!!! そうかっ!
最初のメールもあれはアスカからじゃなくて霧島からのメールだったんだ。
僕をからかうつもりであんなメールを、、、
それに対して僕は、、、
まっ、まずい!!
これはきっと完全に誤解されてるぞ!
きちんと説明しないと。
ええーっと、、、
、、、その日の数学の時間は霧島とのメールのやり取りにすべて費やされることとなった。
written by tomas.
体育の時間。
男子はバスケ、女子は水泳。
地軸の傾きの変化によって日本が年中夏になってからというもの、いつでも泳げるような環境に変わった、、、らしい。
そう、あくまで「らしい」だ。
だって僕らは夏しか知らないもの。
それにしても僕らがこの炎天下のもと体育館じゃなく、運動場でバスケをやらされてるっていうのに、女子は優雅に水泳のお時間か、、、
世の中どこか間違っていやしないだろうか。
こんな状況じゃ別にやましいことなんか思ってなくてもプールの方を見たくもなるよな、、、うん。
(言い訳ではなく)そう思いながら視線を移すと、、、、あっ、霧島がいた。
委員長もいた。
あそこで座ってるのは綾波だ。
アスカはどこにいるんだろう。
知らず知らずのうちに探してしまう。
、、、いた。
他の人たちとはまったく違う。
明らかに目立っている。
あの髪の色だけでも他の人よりダンゼン目だってるっていうのにアスカときたら、、、
「せんせ〜、どこ見とるんやぁ? あっちの方になんぞ、ええもんでも見えるんかいのぉ。」
「女子はいいよな、、、それに比べて俺達ときたら、、、こんなクソ暑い中でバスケなんてやってらんないっての!」
トウジが座っている僕の首に腕を回しながら、からんできた。
ケンスケがその後ろでつぶやく。
「せんせも好きやのぉ。 いったい誰を見とったんや? もしかして霧島かぁ?」
「そんな、僕は別に、、、」
「何を言うとるんや! 見てみぃ、例えば綾波のあの腰のライン。 くぅ〜、ホンマたまらんわ!!」
「そうそう、あの「綾波のムネ、綾波のフトモモ、綾波のふ、く、ら、は、ぎ〜〜〜!!」」
そのとき突然僕はデジャヴに襲われた。
以前にもこんな事があったような気が、、、、
しかしそれにしてもこいつらときたら、、、、ハモってるぞ。
、、、、ア、アブない。
「違うんだ、ただ、アスカが、、、」
「あぁ? 惣流? そうやな、確かにガイジンさんの血が入っとるだけあって、、、」
「なんで、一人だけビキニなのかなと思って。」
「「ええーーっ!!!!!」」
「!! ホンマや! 惣流だけビキニ着とるわ。」
「ああっ!! 相田ケンスケ一生の不覚っ!!! カメラ持ってきとくんだったぁ!! チクショーーッ!!」
「あの赤と白のストライプのヤツは、、、あのときのだよな、、、」
騒ぐ二人を横目に僕はつぶやいていた。
同時刻、某場所。
「うわあ、惣流さん、すっごーーーい!!」
「だいたーーん!!」
「悔しいけどすっごく似合ってるわよね。」
「ちょっと、ダメじゃないアスカ! 水泳の授業ではスクール水着を着用するようにって校則で決まってるのよ!!」
最後の一人は言わずもがな、である。
「そうね、洞木さんの言うとおりよ。 次からは学校指定のスクール水着を着てくるように。」
女子の保健と体育の授業を受け持つ女教師がビキニを着てきたアスカを注意する。
「ええっ!! いやよ! そんなダッサイの着れるわけないじゃん!! だいたいアタシこれしか持ってないもん!」
「「、、、はぁ〜。」」
女教師とおさげの女の子の一風変わったユニゾンは雲ひとつない青空に吸い込まれていった。
、、、2年A組一の問題児、惣流・アスカ・ラングレー、ここにあり。
お昼休み。
トウジとケンスケがシンジのもとにやってくる。
「せんせ、一緒に屋上行ってメシ食わんか〜。」
こんなに暑いのに日差しがきつい屋上でよく昼食をとる気になるな、と思う人がいるかもしれないがこれはまったくの誤解である。
屋上であっても日陰であれば、教室よりもはるかに風通しが良いし、涼しいのである。
それを知っていたシンジも当然のごとく、
「そうだね。 じゃあ、僕も、、、」
『一緒に屋上に行くよ』と言おうとしたとたん、
「ダメダメ、シンジは今からアタシに付き合うのっ!」
横から割り込んでくる人間がいた。
アスカだ。
「このあとの5時間目は漢字のテストでしょ! 昨日の晩、明日の昼休みは出そうなトコ教えてくれるって言ったじゃない!」
ああ、そうだった。
確かにそんな約束をしていた(させられていた)。
「ごめん、トウジ、ケンスケ。 そう言えば僕、昨日アスカと約束してたんだった。」
「なんや、しょうがないのう。 それやったらワイらだけで行って来るわ。」
「ホントごめん。また今度ね。」
そういうわけで僕とアスカは弁当を食べながら、一緒に漢字テストの対策をする事になった。
もっとも僕は漢字は得意だったので、もっぱらアスカのための対策ということではあったが。
「で、どこがテストに出るの? シンジ。」
「ええっと、確か、、、、今回の範囲は『漢字の手引き』の86ページから10ページ分だから、、、」
「じょ、冗談でしょ?! そんなにあるの!?」
「うん。」
シンジはあっさりと答える。
「う〜ん、そんなにあるんじゃ今からやったって絶対間に合わないわ。」
「だから、昨日のうちにやっとこうって言ったのに、、、」
「、、、」
「どうするの?」
「、、、よし、仕方ないわね。 いっちょ、やるかっ!」
「えっ!? やるって何を??」
「まずは移動よ! 移動! シンジもそれ持ってアタシの席に来て!!」
そう言うとアスカは自分の弁当箱だけ持ってさっさと自分の席の方に行ってしまった。
僕は仕方なくアスカの分と自分の分の勉強道具に加えて、さらに自分の弁当箱を持ちながらその後をついていく。
「じゃ、始めるわよ! アタシはここからここまでを写すから、アンタはそれ以外の部分をお願い!!」
「はぁ? 写すってどこに??」
「そんなの決まってるじゃない! 机よ! ツ・ク・エ!」
「ええっ?! それってカンニングじゃぁ、、、」
「違う! ちっがーーーーう!! 旧態依然とした日本の減点方式の試験に対するささやかな抵抗よっ!!」
「、、、言ってる意味がよく分からないんだけど、、、」
「もうっ! いいからさっさと始めなさいよ!! こうしてる間にも時間はどんどんなくなっていってるのよ!!」
「でも、、、」
「デモもストライキもなーーーいっ!!!」
「はっ、はい、、、」
「じゃあ、62秒でケリを着けるわよっ!!!」
「それは絶対ムリ、、、、」
書き書き書き書き、、、、、
僕らは一心不乱に漢字を机に写しつづける。
カキカキカキカキ、、、、、、
かきかきかきかき、、、、、
どれくらい写しつづけていたのだろう。
急にアスカが席を立った。
「アタシ、ちょっとお手洗いに行ってくるから、、、、アンタ、サボんじゃないわよ!」
そう言って首をコキコキ鳴らすと、アスカは教室を出ていってしまった。
まったく、、、、あれが人にものを頼んだときの態度かよ、、、
ふう。
ああ言われたけど、僕はアスカが戻ってくるまでの間ひと休みすることにした。
もともと筋肉痛だった腕が悲鳴をあげていたからだ。
隣の席から借りてきた椅子に腰掛け、右手首をぐるぐると回す。
ずいぶん書きこんだよなぁ、、、
僕はアスカの机に整然と書き並べられた自分の字を見ながら思う。
バレなきゃいいけど。
そう思いながらぼんやりとアスカの机を眺めていると、、、
ん?
なにやら机の隅のほうに今にも消えそうなほどの落書きがある。
何が書いてあるんだろう?
そう思った僕は机の隅のその部分を注意深く眺めて見る。
「、、、、、」
なにか傘の形をしたような絵があり、その下に名前が書かれている。
消えかかってはいるが、それははっきりと読み取る事ができた。
シソジ、アスカ。
慣れない字で書かれたそれは書いた人間がこの机の主である事を明らかに示していた。
つづく
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