう、ヒカリ。でもヒカリには悪いけどどうせならシンジと食べたいかなぁ」

チラッとシンジを見て言うマナに、ヒカリはわざとらしく手で顔を扇いで見せた。

「あ〜、熱い熱い。ハイハイ、ご馳走様」

「そ・れ・に〜、ヒカリだってあたしじゃなくて「彼」を呼びたいんじゃないのかな〜?」

そう言うマナの視線の先にいるのはもちろんトウジだった。

「わ、私は別に・・・」

動揺するヒカリをからかうマナ。

「知らないのはシンジくらいのものよ。まあ、当の本人が気付いてるかどうかが一番の問題なんだけど」

ニヤニヤ笑うマナの言葉にヒカリは赤くなって俯いた。

さて、マナ達がそんなことを話している頃、別の一角では、

「わたし泣いてるの?悲しくなくても涙は出るのね」

たまねぎを切りながらそう言ってレイが涙をぽろぽろとこぼし、

「や〜ん。うまく切れないですぅ。おうちではばあやがやってくれてるから〜」

などと言いながらマヤが雑に野菜を切り、

「・・・・・・」

リツコが眉間にしわを寄せ、肩に異様に力が入った状態でちまちまとジャガイモの皮を剥いていた。
ビール片手にそんな様子を見ていたのはミサト。

「ねえ、リツコ〜」

そう言った途端、リツコは、

「却下」

皆まで言わせず、ミサトの提案を却下した。

「まだ何も言ってないでしょ〜?」

頬を膨らませるミサトに、

「あたしにもやらせろ、でしょ」

そう言うリツコ。

「ま、そうなんだけど・・・」

「だから、却下」

リツコが、そして途中からは加持も加わってミサトを抑えたため、無事バーベキューの準備ができた。

「さ〜て、焼き始めるわよん♪」

そう言って肉を焼き始めるミサト。さすがにこれまではリツコも止めなかった。

「はい、レイちゃん」

昨日の特訓のお詫びのつもりかレイの皿にミサトが肉を取ってやった。

「わたし、いらない」

レイの言葉にミサトの機嫌が悪くなる。

「何でよ?」

「肉、嫌いだもの」

レイの言葉に近くにいた者が目を丸くした。
もっともそんなことを気にも止めない者もいる。

「うまいうまい、ほんまうまいわ」

そう言って食べまくっているのはトウジ。
その隣にはヒカリがいてトウジのためにいろいろなものを焼いている。

「はい、鈴原。焼けたわよ」

「おお、すまんな、イインチョ。ワイのこと気にせんとイインチョも食べてや」

「うん、食べてるよ」

「やれやれ、平和だね〜」

多分にやっかみの入った口調でケンスケが呟いた。

一方、シンジとマナは。

「ほらほら、シンジ、焼けたよ〜」

「うん、おいしそうだね」

「はい、取ってあげる」

「ありがとう、マナ」

こちらもトウジ達に負けずいい雰囲気であった。
それに気付いたレイが近づいてきて、

「お兄ちゃん、これも食べて」

そう言って、自分の皿を差し出す。

「ありがとう、レイ」

マナとレイの間に飛び散る火花にまったく気付かず、幸せいっぱいのシンジだった。


「さってと、最後はやっぱ焼きソバよね〜」

そう言ったのはミサト。もちろん特に反対する者はいない。

「それじゃ、シンジ、一緒に作ろ?」

マナがそう言ったが、シンジは、

「いや、焼きソバならトウジのほうが上手いんだ。トウジ、焼きそば作ってよ」

と言って、マナをがっかりさせた。

「おっしゃ〜。まかしとき!」

トウジが張り切って焼きソバを作り出す。シンジはさらに、

「洞木さん、トウジを手伝ってあげてよ」

と言い、ヒカリ、ケンスケ、マナの目を丸くさせた。

あ、あのトウジ以上かも知れない鈍感王シンジが委員長の気持ちに気付いたのか!?

ケンスケの感じた疑問をマナも感じており、小声でシンジに囁いた。

「シンジもやるじゃない」

「へ?何が?」

首をかしげるシンジにマナは唖然とした。

「何がって意識的にやったわけじゃないの?」

「???」

シンジの表情を見てマナは確信した。
シンジはヒカリの気持ちには気付いていない。
とんでもない鈍感な奴だと。

「あ、ちょっと待って、トウジ」

マナがそんなことを考えているとまったく気付かず、シンジはトウジにそう声をかけると、
一本の赤ウインナーを取り出した。
小さなナイフをちょちょいと動かすと、次の瞬間シンジの手のひらに乗っていたのはたこさんウインナー。

「これも入れてよ」

そう言って、鉄板の隅のほうにそのたこさんウインナーを乗せた。

「「「かわいい〜!!」」」

マナ、ヒカリ、マヤから黄色い声が飛んだ。



春合宿も無事(?)すんでの帰り道。
飲みすぎたミサトはすでに夢の中。

レイとマナもこっくりこっくりやり始めている。

「学園に着くまで寝てていいぞ、シンジ君」

運転席から加持がそう声をかけてくる。

「ありがとうございます。加持さん」

シンジがそう言った途端、両腕に体重がかかってきた。

左腕にはマナ、右腕にはレイ。
左右の腕にもたれかかって寝息を立てている美少女二人。
男にとってこれ以上うらやましい状況はあるまい。
加持もバックミラーでその状態を目にして、

「うらやましい状態だな、シンジ君」

と笑いを含んだ声をかけてくる。

「え?あ、あはは〜」

シンジはとりあえず笑うしかなかった。
そして、この状態は帰り着くまで続いたのだった。








続く


次回予告

ゴールデンウィーク直前、マナはシンジをデートに誘うことに成功する
しかし、その約束は同好会「ネルフ」会長ミサトの知るところとなった
「面白そう」というだけで二人の妨害に部員を動員するミサト
独りレイだけが本気で妨害を企てる
はたして二人のデートはどのような結末を迎えるのか?

6時間目 「初デートで大騒ぎ」

楽しみに待っててねん♪

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後書き

ルイ「オリジナルキャラ、ユイの双子の妹でレイの母親の綾波ルイで〜す」
葛城博士「ブワッハッハッハッハ、ミサトの父親の葛城博士じゃ」
ルイ「自分で博士って言うのはどうでしょう?」
葛城「だいじょうぶ、ワシの名前は博士と書いてヒロシと読むのじゃ!」
ルイ「ほんとですか?」
葛城「さあ(笑)?ま、そんなことどうでもいいじゃないか」
ルイ「そんないいかげんな(苦笑)。しかし、誰をイメージして書かれたかバレバレですね」
葛城「日本一の無責任男と言われた男だな。ブワッハッハッハッハ」
カヲル「にゃ〜にゃにゃにゃ〜(何で僕が猫なんだい?)」
ルイ「あら、あなたの出番はまだ先だからここに出てこないでよ」
カヲル「ミャ〜、ニャニャニャ(でも、納得いかないのさ)」
ルイ「一応、ヒトとしての渚君を出す話も作者は考えているみたいよ?」
カヲル「ニャニャニャッ!?(本当かい!?)」
葛城「ほんとに書かれるかどうかはわからんがな、ハッハッハ」
カヲル「にゃ〜」(とぼとぼと去っていく)
ルイ「しかし、今回は途中がもろLMSな展開じゃないですか?」
葛城「だ〜いじょうぶ。次回はミサトが妨害するじゃろ」
ルイ「え?ミサトさんはシンジ君たちがくっつくように煽っていたような気が」
葛城「付き合っていなければ付き合うように煽り、付き合っていれば邪魔しようとする。それがミサトじゃ」
ルイ「なんともはた迷惑な(笑)」
葛城「ワシの娘じゃからな」
ルイ「自分で言わないでください(笑)。ところであたし達の活躍を描いた外伝を作者が考えているとか?」
葛城「「ネルフ」発足時の話だな」
ルイ「ウフフ。そちらでのあたし達の活躍に期待してね!」
カヲル「・・・ニャニャニャ〜(・・・結局、自分達のことしか考えていないんだね。好意に値しないよ)」


どーも、たっち―です。

今回はもう、ミサトの父、葛城博士に尽きるでしょう(笑)。
何でこんな風になっちゃったか自分でもわかりません。
ああ、その後シンジとマナちゃんがいい雰囲気になってるのにかすんでいる(嘆)。
トウジとヒカリもね〜、どうしましょうかね。
LHTの展開も考えないといけませんね。
あと外伝も。

それでは。

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マナ:更にラブラブ度が、大幅アーーーーップっ!

アスカ:オリキャラまでガンガン出てるのに、アタシが出ないのはなぜーっ!?

マナ:シンジがわたしのこと好きだってぇぇっ!(*^^*)

アスカ:シンジのヤツっ! コロスっ!(ーー#

マナ:アスカが出て来るまでに、落としてみせるわっ!(^^v

アスカ:そんなことになったら、わかってんでしょーねぇ!>たっちー

マナ:わたしとシンジのラブラブシーン、もっと書いてくれなきゃ燃やすわよ?>たっちーさん

アスカ:お目付け役のファーストは何してんのよっ! 役にたってないじゃないのっ!

マナ:フフフ。どうやら、綾波さんはもう敵じゃないみたいね。(ニヤリ)
作者"たっちー"様へのメール/小説の感想はこちら。
tachiy@sannet.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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