クロース
サンタ契約

2015年、ドイツにて

―――空は雲に覆われ、ちらほらとあたりには雪が降り始めていた・・・

そんな中を、一人歩く少女―――

アスカ「あーもー!何でこんなに寒い日に・・・というか、クリスマスまで訓練が有るのよ!!」

彼女の名は、惣流・アスカ・ラングレー。世界で数人しかいないチルドレンに選ばれたものだった。

だが、特別に選ばれたからといって、彼女も普通の女の子であることに変わりはなく・・・

クリスマスというこの日に訓練があるのには不満がたまっているようだ。

それでも、アスカが訓練に向かっているのは・・・

アスカ(今日の訓練が終わったら、ぜーったいに、加持さんに何処か連れて行ってもらおーっと!)

と勝手ながら決めているからであった。

―――で、訓練終了後・・・

アスカ「加〜持っさ・・・・・・」

アスカが加持のいるはずの部屋に入ると、そこには誰もいなかった。

そこにタイミングよくネルフの職員がやってきて・・・

「ああ、加持一尉なら、さっき葛城って言う人を連れて、どっかに出かけたよ。何でも、その葛城さんって人、日本かわざわざ来たみたいで・・・」

ご丁寧にもいろいろと説明してくれようとした職員その位置だが、アスカはその言葉を最後まで聞くことなく、その部屋・・・そしてネルフを後にした。

***

アスカ「まぁ・・・加持さん、にも用事はあるわけだし・・・仕方ないわね・・・・・・あ〜あ、また一人か〜・・・」

実はアスカの母親は、すでに死去しており、父親もアスカを捨ててどこぞの女と逃げてしまったのだ。

そして、世界で数人のチルドレン、という肩書きに皆敬遠して、友達すら一人も出来なかった。

それで先ほどのアスカの言葉が出たのであった。

アスカ「でも!何時までも暗くしてたって始まらないわ!そうよ、今年が駄目でもきっと来年・・・」

アスカは、頑張ってプラス思考に変えようとするものの、さすがに今日はきつかったらしく、やや暗い表情のまま家の前までついた。

自分のほかには誰もいない、だだっ広い家・・・のはずだった、昨日までは。

アスカ「ん?あれ何・・・?」

アスカが見つけたのは、屋根に上ろうとしているのか、もぞもぞと動いている人影・・・変に大きな袋を持っているようだ。

アスカ「ま、まさか・・・泥棒!?」

あたりの人は皆出かけているのか、誰もいないため、空き巣がそこを狙ったのかもしれない。

そういう思考が頭に生まれたアスカは、思い切ってその人物に大声を上げた。

アスカ「す〜・・・どろぼーーーーーー!!!」

家のガラスも耐久度が危険域にはいるかと思われるほどの大声を聞いたその人影は、一瞬で体勢を崩し・・・

アスカ「あ・・・落ちた。」

さすがに泥棒といえど、殺してしまっては大変なことになるため、アスカは急いでその現場へと向かった。

そこには大きな人型の穴と、その傍で雪や土を払っている巨大な影。

どうやら、全く平気のようだ。

アスカ「あ、あんた一体何者よ!?」

アスカは二重の意味をこめて大声を張り上げたが、その人物がゆっくりと振り向いて、その顔を見せたとき、自分の顔を恐怖で固まらせた。

ゲンドウ「・・・わざわざ人が頑張って屋根に上っているというのに、驚かせて落とすとは・・・」

アスカ「・・・・・・・・・・」

ゲンドウの顔を見たアスカは、口を開閉させながら・・・

この顔、やくざ!?連れ去られる!?シャブ漬け!?売られる!?

この何処まで連想したかは知らないが、とりあえず次の瞬間には・・・

ゲンドウ「?どうした、私の顔に・・・」

アスカ「ッ!キャーーーーー!!」

音波兵器を発動させて、目の前のゲンドウを気絶させたのであった。

もっとも二秒後・・・

ゲンドウ「む・・・驚くではないか・・・」

とゲンドウが立ち上がったため、このやり取りが五回ほど繰り返されたというのは余談だ。

ゲンドウ「ええい、いいかげんに驚くのをやめんか!」

さすがに何度も気絶させられたゲンドウも怒りが芽生えたのか、そう叱り付けてやっとアスカを黙らせた。

アスカ「わ・・私を売らないで・・・」

・・・どうやら連想は最後まで言ったらしい。

ゲンドウ「?何を言っている?私を誰だと・・・」

アスカ「や、やくざじゃ・・・ないの?」

アスカの言葉に、ゲンドウの額に青筋が浮かんだように見えたのはきっと見間違えでは無いだろう。

だが、そこは大人の余裕で何とか耐え切ったゲンドウは、自分の事を話し始めた。

ゲンドウ「・・・今日のこの日、赤い服を着ているのを見ればわかるであろう。」

アスカ「血、血染め・・・」

ゲンドウ(ピク)「・・・違う、ではこのように大きな袋も見せれば・・・」

アスカ「ひ、人を詰めているんじゃ・・・」

ゲンドウ(ピクピク)「・・・違う・・・ならば教えてやろう・・・私は・・・サンタだ。」

アスカ「サ、サタンの間違いじゃ・・・」

ゲンドウ(ピクピクピク・・・ブチッ!)「・・・不、不愉快だ、帰れ!!」

度重なるアスカの言葉にとうとう切れたゲンドウは、帰宅命令を出したが・・・

アスカ「何言っているのよ!ここが私のいえよ!!住居不法侵入者、及び、とっとと帰るのはあんたの方!!」

あまりの恐怖で超強気になったアスカに思いっきり言い返されてしまった。

ゲンドウ「・・・ぬ・・・そういえばそうか・・・すまなかったな・・・」

アスカ「え?え、ええ・・・わ、分かればいいわ・・・」

思いのほかあっさりとゲンドウが弾いたので、アスカは気が抜けて少し落ち着きを取り戻した。

そして、改めてゲンドウを見てみると、確かにサンタの標準スタイルをしているようだ。

アスカ「・・・あ、あんた本当は一体何者?」

アスカはまだ、一歩引いたような態度でゲンドウに話し掛けた。

ゲンドウ「・・・だから、私はサンタだといっているだろう。」

アスカ「・・・・・・信じられない、サンタって赤い服を着ていて・・・」

ゲンドウ「着ているだろう。」

アスカ「大きな袋を持って・・・」

ゲンドウ「持っているだろう。」

アスカ「髭が生えていて・・・」

ゲンドウ「生えているだろう。」

アスカ「・・・や、優しい感じのおじいさんじゃ・・・」

ゲンドウ「・・・おじいさんではないとして・・・私の顔の何処が優しくない?」

途中までは合っているようだが、最後の二つは当てはまらないとアスカは尋ねたつもりであったが、逆に質問返されてしまった。

アスカ「え・・えと・・・全部?」

ゲンドウ「・・・さて、他のところに向かうか。」

アスカの言葉に満足するはずも無く、ゲンドウはあっさり踵を返してどこかに向かい始めた。

このままほっといても良いだろう・・・だが、アスカは頭に一つの仮定を立てた。

アスカ(もし・・・本当にアスカだったら・・)

その気持ちから出た言葉は・・・

アスカ「あ、あはは、じょ、冗談ですよ、とっても優しそうで、ナイスなおじさんよ。」

これでもか、というくらい棒読みの、心にも無い言葉だった。

にもかかわらず、ゲンドウはその言葉が気に入ったらしく、あっさりと戻ってきた。

ゲンドウ「うむ、そうだろう、そうだろう。」

アスカ(こいつって・・・結構お調子者のバカ?)

顔にニヤリ笑いを浮かべながら、喜ぶゲンドウを見てアスカは更に引きながら、そう思っていた。

アスカ「・・・・・・でも、本当のサンタだとして、何で今年までずっと来なかったのよ。私、誰からも貰っていないのよ?」

ゲンドウ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ、分からなかっただけだ。」

とても長い沈黙の後にゲンドウが言った科白に、アスカは呆れて怒った。

アスカ「あ〜ん〜た〜ね〜!!!何でサンタのくせにそれぐらい分からないのよ!?」

ゲンドウ「・・・・・・ふっ、問題ない。」

激昂したアスカに詰め寄られてもゲンドウは、顔色一つ変えずにお得意の言葉を言い放った。

だが、当然アスカ(というか誰もが)がそんなことで納得するはずも無く・・・

アスカ「ふっ・・・っざけるんじゃ・・・無いわよ!!!!!」

ズドム!!

ゲンドウ「はぅあ!」

見事なボディーブロー一発。

ゲンドウ K.O.

二秒後・・・再起動。

ゲンドウ「なかなかやるではないか。」

アスカ「・・・不死身?」

ゲンドウ「ふっ・・・アンデットではない・・・精霊だ。」

アスカ(悪霊の間違いじゃ・・・)

先ほどから、アスカは結構酷いことを心の中で呟いているのだが、当然そんなことが聞こえるはずも無く、ゲンドウはアスカに質問を始めた。

ゲンドウ「・・・ふむ・・・何故来なかったか・・・確かにそう言ったな?・・・何時頃から、プレゼントがなくなった?」

アスカ「・・・ママがなくなってからよ・・・」

ゲンドウ「・・・・・・父親の事は、聞かないほうが良いようだな・・・」

顔をふせていったアスカの様子を見て、ゲンドウは気を聞かせたのかそう言った。

ゲンドウ「・・・・・・本来なら、違反行為だが・・・君には特別にプレゼントを贈ることにしよう・・・」

アスカ「え!?マジ!?」

ゲンドウ「私は嘘など言わん・・・ではセオリーどおり三つほ・・・いや、十ぐらいかな?」

途中で科白を変えたのは、無論アスカの厳しい目にあったからである。

アスカ「よ〜し!・・・で?なんでも良いわけ?」

ゲンドウ「ああ・・・ちょっと待て!願い事の数を増やすとかは駄目だぞ?」

アスカ「・・・チッ・・・」

舌を鳴らし、不満そうな顔になったことからして、そうしようとしていたらしい。

でも、いつまでもそうしているわけではなく次の願い事を言うことにした。

アスカ「じゃあ!私のママを・・・」

ゲンドウ「それも駄目だ。命に関する願いは、サンタ法で禁止されている・・・というか、私には無理だ。」

アスカ「ケチッ!別に良いじゃない!!」

ゲンドウ「いや・・・けちといわれてもな・・・無理なものは・・・」

ゲンドウがいくらサンタといっても、限界があるのは仕方ない・・・命に関する願いを出来るようにするなら、呪いの類も出来るようになってしまう・・・

だから、形あるものを貰うとしか出来ないのだ。

ゲンドウ「しかし・・・それは駄目でも、他にもいろいろ願いはあるのだぞ?好きな洋服や、建物でも・・・」

アスカ「・・・・・・・・・・」

ゲンドウが必死に、願いの代わりを言いつづけるが、アスカは黙って何も言わない。

ゲンドウ「・・・ならば、恋人、などはどうだ?」

このゲンドウの言葉に、今まで無反応だったアスカの肩が、ピクリとゆれた。

脈あり、と読んだゲンドウは更に話を進める。

ゲンドウ「うむそうか、恋人ならいいわけだな・・・よし、私の息子を貰え。あれは中々、いい奴だ、君もきっと気に入るだろう。」

アスカ「ちょ・・ちょっとちょっと!」

段々暴走し始めたゲンドウを止めようと声を掛けるが、親ばか真っ盛りのゲンドウを止めるには少しばかり、声量が足りなかったらしく・・・

ゲンドウ「よし、今連れてくるから待っているが良い。トウ!!」

ゲンドウはいきなり空に飛び上がり、何処に隠れていたか二匹のトナカイ&そりが飛び出し、ゲンドウを乗せて空に舞い上がった。

アスカ「・・・・・・・・・・今のは夢・・・ンなわけないか・・・」

本当は一瞬そう思ったが、地面に空いた穴を見てすぐに言葉を取り消したのだ・・・それにしても・・・

アスカ「さぶっ・・・うう〜・・・こんなところでいつまでも待っていられないわよ・・・」

そりゃそうだ。あたりには雪が積もっているのだ・・・そりゃもうどっさりと。

いくらそこの気候に慣れていても、寒いもんは寒い。ということでアスカは家の中へと入った。

そして、暗かったので電気をつけた、刹那―――

ピンポーン!

アスカ「・・・まさか、もう来たってーの?」

「あのー、父さんに言われてやってきたんですけど・・・惣流・アスカ・ラングレーさんのお宅って、ここで当たってますよね?」

アスカ「・・・・・・マジだし。」

あまりの早さに、いくらなんでもそれは無いだろうと思ったアスカだったが、どうやらその考えは最初ので当たっていたらしい。

「・・・いないんですか?」

アスカ「はいはいはい!いますよ!」

ガチャ!

アスカがすぐさまドアを開くと、そこにはサンタルックの男の子が一人立っていた。

「ああ、良かった・・・いないかと思った・・・」

本当に安心した、という感じの男の子の表情を見て、アスカはドキッとした。

穢れを知らないような、純粋無垢な男の子の瞳・・・透き通るような、それでいて人を安心させるような微笑・・・そして、そこ等の俳優でも敵わないルックス。

アスカ「・・・あ、あんた名前は・・?」

「あ、はい、申し送れました・・・僕は、碇シンジといいます・・・宜しくお願いします、惣流さん。」

そして、またもやあの微笑み・・・アスカは、言葉を返すことも出来ず、赤面して固まった。

シンジ「・・・・・・あの?」

アスカ「・・・・・・・・・・え?あ、ああ!はいはい!ど・・どうぞ、入って入って!」

普段なら、誰も家に入れたことがないアスカだが、シンジだけは別らしい。

シンジ「お・・お邪魔します・・・」

アスカ「ち、ちょっと!」

シンジ「はい?」

シンジが入ろうとすると、アスカが顔は赤いまま立ちふさがった。シンジは訳が分からないといった感じで、首を傾げている・・・ちなみにその行動すら、絵になりそうだ。

アスカ「さ・・さっきから聞いてたら、て、丁寧な言葉遣いしてるけど・・・べ、別に普通に喋っても・・良い、のよ・・・・・・名、名前も・・ア、アスカ、でいいわよ・・・」

シンジ「はぁ・・・そうですか・・・でも、これが僕の喋り方なので・・・一応努力します。、惣流・・・じゃなかった、アスカさん。」

所で、さっきから話しているのはいいが、ドアが開けっ放しで段々と家の仲間で冷えてきているのにアスカは気づき、シンジをさっさと家の中に押し込むとドアを閉めた。

シンジ「すみません・・・僕が長くドアを開けてたので・・・家の中が・・・」

アスカ「い・・いいのよ、べ、別にそのくらい・・・」

相変わらず、シンジの顔を直視すると赤面するので、アスカは顔をそむけながら言った。

するとシンジは、それを怒りのためと勘違いしたのか・・・

シンジ「すぐに暖めます!」

アスカ「え?」

パチン!

シンジが指を鳴らすと、空中に火が浮かび上がり、どんどんとそれが伸びて暖炉まで達した。

しばしそのままだったので、暖炉までの道は暖まったようだ。

シンジ「はい、ご迷惑をおかけしました。」

アスカ「・・・・・・い・・今の・・・何?」

アスカが金魚よろしく、口を開閉させながらシンジに問う・・・アスカでなくとも、これは誰だって驚くだろう。

シンジ「えっ!?父さんから聞いていないんですか?」

逆に問い返された。

アスカ「き、聞くって何を?」

シンジがやや接近したので、またもやアスカは赤面しながら、そう言った。

シンジ「う〜・・・参ったな〜・・・父さん、てっきり言ったものと思っていたのに・・・仕方有りませんね・・・僕、実は魔法使いなんです。」

アスカ「魔・・・魔法使いー!?」

アスカはつい素っ頓狂な声を出してしまった。

シンジ「はい。一応、向こうの国でもかなり珍しいくらい力が強いらしいんですが・・・・・・やっぱ驚きますよね?・・・怖いですか?僕・・・」

最後の科白のとき、捨てられた子犬のような目で見てくるので、アスカは何も考えず、つい首を横に振った。

はっと気が付くと、シンジはすでに安心しきったように胸をなでおろしているので、もう言葉のキャンセルは効かないような雰囲気だ。

シンジ「良かった・・・アスカさんも、僕のことを怖がるかと思ったけど、違うんだね・・・・・・嬉しいな♪」

それがあまりにも、幸せそうな顔な門だから、アスカはもう先ほどの事など忘れ、その顔に見入った。

――――――そして、無理やりだったがそれから二人の生活が始まることとなった。

それまではアスカが家事も一応していたが、シンジが自分ができる、といったおかげでアスカは仕事が減り、少し自分の時間が出来た。

今まではあまり出来なかった買い物、遊びなどなどいろいろ出来るようになり、そして家に帰ればシンジと暖かいご飯が待っている・・・そんな生活になってきた。

たまにアスカがご飯を作ったりもしたものの、シンジの作るそれには到底敵わず、三食がシンジ作の物に変わったというのは余談である。

ネルフに行くときにも、シンジの作った弁当を持ち、正にアスカの人生は今バラ色という名が相応しい時間を手に入れていた。


***

 

・・・・・・だが、幸運なときを壊すものは、何時でも誰にでも現れるようで・・・

そして、その日はくしくもシンジとの出会いの一周年・・・つまりクリスマスの夜であった。

ウウウウウウウウウウウウウウ!!

アスカ「!!こ・・この警報は・・・まさか!?」

シンジ「??これ一体何の音?」

アスカ「ごめんシンジ!説明は後!早く非難してて!!」

非難するって何処に―――と聞こうとしたシンジだが、アスカはすでに家を飛び出しており、聞く事は叶わなかった。

だが、他の住人たちがぞろぞろと移動をはじめたので、それに付いていけばいいだろうと考え、シンジも家を後にした。

ちなみに、シンジはアスカが認めただけあって、外でも凄い人気であり、こんな非常時にも人がわらわらと寄ってきて、そのままシンジは連れ去られるかのごとく、避難所に運ばれた。

―――ネルフ、ドイツ支部―――

アスカ「どうなっているの!?」

アスカがネルフに到着したときには、敵・・・すなわち使徒が、そのモニターに移されていた。

「とうとう使徒がここドイツにも現れたわ・・・今回の敵はこいつ・・・解析の結果、力の使徒ゼルエル、ということが判明したわ・・・」

アスカ「ふん!力の使徒だかなんだか知らないけれど・・・このあたしと、シンジとの出会いの日の記念日を邪魔しようなんていい度胸してるじゃない!!」

アスカは怒っていた・・・理由は至極簡単・・・先ほどまで、シンジと記念パーティーを開いていたのだ・・・当然二人きりで。

それを邪魔されたのだから、怒るのも無理は無いというものだ。

「さあ、アスカ早く準備を進めなさい!さもないと、記念日も何もなくなるわよ!」

アスカ「了解!!」

そして数十分後・・・使徒がもうすぐ到着というときに、アスカを乗せた紅鎧の巨人・・・エヴァ弐号機が発進した。

アスカ「・・・ぜーーーーーったいに許さないんだから!!」

・・・動機はともあれ、かなり使徒退治に燃えているアスカは、実はこれが初出撃である。

今までは、ドイツに使徒が来なかったから、という理由である。

そして、それでいてこの敵は最悪といえた・・・いくらシンクロ率が高くて、シュミレーションでナンバーワンであったとしても、実践を積まなければ素人より少しましな程度でしかないのだ。

アスカ「こんのぉーーーーーー!!!」

ドガガガガガガガガガ!!

アスカ「ATフィールドは中和しているはずなのに・・・」

現存するあらゆる重火器を打ちまくる弐号機・・・しかし、それも空しいかな、ゼルエルには傷一つつけることすらあたわなかった。

パタパタパタ・・・

銃弾の嵐が途切れたとき、ゼルエルは自分の両端についた白い紙のようなものを下にたらし始めた。

背中に悪寒が走るのを感じた飛鳥は、銃を投げ捨て、紙のような手の二連続攻撃を僅かな差でかわした。

それだけでも、たいしたものであるが、アスカはそれからも数回その攻撃をかわしつづけた・・・これは、持って生まれた天武の才によるところだ。

だがしかし・・・とうとう最後が訪れた――――――

ビシュゥ!ビシュゥ!ザ、ザン!!

アスカ「キャアアーーー!!」

ゼルエルの手により、エヴァ弐号機の両腕はあっさりと切断され、どうと別れを告げた。

そして、エヴァの弱点・・・すなわち、シンクロという諸刃の剣のシステムにより、アスカにもその苦痛の数十パーセントが回ってきた。

アスカ「あ・・ああ・・・・・・」

<アスカ!下がって!!>

最早無理な命令である・・・ゼルエルは、弐号機の目前まで迫っているのだ。

アスカ(シンジ!!)

ゼルエルの手が持ち上げられたとき、アスカは最愛の者の名を呼び・・・そしてそれは奇跡をもたらした。

シンジ「アスカぁ!!」

アスカ「シンジ!!」

なんと、弐号機の前にシンジが突如として現れたのだ。

ゼルエルは、それに気がついたのかぴたっと動きを止め、シンジは弐号機の状況を見て、形相を変えた。

シンジ「・・・くも・・・よくもアスカを!!おまえだけは許さない!!」

ゼルエルはまた攻撃を再開した・・・おそらく、こんなちっぽけな生き物が、自分の脅威になるとは考えなかったのだろう・・・が、それが命取りとなった。

愛するものを傷付けられた者の怒り、そしてシンジの力を推して知るべきだった。

シンジ「うわあああああ!!」

シンジの体からは、煌きが迸り、ゼルエルはその光に包まれて姿を・・・存在を消されることとなった。

ゼルエルが消えると、シンジの体から出ていた煌きもなくなり、そしてシンジ自身も支える力を失ったかのようにふらふらと落下していった。

アスカ「シ・・シンジ!?」

それまで状況をただただ見ていたアスカだったが、さすがにシンジが落ちていくのを黙ってみることはせず、何とか動かせる足を使い、シンジを軟着陸させた。

すぐさま、自分もエントリープラグをイジェクトして外に出る。通信で何かいっているようだが、この際かまってはいられない。

シンジのいる場所まで急いで掛けより、優しく抱き起こす。

アスカ「シ・・シンジ、一体どうしたのよ・・・」

アスカが軽く揺らしながら問い掛けると、シンジはゆっくり瞼を開いた・・・そこには、かつての生気は残っていなかった。

シンジ「・・・アスカ・・・良かった・・・大丈夫だったんだ・・ね・・・」

アスカ「うん・・うん・・・私は大丈夫・・・シ、シンジの方が・・・」

シンジ「う・・ん・・・・・・ごめん・・ね・・・ちょっと・・・力使いすぎたみたい・・・」

喋るだけでも辛そうなのに、懸命にシンジは笑みを見せようとする・・・限界以上に力を行使した体は、もうぼろぼろだったのだ。

アスカ「シンジィ・・・死んじゃ、駄目・・・絶対に許さないわよ・・・」

アスカも涙声になりながら訴える・・・

シンジ「・・・・・・アスカ・・・・・・大好きだよ・・・」

それは今までで最高の笑みだった・・・・・・そして、そのままシンジは事切れた・・・

アスカ「シンジ?嘘・・嘘よ!!いや!こんなのってない!!そうよ!サンタ!!あの髭のおじさん!!私の願い、これまでのも、これからのも全て!!何でもあげるから!!シンジを!シンジを!!!」

髪を振り乱しながら、必死に・・・必死にアスカは天に向かって叫びつづけた・・・

アスカ「私には・・・シンジが必要なの!!だから・・・お願い!!!」

カッ!!

アスカの必死の願いに答えたのか、天から一筋の光が舞い降りた――――――

―――数年後―――

アスカ「・・・フゥ・・・あのときの事がまるで昨日みたいね・・・」

シンジ「あの時って?」

アスカ「決まってるでしょ!シンジが生き返った、あ・の・と・き・よ!」

わざわざ一文字づつ区切り、アスカはシンジに近寄りながらそう言った・・・

そう・・・シンジは、あの後奇跡的によみがえり、現在は二人とも夫婦として幸せに暮らしている。

ただ、そのときシンジを蘇らせたのが、ゲンドウだったのかは定かではない・・・

アスカ「・・・きっと、可哀想なあたしに、天からもクリスマスプレゼントをくれたのよね?」

シンジ「うん・・・そうだね・・・」

二人が寄り添いながら、天を見上げると白い物が降り出した・・・

シ〜ンジ!

ン?何?

メリークリスマス!!

うん、メリークリスマス!!

サンタ契約 完

***

イリス、メア、天竜「「「Merry Chrismas!タームさん!!」」」

天竜「はい、やや遅れましたが、何とかクリスマス用の小説が出来上がりました。」

メア「今回は、三日もあったというのに・・・」

イリス「手伝いであそこまで時間を失うとはね〜。これは計算違い!」

天竜「まあ、家が綺麗にならないと、何も出来ませんし・・・」

メア「だな・・・まあいいさ。」

イリス「じゃ〜次も、誰かが見てくれることを期待してまーす!!」

メア「できればこの作者にも感想を書いてやってくれ。」

天竜「それでは皆さん・・・」

イリス、メア、天竜「「「また今度!」」」


アスカ:いきなり屋根に人がいて、びっくりしたのなんの。(@@)

マナ:そりゃぁ、サンタさんだもん。屋根から入ろうとするわよ。

アスカ:違うのよっ! 人相が悪いのっ!

マナ:そんなこと言っちゃ失礼よ?

アスカ:だから違うんだってばっ! ヤクザみたいな人だったのよ。(@@)

マナ:まぁ・・・そうも見えるけどねぇ。あの顔は・・・。(ーー;

アスカ:ほらっ! 証拠写真取ったのよっ!(写真を見せる)

マナ:屋根掃除してるわたしの写真じゃないのーーーーーーーーーーっ!!!(ーー#

アスカ:恐いでしょう??(@@)

マナ:屋根から突き落としてやるっ!(ーー#
作者"天竜"様へのメール/小説の感想はこちら。
sawada@m1.cosmos.ne.jp

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