学校の下駄箱では今日もいつもの日課が繰り返される。

「ああ、もう、毎日毎日うっとうしいったらありゃしない!!」

そう言ってアスカは下駄箱から流れ落ちる山のようなラブレターを踏みつける。

 

僕は靴を履き替えながら、アスカのそのしぐさを横目で見て一言。

「きっとこれ1枚書くのだってみんな相当思い悩んで書いたんだと思うよ。ちょっとくらい読んであげれば良いのに、、、」

嘘だ。

僕は心にもないこと言ってる。

ホントは読んで欲しくないくせに。

アスカのしぐさにホッとしているくせに。

、、、こんな自分が時々いやになる。

 

 

アスカはそんな僕の心のうちを知るはずもないのだろう。

 

「いいの、いいの。それよりシンジあとよろしく!」

そう一言残すとつま先で床をコンコンとけったあと、先に教室へ行ってしまった。

 

残された僕は後始末をする。

複雑な気持ちで後始末をする。

 

 

 

長すぎる今日。 (第三話)

written by tomas.

 

 

 

今日の1時間目は数学の授業。

老教師が教科書を左手に、チョークを右手に携え、何やらつぶやいている。

幾度となく繰り返されるありふれた光景。

単調な生活を繰り返すだけ、、、そんな毎日もいいさ。

僕は窓際の席でぼんやり外を眺めていた。

 

今日はすごく天気が良いなぁ。

お天気お姉さんもそう言ってたもんなぁ。

布団、干して来ればよかったかな。

そんなことを考えていると、、、

 

ピピッ。

メールの着信音。

誰かからメールが届いたのだろう。

つまらない授業のときなんかにはよくあることだ。

 

僕はさっそくメールをチェックする。

ん?

件名と差出人の欄が空白だ。

まあ、とりあえず開いてみる。

 

| シンジ、昨日はやさしくしてくれてありがとう。

| 今日もお願いね。

|                      From アスカ

 

どうやらアスカからのメールみたいだ。

たぶん昨日の風呂上がりの後のマッサージのことを言っているのだろう。

アスカがどうしてもして欲しいって言うから仕方なくマッサージをしてあげたら

「アンタ料理以外にこんな事にも才能があったのね!メチャメチャ気持ち良いわよ。」

とかなんとか上手いこと言われて結局延々とマッサージをさせられてしまった。

おかげで今日は両手と両腕が筋肉痛だ。

 

ああっ、そうか! 今朝リンゴの皮むきで指を切っちゃったのもきっとこのせいに違いない。

だって僕がそんな簡単に失敗するはずなんてないもんな。

 

ま、そういうわけだからマッサージをしてあげるのはいいけど、今日は軽めにしてもらおう。

 

| O.K.

| でも、昨日やりすぎたから今日は軽めにね。

|                      From シンジ

 

まあ、さっきの今だからこれで十分伝わるだろう。

それじゃ、差出人に送信っと。

 

 

ガタン!

いきなり教室の前の方の席で大きくイスを鳴らした人がいた。

あれは、霧島だ。

何かに驚いた様にじっとパソコンをにらんでいる。

 

「ん? どうしたのかね、、えーっと、、、、霧島君。」

突然の大きな音に、さすがにあの老教師も気づいたのだろう。

怪訝な顔をして霧島に声をかける。

 

「い、いえ、、、別になんでもありません。」

霧島はそう答えると顔を赤らめてうつむいてしまった。

 

いったいどうしたのかな。

そう思ってしばらく霧島の方を見ていると、急に霧島が顔を上げた。

そしてそのまま僕のほうに顔を向けてきた。

が、いつもと様子がどこか違う。

いや、違うどころかなんだか僕を睨みつけているようだ。

ひとしきり僕を睨みつけると、またパソコンに向かってなにやら打ち込み始めた。

 

 

 

、、、シンジ君ったらまったく信じられない。

ちょっとからかうつもりでアスカの名前を借りてメールを送っただけなのに。

「O.K. でも昨日やりすぎたから今日は軽めにね。From シンジ」

だって。

やりすぎたってどう言う事! 何をやりすぎたって言うのよ!

いったいアスカに何をやさしくしたのよっ!!

ああーーーーっ!ものすごく気になるっ!!

よしっ!

 

| ちょっと、シンジ君。

| やりすぎたってどういうこと!?

| 昨日アスカと何をしたのよ!!

| ちゃんと説明してもらえるかしら?

                        Fromマナ

これをシンジ君に送信っと!

えいっ!

 

 

 

 

 

ピピッ。

どうやらまた誰かからメールが届いたみたいだ。

件名と差出人の欄が空白。

なんだアスカか。

今度はいったいなんなのかな。

そう思って開いてみると、、、

 

| ちょっと、シンジ君。

| やりすぎたってどういうこと!?

| 昨日アスカと何をしたのよ!!

| ちゃんと説明してもらえるかしら?

                        Fromマナ

 

えっ? Fromマナ??

なんで? さっきと同じで件名と差出人の欄が空白なのに、、、

それにどうして僕がアスカに送ったメールの内容を知ってるんだろ??

 

不思議に思ったシンジは先ほどからの出来事をもう一度よく考え直してみた。

、、、、、、、

、、、、、

、、、

 

!!! そうかっ!

最初のメールもあれはアスカからじゃなくて霧島からのメールだったんだ。

僕をからかうつもりであんなメールを、、、

それに対して僕は、、、

 

まっ、まずい!!

これはきっと完全に誤解されてるぞ!

きちんと説明しないと。

ええーっと、、、

 

 

 

、、、その日の数学の時間は霧島とのメールのやり取りにすべて費やされることとなった。

 

 

つづく


マナ:アスカっ! シンジと何してんのよっ!

アスカ:だから、シンジがちゃんとメールで言ってたでしょっ。

マナ:シンジ、しどろもどろになってたわっ!

アスカ:アイツ・・・どんな返事書いてんのよ・・・。(ーー;;;

マナ:絶対、わたしの目の届かない所で、シンジを襲ったんでしょっ!

アスカ:普通、それを言うなら男女が逆でしょっ!

マナ:や、やっぱりっ! なんてことすんのよっ!

アスカ:だから、違うって言ってるでしょうがっ!

マナ:もう、信用できないわっ!

アスカ:だからねぇ・・・。

マナ:シンジを守る為に、これからはわたしがシンジの家に居候するわっ!

アスカ:バカなこと言ってんじゃないわよっ!

マナ:アスカから守る為よっ!

アスカ:・・・・・・。下心丸見えよっ!

マナ:普通、それを言うなら男女が逆でしょっ!

アスカ:やっぱりっ! 何考えてんのよっ!

マナ:そのままよ。

アスカ:コイツ・・・。(ーー#
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