『君と生きる未来のために〜前編〜』





 「最低だ、オレって・・・」

 少年は病院のベットのそばで静かに嘆いた、
 目の前には自らが汚してしまった少女がいる、
          











    
「さて、始めるとするか。」
  
  と戦自の兵士
 茂みから次々と姿を現す兵士達。

 山間部より爆音を響かせながら現れるVTOL










 戦自によるネルフ本部の直接占拠     少年の決断の時は迫る。
          












   
  ネルフの廊下を一人で歩くシンジ、
 なにかぶつぶつとつぶやいている。そのうつろな表情。

 僕は、最低だ、アスカを傷つけるだけではなく、汚してしまった。・・・ミサトさんも綾波も、
 みんな僕から離れていってしまうのに・・・僕はアスカまで失ってしまった。    

 僕は・・・。アスカの傍に居る権利も資格もない・・・、だって君を傷つけたから。
 君を・・・汚してしまったから・・・。

 もう誰も僕を助けてはくれない、いや、僕には助けられる権利がない・・・。

  もういやだ・・・疲れた・・・

 ここに来て、家族と呼んでくれた人もいた、けどそれは偽りのものだった、
    
  ・・・そうでしょう?ミサトさん?
 
 僕にはもう誰もいない、友達も、家族も、・・・アスカも・・・。

 もう・・・疲れた。


 力なく階段のしたの空間に座り込むシンジ。
          









 ネルフ本部前のゲート。 
 警備しているネルフ職員の男。その後ろに忍び寄る黒い影・・・。
 
 「!?」

 いきなり口を手で押さえられる男。

 ドスッ!! 

 「!!!!」 
 
 背中をナイフで刺される。叫びようにも口をふさがれている。 
 流れる血・・・赤いネルフのマークを埋めていく。そして力なく崩れる男、
 そしていっせいに開くゲート、侵入してくる戦自の兵士達。
           








 開くアスカの病室のドア、入ってくる数人のネルフ職員達 
 エヴァのパイロットであるアスカの安全を考え、たとえシンクロしなくてもエヴァに
 搭乗させておくためだ。 
 アスカをプラグスーツに着せ替える職員達、それに対してアスカの反応はない、
 アスカを連れてケイジに向かう職員達、エヴァ弐号機のエントリープラグにアスカを座らせる、
 やはり反応のないアスカ。
 挿入されるエントリープラグ、と同時に拘束具が解除される弐号機。
 地底湖の中に射出される弐号機。 
          










 再び座っているシンジ、既に彼の周辺は戦自に占拠されている状態である、
 
 タッタッタッタッタ
 
 何者かが走ってくる足音。
 現れたのは三人の戦自の兵士。彼らの目的は・・・
 
 「サード発見、これより排除する。」
 
 無線に話しかける戦自の兵士
 ネルフ占拠の時に最大の障壁になるエヴァ、そのパイロットの消去、
 
 「わるく思うなよ、坊主。」

 シンジの頭に銃口が押し付けられる。
 反応しないシンジ 
 
 


 次の瞬間、僕は死ぬのか・・・? 
 
 


 引き金を引こうとする戦自の兵士
                    
               




       アスカ・・・

 


 ドン!!

 
「ぐぁ!!」
 
 その瞬間一人の兵士の頭がはじけ飛んだ、
                 
               !?なんだ?
 
 通路の横から疾風のごとく走りこんでくるミサト。その手には銃。
 そのままの状態で残った兵士に狙いを定める。
 
  ドン!!ドン!!ドン!!
  
 「ぐっ!!!」
 
 更にもう一人倒れる兵士、そこへ駆け込んでくるミサト。
 最後の一人の懐へ飛び込む、すかさず水月めがけての蹴り。  
 

 ドガァ!!
 
 「っぐはぁ!!」

 ダン!!

 壁に叩きつけられる兵士
 
 グリッ!

 「うぅ!?」

 間髪いれず兵士の顎に銃を突きつけるミサト、そして・・・

 「悪く思わないでね。」

 再び響く銃声と崩れ落ちる兵士。
 
 「ハァ、ハァ・・・。」
 
 肩で息をしているミサト。
 未だにうつむいたまま座っているシンジ。
 
 「さぁ、行くわよ。」

 「初号機へ。」

          








  
 地底湖のそこに横たわっている弐号機、
 エントリープラグ内のアスカ、意識はあるのだろうが目の焦点があっていない、暗いプラグの中。
 
 またこれに乗ってる・・・私はどうしてここにいるの・・・?

 動くはずないのに・・・
 
 誰も見てくれるはずないのに・・・

 アスカの脳裏に幼いころの記憶が蘇る。
          


 草原を走る幼いアスカ

 『ママ!!ママ!!私選ばれたの!人類を守るエリートパイロットなのよ!世界一よっ!!』
 
 玄関を開けて家に走り込むアスカ 

 『だから、見て。私を見て、ねえママ!』

 階段を駆け上がり、母の部屋を開けるアスカ。

 見開くアスカの瞳、母親の首をつった姿、

 『・・・ママ・・?』 
          


          
          
          
         
 
  
  ドガァ!!!

 そのとき弐号機の頭部の近くで爆雷が炸裂した

 「っ!!!??」
  
 わずかに反応するアスカ、頭部に激痛が走る
 
   ゴン・・・ドガァ!!!  ドガァ!!!
 
 つぎつぎと投下される爆雷・・・


 「!!!っ!!!???」
 
 痛みに怯え、恐怖に顔を歪めるアスカ。

「死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ、死ぬのはイヤ・・・・」

 私はママのように死にたくない!! 

 母親が首をつった姿が脳裏に浮かぶ。その足元に落ちている首のとれた人形 

 『いっしょに死んで頂戴・・・』 

 イヤ!!私はママの人形じゃない!!!

 『死ぬのはイヤァァァァァァァ!!!!!』  
 
 だれか私を助けて、だれか私を見て・・・加持さん・・・私を見てよぉ・・・

 頭に浮かぶ加持のイメージ

 『アスカはまだ子供だからな』
                     
 私は子供じゃない!!だから私を見て!!

 『いっしょに死んで頂戴・・・』

 再び母の死のイメージ。 

 イヤ!!!私はママの人形じゃない!!!

 加持さん・・・助けてよぉ・・・

 もう一度加持の方を見るアスカ。

 しかし、彼女の見たものは、 

 加持のうしろにシンジに隠れるようにして立っているシンジ。
 
 !? 

 シンジの屈託のない笑顔

 なんであんたがそこにいるの・・・? 

 その瞬間弐号機の頭部に爆雷が直撃する
 身を裂くような激痛!!

 「っあっはぁ!!」

 頭を抑えるアスカ 

 なんで・・・?シンジがいるのよ?

 私のことを見てくれない!!私のことを助けてくれない!!抱きしめてもくれないくせに!!!!

 










              ・・・え・・・? 

 










 ・・・なにを言ってるの?私・・・?

 これが私の望み?助けて欲しい、見て欲しい、抱きしめて欲しい・・・?

 そっか、・・・私は・・・
 
 シンジ・・・

 もう一度・・・

 アンタに会って・・・

 私は・・・
 
 言うべきことが・・・

 伝えるべきことがあったのかな・・・

 でも・・・ 

 気付くのが遅すぎるよね・・・

 私の為にお弁当作ってくれたっけ・・・

 お風呂もいれてくれたよね・・・

 ・・・どうして気付けなかったのかなぁ・・・

 余裕がなかったのかなぁ・・・・

 私、甘えすぎてたかなぁ・・・  

 今更になって気づくのかなぁ・・・

 でも、もう手遅れ・・・かな・・・?

 
       


            イヤ!!!





 私は・・・

 言い残したことが・・・

 やり残したことがあるんだから・・・

 
 目を覚ますアスカ、 

 「私は!!」

 弐号機の目が開く。 

 「言い残したことや!!!」
 
 グググっと少しずつ力がみなぎる弐号機。

 「やり残したことがたくさんあるのよ!!!」
 

 その瞬間暗いエントリープラグの中に光が溢れる

 「え?・・・」 
 
  まさか・・・
 
 「ママ・・・?」 

 広がる母のイメージ・・・アスカを包み込む・・・。

 「ママ!!」  
 
 目が輝く弐号機、その刹那、出現する光の十字架
           





           
            
           
          
 「やったか!?」
 
 戦自の兵士が興奮気味に叫ぶ、だが彼の願いとは裏腹に現れたのは・・・


 湖面に浮かぶ巡洋艦を持ち上げて現れる弐号機 
 そのまま巡洋艦を湖岸の戦車部隊に向けて投げつける弐号機
 湖岸に突っ込む巡洋艦、爆発炎上する
 その炎に焼かれる戦車部隊、
 炎をバックに悠然と立つ弐号機、鬼神のごときその姿



 そのエントリープラグ内のアスカ、
 
 「ママ、ここにいたのね。」

 「そして、今、私を守ってくれてる。」
 
 「私、やっぱり意地を張りすぎていて、全然気がつかなかったよ。」  
  


 「ママは私のこといつも見ていてくれたのね。」  
      


 弐号機の全面に展開する戦自の部隊
 それを見たアスカ、 
            



 「・・・ママ、私を導いてね・・・」 
           
















           
 弐号機の復活により戦況は完全にヒックリかえった、
 何重もの特殊装甲やATフィールドの前に通常兵器では傷一つ与えることができない。
 
 「うりゃああああああ!!!!」

 一閃!! 右上段足刀!! 
 
 真っ二つになり墜落し炎上するVTOL

 その炎をバックに唸る弐号機		 
 
   




   そして・・・暗闇に浮かぶ黒い板状の物体、ゼーレ・・・
 
          「やはり、毒は毒をもって制するべきだな。」 




    そして、エヴァシリーズの投入が決定された          
          
          













          
          
            
 天井が蒸発したジオフロント、その青空を旋回しながら舞うエヴァシリーズ。

「エヴァシリーズ・・・?完成していたの?」
 アスカはつぶやいた、まさか既に完成しているとは彼女は思ってみなかった
 

『いい?アスカ?エヴァシリーズはすべて殲滅するのよ、生き残る手段はそれしかないわ。今シンジ君
 もそっちに上げるわ、がんばって。』
 ミサトからの無線    
 
 シンジ・・・?・・・私はアンタに言うことがあるんだから・・・。
   
 ゆっくり深呼吸するアスカ、

「さぁ、アスカ、いくわよ!!」

 アスカ自分にそういい聞かせると弐号機で疾風のごとくエヴァシリーズに襲い掛かった、            
            
            
            
            
            



      
 ミサトの車、その車内、シンジは下を向いてうずくまっていた、
 
「シンジ君、しっかりしなさい、これから戦えるのはエヴァに乗れるあなただけなのよ、
 今アスカが一人で戦っているわ、それを助けにいけるのはあなただけなのよ。」

 黙っているシンジ、ゆっくりと口を開く。

「・・・だめですよ、僕は、だめなんですよ。アスカに酷いことしたんです、傷つけてしまった、
  汚してしまった・・・。」
  
「僕にアスカを助けに行く権利なんかないんです。」

「・・・・・・・・・・・。」
 
 それを黙ってミサトは聞いていた。 そして

「シンジ君、もしそうであってもあなたは行くべきよ。」
 
「・・・イヤですよ・・・。」

 そして停車する車
 シンジを引きずりながら車から降りるミサト、

 「ここね、」
 
 そこにはR20の文字、シンジを初号機へと導く世界の希望を背負ったエレベーター。
 そして・・・それを見ている戦自の兵士達。

 ガン!!ガン!!  

 途端に響く銃声、シンジをかばい急いでゲートに走り出すミサト。

 ドスッ!!

 「!!っう!!!!!」 
 
 わき腹に走る激痛

 ・・・撃たれた・・・

 シンジをかばいながらゲートに滑り込むミサト、同時にしまりロックされるゲート
             
             
             
             
                                 
 「・・・逃がしたか・・・」
 
 「目標は射殺できず、追跡の是非を問う。」
 
 戦自の兵士、無線で指示を仰ぐ。

 『追跡不要、そこは爆破予定地だ』
             
             
             
             
                 
 ゲート内、壁によりかかっているミサト、そのわき腹から大量の出血。


 「これで、・・少しは時間が稼げるわね・・・」
  
 「・・・・・・・・。」

 無言のシンジ。
 エレベーターのドアを開けるミサト。
 
 「けど、シンジ君、ここから先はあなた一人だけよ、・・・」
             















  地上、量産機の大剣を奪い,切りつける弐号機、同じく応戦する量産機、

 「うおおおおおおおおおおおお!!!」 
 
 ガッキーン!!! 

 飛び散る火花、その大剣のあまりの質量に姿勢を崩す二体、

 「っく!!!しつこいわねぇ!!!」

 地面を強く踏み込みいち早く体勢を立て直す弐号機、そのあまりの衝撃に陥没する地面。
 
 「だりゃぁぁぁ!!!!!」  

  ブンッ!!!

 弐号機が再度振った大剣、確実に量産機の肩口を捉える。  飛び散る鮮血。崩れる量産機。

 そのとき、弐号機の活動限界まで二分をきっていた。

              
               
              
              
              









「僕だけって・・・どういうことですか・・・?」

 R20エレベーター、その前でシンジが言う。

「このまま、このエレベーターに乗ってケイジに向かえっていうんですか?
 ・・・いやですよ・・・僕に・・・僕に・・・この先エヴァに乗って、
 また戦えっていうんですか?」

 「・・・シンジ君・・・」
 それを静かに聞くミサト。

「駄目ですよ、・・・アスカに酷いことしたんだ・・・僕はもう何もしたくない。
 だって・・・・、僕はアスカを助ける権利なんかないんだ・・・
 ミサトさん・・・僕がどれだけ辛いのかわかってるんですか!?」
 
「・・・・・・・・・・・。」

「もう僕を助けてくれる人はいないんだ!!ミサトさんも他人じゃないか!!
 僕にはもう帰る所もないんだ!!
 どうしてまたイヤな目にあわなきゃいけないんですか!!・・・!?」
 
 感情が抑えられなくなるシンジ、 

 「シンジ君!!!」
 
 シンジを壁に押し付けるミサト。右手を振り上げる。
 
 殴られる? 
 
 そう思ったシンジは目をつぶって顔を背ける。だが予想した衝撃は来なかった。

 ・・・暖かい・・・

 シンジが感じたのは痛みではなく暖かさ、ミサトの右手が伝える家族のぬくもり。
 ミサトはゆっくり右手をシンジの左頬に当てた。

 「・・・ごめんね、シンジ君、あなたをこんなことに巻き込んで・・・」

 シンジを抱きしめるミサト。黙って身を任せるシンジ。

 「あなたはまだ14歳、子供と呼ぶにはあまりに大きく、大人と呼ぶにはあまりに幼い、
 けど私はそんなあなたを利用してしまった、ごめんなさい、これはいくら口で謝っても
 償えるものではないわ、 でもあなたはここで自分で選択しなければならないわ。
 黙って死ぬか、エヴァに乗って戦うか・・・」

 「・・・エヴァに乗って世界を救うか・・・このまま死ぬか・・・ですか?」

「・・・違うわ、シンジ君、逃げちゃ駄目よ・・・あなたがエヴァに乗る理由は他にあるんじゃ
 ないの? 世界の為?皆の為?他人の為?私の為?」

「・・・・・・・・・・・。」

「だめよ・・・自分から逃げては・・・他人に逃げては駄目よ。自分の未来の為に生きるんじゃ
 ないの?」  


「・・・自分の未来・・・ですか?」
 
「そうよ、未来よ、あなたが望む世界。 それはいったいなに・・・?」

「・・・考えたこと、ないです・・・。」
 
 僕の望む未来・・・?
 
「そう、ごめんね。あなたにはそんなことを考える時間もなかったわね。
 いきなり呼び出されて世界を救えって言われて・・・」

「・・・・・・・。」

「でも、もういいの、あなたは良くがんばったわ。もう他人のために何かをする必要はないわ。
 ・・・だから自分のために生きなさい。自分の為に戦いなさい。」

「自分のためにですか?」

「そう、でも自分のために生きていくということはとても辛いことかもしれないわ、
 もう、他人に逃げることはできない、すべて自分で解決しなきゃいけないわ。
 自分の責任でね・・・。」

「ごめんね、あなたを助けてあげられなくて、家族失格ね、私・・・。」

 だまって聞いているシンジ・・・


 僕に未来を見せるためにミサトさんはここに連れてきてくれたのか・・・?

 僕の為に・・・    


 そしてゆっくりと口を開く。

「ちがうんです、ミサトさん、僕は甘えていました、逃げていました・・・
 ミサトさんに、僕は・・・。」 

「・・・・・・。」

「また僕は・・・大変な過ちを犯すところだった・・・。」

 泣きながらミサトを抱きしめるシンジ。ミサトも強くシンジを抱き返す。






             そして、少年は決断する。    






 「・・・ミサトさん、僕は・・・行きます。」
           
 
            
           
           
            
  
 開くエレベーターのドア、それに乗り込むシンジ。

「ミサトさん。僕の未来は・・・きっとアスカと一緒に生きることだと思うんです。
 でも、もう僕は嫌われてるでしょうね・・・でも行かなきゃ、アスカを助けなきゃ。」
 
「・・・そうよ・・・シンジ君、人生はね、後悔の連続なのよ、後悔のない人生なんて
 ありえないわ、でも人はそれを悔い改めることで、生きていくことができるのよ。」

「はい。」
 
「行って、アスカを助けてきなさい・・・たとえ嫌われていようともね・・・。
 逃げずに立ち向かいなさい・・・自分に、・・・アスカに・・・。」

「はい。もう僕は逃げません、・・・あの・・ミサトさん?」

「・・・なに?」

「僕達って家族ですよね・・・。」

「・・・もちろんよ、シンジ君・・・」

「・・・ありがとうございます、ミサトさん、僕は、僕の帰るべき場所はちゃんとあったんですね。」

「・・・いってらっしゃい。」

「いってきます。」

 そして閉まるドア。  と同時に崩れ落ちるミサト。

 ・・・ごめんね・・・シンジ君、私・・・あなたが帰って来るのを待っていたかったけど、
 『お帰りなさい』って言ってあげたかったけど・・・ 
 
 自分の怪我を見つめる。 かなりの出血、もう意識も朦朧としてきた・・・。

 ・・・もう駄目かなぁ・・・
  
 うつろな目で最後の言葉をつぶやく

 


 「加持君・・・あの子達、上手くやっていけるよね・・・。」




 次の瞬間光に包まれるエレベータールーム・・・  
            
             
            
            









 ズズーン!!!

            
 いきなりガクンと揺れるエレベーター
  
 「!?」
 
 エレベーター内のシンジ、いきなりの振動、

 
 爆発?・・・エレベーターホール?

 この振動がなにを意味するのかを悟るシンジ。 

 ミサトさん・・・最後に僕等家族でいられましたね・・・
 
 涙があふれそうになる ぎゅっと唇を噛み締める
  
 ここでは泣けない!! ここで止まるわけにはいかない!!
 
 自分の頬に手を当てるシンジ。

 思い出される家族のぬくもり。 

 


 「ミサトさん・・・ありがとう・・・」 
 


 

 ケイジに到着するエレベーター、急いで初号機に向かうシンジ。

 僕の、僕の未来は・・・僕の望む世界は・・・

 『自分で考え、自分で決めろ。自分が今なにをすべきなのか。』

 シンジに加持の言葉が思い出される。

 加持さん、僕は決めました、自分が何をすべきなのか、自分がなにを望むのか・・・
 僕にはわかりました。僕は、僕は・・・

 初号機の目の前にたつシンジ、だが初号機は拘束具ごと特殊ベークライトで固定されていた。
 
 「!!、ちきしょう!!」

 愕然とするシンジ、これでは初号機に乗ることはできない・・・だが彼はあきらめなかった。

 「気付いたんだ!!解ったんだ!!!僕は決めたんだ!!!!」

 素手で特殊ベークライトを殴りつけるシンジ。その手に血が滲む。

 「もう諦めない!!もう逃げないって決めたんだ!!」

 拳をグッと握り締める

 「僕は・・・!!!」

 特殊ベークライトを睨みつける

 
 「アスカを助けるんだ!!」
 
 カッと光る初号機の目、その手に力がみなぎる。

 「たとえ嫌われていたってかまわない!僕にはアスカが必要なんだ!僕はもう逃げない!!」

 カタカタと震えだすケイジ。  

 「僕はアスカと一緒に生きたい!!僕の未来をアスカと一緒に生きるんだ!!」

        
 

                      



                



                      ケイジの響く少年の誓い。

   







 ガタガタガタ・・・

 ゆれるケイジ、

 「!?なんだ?」

 グバッ!!!!
 
 粉々にくだける特殊ベークライト。そして伸びる初号機の腕。
 
 「!?・・・母さん・・・」

  そして、初号機が起動する、少年の未来を賭けて。
           
           
           
           
           






  
 地上では弐号機が活動限界を迎えようとしていた、残る量産機はあと2体

 「これで、ラストォォォォ!!!!!!」

 弐号機の放った渾身の抜き手が重なった二体の一体を貫き、もう一体のコアを鷲掴みにした

 「うぬぬぅぅぅぅぅ!!!!」

 更に力を込めるアスカ、時間がない。もうすぐ弐号機は動けなくなってしまう。
 その前にコイツのコアをつぶしてやる!! 渾身の力を込めるアスカ。苦しむ量産機。
 
 
 勝てる!!
  
 
 そう思ったその時、どこからか量産機が手にしていたあの大剣が弐号機めがけて飛んできた。


 「!?」

 ガッキーン!!

 とっさにATフィールドを展開して防御するアスカ。  しかし

 ググッ!!

 大剣が変形する。  あれは・・・

 


 「ロンギヌスの槍?」

 


アスカがそう嘆いたのと弐号機のATフィールドが破られるのはほぼ同時だった 
           
 グサァッ!!

 「きゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

 弐号機の左肩に突き刺さる槍。痛みに悲鳴をあげるアスカ。

 「うううぅぅ、・・・こぉのぉ!!」

 痛みを抑えて反撃しようとするアスカ、

 「!?」
 
 だが動かない弐号機。内部電源の終了。活動限界を迎えたのだ。


 ズズーン!!

 左肩に槍がささったまま地面に倒れる弐号機。
 
 エントリープラグ内のアスカ、必死にレバーを動かす。


 「ママ!?ママ!?お願い!!動いてよ!!ママ!!」

 
 だが弐号機は動かない。
 
「もう少しなのに!!・・・もう私を見てくれないの!?私を守ってくれないの!?
 私を導いてよ!!」 

 沈黙したままの弐号機。
 
「どうして・・・?」 



 そしてアスカを更なる絶望が支配する、






   「・・・ウソ・・・。」

 




 ついさっき倒したはずのエヴァシリーズの復活。
 モニターは死んでいたが気配でわかる、奴らは復活した、そして・・・




「・・・とどめを刺す気ね・・・」




 真っ暗なプラグの中、左肩がズキズキ痛む・・・。 

「・・・ママ・・・。せっかくイケルと思ったのに・・・。」

「シンジ・・・会えそうにないよぉ・・・言いたいこと、たくさんあるのにぃ・・・」

 涙目になるアスカ、

 

 外では量産機が羽を生やして飛びたとうとしていた、弐号機にトドメを刺すために・・・
 


「シンジ・・・マグマに沈む私の腕をつかんでくれたっけ・・・。」
 
 マグマの中、初号機の溶けた顔が目に浮かぶ。
  
「・・・シンジ・・・」

「もう一度会って、アンタにあやまりたかったよ・・・シンジ・・・。」

「・・・・・・・・・。」 









 このまま、なにもできないで・・・




 アンタに言いたいことも言えないまま・・・?


          

 ・・・シンジ・・・
 
 



     ・・・助けて・・・



 



 目を閉じて祈るように丸くなってしまうアスカ、 




 



 ガシッ!!

 






 その瞬間、弐号機が何かに抱き上げられた。

 
 膝を抱えたままのアスカ、目を薄く開ける。
 

  









 なに?・・・
 
 






 彼女は感じた。

 



 あの時沈む自分を引き上げてくれた







 あの








 暖かさを。






 





 優しさを。
 






  




「・・・シンジ!?シンジなのね!?」

 


 目を開くアスカ。




 たとえモニターが死んでいても、ハッキリとわかる、私にはわかる
 
 
 


 シンジが私を守ってくれてる、

 




 シンジが私を抱きしめてくれてる、

 





 自然と涙があふれるアスカ。

 



 


 「シンジ、また私のこと助けてくれるのね・・・。」




                    前編終了



           〜〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜〜

 ここまでお付き合いいただきありがとうございます。投稿初挑戦のテツです。
 展開が非常に速く、また雑に感じられたかもしれません。
 できればアドバイスなり、感想なりを頂けると嬉しいです。

 ここのシンジは結構強いです、落ち込んでいてもすぐに復活します。
 アスカも少し性格が丸くなっているかもしれません。
 また、レイやゲンドウが出てきませんが後編では是非登場させようと考えています。
 (ゲンドウは微妙かもしれませんが)  


 こんなへっぽこな文章ですがどうかよろしくお願いします。がんばってはみたんですが・・・
 これからどんどん腕を磨いていきたいと考えています。
 

 あと、多少乱暴にLASにしようとしたことに嫌悪感をいだく方もいらっしゃるかもしれません。
 これは自分の文章推敲能力の低さと、自分がLAS人であることが関係していると思われます。
 推敲能力の低さはどんどん良くしていこうと思いますが、LASばかりはどうにも・・・(^^;
 なんでそこは多少大目に見てくださいね(^^;


マナ:テツさん、投稿ありがとーっ!\(^O^)/

アスカ:いきなり、アタシがピンチじゃないのよっ!(ーー)

マナ:葛城さんも、死んじゃったみたいだし、どうしよーっ!(;;)

アスカ:ミサトは、まぁ・・・シンジにキスしなかったから、許してやるわっ!(^^/

マナ:そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!

アスカ:大丈夫よ! アタシは勝つっ!

マナ:その自信は、いったい何処からくるわけ?

アスカ:だって、シンジが守ってくれるんだもーーーーんっ!(はーと)

マナ:本気で心配してたのに・・・なんだかムカムカしてきたわ。(ーー#
作者"テツ"様へのメール/小説の感想はこちら。
skyline@bc9.ne.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system