The Restart Of Evangelion

                                   第3話 「炸裂!!レイ、怒りの鉄拳!」 


朝早いうちからネルフに向かう、シンジとマナ。

「今日はシンクロテストっていうのをやるんだけど、わたしはいまだに詳しいことは知らないんだ。
 でも、昨日のシンジ君の戦い振りだと、そんなテストも必要じゃないと思うんだけどな。」

今まで2人で歩いているときはシンジから話しかけていたのだが、今日はマナから話しかけてくる。

「そんなことはないよ。いきなりあんなことになって驚いたんだよ、すごく緊張もしたし。
 それに、あんなことが出来たのも「極度の緊張」って言う極限状況にあったからかもしれないしね。
 ほら、「火事場の馬鹿力」ってあるでしょ?だから、今日のそのシンクロテストってヤツの結果は散々かもよ、僕。」

実際にはそんなことは無く、すべてシンジの実力なのだが、そうは言わない。と、言うよりは言えないのであったが・・・。

「え〜、そんなことなさそうだけどな〜。」

「あっ、そうだ。今日のそのテストに綾波さんは来るのかな?」

とっさに話題を変えるシンジ。

「あの怪我だからわかんないけど、見には来るかも・・・って、なんでレイちゃんのこと気にするの?」

柔らかかった表情がピキッ、と固まる。

「えっ?だっ、だって、同じチルドレンだから気にしてもおかしくないと思うんだけど・・・。」

固まった表情が目に入り、しどろもどろになってしまう。

「そうよね〜。レイちゃんかわいいし、今怪我してるからシンジ君は気になるんだもんね〜。」

「なっ、なんだよ!その言い方!!」

からかうような口調に大声をあげるシンジ。

「ふん!知らない!!」

マナはそっぽ向いたと思ったら走り出していく。

「あっ、待ってよ。マナ〜。」

シンジはマナを見失わないように必死に追いかけていった。



ネルフ本部に入るころにはさっきまでの言い争いは無かったように、仲良く話をしている二人。
それを少し離れた所から見つめる紅い瞳、レイである。
体には昨日見たようなギブスや包帯は無く、学校の制服を来ていた。

(何を・・・してるの、碇君。あなたはその子と仲良くするために戻ってきたんじゃないんでしょう?)

2人を見つめるレイは手を「ぎゅっ」と握り締め、顔からは怒りの表情が見て取れた。


「それでは、シンクロテストを開始します。用意はいいわね、みんな?」

「・・・はい。」

「はい、大丈夫です。」

「・・・・・。」

リツコの掛け声に返事をするレイとシンジ。だが、マナは答えることが出来なかった。

(シンジ君はともかく、レイちゃんだってEVAを動かせる。わたしは自分用のEVAが無いとは言え、
 シンクロ率は起動数値ぎりぎりで戦闘は不可能だって言われた・・・。このままじゃ、EVAが来ても役立たずのまま。
 今だって、「いるだけのチルドレン」って言われてるのは知ってる。だから、だから、がんばらなくてはいけないの。)

建造中の参号機のパイロットとして登録された自分はネルフで訓練を受けるものの、テストプラグでのシンクロ率は
ぎりぎりのものであったし、建造中だから自分用のEVAも無い。「いるだけのチルドレン」と噂されても仕方なかった。
「いつか見返してやるんだから!」と思ってはいた。しかし、昨日来たばかりで、何も訓練していない、同じ年の男の子が、
起動したどころか戦闘までやってのけた。しかも、完璧な勝利である。
そのため、マナはいつものテスト以上に緊張し、焦っていた。

「マナちゃん、聞いてる?」

返事を返さないマナにミサトが心配になり声をかける。

「・・・・・・。」

「マナちゃん?」

「ごっ、ごめんなさい。大丈夫です。」

「では、テスト開始!」

マナの答えを聞くと、リツコはテスト開始の号令をかけた。


テストが始まって、すぐにシンジはユイに語り掛けた。

(母さん、聞こえる・・・。)

(あら、シンジ?どうしたのってシンクロテストね。)

(それより、例の件はどうなったの?上手くいきそう?)

(ええ、上手くいってるわ。けど、まだ終わったわけじゃないから、ここから出るのはもう少し後ね。)

(わかったよ。あと、母さんが出てくるタイミングについてだけど、どうしようか?)

(そうね・・・第5使徒が来て、「リフト打ち上げ後、シンジが加粒子砲でやられた後」がいいんじゃないかしら?)

リリスと融合したレイからシンジ、そしてユイへと渡った「力」のおかげでユイもすべてを知った。
それを踏まえて、シンジから「早く出て、父さんを止めて欲しい」と言う条件を加えると、上記の「シンジがやられた後」が
もっとも適切だ、と言うのである。

(そんな〜、他のタイミングはないの?)

(だって、「過剰なエネルギーを浴びて、死の淵にいる息子の助けを呼ぶ声にいてもたってもいられなくなったから出てきた」って、
 言えばおかしくないでしょ?それに、あの人はシンジを初号機に乗せれば、私が目覚めるって思ってたんだから問題無いわよ♪)

シンジにしてみれば、ユイの言った理由は的を得ていただけに反論する気は無かった。
だが、そのための試練にあの一撃をくらわねばならないのが嫌だった。
前回はそれで死にかけただけに今回も、と言うのは避けたかったのである。

(シンジは・・・お母さんに会いたくないのね。)

(そんなわけないじゃないか!!母さんにも会いたいし、父さんも止めて欲しいから、・・・やるよ!)

(それでこそ、男の子よ!大丈夫、母さんが護ってあげるから安心なさい。それじゃ、母さん続きがあるから。)

(わかったよ、母さん。)

やらねばならないことなのだが、何かシンジはすっきりしない感じでテストを続けた・・・。


テスト終了後、3人はミサトとリツコのいる部屋へと向かった。

「3人ともお疲れ様。それじゃあリツコ、よろしくね。」

「まずは、3人ともお疲れ様。シンクロ率の発表からするわ。」

リツコはシンクロ率という言葉に、マナが体を「ビクッ!」っと反応させるのに気付いたが気にせず言葉を続ける。

「レイが74%、マナが22%、シンジ君は100%という結果よ。」

(前回のシンジ君のシンクロ率は偶然じゃない可能性が出てきたわね、彼は一体何者なの?
 それに、レイ、マナ共にシンクロ率が伸びている。特にレイは急にこれだけ上がっているのはなぜ?)

結果を発表し終わった後、リツコはシンジを見つめていた、厳しい視線で。だが、その視線に気づいたシンジは微笑み返すだけであった。

聞いてるだけだったミサトがマナとレイに声をかける。

「マナ、レイ共にがんばったわね。特にレイ、急にこんなに伸びるのはすごいわね〜。
 マナもがんばったわね。でも、気張りすぎるのはあまりよくないから次はリラックスね。」

「・・・はい、気をつけます。」

「・・・ありがとうございます、葛城一尉」

(あのレイがお礼を言うなんてよっぽどうれしかったのね。)

ミサトはレイの言葉を聞き、満足げな笑顔を浮かべていた。

「最後にシンジ君、特に言うこと無いわ。できるだけこの状態を保ってもらえるとうれしいわね。」

「わかりました。」

「それじゃあ、みんな帰っていいわ。」

リツコはシンジにそう声をかけた後、3人に帰宅指示を出した。



「やっぱり、シンジ君すごかったね!」

3人で帰っている途中、マナがさっきのシンクロテストの感想を言った。

「でも、わからないんだよ。乗ってて意識を集中するとああなってるんだから・・・。」
(あながち間違ってないんだよね、この答え。だって、初号機には母さんがいるからね。それに過去の訓練での賜物だよ。)

肝心なことは言わないが、無難な答えを出すシンジだった。

「でも、わたしも「シンクロしなきゃ、シンクロしなきゃ!」って思ってるんだけどダメなんだよね〜。」

「・・・それではダメよ。表面からじゃなく深い所から「シンクロしよう」と思わないと、これ以上シンクロ率は伸びないわ。」

レイがはじめて会話に参加してきた、これも間違っていない。
かつて、アスカも深い所にある弐号機(母親)の心を感じようとしなかったため、シンジにシンクロ率を抜かれたのだ。

「だから、さ、今度のテストの時は「シンクロしなきゃ」なんて考えないで集中するんだ、それとリラックス。
 これでシンクロ率が伸びると思うよ。」

「ありがとう!やってみるね、わたし。」

シンジのアドバイスを真剣に聞いていたマナが元気な声で返事をする。

「・・・がんばってね。それじゃ、私こっちだから。さよなら。」

途中の別れ道でシンジ・マナは左に、レイは右に曲がって帰るのだ。帰ろうとするレイに慌ててシンジが声をかける。

「綾波!よかったら家で夕飯食べていかない?マナもいいよね?」

「えっ、ええ、もちろん!」

マナはいきなり言われたことにビックリしたのか、素っ頓狂な声をあげて返事をする。

「ね?マナもいいって言ってるし、一緒に食べようよ。僕、がんばって作るからさ。」

レイは少し考えるようなしぐさを見せると「コクン」と頷いた。

「じゃ、行こう。帰りは僕が家まで送ってくよ。」

「送っていく」という言葉に反応したのか、顔を少し紅くしながら、また「コクン」と頷くレイであった。


その後、シンジの作った夕飯にマナは絶賛の声を、レイは「おいしい」と一言、そんな2人にシンジは最高の笑顔で答えたのであった。


「綾波、次は第4使徒だね。」

レイを送り途中、シンジが話しかける。

「ええ。私は大丈夫だけど、零号機は使えない状態だから碇君が1人で戦うことになるわ。」

相手がシンジ一人だと少し饒舌になるレイ。

「また、トウジとケンスケは戦闘を見に来るのかな・・・。」

「たぶん、来ると思うわ。私やマナさんがその場にいれば止められるだろうけど、それは無理だから。」

「うん。でも、今回は出てきてほしいんだ、僕。」

「友達になるきっかけが欲しいのね?」

「・・・うん。トウジは妹さんが怪我してないから、僕に殴りかかってくることも無いだろうし。きっかけが無くなっちゃたから、さ。」

「そう・・・、上手くいくといいわね。」

「うん、ありがとう。・・・あっ!着いたよ、綾波。」

「・・・もう着いてしまったのね。」

「何か言った?綾波。」

「いいえ、さようなら、碇君。」

「またね、綾波。」

レイはそこから1歩も動かずにシンジの後ろ姿を見つめていた。


翌日、シンジ学校初日の朝。

「「行ってきまーす、ミサトさん。」」

2人そろってミサトに挨拶をする。シンジは手にごみ袋を持っていた。

「はい、行ってらっしゃい。あっ、シンジ君、ごみ捨て頼むわね。」

「はい、わかりました。ミサトさんの朝御飯はテーブルにありますから。」

「はいはい。それより2人共、のんびりしてると遅れるわよ〜。」

携帯電話の液晶画面で時計を確認する2人、ほのぼのしてた空気が一気に冷え込む。

「「いっ、行ってきまーす!!」」

「車に気をつけてね〜ん♪」

笑顔で子供達を送り出すと、作戦部長の顔になってどこかに電話をかける。

「今、家を出たわ。ガードよろしく。」


学校に着くと、時間を確認する2人。

「はあ、はあ、どうやら間に合ったみたいだね・・・。」

「そっ、そうね。よかった〜。」

息も絶え絶えになりながら安堵の表情を浮かべつつ、シンジはマナに職員室に案内してもらう。

「じゃ、またね。シンジ君。」

「うん、あとでね。」

楽しそうに声を掛け合う2人。それを遠くから見つめる紅い瞳、レイである。

(・・・どういうつもりなの、碇君。)

両手を「ぎゅっ」と握り締め、そのシンジを見つめる目線は人を射抜けそうなぐらいに鋭かった。


「碇シンジです、よろしくおねがいします。」

無難な自己紹介を済ませると、教師に指示された席へと向かう。そこはレイの隣であった。

「よろしくね、綾波。」

小声でシンジが声をかけた。が、レイは返事をせず、前を向いていたのだった。

(どうしたんだろ、体調よくないのかな?)

還ってきても、どこか鈍いシンジであった。

ホームルームが始まると、シンジの端末にメールの着信を知らせるメッセージがでてきた。

「碇君があのロボットのパイロットだって、本当? Y/N」

前回、結局ばらしてしまい大騒ぎになって、トウジに殴られたメールである。

(うーん、変に騒ぎ立てたくないから黙ってよっと。)

「No」

返事を返すと、すぐさま次のメールが来る。

「嘘つかないで、知ってるんだから。」

(ここで面倒くさくなったからばらしちゃったんだよな。けど・・・。)

「本当に違うんだってば。」

否定の返事を送り返すと、もうメールは来なくなった。

(うーん、言ってもいいんだけどね。興味本位で首を突っ込んで欲しくないんだよね、ごめんね。)

そして、ホームルームは終了し、授業が淡々と進んでいく・・・。

お昼前の授業が終わる頃、レイが今日初めてシンジに話しかけてきた。

「碇君、このあと1人で屋上へ来て。」

レイが言い終わると同時に授業が終了する。そして、レイは1人で屋上へと歩いていった。

それを見て、シンジは鞄から包みを1つ出すとマナに渡す。

「はい、これお弁当。だれか友達と一緒に食べてね、じゃ!」

言いたいことだけ言ってお弁当を渡すと、シンジは屋上へと向かった。

「ちょっ、ちょっと〜、シンジ君!?」

教室を出ようとするシンジにマナは声をかけたが振り向いてもらえず、友達を誘ってランチタイムに入ったのだった。


シンジが屋上に出ると、レイは仁王立ちで俯いていた。当然、シンジにはレイの表情が見えなかった。

「話ってなに?綾波。」

レイの元へと歩み寄っていくシンジ。

「聞いてる?綾波。」

話しかけても一向に答えないレイ。

「ねえ、綾波。話ってなに?」

「碇君・・・。」

やっとレイが口を開いたが、その声は感情がこもっていない、無機質な感じのする声だった。

「なに?あやな・・・。」

バキイッッッッッ!!!!!!!   ドサッ・・・

名前を最後まで言い終わることなく、シンジは吹き飛ばされた。

「なっ、いきなり何するんだよ!!綾波!」

「怒り」の感情剥き出しのシンジ。

「・・・あなた、どういうつもりなの?」

またも無機質な声でレイは問いかけた。

「ど、どういうつもりって・・・なにがさ?」

「!!」

この時、レイが俯いていた顔を上げた。その表情は「怒り」の感情剥き出しの顔であった。

ここまで感情が出ているレイをはじめて見るシンジは恐怖を覚える。

「何を、何を怒ってるんだよ、綾波・・・。」

バキイッッッッッ!!!!!!!

吹き飛びこそしなかったものの、レイはまたもシンジを殴った。

「あなたは・・・あなたはアスカに会いたい為に還ってきたんでしょう?アスカが好きなんでしょう?大好きなんでしょう?
 それなのに、あなたはマナさんとあんなに仲良くしてどういうつもりなの?
 あの時、あそこで私に願ったことはすべて嘘だったの?答えて・・・答えて、碇君!!」

レイの紅い瞳からは涙が流れていた。こちらに来てからの初めての涙は、自分の好きな男の子のふがいなさに対する悔し涙であった。

レイは言葉では言わなかった、というより言えなかった。「人を好きになる」ということがよくわからなかったからである。
前回はその所為でシンジに「好き」という自分の気持ちが伝えられなかった。もちろん、それ以外にも理由はあるのだが・・・。
サードインパクト後の世界でシンジがアスカを選んだことはレイにとってショックではあったが、「彼がアスカを選んだのなら。」
と、自分の気持ちを押しこんでシンジの願いを叶えることにした。
しかし、そのシンジがアスカ以外の女の子と仲良くしてるのを見て、我慢できなくなってしまったのである。それゆえの行動であった。

「あの時・・・言った言葉は嘘じゃない、僕が「好き」なのはアスカだよ。
 でも、綾波のおかげでマナに会えてうれしかったんだ。だから、いろんな話をしたりするのがうれしかった。
 今回、ミサトさんのところにマナがいると思わなかったんだ。でも、いてくれたおかげで「家族としての接し方ができる」、って
 思った。だから、やましい気持ちは何も無いんだよ・・・。
 それに、今殴られて気付いたんだ。僕は綾波やマナは「好き」で、アスカは「好き」だってことにね。」

ゆっくりと、静かにシンジの言葉を聞くレイだったが、最後に「納得できない」という顔をしていた。

「最後に言ってた、私やマナさんに対する「好き」とアスカに対する「好き」ってどう違うの?」

「それはね、綾波やマナに対しては「好意」、「好感」っていう意味の「好き」。
 アスカに対しての「好き」は「この人と「恋人同士」、そして「夫婦」になりたい。」って思う意味の「好き」・・・なんだよ。」

アスカに対しての気持ちを教えるときのシンジの顔は真っ赤であった。

「そうなの?よくわからない。けど、アスカのことが1番だってわかったから・・・。
 それと、ごめんなさい、碇君。殴ってしまって・・・。」

「いいよ。綾波に心配かけた僕が悪いんだし、それに綾波ももうすぐ「家族としての接し方」って言うのがわかるようになるから。」

泣きそうな顔をするレイを安心させるように微笑みながら、シンジは優しく声をかけていた。

「・・・私に家族はいないわ。だから、わからない。」

「そのうちわかるよ。さっ、教室に行こう!」

と、2人で屋上から出ようとすると携帯電話から着信音が鳴る。そして、誰かが屋上へと出てくる、マナであった。

「シンジ君、レイちゃん!非常召集だって、急ごう!!」

「うん!!」

「・・・ええ。」


ネルフ本部に到着し、発令所へ向う。

目の前のモニターには第4使徒・シャムシェルの姿があった。
召集の知らせを聞いてやってきた子供達を確認すると、ミサトが指示を出す。

「シンジ君はプラグスーツに着替えたらケージへ、そこで初号機に搭乗。
 レイとマナはここにいなさい、いいわね?」

「「はい!!」」
「・・・はい。」

(また・・・見てるだけなのね。ごめんなさい、碇君。)
(十分なシンクロ率を出してたとしても、わたしには乗れるEVAが無い、ごめんなさい、シンジ君。)

レイとマナは自分の手を握り締め、モニターに目を向ける。シンジの戦いを見守るのが今の自分達にできる事だからである。

「EVA初号機、出撃準備完了しました!!」

「シンクロ率100%、ハーモニクス正常位置。」

「射出ルート、オールグリーン!!」

オペレーター達の報告を聞き、ミサトが最終確認をする。

「シンジ君、準備はいいわね?」

「はい!」

「発進!!!」

ミサトの号令と同時に射出が始まる。射出された初号機より少し離れた所にシャムシェルがいた。

シャムシェルは初号機を見るや否やゆっくりと光の鞭をしならせながら接近してくる。

「シンジ君、とりあえず戦闘方法は任せます。思う通りにやってみて!!」

「はっ、はい!!」

作戦部長らしからぬ指示にリツコが眉をひそめる。

「ミサト、どういうつもり?シンジ君を見殺しにするつもりなの?」

「冗談言わないで!!そんなつもり毛頭無いわ、見たでしょ?第3使徒戦を。シンジ君の判断にすべてを任せます。」

と、ミサトはきっぱりとリツコの疑問を突っぱねる。

「あなた!!何をいってるのか、わかってるの?あの子がやられたら人類は終わりなのよ!」

「そんなことわかってるわ!!でも、何のデータも無い使徒を、EVAに初めて乗ったあの子が倒してるのよ!
 それならば、実績のあるシンジ君に任せたほうが倒せる確率があるはずよ!!
 ・・・正直、あんなのに勝てる作戦なんか思いつかないわよ、私には。」

「ミサト・・・。」
(あなたの言う通りね。でも、私は納得できないわ・・・。)

リツコにしてみれば、ミサトの言うことはもっともである。だれも戦ったことが無い相手に対し、有効な作戦を立てようが無いのは事実。
わかってはいるものの、前回偶然倒せたとはいえ、もう1度偶然が起こるとは限らないのだ。
それならば、ダメで元々で作戦を立て、その結果人類が滅びたのなら納得できるが、14歳の子供に判断させて、失敗。
そして、人類滅亡。という「偶然」に頼るのは科学者であるリツコにとっては納得できないことなのである。
 

一方、シンジは思わぬ苦戦を強いられていた。

本体の動きは遅いのだが、光の鞭を振るスピードが速いのだ。
何とか反応してかわしているものの、油断できない状態だった。

(このままだと、まずいな・・・。)

シンクロ率100%ということは、シンジのイメージした動きを完全再現してくれるのだが、
ダメージを受けた場合、シンジがそのままダメージを受けてしまうからだ。

(こんなのまともに当たったら・・・死ぬかもしれない。)

有効な反撃手段も見つからず、じりじりと追い詰められていくシンジ。

そんな中、一方的に押されてる初号機を見ている人影2つ。

「なんや、あれ。なっさけない戦い方しよるな〜。」

「そんなことないぜ、あの光の鞭を全部かわしてるだろ?お前、あの鞭の動き見えるか?俺はビデオを通して見えるけどさ。
 防戦一方とはいえ、EVA初号機のパイロットは只者じゃないぜ。」

ジャージの上着のポケットに手を突っ込みながら戦闘を見ている少年・鈴原トウジ
その横でビデオカメラで戦闘を撮影している眼鏡の少年・相田ケンスケ
前回の人生でシンジを含めた3人で「3バカトリオ」と呼ばれた2人の少年達である。

「しっかしなあ・・・かわしとるだけじゃ〜、喧嘩には勝てんで〜。」

「まあな、作戦にしては効率が悪いしな。噂じゃ、この間のバケモノにはN2地雷も効かなかったらしいぜ。」

「ほう〜。おまえ、そんな情報どこから仕入れてくるんや?」

「企業秘密だよ。」(キラーン!)

そういって眼鏡が光る、相田少年であった。

「ところで・・・なんかこっちに向ってきてないか、あれ?」

「せやな〜・・・。」

途端に顔がひきつる2人、顔色は真っ青だ。

「「うわ〜〜〜!!!」」


「えっ、あっ、しまった!!」

シンジは鞭をかわしている最中、自分の繋いであるアンビリカルケーブルにつまずき、こけた。
そして、ケーブルが外れ、内臓電源に切り替わる。

起きあがろうとする際に、目の前にシャムシェルが、手の方には指と指の間にトウジとケンスケが腰を抜かしていた。

(まっ、またなのか〜!!)

呆れるのよりも速く、ミサトに指示を請う。

「どうしましょう?ミサトさん。」

「あなたの思う通りにしなさい。責任は私が持ちます!!」

明らかに越権行為なのだが、リツコはミサトにそんな事を言わず、黙って戦いの結末を見ることにした。

「そこの2人、早く乗って!!」

エントリープラグをイジェクトして2人を乗せる用意をする。

「なんやこれ〜・・・ってお前、転校生やないか!!」

「やっぱり、お前はパイロットだったんだな。」

「いいから黙って!!死にたくないんならね!!」

途端に静かになるプラグ内。

「シンクロ率下降!現在87.4%!!」

「異物を入れても、このシンクロ率・・・すごいわね、この子。」

「内臓電源残り1分!!」

「残り時間が少ないわ!!残り1分で行動不能になるから気をつけて、シンジ君!」

オペレーターとリツコ、ミサトの声が飛び交う中、レイとマナは静かに戦闘を見守っていた。

「プログレッシブナイフ、装備!!」

「内臓電源残り45秒!!」

オペーレーターが初号機の状況を報告する中、シンジの咆哮が発令所内に響く。

「うおおおおおおおおおおおっ!!!!!!!!」

ナイフをコアに突き刺すと、シャムシェルも鞭を初号機の腹部に突き刺す!!

「内臓電源残り30秒・・・20秒・・・10秒」

オペレーターのカウントダウンが始まった。

「9・8・7・6・5」

「神経接続切って、早く!!」

コアの輝きが消えるのと同時にレイが叫ぶ、初めて聞くレイの叫び声に戸惑いながらも初号機の神経接続を切るオペレーター。

「使徒、沈黙しました。シンジ君、それとクラスメートの2人、全員無事です!!」

マヤの報告にほっとする、発令所一同。


その後、ネルフ保安部にお説教とビデオカメラ没収で勘弁してもらったトウジとケンスケは家へと帰っていった。


「お疲れ様、シンジ君。」

ミサトの労いの言葉に微笑みを返すが、すこし苦しそうなシンジ。

「・・・診察室へ連れて行きます、行きましょう、マナさん。」

「うっ、うん。」

「私も行くわ!!」

「・・・葛城一尉は事後処理があるはずです。心配なのはわかりますが、そちらを優先してください。」

「わっ、わかったわ。シンジ君の事、頼むわね。」

有無を言わさぬレイの雰囲気に押されたのかマナ、ミサト共に言われた通りにするのだった。


「ありがとう、綾波。神経接続切ってくれたんでしょ?」

ベットに横になりながら、シンジはレイにお礼を言った。

「かまわないわ。戦闘に参加できないから、こういう面でのサポートしかできないもの・・・。」

「そういう言い方って、綾波らしいね。」

そう微笑むシンジにレイは顔を赤くするのだった。

「もしもーし、なに2人でいい雰囲気作ってるの〜!!」

その部屋にマナもいたのだが、気にせずに話している2人に怒鳴る、マナ。

「ごっ、ごめんね、マナ。」

「まあ、いいわ。まずは、お疲れ様、シンジ君。今日は1日入院していきなさいって、リツコさんが。
 学校はミサトさんが送ってくれるって。」

この後の事を教えてくれるのはよかったが、ミサトの運転にいい思い出が無いシンジだが断るわけにもいかなかった。

「そっ、そうなんだ、わかったよ。」

「大丈夫?今日はゆっくりしてね。じゃ、明日学校でね!」

「・・・またね、碇君。」

2人が帰った後、シンジは癖になった考え事に耽る。

(全体的な流れは変わらないけど、ミサトさんが一切指示を出してこなかったなあ、なんでだろう?
 その事に関してリツコさんもなにも言わなかったみたいだし。まあ、やりやすいからいいんだけどね。
 次はJAか、あれは問題無いよね。その次がラミエル、母さんの復活予定日だ。
 そして、ガギエル。やっぱりアスカは還ってきてないのだろうか・・・何も知らないアスカだったら仲良くできるかもしれない。
 もし、もし還ってきてたら、僕は仲直りできるんだろうか?そして・・・それ以上の関係になれるのかなあ・・・・・。)

今日も答えのでない考えに耽つつ、眠りにつくシンジであった・・・。



<後書き>
どうも、ウエッキーです。
なんとか、シャムシェル戦が終わりました。次でJAとラミエル書いて、アスカ登場!!といきたいものです。

ここでいつもの「勝手に解説コーナー!!(笑)」なんですが・・・やめます、これ。
タームさんの所にある「投稿作家様のコーナー」にてやらしてもらうことにします。
その際に、「どうして、これはこうしたのか?」っていうのをメール、掲示板で質問していただければお答えしますので、よろしくです。


<次回予告>
ついに現れた、碇ユイ。
彼女はネルフでどういった行動を起こしていくのか?
また、ゲンドウは計画の必要が無くなってどうするのか?

次回、The Restart Of Evangelion

        「碇ユイ帰還、そして・・・」 

を、お送りしまーす。


マナ:うぬぬぬ・・・綾波さんってば余計なことを。(ーー)

アスカ:なんだか、ファーストと仲良くできそうだわっ!

マナ:シンジまでアスカがどーとかこーとか言ってるし。(ーー)

アスカ:これで、アタシが来日したら問題解決ねっ!

マナ:なんとしてもそれまでに、マナちゃんの可愛いところを擦り込まなくちゃっ!

アスカ:ムダムダ。それより、アタシが戻ってきたアタシなのか、過去のアタシなのかが問題よねぇ。

マナ:うーん。どっちのアスカだったら、わたしに都合がいいんだろう?

アスカ:いい加減諦めたらぁっ!?

マナ:これは、アスカが来る前に規制事実を作って・・・ごにょごにょ。

アスカ:そんなことしたらアンタ殺してやるーーーーーっ!!!(▼▼#)

マナ:早速行動開始よっ!

アスカ:コラーーーーっ! 早く来日しないとっ! シンジがあぶなーーーーーいっ!
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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