アスカは一息おいてからやや小さな声でぽつりと言った。

「、、、カップルゲーム、、、。

 

 

カップルゲーム (vol.2)

written by tomas.

 

「えっ、ごめん、、、よく聞こえなかったんだけど、、、」

 

「、、、だからカップルゲーム。」

今度はシンジにもはっきり聞き取ることができた。

 

「へぇ、ドイツにはそんな名前のゲームがあるんだね。僕知らなかったな。」

「そ、そうよ。これは古くからドイツに伝わるゆ、由緒あるゲームなんだから。 ベ、別に私が即席で今

考え出したゲームってわけじゃないのよ! そこんトコ勘違いしないでよね!」

「うん。」

なんか怪しいな、と思いつつも一応シンジはそう返事を(しておくことに)した。

 

「じゃあ、とりあえずそのカップルゲームのルールを説明してよ。 やっぱりドイツの由緒あるゲーム

って言うくらいだからややこしいゲームなのかな? あと何か道具とかは要るの?」

「カ、カップルゲームはね、別に難しいゲームってわけじゃないのよ。道具も要らないし。 必要なの

は男の子と女の子が一人ずつだけ。ほかは何にも要らないの。」

 

そう言われてシンジはちょっとだけ考える。

「男の子と女の子? 男同士とか女同士じゃできないの?」

 

「う〜ん。できないことはないと思うけど、ま、それは特殊な場合に限るわね。 少なくともアタシはそう

いう趣味じゃないし。 たぶんシンジも、、、。 ううん、絶対シンジも!」

 

アスカの言ってることがいまいちよく分からない。

「特殊?趣味? それってどういうこと??」

 

「ま、まあ細かいことはこの際どうだっていいじゃない(汗)。 それよりルールの続きを説明するわよ。 

さっきも言ったとおりこのゲームはとっても簡単なゲームなのよ。 ようするに男の子と女の子がお互

いにカップルのフリをすればいいの。 ただそれだけ。 分かった?」

 

恥ずかしさもあってか、アスカはそう一気にまくし立てたがシンジにはわけが分からなかった。

「はぁ???」

「だ、か、ら、アタシとシンジがお互いにあたかも恋人同士のように振舞うってことよ! 何度も言わ

せないでよね! もう!(ポッ)」

 

そ、そんなこと言ったって、、、

「それのどこがゲームになるって言うんだよ! だいいち、ゲームって言うくらいなんだから勝ち負け

があるはずなんじゃないの?」

「もちろん、勝ち負けはあるわよ。簡単に言うと恋人のように振舞えなくなった方が負けってこと。」

「恋人のように振舞えなくなった方が負け? それってどういう、、、」

「つまり、照れくさくなって恋人のフリをし続けられなくなったり、恋人ゲーム、、、、じゃなかった(汗)

カップルゲームをしてることをうっかり忘れていつものように相手に接してしまったら負けってことよ!

分かった!?」

 

なるほど。ゲームの概要はだいたいつかめた。またこのゲームが自分自身にとってものすごく『おい

しい』ゲームになりそうな可能性を秘めていることも理解できた。 けど、そうとはいっても、、、。

「うっ、わ、わかったけど、、、な、なんか恥ずかしいね。」

そうなのだ。シンジはこのマンションに引っ越してくるまで女性と触れ合う機会は全くといっていいほど

なかった。自分の母親ですら顔も覚えていない。父親に呼び出されて始まったこっちの生活において

も同居人のアスカとミサトさん以外の女性と触れ合う機会はそう多くはなった。そんな自分がいきなり

ゲームとはいえ恋人同士のフリなんて、、、。

 

そんなシンジの思いを見透かしていたかのようにアスカは言う。

「ゲームを始める前からそんなこと言ってるようじゃどうやらアタシの勝ちは堅いようね!」

「そ、そうだね。」

「そうよ。」

 

そう言ったっきり二人は黙り込んでしまう。というよりもむしろアスカが黙り込んでしまったので、それに

つられてシンジも黙り込んでしまったという感じ。

「、、、」

「、、、」

「、、、」

 

「けど、それじゃ面白くないわね。」

アスカが突然しゃべり出す。 まあ、当然といえば当然の成り行き。

 

「えっ!」

シンジが間抜けな返事をする。 これもいつものこと。

 

「ゲームをする前からアタシの勝ちが決まってるようじゃ面白くないって言ってるのよ!」

「そ、そうかも知れないね。」

「、、、」

「、、、」

「仕方ない。練習しよっか?」

「ええっ!!れ、練習!?」

 

「そうよ、このままじゃ面白くないからアンタのために練習しようって言ってるの!」

 

、、、というわけでふたりは(アスカいわく)ドイツに古くから伝わるという由緒あるカップルゲームなる

ものをはじめることになりました。そしてそれにあたり、カップルゲーム百戦錬磨(アスカ談)のアスカ

様と初心者のシンジ君との格差を出来るだけなくすためにシンジ君のための練習を開始することに

なりました。

 

 

「それじゃあ、練習始めるわよ。 アタシが指示してもいいんだけどそれじゃ面白くないから、まず

は、そうねぇ、、、。 参考として『映画の中の恋のように』の中に出てくる裕司と同じ事をするの。

分かった?」

「はぁ?? なにそれ?」

「はぁ〜。アンタってばもうホントに鈍いわね!!   さっきからテレビがつけっぱなしになってるで

しょ! あのドラマの中に出てくる主人公と同じ行動をしてみなさいって言ってるのよ!!」

「な、なるほど、そういうことか! 分かったよ。」

「いまCM中みたいだから、CMがあけて最初に裕司が恋人に取った行動と同じ行動をシンジはア

タシにするのよ!いいわね!」

「う、うん。」

 

で、CM明け。いきなり裕司は恋人を平手で殴っていた。

「おまえとはこれっきりだ。もう2度と俺の前に現れるな!このくそ女!!  バシィッッ!!」

 

「、、、」

「、、、」

 

「ゆ、裕司って最低ね! シ、シンジはあんな事しないもんね!」

「うん、、、」

「、、、今のはパスね、パス。」

「うん、、、」

「つ、次のシーンにしよっ!ねっ!」

「うん、、、」

 

そして、ネクストシーン。裕司は二股をかけていた女と濃厚なベッドシーンを演じていた。

「、、、(真っ赤)」

「、、、(真っ赤)」

 

「ブチッ!」

突然アスカがテレビの電源を切った。

「、、、まったく、不潔よね、不潔。 日本のドラマなんてホントろくなものがないわっ!」

「うん、、、」 

「今度ママにドイツの名作ドラマのビデオを送ってもらうから一緒に見ようね、シンジ!」

「うん、、、」

 

その後もしばらく二人の間に気まずい雰囲気が流れていたが、やがてアスカが吹っ切るように言った。

「やっぱりあんなへぼドラマを参考にしようって考えたのが誤りだったんだわ!今からアタシがちゃんと

教えてあげるからね、シンジ!」

「うん、、、」

「うん、うん、ってアンタさっきからそればっかじゃない!ちゃんとやる気あるの!!」

「う、、、ご、ごめんアスカ。 やる気はあるんだけど、、」

「もう、しょうがないわねぇ。 ま、シンジらしいって言えばシンジらしいんだけどね。 それじゃあ、気を

取りなおして練習始めるわよ!」

「そうだね。」

 

「じゃ、まずアタシを抱きしめて!」

「えぇっ!!」

 

つづく


マナ:全然ゲームやってないじゃない。

アスカ:どうしてよ。順調じゃない。

マナ:やっぱ、ドラマの真似をするんだったら、シンジ思いっきり叩かれなくちゃ。

アスカ:そんなの、嫌よっ!

マナ:カップルゲームって、そういうもんじゃないの?

アスカ:ドラマの真似をするってわけじゃないわよっ。

マナ:でも、ドラマの中の2人もカップルだったんでしょ。一緒じゃない。

アスカ:違うのっ!

マナ:何が違うのよっ。

アスカ:だから・・・うぅぅ・・・。

マナ:どうして、口篭もるのよ?

アスカ:それよりアンタ、ドイツの何処にいたのよっ? 答えを聞いてないわよっ?

マナ:あぁ、まだ覚えてたの?

アスカ:次回に決着とか言ってたじゃない。

マナ:第2東京市ってことよ。

アスカ:アンタねぇ・・・。
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