カップルゲーム (vol.1)

written by tomas.

 

その日、ミサトから今日はネルフに泊まり込みの仕事になるからという電話があったので、アスカと

シンジは二人きりで夕食を済ませていた。その後、シンジは夕食の後片付けをはじめ、アスカはと

いうとお風呂から上がって、今はリビングのソファーにもたれ、カップのアイスクリームを食べながら

面白くもないドラマをボーっと眺めている。

一方ようやく洗い物を済ませたシンジはリビングにやってくると、こちらもテレビに映し出されるメロド

ラマには一切興味がないといった様子で近くにあった雑誌を手に取り、パラパラとページをめくって

みたりしている。

 

どれだけの時間をそうやって過ごしていただろうか。暇で仕方がなかったアスカはしびれを切らして

その苛立ちをそのまま声にした。

「何で日本のテレビ番組ってこうもつまらないものばっかなの!? ちょっと! バカシンジ!! ア

ンタもさぁ、このアタシがこんなに面白くなさそうにして、無為な時間を過ごそうとしてるってのに何に

も思わないわけ!!? 」

 

また始まったか、そう思ったが今回はアスカの言い方があんまりだったので、シンジは読んでいた雑

誌から目を離すことなく、皮肉っぽく言ってみた。

「はぁ? 何? それじゃ僕は常にアスカが暇にしてないかどうか様子を伺いつつ、ご機嫌でも取らな

くちゃいけないの?」

 

「そうよ!! そんなのあったりまえじゃない!! アンタねぇ、このアタシがひとつ屋根の下で一緒に

暮らしてあげてるってだけで、本当なら涙流して喜ぶべき状況なのに、よくもまぁそんな憎まれ口がた

たけたものね!ってちょっと! バカシンジ!! こっち向きなさいよ!!」

アスカはシンジが自分の方を見向きもしないで雑誌を読みつづけていることに腹を立てて、より一層

大きな声を張り上げた。

 

シンジは読んでいた雑誌を勢いよく閉じると、アスカのほうに向き直りながら言った。

「もうっ!! 分かったから大声出さないでよ! それで僕は一体、アスカ様のために何をすればよ

ろしいのですか!?」

「アンタばかぁ!? それを考えるのがアンタの役目でしょうが!! もうっ、ホンットに役に立たない

わね! 、、、いいわ、しょうがないからアタシも一緒に考えてあげるわ! 感謝しなさいよね!」

 

シンジは心の中でアスカの抗弁にあきれかえっていたが、それを口に出すとまたアスカがわめきた

てるのは目に見えていたのでグッとこらえていた。彼もユニゾン以来の共同生活のなかでアスカと

いう女の子の扱い方についてだんだんコツをつかみ始めていた。それとともに日頃見せるちょっと

傲慢なところや自己中心的なところというのも実は人にかまってもらいたくて、また自分の存在を他人

に認めてもらいたいという気持ちの裏返しであって、実は寂しがり屋の普通の女の子なんだという

ことが最近ようやく分かり始めてきた。

 

そう、ちょっと落ちついて考えてみれば、このように冷静にアスカのことについても考えてあげること

ができたのだが、さっきの様にいきなりバカシンジ呼ばわりされるといかんせんまだ14歳の子供に

過ぎない彼もついカッとなってしまって口論になってしまうこともたびたびあった。

 

ぼんやりとそんなことに思いをめぐらしていると、突然アスカが口を開いた。

「バカシンジ! 今アンタ他のこと考えてたでしょ! 」

 

「な、なに言ってるんだよ、ちゃんと考えてるよ!」

シンジはちょっとどもってしまったことをしまったと思いつつ答えた。

 

「フン! アンタってホント分かりやすいのよね。 嘘つくとき鼻の頭に汗が浮かぶんだから。」

そう言われてシンジは自分の鼻の頭を触ってみる。

何言ってんだよ、汗なんか浮かんでないじゃないか、、、そう思ってアスカの方を見てみると、アスカは

自分の方を見ながらニヤリと嫌な笑みを浮かべていた。そう、まるで父さんのそれのように、、、。

 

「(!!  しまった!)」

しかし気づいたときには時すでに遅く、

 

「ほら、やっぱりアンタ他のこと考えてたんじゃないの!! まったくしょうがないヤツ。」

アスカは自分の策が見事にはまったのでちょっと得意げだ。

 

「 、、、でもまぁ、いいわ。 

もうアタシがとってもいいアイデア思いついたから。」

そう言うとアスカは急に赤くなってモジモジし始めた、ようにシンジには見えた。

 

「、、、で、アスカ、今からどんなことするの?」

そうシンジがアスカに尋ねると、アスカはゆっくりと顔を上げながら言った。

 

「ゲームよ。」

「ゲーム?」

「そ、ドイツに古くから伝わるゲームなんだけど、、、」

「ふ〜ん、、、。 で、どんな?」

 

アスカは一息おいてからやや小さな声でぽつりと言った。

「、、、カップルゲーム、、、。

 

つづく

 


マナ:tomas.さん、投稿ありがとうございました。

アスカ:退屈しのぎをネタに、我ながらいいアイデアだわ。

マナ:ちっともいいアイデアじゃないじゃない。変なゲームをシンジに押し付けないでよね。

アスカ:あら? ドイツに古くから伝わる由緒正しいゲームよ?

マナ:嘘おしゃい。

アスカ:本当よぉ。アンタはドイツで暮したことが無いから知らないのよ。

マナ:わたし、小学生の頃ずっとドイツにいたけど、そんなゲーム聞いたこと無いわよ?

アスカ:ゲッ! う、う、う、うそぉぉぉーーーっ! アンタ、ドイツにいたの?

マナ:そうよん。さぁ、白状しなさいっ!

アスカ:あ、あ、あの・・・だ、だから・・・その・・・。

マナ:ほらほらっ!

アスカ:きっと、地方の問題よ。アンタ、何処にいたの?

マナ:え?

アスカ:ドイツの何処にいたのよ?

マナ:うーーーー、あの・・・その・・・。

アスカ:ちょっとっ! なんか、怪しいわねぇ・・・。本当にドイツにいたんでしょうねぇ!?

マナ:この決着は次回ねっ!

アスカ:いいじゃないっ! 望むところよっ!
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