使徒殲滅翌日・・・。 歴史を知ってるとは言え、彼らにとってそれは「休日」の意味を持つ。 テスト等は殲滅翌日にはやらないし、学校を休んでもかまわないのだ。 そんな日に早朝から出かける人物が3人。 「それじゃ、行きましょうか?」 「わかったわ、お母さん。」 「そうですね。みんなが起きると厄介なことになりかねませんからね。」 ユイ・レイ・カヲルである。3人は一言づつ交わし合った後、出かけていった。 「すう・・・すう・・・すう・・・。」 一方、ここはシンジの部屋。 前日の疲れからか、ぐっすりと眠っていた。そんな中、部屋のドアがそっと空ける人影。 「よく、寝てるわね・・・罪滅ぼししてもらわなくちゃ♪」 モソモソとシンジのベットにもぐりこむ人影。 (アタシをほっとくなんて・・・寂しかったんだからね、シンジ。) そっと小声でつぶやくと「ぎゅっ」と腕に抱きつき、二度寝するのだった。 (う〜ん・・・なんか狭いな・・・。なんか寝返りうてないし・・・なんか柔らかいし・・・なんかいい匂いするし・・・。) 寝返りをうとうとしたシンジが「なんか柔らかく、なんかいい匂いのする物体」に当たり、うっすらと目を覚ました。 横を見ると、きれいな赤毛と赤いヘッドセットが目に入る。 「・・・・・ま、まさか、ア、アスカ!!」 腕をしっかり抱きつかれているため起きることもできない、そのままの状態で部屋を確認する。 (僕の部屋だ・・・ってことはア、アスカが夜這い!!そんな、でも、アスカのこと好きだけど、まだ早いって言うか・・その、あの。) 寝起きの頭に考えられない事態が発生したため、混乱するシンジ。 (僕からじゃなくて、アスカからだなんて・・・。僕が情けないからアスカに恥をかかせてしまった、どうしよう〜!?) 大混乱を起こしてる中、アスカが目を覚ました。 「・・・う〜ん。おはよう、シンジ♪」 かつて見たことの無い素敵な笑顔で朝の挨拶をするアスカ。シンジはその笑顔に見とれた後、顔を真っ赤にして倒れた。 「ちょ、ちょっと、シンジ?だいじょうぶ、ねえ?」 ゆさゆさと揺り起こすと、シンジが復活した。開口一番、状況を聞く。 「お、おはよう、アスカ。ところで、どうしてここで寝てるの?・・・もしかして、ぼ、僕がナニかしてしまった、とか?」 復活はしたものの、記憶に混乱が見られるのか、わけのわからないことを言うシンジ。 (だったら、うれしいんだけどね・・・。) 「違うわよ!・・・その、寂しかったから、つい、ね。」 顔を真っ赤にして答えるアスカ。シンジと「ナニ」してしまって迎えた朝ではないのを残念がってはいたが。 「そっか・・・。でも、これはちょっと・・・。」 「なによ!迷惑だったってわけ!!」 怒りで顔を真っ赤にするアスカ。 「ち、違うよ・・・。これは・・・うれしいんだけど、まだ、その、早いんじゃないかな〜、と。」 「そ、そうね・・・。でも、アタシはこれくらいの事をするほど、アンタが好きで寂しかったんだからね!」 顔の色こそ変わらないものの、表情と声の調子がコロコロ変わるアスカにシンジは微笑んだ。 「何笑ってんのよ!罰として、アタシをデートに誘いなさい!!」 「わかったよ、アスカ。・・・・・お嬢さん、僕と一緒に映画でもいかがですか?」 デートと言うよりナンパしてるような誘い文句だが、前回のシンジには到底言えないような言葉だろう。 アスカにとっては、言い方よりも「シンジが誘ってる」って言う事が重要なので文句は言わない。 「しょうがないわね。このアタシが付き合ってあげるわ、感謝しなさい♪」 「光栄です♪・・・さて、朝ご飯を食べに行こうか?」 「そうね。じゃあ、後でね。」 満面の笑顔でシンジの部屋から出て行くアスカ。それを見送った後、今やってる映画をチェックするシンジであった。 時間は遡り、アスカがシンジの部屋に侵入した頃、マナの部屋に侵入する人影・アスナである。 「アスカお姉様は最近かまってくれないから、マナお姉様に乗り換えよ!」 別にアスカと付き合ってたわけでもないのだが、1人でそう納得するとマナの眠るベットに近寄ってくる。 (お姉様の寝顔、寝姿、ぬくもり・・・楽しみだわ!) すっかりカヲルの毒(?)が染まりきってしまっているアスナ。 とは言え、本人にしてみれば甘えているに過ぎないと思うのだが、真実は闇の中である。 そんなこんなで、ベットに到着し、そっとシーツをめくるアスナ。 (はう・・・素敵ですわ♪) 顔を真っ赤にし、恍惚とした表情を浮かべるアスナ。はっきり言って「アブナイ人」である。 (そ・れ・で・は、お邪魔しまーす♪) モソモソと入り込むアスナ。マナの体に抱きつくと、アスカ同様、二度寝に入るのだった。 「ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・カチッ!」 「ふああ〜・・・。よく寝たわ・・・って体が重いわ!か、金縛り!!」 目覚し時計を止め、体を起こそうとするも起き上がることが出来ない。体全体が動かないかのようで、混乱するマナ。 「お姉様、おはようございます〜♪」 そんな中、アスナが目を覚まし、ひょこっと顔を出した。もう少し、顔を近づければKISSできる距離である。 「キ、キ、キャアアアアアアア!!!!!!!」 「お、お姉様、落ち着いてください!!」 他の人を起こしてしまう危険にとらわれたアスナは、マナの突然の絶叫にうろたえた。 「え〜い・・・ままよ!!」 「キャアアアアア・・・・・んむっ。」 何を言っても聞こえないと判断したアスナは、マナにKISSすることで絶叫をとめた。 5秒ほどし、どちらからでもなく離れた。 「落ち着きました、お姉様?」 「あ、う、あ・・・って、どうしてアスナちゃんがここにいるの!?」 同性とのファーストキスよりも、ここにアスナがいることを疑問に思うマナ。 「それは・・・お姉様といっしょに寝たかったからです〜。」 顔を真っ赤にして、そう言うアスナの笑顔は性別関係無く惹きこむような素敵なものであった。 「あ、ありがとう・・・って、あたしの・・・あたしのファーストキスが〜!!」 笑顔に惹きこまれそうになるが、それよりショックなことを思い出してしまったマナ。 「私もはじめてのキスだったんですよ。一緒ですね、お姉様♪」 (・・・この娘に何を言っても無駄なのかしら。それとも、この娘と付き合えって言う神様の意思なのかしら。) マナが軽い現実逃避してる中、恥ずかしそうに告白するアスナであった。 「そうだ!そろそろ、朝ご飯の時間ですよ、お姉様。」 「そうね。じゃあ、行きましょうか。」(ご飯食べてからにしよう・・・すべては。) そう言って、マナの腕に自分の腕を絡めるアスナ。マナは考えに耽っていた為か、気にすることなくダイニングに向かうのであった。 The Restart Of Evangelion 第8話「好きだから・・・。」 「あれ?おばさまがいない・・・ん、何これ?」 初めにダイニングについたアスカの開口一番がこれであった。テーブルの上にあるメモを手に取り、早速読んでみる。 (みんなへ。レイと渚君と3人で出かけてきます。夕飯には帰って来れると思いますが、遅くなるようでしたら連絡します。 ユイ) 「目的地は書いてない・・・か。まあ、いいわ。今日はシンジとデートだし、むふふ。」 自分達以外の人はどうでもいいのか、席についてシンジを待つアスカだった。 「お姉ちゃん、おはよう♪」 「・・・・・・・。」 しかし、来たのはアスナ・マナであった。2人は腕を組んでいるのだから、朝から驚くアスカ。 「ちょ、ちょっと、なにやってんの!アンタ達〜!!」 「うふふ・・・いいでしょ?」 「・・・・・・・。」 答えになっていないが上機嫌のアスナと考え込んでいるため答えないマナの2人。 「まあ、いいわ。ご勝手にどうぞ〜。」(さようなら・・・マナ。別に反対しないし、いい友達でいましょう。) そんなことを考えてるアスカ。そんな時にシンジが現れた。 (ふう、やっと映画がきまったよ・・・。) 「おまたせ〜、みんな。・・・ってあれ?母さん達は?」 「出かけたみたいよ。はい、これ手紙。読んだら、朝ご飯作ってね♪」 そう言って手紙を渡し、向かいに座る女性2人を見ているアスカだった。 (あの2人と出かけるって・・・何かするのかな?まあ、考えても仕方ないか。) 「さて、ご飯作るか〜。」 シンジがご飯を作り終え、みんなで食べている中で、やっとシンジが異変に気付いた。 (アスカ・・・どうなってるの、あの2人?) (知らないわよ。まあ、2人とも「そういう人」だったんでしょ。気にしない、気にしない。) (そうだね。) 小声で会話しているアスカ・シンジ。 「さ・・・て、と。今日は出かけるから2人でお留守番よろしくね。」 食事の後にアスカはマナ・アスナにそう言うと自分の部屋に戻っていった。デートの用意をするのだろう。 それに合わせる様にシンジも部屋へと戻っていった。 (ちゃ〜んす!お姉ちゃんはシンジさんにあげるわ、私はマナお姉様と・・・うふふ。) 相変わらず、考え込むマナの隣でアスナは怪しく微笑んでいた。 (そうよね・・・アスナちゃんのような美少女と付き合えるっていうのも貴重なのかも・・・うーん。) マナは戻ってこれないところに足を踏み入れようとする、結論を導き出そうとしていた。 「よし!準備完了!!いくわよ・・・アスカ。」 自分の部屋の全身が映る姿見を見ながら気合を入れるアスカ。 ポーチを持って、隣のシンジの部屋をノックする。 「シンジ〜、準備できた?そろそろ行くわよ〜。」 「うん、今行くよ。」 (僕が部屋まで迎えに行こうと思ったのに。これじゃ、どっちが誘ったんだかわからないよ、アスカ。) 苦笑しながらドアを開けると、そこにはおしゃれしたアスカが立っていた。 とたんに顔が真っ赤になるシンジ。 「じ、じゃあ、行こうか?ア、アスカ・・・。」 「?何どもってんのよ、アンタ?」 「だって、そのすごくきれいだから・・・びっくりして・・・。」 この言葉にアスカも顔を真っ赤にする。 「な、何言ってんのよ・・・(ありがと。)」 「えっ?なんか言った?」 「何も言ってないわよ!ほら、さっさと行くわよ!!」 最後は小声だから聞こえないと思っていたが、聞こえてしまったらしい。 内容まではわからないのが幸いだったのか口調が強めになるアスカであった。 「いってらっしゃーい!!」 アスナに見送られて、2人のデートが始まるのであった。 「んで、どんな映画見るの?」 「うん。ちょっと話題になってるやつなんだけど・・・。」 「ふーん。どういうやつなの?」 「恋愛物なんだけど・・・ダメかな?」 「そんなことないわよ。」 「よかった・・・。あっと、着いたね。すいませーん、学生2枚。・・・はい、アスカの分。」 「ありがと。それじゃ、入りましょ♪」 「先に入って、席取っといてくれる。ジュース買ってくるよ、何がいい?」 「ん〜・・・炭酸とお茶じゃないやつならなんでもいいわ。」 「わかった。」 「おまたせ!オレンジとアップル、どっちがいい?」 「じゃあ、アップル。」 「はい。・・・あっ、始まるよ。」 「ありがと♪」 (私はあなたを愛しています・・・この気持ちは永久に変わることはありません。) (私も・・・愛してます。) そう言うと抱き合う2人。そっと唇が近づく・・・。 (貴様に大事な娘はやらん!とっとと帰れ!!) (そんな、私は娘さんを愛しているんです!どうか認めてください!!) (ならん!貴様のようなヤツに・・・貴様のようなヤツに・・・娘をやれるか〜!!) (お父さん!私達は愛を誓い合ったのよ。なぜなの、なぜ、彼はいけないの!?) (うるさい、うるさ〜い!!そんなにコイツがいいのなら、この家から出て行け! その代わり、親子の縁は切る!それでいいならコイツと一緒になるがいい!!) (・・・親子の縁を切る必要は無いよ。わかりました、これで失礼します。さようなら・・・僕の愛した人。) (待って!!・・・この世で一緒になれないのなら・・・・・。) (!!待て・・・何をする気だ!!) (私にはこれしか思いつかないわ・・・あなたと一緒なら私、怖くないわ。) (わかった・・・。一緒にいこう、そして・・・) ((天国で一緒になりましょう。)) (やめろ・・・やめるんだ!!) 「グサッ!!」女性が持ってきた2本のナイフ。互いに1本づつ握り、自分の胸に刺した。 (なんてことを・・・このバカものが・・・・・。) (これで・・・1つに・・・・・。) (ああ・・・なれるさ。ずっと、ずっと・・・一緒だよ。) ((愛してる、永久に)) 「・・・すごい内容だったわね。イメージしてたのと違って、ビックリしたわ。」 「気に入らなかった?」 「ううん。あの行動はいただけないけど、あの2人のような強い気持ちのつながりはうらやましかったな・・・。」 「僕と、僕と、そ、そういう気持ちを、つ、作っていこうよ。」 「そうね・・・。誰にも壊すことの出来ない、強い気持ちのつながりを作りましょうね。」 「うん・・・。」 「あっ、公園か・・・。すこし、休んでかない?」 「そうだね。」 「今度は言われたからじゃなくて、シンジから誘ってね。」 「うん、そうするよ。」 「「・・・・・・・。」」 「アスカ・・・。」 「シンジ・・・。」 「「好きだよ・・・。」」 「チュッ」今日見た映画のように素敵なキスをする2人であった。 「もうすぐ、溶岩の中にいる使徒だね。」 「そうね・・・。今度はアタシとアスナの出番かしら?」 デートの帰り道、次の使徒のことで話をする2人。 「わからない・・・。僕達の知ってる歴史とずいぶん変わってしまったから。」 「そうね。前回の人生ではこんなにアタシとシンジ仲良くなかったもんね。」 腕を組みながら歩く2人、美少女と中性的な顔立ちの少年のカップルは絵になるのであった。 「結果的には変えるんだけど・・・。予想外な展開ばかりで混乱してるんだけどね。」 「そうね・・・。まさか、マナがいるとは思わなかったしね・・・。」 「僕だって、アスカが2人いるとは思わなかったよ。」 「「・・・・・・・。」」 お互い黙ってしまったが、これはこれでいい方向に変わったということはわかっている2人。 「・・・今回、最後はみんなで平和に暮らせる世界にしないと、ね?」 「うん。父さんも改心したし、あとは僕達次第だよ・・・。がんばろうね、アスカ!」 「ええ。」 2人見つめ合って微笑み合うと家路に着いたのだった。 「「ただいま〜!!」」 2人が家に着き、家の中に入ると誰もいなかった。 「誰もいないのかしら・・・?」 「マナやアスナちゃんも出かけたんじゃないのかな?」 「そうね・・・おばさま達も帰ってないみたいね。」 「一応全員分作ろうかな。アスカ、悪いけどお風呂お願い。」 「わかったわ。」 2人で役割分担を決めると行動を開始した。 そのころ、マナの部屋にて動く影2つ。 「お姉ちゃん達、帰ってきたみたいですね。」 「そうね。それにしても、この問題わからなかったのよ〜。助かったわ、アスナ。」 「お姉様のためですもの・・・。」 「ありがと、アスナ。さて、下に行きましょうか?」 「はい♪」 すっかり仲良しになった2人は腕を組んでダイニングまで降りていった。 「やっほ〜、シンジ君。」 「あっ、マナ達いたんだね。「ただいま」って言っても、返事が返ってこないからいないかと思ったよ。ご飯、食べるよね?」 「うん!食べる、食べる♪」 2人が話をする中、アスナはシンジに話し掛けることは無かった。 あまり男性が好きではないと共に、アスカを取られたと思ってるのでシンジの事があまり好きではないのだ。 「あら?アンタ達いたの?」 「あ〜!ひっどーい!!聞いた、アスナ?「いたの?」だって〜。」 「お姉ちゃん、私達いちゃいけなかったの?」 「そんなことないわよ。「ただいま」って言っても出てこないからいないと思っただけよ。」 女性陣の会話が耳に入ってくる中、1人マイペースでご飯を作るシンジ。そんな中、電話が鳴った。 「プルルル・・・プルルル・・・プルルル・・・ガチャッ。」 「はい、碇ですけど?」 「あら、アスカちゃん。ユイですけど、ごめんなさいね。今日帰れそうに無いから4人で夕飯食べてくれる?」 「わかりました。今、どこにいるんですか?」 「帰ってきたら教えてあげる♪それじゃあね〜。」 受話器を置くとシンジの声が台所から聞こえた。 「電話誰だったの〜?」 「おばさまから。今日は帰れそうに無いって〜、どこにいるかは帰ってきたら教えるって!」 シンジが聞きそうな、居場所のことも答えるアスカ。 「よっと・・・、わかったよ〜。マナ、手伝ってくれる?」 「いいよ〜。」 「アタシも手伝うわ。」 そんなこんなで食事する4人。今日のことで会話が弾む。 「それにしても・・・急に仲良くなったわね、2人。」 「そうだよ。びっくりしたよ、腕組んで降りてくるから。」 「うーん。アスナとは親友みたいなものよ、わたしにとって。」 「え〜!私は恋人のつもりだったのに〜。」 「「・・・・・・・。(おいおい〜)」」 「もう、何言ってるのよ、アスナったら。」 会話に花が咲き、気付いたら夜の11時であった。 「もう、こんな時間か・・・。アタシ、そろそろ寝るわ。おやすみ〜。」 アスカを皮切りにみんなが床に着くことになった。 4人が4人とも、忘れられない1日であった・・・・・。 <後書き> ども、ウエッキーです。 LAS度UPです!これからいろいろあるでしょうし、ね。 ついにアスナに「男嫌い」のアビリティーが!(笑) これからどうなっていくんでしょうね・・・自分でも悩んでます、いろいろと。(苦笑) <次回予告> 浅間山火口内にて、孵化する前の使徒を発見!! ネルフはユイの進言で「殲滅」の命令を出す。さて、誰がもぐるのか!? 今回の話で家を開けていた、ユイ・レイ・カヲルは何をしてたのか!? 次回、The Restart Of Evangelion 「新・東方の三賢者」 をお送りします。
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