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エヴァ学園は大騒ぎ!
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BY たっちー



6時間目 「初デートで大騒ぎ(前編)」






「ねえねえねえ、シンジ、ゴールデンウィーク何か予定ある?」

「え、ああ、トウジ達と遊ぶ約束はしてるけど」

「でもさ、毎日ってわけじゃないよね」

「それはまあ、そうだけど」

「じゃあさ、ちょっと買い物に付き合ってくれないかなぁ?
 一人暮らし1ヶ月やってるといろいろと足りないものがでてきてさ。」

「うん、いいよ」

シンジとマナがそんな会話をしているのは4月の末。ゴールデンウィークに入る直前のことだった。
あの春合宿の後、シンジとマナはいっしょに帰ることが多くなった。
まあ、少なくともシンジの方にはつきあっているという意識はないのだが、傍から見ればつきあっているようにしか見えない。
サッカー部に入ったトウジはサッカー部のマネージャーになったヒカリと一緒に帰るようになっていたのだがそれはまた別の話。

「じゃあ、さっそく29日いいかな」

「うん、いいよ」

「それじゃ、よろしくネ。・・・あ〜あ、もうここまで来ちゃったか」

思わずマナが嘆くふりをしてみせたのは通学路途中の交差点。
シンジの家はこのまままっすぐ。マナの住むアパートはここを右折した先。
マナとしてはこのまま自分のアパートにシンジを引っ張っていきたいのだが、シンジにはそこまでの覚悟はまだないようだ。

「それじゃネ、シンジ。また明日。バイバ〜イ」

「うん。バイバイ」

シンジはマナの後姿を見送った。

「何かマナ嬉しそうだったな」

しかし、シンジは気付いていなかった。角を曲がったマナが満面の笑みを浮かべてこう呟いていたことに。

「ついにシンジと初デート〜!!やった〜!!」


<・・・じゃあ、さっそく29日いいかな>

<うん、いいよ>

同好会「ネルフ」の部室に備え付けられたスピーカーからシンジ達の会話が聞こえていた。

「ビンゴ!!」

そう言ってガッツポーズをとったのはもちろん「ネルフ」会長・葛城ミサト。

「まさか、仕掛けたその日の内にデートの情報が手に入るとは思わなかったわ」

そう、ミサトが部室に来たシンジのかばんに盗聴器を仕掛けたのはまさにこの日だったのだ。
もちろん、盗聴器をリツコお手製の高性能の物だ。

「・・・「情報が手に入った」はいいッスけど、それでどうするんスか?」

そう尋ねたのは青葉だ。

「もちろん、デートに協力してあげるのよん♪」

そう言うミサトをさめた目で見ていたのはリツコ。

「「邪魔する」の間違いじゃないかしら?」

「そ〜んなことするわけでしょ。協力よ、協力ぅ」

ミサトのその言葉を信じるものはもちろん「ネルフ」には一人もいない。
もちろん、ミサトはただ「面白そう」だからこんな事を言い出したのだ。

「さってとそれじゃ、デートに「協力」するための計画を練りましょ」

上機嫌で部室の奥の部屋に向かうミサト。日向と青葉、ケンスケがその後について行った。
その後姿を冷ややかな目でリツコは見送った。

「いいんですか、先輩?」

軽く尖らせた下唇に人差し指を当てたポーズでリツコに尋ねたのはもちろんマヤだ。

「勝手にやらせておけばいいわ」

リツコが投げやりとも取れる口調で言い放ったとき、部室の隅からブツブツと呟く声が聞こえた。

「あの茶髪女がお兄ちゃんとデート・・・。そんなの許せない。認めない。
 邪魔してやる邪魔してやる邪魔してやる邪魔してやる・・・」

存在を忘れ去られていたレイだ。

「邪魔するんならミサト達の話に加われば?」

リツコの言葉にレイはプルプルと首を横に振る。

「葛城さんはデートに協力すると言ったわ」

「口ではそう言ってるけど絶対に邪魔するつもりよ、あれは。
 仮に邪魔するつもりがなかったとしても結果的に邪魔することになるのは間違いないわ」

「協力すると言ったわ」

「だからね・・・」

「葛城さんはあてにならない」

「・・・・・・」

レイの言葉にリツコは沈黙した。ミサトが信用するに足りない人物であることは確かだからだ。
と、何か考えていたレイがリツコを見つめて、

「赤木博士」

と切り出した。

赤木「博士」。なんと心地よい響き。

思わず感動に打ち震えるリツコ。

「なにかしら、綾波さん」

「協力して」

「マナちゃんの邪魔をするのね?わかったわ。私の発明品を使わせてあげる。
 フッフッフ、私の力、見せてあげるわ!ア〜ハッハッハッハ」

「博士」という単語にイってしまったリツコはいささかずれた返事をして高笑いする。
しかし、マッドサイエンティストの本性をあらわしたリツコにそれを指摘できる者はいなかった。



喫茶店「六分儀」

カランカランカラン

「ただいま〜」

「あら、お帰りシンジ」
「うむ」

この日はシンジの両親は夫婦そろってカウンターの中にいた。

春合宿から帰ってきてすぐ、シンジは両親に詰め寄るようにして訊いたものである。

シンジ『二人とも「ネルフ」にいたんだって?』
ユイ『そうよ』
シンジ『父さんが初代会長だって?』
ゲンドウ『うむ』
シンジ『何であんな同好会作ったのさ?』
ゲンドウ『お前が知らなくてもいいことだ』
ユイ『いいじゃない。楽しかったわよ、「ネルフ」は』
シンジ(楽しかったって・・・。発想がミサトさんと一緒じゃないのか、母さん)
ユイ『何考え込んでるの?』
シンジ『・・・「世界征服」が「ネルフ」の目的なんだって?』
ユイ『あら、ルイから聞いたの?そうよ、目的は大きく持たなくちゃ』
ゲンドウ『うむ』
シンジ『うむって、何言ってるんだよ。母さん、何で父さんのこと好きになったのさ?』
ゲンドウ『むっ!?』
ユイ『可愛いからよ』
シンジ『可愛い?父さんが?』
ユイ『そうよ、可愛い人なのよ、ゲンドウさんは』
シンジ『・・・父さんは何で中学生の母さんを・・・』
ゲンドウ『問題ない』
シンジ『いや、それってロリコン・・・』
ゲンドウ『なんだと?セーラー○ーンでも主人公は中学生と大学生のカップルではなかったか!?
     何故、私だけロリコン呼ばわりされねばならんのだ!』
シンジ『なんだよ、それ!何言ってるのか僕にはわからないよ!!』
ユイ『世間がなんと言おうと愛し合ってれば問題ないのよ』
ゲンドウ『フッ。そうだ。問題ない』

などという会話があってシンジは両親をそれまでと違う目で見るようになった。
それから2週間。ようやくギクシャクしかけた親子関係が元通りになってきていた。

「今日も彼女と一緒だったんでしょ?」

ユイの言葉にシンジの顔が赤くなる。
「ネルフ」にいる以上、ミサト経由でシンジの行動は逐一ユイとゲンドウの耳に入ることになる。
もちろん、春合宿でマナとの仲が急接近したことも、最近途中まで一緒に帰っていることも疾うに報告されていた。
沈黙しているシンジにさらに追い討ちをかける母。

「どうせなら連れてくればいいのに」

「な、何言ってるんだよ、母さん!」

「だってシンジの彼女の顔見てみたいじゃない。葛城さんの話だと可愛いみたいだし。
 どことなくわたしに似てるとも聞いたわよ♪デートとかしないの?」

さらにシンジに尋ねるユイ。シンジはごく自然に、

「デートだなんて・・・。あ、そう言えば今度買い物に付き合ってくれって言われたよ」

などとのたまう。

「それってデートじゃないの?」

さすがのユイも呆れた顔をする。

「え?そうなの?」

案の定と言うべきかシンジにはそういった認識はなかったようだった。



4月29日

「ニコラシカからスクリュードライバーへ。標的Aは家を出ました、どうぞ」

道路をはさんだ向かいから喫茶店「六分儀」を見張っていたケンスケがシンジが家を出たのを見てトランシーバーでそう報告する。
柱の陰に隠れてはいるが迷彩の上下を着込んだその格好はかえって目立っていた。
まあ、シンジにさえ気付かれなければ良いのだが。

<了解。標的Bも行動を開始した模様。これより「LMS作戦」を発動します!>

トランシーバーからミサトの声が返ってくる。

「フッフッフ。シンジ、最高の初デートにしてやるぜ」

そう呟くケンスケの顔はとてもデートに協力しようとしているようには見えなかった。


「遅いな〜、シンジ」

待ち合わせの時間は10分ほど前に過ぎている。まあ、まだ文句を言うほどの遅刻ではない。
しかし、シンジの性格からして待ち合わせ時間に遅れるとは思えないし、
それを見越して早めにアパートを出たマナはすでに30分ほどここで待っているのだ。
シンジは途中で偶然会った(振りをした)ケンスケに捕まってなかなか逃げられずにいたのだが、マナはそんなことは知らない。
ちなみにこの日マナは白のワンピースにつばの広い白い帽子姿。
お買い物というよりは完全にデートを意識した格好だった。

「チョットイイデスカー?」

突然、影が差したかとそう声をかけられてマナは驚いて目の前に立った男を見上げた。
黒い長衣に黒い帽子。顔全体を覆っているような髭。
未だに存在することが信じられないような伝道師姿の男がそこにいた。

「アナタハ神ヲ信ジマスカ?」

これまた、漫画でしか聞けないような陳腐なセリフ。
さすがのマナも唖然と目の前の男を見上げることしかできなかった。

「アナタハ神ヲ信ジマスカ〜?」

繰り返されたそのセリフにようやく正気に戻ったマナは首をプルプルと横に振った。

「あたし、宗教には興味ありません」

しかし、その伝道師は執拗だった。

「Oh!ソレハ悲シイコトデス。ワタシト神ニツイテ語リアッテミマセンカ?」

「いやです!あっち行ってください!」

マナがそう叫んだとき、伝道師は後ろから肩を掴まれた。

「ええかげんにせいや、おっさん」

伝道師が振り返ってみるとそこにいたのは黒ジャージの男。

「Oh!ナンデスカ、アナタハ?」

「そいつの友達や」

黒ジャージ――鈴原トウジはそう言って伝道師を睨む。

「嫌がっとるやないか。ええ加減にしてあっち行けや!」

「シカタナイデスネ・・・」

伝道師はとぼとぼと立ち去った。

「大丈夫、マナ?」

トウジの後ろにいたヒカリがマナに尋ねる。

「うん、ありがとう、鈴原君、ヒカリ」

「ところでこんなところで何しとんのや?あ、もしかしてシンジとデートの待ち合わせか?」

トウジの言葉にマナは笑顔で答える。

「えへへ〜。まあね。そんなとこ」

「くぁ〜〜〜。シンジの奴もうらやましいのぉ」

大げさに天を仰いでみせるトウジ。マナはふと状況に気付いてニヤニヤ笑いながらトウジに尋ねる。

「鈴原君もヒカリとデートしてるんじゃないの〜?」

ヒカリはその言葉に真っ赤になって俯いてしまったのだが、トウジは平然と答えた。

「何言うとるんや。イインチョが買いたいモンがあって荷物持ちがほしい、言うから来ただけや」

「本気でそう言ってるの?」

トウジの態度から本気でそう思っていることは明らかだったのだが、マナはそう尋ね返さずにはいられなかった。

「?どういう意味や?」

マナは思わずため息をついた。ヒカリも。


一方トウジに追い払われた伝道師はというと。

「何やってんだよ、マコト?」

マナ達の視界から外れたところで伝道師に話しかけてきたのは青葉だった。
その言葉に伝道師が腕時計のようなものを弄る。次の瞬間、伝道師の姿は消えて日向が現れた。

「うまくいってたと思うんだけどな〜」

首をひねる日向。日向が使用したのは「変身スーツ改」。
ブレスレット状の装置でどのようにでも見た目を変えられる。
もちろん、リツコの発明品だ。

「あそこで鈴原君じゃなくてシンジ君が僕を止めるはずだったんだけどな〜」

つまり、怪しげな外国人に困っているマナをシンジが助けるという構図を描いていたわけだ。
しかし、ケンスケが執拗にシンジにからんだ結果、予定時刻にシンジが現れずかわりに偶然通りかかったトウジがマナを助けたわけだ。

「こちらマティーニ。LMS作戦第一段階、コードネーム「エヴァンジェリスト」失敗。引き続き作戦を続行します」

<こちらスクリュードライバー、了解。更なる努力を期待する>


日向がミサトに連絡を取っているそんな頃、ようやくシンジが待ち合わせ場所に現れた。
走ってきたのか、息が上がっている。

「ごめん、マナ。待たせちゃって。・・・あれ、何でトウジと洞木さんがいるの?」

「何言うとるんや。デートに遅刻しよってからに。お前がちっとも来ーへんから霧島大変やったんやぞ」

シンジの言葉にトウジが不機嫌になる。

「もういいよ、こうして来てくれたんだし」

マナの言葉にトウジの機嫌がさらに悪くなる。

「霧島、そない甘やかしたらあかんで。言うときはビシッと言わな」

「鈴原。その辺でいいでしょ?いつまでもいても邪魔するだけだし、もう行きましょ」

「・・・ほやな。ほな、行こか、イインチョ。じゃな、シンジ。うまくやるんやで」

そう言ってトウジはヒカリと共にその場から立ち去った。

「何で、トウジと洞木さんが一緒にいるの?」

シンジの言葉にマナが面白くないといった感じで答えた。

「洞木さんの買い物の荷物持ちだって」

「ふ〜ん。僕達と同じだね」

シンジのセリフにマナは盛大なため息をついた。







続く


次回予告

ようやく始まったシンジとマナのデート
何とかシンジの気を引こうとするマナ
しかし、ウブで鈍感なシンジにはなかなかマナの気持ちが伝わらない
協力と言う名の妨害を続けようと画策するミサト
リツコの協力を得たレイ
はたして二人のデートはどのような結末を迎えるのか?

7時間目

「初デートで大騒ぎ(後編)」

この次もサービスしちゃうわよん

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後書き

ケンスケ「フッフッフッフ。あ〜はっはっはっは!!」
トウジ「ど、どないしたんや、ケンスケ?」
ケンスケ「目立ってる、目立ってるぞ〜!!これが笑わずにいられるだろうか?」
トウジ「目立っとったのは第2話までだけとちゃうか?」
ケンスケ「この初デート編でも出番はあるはずだ!」
レイ「ヲタクで変態のくせに(ボソッ)」
ケンスケ「なんだと〜!!」
レイ「どんなに目立とうと所詮モテナイ君であることに変わりは無いわ(クスクス)」
ケンスケ「う、うわ〜ん!!(号泣しながら走り去る)」
トウジ「あ、綾波。言い過ぎやで」
レイ「鈍感王(ボソッ)」
トウジ「なんやと?」
レイ「いいかげんにしないと洞木さんに見捨てられるわよ」
トウジ「うっ。イインチョ、ワイはイインチョのこと信じとるで〜!」

どーも、たっち―です。
アスカが登場しないうちにマナとシンジがデートすることになってしまいました。
けど、春合宿で進展したはずのシンジとマナの仲が何故か元に戻ってる(嘆)
なんでこうなっちゃったかな〜。
ところで前回、「世界制服」となってますがこれは誤字です。
正しくは「世界征服」です。
「世界中の人が制服を着たらだれがだれだかわからなくなってしまうじゃないか」
・・・失礼しました。

ご感想、ご意見をお待ちしています。

それでは。

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マナ:日向さん、タイミングわるーい。

アスカ:みんなして、なにわけわかんない作戦実行してんのよっ。(ーー)

マナ:そうよねぇ。伝道師なんて今時ねぇ。

アスカ:伝道師はどうでもいいってーのっ。マナなんかとくっつけるつもりっ!?

マナ:そりゃぁ、誰かさんと違ってわたしはお弁当も作れるしぃ?

アスカ:ヒカリまでマナの味方してぇぇっ!(ーー)

マナ:ま、アスカはわたしとシンジのデートを指を咥えて見てたら?

アスカ:キーーー! ファーストはどーしたのよっ! ファーストはぁっ!

マナ:ここまできたら、もうシンジはわたしのものねっ!(はーと)
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ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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