ずいぶん書きこんだよなぁ、、、

僕はアスカの机に整然と書き並べられた自分の字を見ながら思う。

バレなきゃいいけど。

そう思いながらぼんやりとアスカの机を眺めていると、、、

ん?

 

なにやら机の隅のほうに今にも消えそうなほどの落書きがある。

何が書いてあるんだろう?

そう思った僕は机の隅のその部分を注意深く眺めて見る。

「、、、、、」

なにか傘の形をしたような絵があり、その下に名前が書かれている。

消えかかってはいるが、それははっきりと読み取る事ができた。

シソジ、アスカ。

慣れない字で書かれたそれは書いた人間がこの机の主である事を明らかに示していた。

 

 

 

長すぎる今日。 (第五話)

written by tomas.

 

 

 

これって、、、、アレ、だよな。

、、、、う〜ん、とんでもないもの見つけちゃったな。

うすうすそうじゃないかなとは思ってたんだけど、、、、、、僕も同じ気持ちだけど、、、、

やっぱりなんだか恥ずかしいな、、、、、、、でも、うれしい。

 

シソジの幸せものめ。

 

 

僕は辺りをきょろきょろと見まわしたあと、消えかけそうになっていた落書きを上から鉛筆でなぞっておいた。

しばらくしてアスカが戻ってきたが、それに気づいた様子はなかった。

 

 

 

 

その後も必死に漢字を書き写しつづけた僕らはなんとか時間までに写し上げることができた。

「ふぅ。なんとか間に合ったみたいね。アンタもそれなりによくがんばったし。誉めてあげるわ。」

「、、、それは、どうも、、、」

僕が4分の3以上写したんじゃないか、、、もう右腕がガクガクで動かないよ、、、、

 

「あっ、先生がきたみたい。 アンタも自分の席に戻って!」

「はい、はい、、、、」

 

僕は勉強道具と全然手がつけられていない弁当箱を持って自分の席に戻った。

さっき、去りぎわに気がついたのだが、アスカの弁当は知らないうちに空っぽになっていた。

 

 

 

「それでは今日は先週話していたとおり、授業の前半を使って漢字テストを始める。範囲は『漢字の手引き』の

68ページから77ページまでだったな。」

 

えっ! 86ページから10ページ分じゃないの?!

僕のその疑問を即座に言葉に表してくれた人がいた。

 

「!!  えぇーーーーーっ!!! 86ページからじゃないのっ!!!!!」

アスカの叫び声が教室に響き渡る。

 

「いや、先週話したとおり68ページからだが、、、、、、それでは問題用紙と解答用紙を配るので、それぞれ

後ろにまわしていくように。」

、、、どうやら僕が勘違いしていたみたい。

 

「、、、シンジ、、、ぶっ殺す!!!」

「ハハ、、ハハハハ、、、、」

 

「あっ、そうそう机の上は鉛筆と消しゴムだけだぞ!」

教師の注意もまるで耳に入らない生徒が約二名。

 

 

 

 

 

放課後。

すべての授業が終わり、HRでの伝達事項も聞き終えた生徒達は、大別すると帰途へつく者と部活へ行く者とに分けられる。

アスカやシンジは前者に分類される人間なので、それぞれ自分たちの席で帰宅準備を進めていた。

アスカは弁当箱と宿題と必要な勉強道具だけを抜き取り、かばんに詰めるとその他の物はすべて自分の机の中にしまった。

学校に勉強道具を置いて帰るのは禁止されていたが、アスカは面倒くさかったので気にせず置いて帰っていた。

そのようにしてやがて帰る準備が整ったアスカは、そのままヒカリの席へと向かう。

 

「ヒッカリ〜! 一緒に帰ろ!!」

アスカはニコニコしながらヒカリに声をかける。

 

「えっ?! 碇君は?」

シンジとアスカが当然二人で帰るものと思いこんでいたヒカリは、アスカにそう尋ねる。

 

「フンッ! ほっときゃいいのよあんなバァカ!!」

嫌な物でも思い出したかのように表情を一変させたアスカがそう言いきる。

、、、どうやら漢字テストは散々だったようである(笑)。

 

「で、でも私今日、どうしても行かなくちゃいけない所があるから、、、」

ヒカリが申し訳なさそうにアスカに言う。

 

「な〜に水臭いこと言ってんのよ! 帰り道ならアタシも一緒によってくわよ!?」

「えっ!、、、でも帰り道とはちょうど正反対の方向だし、結構遠いところだから、、、」

「ふ〜ん、そっか、、、じゃ仕方ないわね。 それじゃ、たまには一人で帰ろうかな。」

と、そんな話をしているとアスカの後ろの方から問題の彼はやってきた。

 

「あっ! 碇君がこっちに来るよ! 何があったか知らないけど仲直りして一緒に帰りなさいよ! ねっ!?

 それじゃあ、私もうそろそろ行かないと遅れるから。 じゃ、また明日ね、アスカ! バイバイ!」

そう言い残してスカートをひるがえすと、そのままヒカリは教室から走って出ていった。

「えっ? あっ! もう、、、」

後ろを一瞬振り向いただけなのに、アスカになにも言う暇も与えずヒカリは行ってしまった。

 

そして入れ替わりにシンジがやってくる。

「あれ? 委員長どうしたの? なにか急いでるみたいだったけど、、、」

「フンッ! 知らないわよ、バカシンジっ!!」

そう罵るとシンジに背中を向け、ズンズン足音を鳴らせて教室を出て行くアスカ。

 

「あちゃ〜、やっぱりまだ怒ってるか、、、、はあ〜、、、」

うつむいてため息をつくシンジ。

もしかしたら機嫌が直ってるかも、と思っていたシンジの考えはとてつもなく甘かったようだ。

 

「まってよ、アスカ〜! 一緒に帰ろうよぉ!!」

しかしそんな呼び声もむなしくコダマし、

シンジが教室を出たころには、たなびく赤い髪はもうすでに廊下を曲がりかけていた。

 

つづく


マナ:プクククク。86と68を間違えるなんてぇ。おっかし。

アスカ:あのバカのせいで散々よっ!

マナ:なに言ってるのよ。カンニングなんてしようとするからでしょ?

アスカ:あんな減点式のテストなんて、まともにやってらんないわよ。

マナ:だからって、カンニングをシンジに手伝わさなくたっていいでしょうに。

アスカ:いいのいいの。ぜんぜっん役に立たなかったけどねっ!

マナ:シンジも可哀想ねぇ。

アスカ:まったくもぅ。今日はシンジと帰りたくないのに、ヒカリったらぁ。

マナ:あっらぁ。それならそうと言ってくれれば、わたしがシンジと一緒に帰ったのにぃ。

アスカ:バ、バカ言ってんじゃないわよっ!

マナ:誰が馬鹿よぉ。それより洞木さん、何処行ったのかしらね?

アスカ:どうせ、鈴原と何かあるんじゃないのぉ?

マナ:そうかしらぁ・・・。
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