真っ白な空間の中で対峙する、2人の『少年』がいた。

「やあ。」

「・・・君は『人』にはなれないよ。」

「いきなりだね・・・。君は好意に値しないよ、『アダム』」

「わかっているんだろう?『リリス』と君との違いを。」

「・・・彼女は『リリス』じゃない。綾波レイ、『人』だよ。」

「そうか・・・。まあ、どうでもいいことだよ。で、わかっているんだろう?」

「・・・わかっているよ。彼女にあって、僕に無いもの、それは『人の遺伝子』」

「その通り。彼女は『力』を全て使い、『リリス』をその身体から解き放っても、変わりに体を形成するものがある・・・」

「しかし、僕にはそれが無い、すなわち『身体』を形成するものが無くなる。故に『力』全てを使うことが出来ない、そうだね?」

「そう、君は『力』の放出はできない。そして『アダム』の放出もできない、君はどうやっても『人』にはなれないんだよ。」

「・・・・・。」

カヲルと『アダム』は互いに学生服、ズボンのポケットに両手を入れた格好で話をしていた。
『人』になれないと言われたとはいえ、当のカヲルはそれほどショックを受けていなかった。
むしろ「ホッとしている」、そんな表情を浮かべていた。

「なぜ、そんな表情をしているんだい?君の願いが叶わなかったと言うのに・・・。」

「確かに、僕の願いは叶わなかった。でも、これでよかったのかもしれない。」

「なぜだい?君は碇シンジ達と同じ『人』となりたかったのではないのかい?」

「そうだよ、彼らと同じ『人』になりたかった。けど、この『力』で彼らを守ることが出来ることに気付いたんだよ。」

「守る?」

「彼らはEVAに乗っていないときは普通の中学生なんだ。護衛がついているとは言え、何が起こるかわからない。
 そんな時に僕が彼らを守るのさ、この『力』でね。」

「・・・僕には理解できないよ。なんでそんなに『人』に肩入れをするんだい?」

「好きだからだよ、彼らがね。いや・・・シンジ君が、かな。」

「・・・・・・・。」

「そろそろ、僕は家に帰るよ。それでは・・・。」

「・・・もし、君が使徒だと知られて、また『生』か『死』か選ぶことになったらどうするんだい?」

「そのときは・・・、またシンジ君に頼むさ、精一杯謝ってね。」

「・・・・・・・。」

カヲルの言葉に返事をせず、『アダム』は姿を消した。そして、カヲルも姿を消す。


「・・・ずっと、寝てたようだね。」

そこは本部内の病室だった。
ベットから体を起こすと、伸びをし、近くの時計に目をやる。
時計はデジタル表示で『AM2:57』と出ていた。

「もう一眠りして、朝の診察を受けたら帰ろうかな・・・。」

そして、カヲルはまた眠りについた。






                    The Restart Of Evangelion

                          第10話「カヲル復活!?」







話は少し遡る。

家の前に着いたシンジとアスカ、先にレイが帰った、と聞いていたのだが家には明かりがついてなかった。

「ただいまー。レイ、いる〜?」

本部から帰ってきたアスカが、挨拶もそこそこにレイに声をかける。

「・・・いないのかなあ?」

「そんなことないでしょ?先に帰ってきてるだし、レイは寄り道なんかしそうにないじゃない。」

「まあ、そうだけど。」

そんな会話をしながらリビングへと向かう。

「いないわね・・・。」

「うん、いないね。そうだ・・・アスカはレイの携帯に電話してみて、僕は夕飯のしたくするから。」

「わかったわ。」

そう言ってキッチンに向かったシンジは、そこで何者かの気配を感じた。

(だれか・・・いる!?もしかしたら、レイになにかあったんじゃ・・・。)

不安を感じたシンジは辺りを見まわすが、それらしい人影は見つからない。

「誰だ!隠れてないで出て来い!!」

シンジは何者かに向かって叫んだ。しかし、帰ってきた声は・・・。

「・・・・・・・お腹空いた。」

「その声・・・レイ!?」

暗がりの中、電気のスイッチを入れると、姿勢良く座ったレイがいた。

「お兄ちゃん・・・お腹、空いたの。」

「はあ・・・びっくりしたよ、もう。」

「ごめんなさい、お腹空いてたから。」

自分の感じた不安が的中しなかったことに安堵したシンジ。

「もしかして、帰ってきてからここにいたの?」

レイは力無さげに「コクリ」と首を縦にふった。

「そうなんだ・・・よし、今日はみんなの好物を作るからね。」

「本当?私、ニンニクラーメンチャーシュー抜き。」

「はいはい。そうだ、アスカを呼んで来てくれるかな、リビングにいるはずだから。」

自分の好物を作ってもらえる喜びからか、急いでアスカを呼びにいくレイであった。



「なによ!!レイってば、携帯電源入れてないわけ!?」

リビングでは何度かけてもつながらない携帯に怒り始めるアスカがいた。

「あの・・・アスカ?」

「なによ!うるさいわね・・・ってレイ!?アンタ、今までどこにいたのよ!?」

「ごめんなさい・・・台所にいたの。」

申し訳なさそうにするレイの姿に、すっかり怒気が抜けてしまったアスカ。

「はあ・・・。まあ、無事に帰ってるからよかったわ。けど、あんまり人に心配かけんじゃないわよ、いいわね?」

「うん、わかった。・・・本当にごめんなさい、アスカ。」

「はいはい。ところでシンジは?」

シンジの名を聞き、ここに来た目的をレイは思い出した。

「そう、お兄ちゃんが呼んでるの。」

「了解。行きましょ、レイ。」

レイの首が縦に振られたのを見ると、アスカはレイとキッチンへと向かった。


「シンジ〜、なにか用?」

「うん、夕飯なんだけど・・・ハンバーグでいいかな?」

「アタシはいいけど、レイはお肉食べれないんでしょ?」

自分の好物とはいえ、レイのことを考えて遠慮するアスカ。

「いいんだよ。レイはニンニクラーメンチャーシュー抜きだから、ねっ、レイ?」

「うん。だから、アスカも遠慮しないで・・・。」

(どういうことかしら?アタシとレイに好物を作るなんて・・・。)

「じゃあ、頼むわね、シンジ。」

アスカは疑問を浮かべたが、せっかくシンジのハンバーグが食べられることには変わりないので気にするのをやめた。


30分ほどした後、食事ができあがった。

シンジはオムライス、アスカはハンバーグ、レイはニンニクラーメンチャーシュー抜き、シンジとアスカにはサラダとスープもある。

「「「いただきまーす♪」」」

静かな食卓の中、アスカが話題をふる。

「はあ〜、マナはいいわね・・・温泉でしょ、ミサトとママといっしょに。」

「そうだね・・・でも、僕はまたマグマの中に入るのはゴメンだよ。」

「何よ、その言い方。でも、ミサトとママじゃね〜。」

「何か問題あるの?」

「大有りよ!2人はって言うか、ママも大酒飲みなのよ・・・だから、マナ大変よ〜。」

「そ、そうかもね・・・。そういえば、アスナちゃんは?」

「アスナさんなら・・・マナさんと一緒に松代に行ったわ。」

いきなりのレイの発言に顔を見合わせるシンジ・アスカ。

「・・・今、何してるのかしら、あの子。」

「護衛もいるから・・・大丈夫だよ。松代にはリツコさんもいるみたいだし。
 ついていったんだったら、一緒に温泉旅館にいるかもしれないからね。」

「そうね。」

「そうそう。」



某レストラン
碇家でそんな話が弾んでいる中、当のアスナはリツコとそこにいた。

「リツコさん、マヤさんとは仲良くしてるんですか?」

「そう言う貴方こそ、マナと仲良くやってるみたいじゃない?」

「ええ。お姉様は柔らかくて、いい香りがして、最高ですわ。」

「マヤはね、夜になると甘えてくるのよ・・・本物の猫みたいに。」

「「ふふふふふ・・・。」」

美女と美少女がする怪しげな会話に、周りの客は聞き耳を立てていたのは言うまでもない。



温泉旅館
ここでは食事も終わり、女性3人で温泉に入っていた。

「今日はお疲れ様、マナちゃん。」

「はい。緊張したけど、なんとか勝てて良かったです♪」

ミサトが温泉に浸かりながら一杯やってる中、キョウコがマナを労っていた。

「・・・ところで、マナちゃ〜ん。」

「な、なんですか、ミサトさん。」

「あなた・・・胸が寂しいわね。」

「なっ、なっ、何を言うんですか、いきなり!!」

本人も気にしている「貧乳」。酔っ払いの戯言とはいえ、胸の大きいミサトに言われるとイヤミにしか聞こえない。

「まあまあ、このミサトお姉様にま・か・せ・な・さ・い!!」(モミモミ)

そういうと、ミサトはマナの胸を揉み始めた。

「ちょっ、やあ、やめて〜!!キョウコさん、助けて〜。」(もみもみ)

「ごめんなさい。私には見てるしかできないわ・・・。」(モミモミ)

そういうキョウコの顔は笑っていた。もちろん、止めることはできるのだが、酔っている所為か
「見てたほうが楽しい」ということで、傍観者を決め込んでいたのだ。

「あっ、やん。お、お願いミサトさん・・・許してください〜。」(もみもみ)

「ダ〜メ♪今日は徹底的に胸を大きくしてあげるわ。」(モミモミ)

「あっ、だ、だれか助けて〜。あん♪」(もみもみ)

こうして、マナは酔っ払いミサトの餌食となった。合掌。(チーン♪)



夜も明け、翌日になった。

『ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・♪』

アラームの音で目を覚ますシンジ。前も今回も早起きなのは仕方の無いところか。

「う・・ん、今日はカヲル君のお見舞いに行こう。」

そういって、ベットから出て制服に着替え始めた。
そして、キッチンに行くと、レイが起きていた。

「おはよう、レイ。」

「おはよう、お兄ちゃん。」

「アスカは?」

「まだだけど・・・起こしてくる?」

「うん、頼むよ。」

これも碇家の朝の日常。
アスカが自分で朝起きてくることは滅多に無い。
彼女は低血圧なのではないのだが、なぜか起きれないのである。

シンジが朝食の用意をしていると、アスカが起きてきた。

「おはよ・・・シンジ。お風呂は?」

「用意できてるよ。」

「それじゃ、入ってくるわね。」

「はいはい。」

アスカは眠そうな目をこすりながら、お風呂へと向かっていった。

「・・・お兄ちゃん、手伝うことある?」

「助かるよ、出来た物をテーブルに運んでくれるかな?」

「うん、わかった。」

そういって、手伝うレイの姿にシンジは未だに感心してしまう。

(前と比べると、明るくなったし、人と話すようになったし、お手伝いしてくれるし・・・成長したね、レイ。)

全ての料理と準備が終わったころ、タイミングを見計らったようにアスカがやってきた。

「さあ、食べましょうか?」

「「「いただきまーす。」」」

これまたいつもの朝食時の会話が始まる。

「アスカもたまには手伝ってよ。」

「何よ〜、夕食は手伝ってあげてるでしょ。」

「・・・お兄ちゃん、アスカに朝食の手伝いを頼むだけ無駄よ。」

「なんですって〜。どういう意味よ、それ?」

「そのままの意味よ。」

「もう、いつもいつも喧嘩は止めてよ、2人とも。」

「アンタが朝食の手伝いをやらせようとするからこうなるんでしょ!?」

「・・・もう、不毛な言い争いはしたくないわ。」

明るく楽しい(?)朝食タイムも終了し、各々部屋に戻って登校の準備を始めようとしたが、シンジはそうしなかった。
それを見て、後は出かけるだけとなったアスカが声をかける。

「何、シンジ学校行かないの?」

「うん。今日はこの後、カヲル君のお見舞いに行こうと思って。」

「・・・じゃあ、私も行かない。」

「レイ、アンタ何言ってんの?」

「・・・家でお母さんと、キョウコさんと、マナさんと、アスナさんの帰りを待ってるわ。どうせ、今日は休んでもいい日だし。」

マナが倒したとはいえ、使徒殲滅には変わりない。
マナはもちろんのこと、マナ以外のチルドレンにも休日が与えられるのだ。

「・・・・・それもそうね。アタシは何しようかな。」

「じゃあ、一緒にお見舞いに行こうよ。」

「うーん、悪いけどパス!渚は悪いヤツじゃないんだけど、正直苦手なのよ。レイと家にいるわ。」

「そう?それじゃあ、そろそろ行ってくるよ。」

「「いってらっしゃーい。」」

シンジが出かけた後、アスカとレイは特に言葉を交わすわけでもなく、お互い自分の部屋へと引き上げていった。



「はい・・・異常無しですね。それでは、帰っていいですよ。」

「それでは失礼します。」

「あっ、誰かに迎えに来てもらわなくていいのかい?」

「ええ。大丈夫ですから、歩いて帰ります。」

「そうかい?それじゃ、お大事に。」

「それでは、失礼しました。」

診療室ではカヲルは朝の診察を受け、退院の許可をもらったところだった。

「・・・・・さて、身支度も済んだし、帰ろうかな。」

病室から出ようとドアに手をかけると、ドアは独りでに開く。
そこにはたった今、到着したシンジがいた。

「あっ、カヲル君?」

「やあ、シンジ君。もしかして・・・僕を迎えに来てくれたのかい?」

「ううん。昨日倒れたって言うから、お見舞いに来たんだけど・・・もう退院していいの?」

「許可はもらってるからね。一緒に帰ろうか?」

「うん。あっ、そうだ・・・ちょっと付き合って欲しいんだけどいいかな?」

「なんだい?」
(シンジ君からのお誘いなんて・・・。く〜、意識不明になってよかった!!)

カヲルは心の中でガッツポーズを決めていた。
シンジを自分のものにすることは不可能になりつつあるが、それでも好きな人の誘いに嬉しくないわけがない。

「あのね、今日はアスカとアスナちゃんのお母さんの歓迎会と、マナの祝勝会、あとカヲル君の快気祝いをやろうと思うんだ。
 それで、買出しを手伝ってもらおうかな、なんて。」

「僕の快気祝いなんて・・・君は何て優しいんだ。ふふ、やっぱり君は好意に値するよ。」

「あ、あの、ダメだったらいいんだ。カヲル君は退院したばっかだし、代わりにアスカを呼んでもいいし。」

「いや、僕が行くよ。せっかくのシンジ君の頼み事を断るわけ無いじゃないか。」
(こんなことは滅多にあるわけじゃないんだから、ぜひ2人きりで『おでかけ』しなくては!!)

「本当?ありがとう、カヲル君!」

「それじゃ、行こうか。」

「うん!」

アスカの名前に触発されたのか、カヲルはシンジと買出しに出かけることになった。
まあ、カヲルのことだから、シンジに頼まれた時点で行く気だったのだが・・・。



商店街へと向かう途中、時間を見ると11:30を過ぎたところだった。

「カヲル君、どこかでお昼食べない?ちょっと早いけど・・・。」

「僕はシンジ君が食べたいんなら付き合うよ。」

「じゃあ、あそこのファミレスでいい?」

「うん、シンジ君に任せるよ。」

そうして、彼らはお昼を取ることにした。
食事中にも雑談に耽っていたが、食後のコーヒーが運ばれてきたところで、カヲルは顔を俯かせた。

「どうかしたの、カヲル君?」

「シンジ君、大事な話があるんだ・・・ここからは小声で、ね。」

それを聞き、2人は顔を近づけた。

(大事な話って?)

(シンジ君、単刀直入に言うよ。僕は『人』にはなれなかったよ。)

(!! やっぱり、アスカ達のお母さんをサルベージしたのはカヲル君だったんだね。)

(そうだよ、君と同じ方法でね。きっかけは、綾波さんさ。
 彼女は君に『力』を渡し、還ってきたら『人』になっていたんだ。
 僕もそれで『人』になれると思ってたけど、『力』の使いすぎで倒れただけだったよ。)

(そうなんだ・・・。)

カヲルは『遺伝子』の事については言わなかった。
言ったところでどうにかなるような問題でもないし、言いたくもなかったのだ。

(結局、『人』ではないけど・・・僕と今まで通り『友達』でいてくれるかい?)

「当たり前だよ!カヲル君は僕にとって大事な『親友』だよ。」

「ありがとう・・・シンジ君。」

カヲルは突如、大きな声になったことを咎めるどころか、シンジの言葉に涙を流していた。

「これが・・・涙、なんだね。」

「そうだよ。」

袖でゴシゴシと涙を拭うと、いつものように微笑を浮かべながら言った。

「さて、そろそろ買い出しに出かけようか。」

「うん。」

こうして2人は商店街へと向かっていった。



そのころ、碇家ではアスカとレイがキッチンで格闘していた。

「料理って難しい・・・。」

「何言ってんのよ!シンジが出来るんだから、アタシらにも出来るわよ!!」

そんなことを言いながら、料理の本を見つつ、イライラしてる2人であった。

「・・・私、出前でいい。」

「そうね・・・、いいかげん疲れたわね。」

料理開始から1時間・・・結局何も作れなかった2人は素直に出前を取っていたのであった。



しばらくして、碇家の前に1台のタクシーが止まった。

「3780円になります。」

「はい、これで・・・。お釣りはいらないわ。」

助手席に座っていたユイは財布から5000円を渡すと、車から降りていった。

「ありがとうございました。」

運転手は笑顔を浮かべて、そこから走り去っていった。

「ユイ〜、奮発しすぎじゃない?」

「そうかしら?」

「そうよ、ネルフから車出してもらえばよかったのに。」

「まあ、いいじゃない。払ったのは私なんだから。」

「それもそうね。・・・ただいま〜。」

タクシーから降りたユイ・キョウコ・マナ・アスナは家へと入っていった。

「やっと、帰ってきたわ〜。」

「お姉様、一人で行ってしまわれて寂しかったです〜。」

「ごめんね♪」

「ぶう〜。」

早速、アスナとマナはリビングでくつろいでいた。

「アスカちゃんはどうしたのかしら?」

「レイの姿も見えないわね・・・。」

ユイ・キョウコは自分の娘達の姿を見かけないので、少し心配していた。
そして、娘達の部屋を見に行くと・・・。

「「あらあら・・・。」」

アスカ・レイはお昼寝をしていた。
とても気持ちよさそうに寝ていたため、親達は静かに部屋のドアを閉め、リビングへと向かった。

「ところでシンジ君は?」

「あの子は男の子だから心配無いわよ。渚君のお見舞いにでも行ってるんでしょうね、きっと。」

「そうね。」

この時、ユイ・キョウコの2人にはカヲルが退院した事を知らされていなかった。

「さて・・・と、何しようかしら。」

「そうね、退屈だわ。」

「ただいまー!!」

暇をどうつぶそうか考えていた、ユイ・キョウコの耳にシンジの声が入ってきた。

「おかえりなさい。」

「おかえりなさい、シンジ君。」

「た、ただいま。」

いきなり、キョウコが出てきて「おかえりなさい」と言われてどもってしまうシンジであった。
そのシンジの後ろから顔を出したのは、入院中のカヲルであった。

「やあ、ユイさんにキョウコさん。」

「「渚君!?大丈夫なの、あなた。」」

「ご心配おかけしました。僕の目論みは失敗しましたけど、大丈夫ですよ。」

「なるほど・・・わかったわ。さて、おかえりなさい、渚君。」

「おかえりなさい。」

「ただいま帰りました。」

碇家に『家族』が勢ぞろいした中、さっそくシンジはキッチンに入って料理を開始した。

「あらあら、何をするのシンジ?」

「うん。キョウコさんの歓迎会、マナの祝勝会、そしてカヲル君の快気祝いだよ。」

「いいわね!私も手伝うわ。」

「ありがとう、母さん。」

「「じゃあ、私も」」

シンジとユイの会話にキョウコ・カヲルも手伝おうとするがシンジに止められた。

「ダメですよ。2人は今日のメインなんですから、部屋で待っててください。
 母さん、キョウコさんの部屋は?」

「大丈夫よ、教えてあるから。」

「それじゃあ、準備が終わるまで待っててください。」

「で、でも・・・。」

「キョウコさんはアスカ達と話しでもしててください。カヲル君は部屋で安静にしててよ、いいね?」

「「はい・・・。」」

こうして2人をキッチンから追い出すと、親子2人で料理に取りかかった。



階下が騒がしくなっているため、個々の部屋で昼寝をしていたアスカとレイは目を覚ました。

「うう・・ん、なんか騒がしいわね。みんな帰ってきたのかしら?」

『コンコン!』とアスカは自分の部屋のドアをノックしている音が聞こえた。

「はあ〜い、だれ?」

「アスカちゃん、入っていいかしら?」

「どうぞ。」

『ガチャ!』と部屋に入ってきた人物をアスカは満面の笑みで出迎えた。

「お姉ちゃん!」

「あら?アスナもいたの?」

「ぶうー、そんな言い方酷い!」

「ほらほら、2人とも喧嘩しないの。」

「「はあ〜い。」」

もう会えないと思っていた母に会えて、会話も出来る、アスカは幸せを感じていた。
それはキョウコも感じていた。突如、娘が2人になっていたのは驚いたが、今はそんなことが気になることも無く会話を楽しんでいた。

そのころ、レイは一度は起きたものの、結局二度寝してしまった。

マナも家が落ち着くのか、リビングのソファで横になっていた。



作り始めてから3時間ほど経ったころ、キッチンのユイとシンジの方は最終段階に入っていた。

「シンジ・・・あと、9体ね。」

「うん。・・・けど、参号機に取りついた使徒と最後の使徒がどうなるのかわからないよ。」

「大丈夫よ。私とキョウコにリッちゃん、そしてMAGIがいるわ。歴史は変わっているけど頑張りましょう、未来のために。」

「うん、そうだね。」

「お母さんね・・・。」

そういうと、今までより真面目な顔なるユイ。

「シンジとアスカちゃんの孫を抱くまで死ねないからね、お母さん。」

「なっ、何言うんだよ、いきなり!!」

「あら、マナちゃんでもいいわよ。」

「違うよ!!そういうことじゃなくて・・・もういいよ!」

からかわれてることはわかっているのだが、それを簡単に対処する方法など知りもしない。
シンジは料理に夢中になることで、ユイのからかいから逃げた。

「冗談はここまでにして・・・。実際に戦うのは貴方達だけど、貴方達が生きて帰って来て、
 使徒を殲滅する作戦や武器を開発するのが、私達の仕事。
 貴方達に大きな負担をかけることになるけど・・・シンジ、頼りにしてるわよ。」

「うん・・・、がんばるよ。」

「さて、こっちはできたわよ。そっちは?」

「うん、こっちもできたよ!」

「それじゃあ、シンジはみんなを呼んできてちょうだい。」

「わかったよ、母さん。」

シンジはエプロンをはずし、みんなの部屋を回り始めた。



一通り回り終わった後、リビングに行くとマナが寝ていた。

(「マナちゃんでもいいわよ。」って母さん、そんな事言わないでよ・・・変に意識しちゃうじゃないか。)

マナはアスカに比べ、スタイルは劣るかもしれないが、顔は負けないくらいにかわいいのだ。
シンジがいくらアスカのことが好きでも、あんな事を言われた後では変に意識してしまってもしょうがなかった。
それでなくても、かわいい子を見ると多少意識してしまうのは男のサガ(?)であると言えよう。

「マナ・・・マナ・・・起きて、ご飯だよ。」

『ユサユサ』と肩を揺するが、起きる気配はない。

「困ったな・・・。起きないよ、どうしようかな。」

途方にくれるシンジだったが、いい方法が浮かぶわけもなく、さっきと同じ起こし方で再チャレンジをした。

「マナ、起きて、起きてってば〜。」

(やっぱり、かわいいよな、マナ。アスカとは違うかわいさって言うか、うーん・・・って何考えてんだ僕は!!)

まじまじと顔を覗き込んでると、どんどんお互いの顔の距離が近づいていく。
触れるところまであと数センチと迫ったところで、マナがようやく目を覚ました。

(あれ・・・シンジ君の顔が凄く近くに見える、夢かなあ・・・夢だったらいいよね。)

「えっ、あっ、ちょっと、うっ・・・はあ、はあ!」

『チュッ!』とマナはシンジの顔を引き寄せ、唇にキスをした。

(ど、どうしよう、マナとキスしちゃったよ。まだ寝ぼけてるみたいだから・・・何もなかったように起こさないと。)

「マナ・・・ご飯だよ、起きて。」

(シンジ君とキスする夢なんて、いい夢だったなあ。それなのに、誰よ、起こしたのは!?続きが見たかったのに・・・。)

「うーん。あっ、シンジ、君・・・。」
(うそ、シンジ君・・・。はあ、夢で見れたのはさっきから起こしてくれてたからなのかなあ?)

「どうかした?」

「ううん、何でもない。」
(やっぱ夢よね・・・残念。)

「ご飯できたよ、というよりは、ちょっとしたパーティーかな?」

「えっ、どうして?誰かの誕生日だったっけ?」

「違うよ。あのね・・・・・。」

簡単な説明をしながら、会場へと向かった。



「やっと来たわね、遅いわよ!」

そこは庭であった。
庭を利用した、ガーデンパーティー。
メインはBBQと花火、大人にはお酒と言ったところか。
肉が食べれないレイ・カヲルのことも考えて、肉抜きの料理も用意してある。

「それじゃあ、全員集まったわね。まずはキョウコの挨拶からね。」

「改めて、自己紹介しますね。惣流=キョウコ=ツェッペリン、アスカ・アスナの母です。
 これから、しばらくこの家にお世話になります。みんな、よろしくね!」

『パチパチパチ・・・』拍手で挨拶に答えると、ユイが司会を続けた。

「それじゃあ、みんな。グラスを持って・・・・・カンパーイ!!」

「「「「「「「カンパーイ!!」」」」」」


庭にあるテーブルにグラスを置き、椅子に座りながらユイとキョウコははしゃぎまわる子供達を見ていた。

「これが子供達の本来の姿なのよね。」

「14歳、友達と遊びたい盛りよね。」

「前回よりも学校行ってる回数減ってるものね。」

「仕方がない、と言えばそれまでだけど・・・そうさせてるのは私達、大人なのよね。」

自分達が全て悪いわけではないのをユイ・キョウコ、そして子供達はわかっていたが、
前回の事も知る2人にとって、罪悪感に苛まれそうななっていた。
キョウコよりもユイのほうが、心理的ダメージが大きかった。
キョウコよりも早く還ってきていたのに、子供達の自由をより奪っていることに変わりがない現実に辛さを覚えていた。

「・・・これからのための先行投資よ、ユイ。」

「ありがと、キョウコ。」
(相変わらず、変な例えなんだから。)

キョウコが人を励ますときには、決まって変な例えを使う。
無意識なのか、狙っているのかはわからないが、言いたい事は伝わるので結構、励まされるのだ。


子供達は花火に夢中。
今から、特大の打ち上げ花火を揚げようとしていた。

「ほら・・・いくわよ〜。」

「危ないよ、アスカ!」

「シンジ君は僕が守るからね。」

「お姉様、私を守って!」

「あ〜、はいはい。」

「・・・楽しみ。」

『しゅぼっ、ジジジ・・・・・。』
導火線に火がつき、子供達は急いで花火から離れた。

『ジジジジジジジ・・・・・ひゅ〜・・・パーーーン!!』

「きれいね・・・。」

「そうだね・・・。」

「花火・・・日本の文化だね。好意に値するものだよ。」

「きれいね、お姉様。」

「うん、そうね。」

『ひゅ〜・・・パーーーン!!・・・・・ひゅ〜・・・パーーーン!!パーーーン!!』
次々と上がる花火、一つ一つに感想を漏らす子供達を見て、ユイとキョウコは人知れず涙を流していた。

「全て終わったら・・・また花火をやりたいわね。」

「そうね・・・。」

『ヒュルルルルル・・・・・・・パパーーーン!!!』

最後の花火が上がったのを見終わると、片付けをしてみんな眠りについた。






<後書き>
ウエッキーでっす〜。
使徒無しの話は難しいです。
そういえば、本文にもあるように学校の話し、少ないですね。(^^;
そのへんも書いていきたいなあ・・・、などと思ってます。
ついに(?)マナとシンジがキスしてしまいました。
う〜ん、これが原因で何か起こらないといいですけど・・・。


<次回予告>
久しぶりの学校に向かうシンジ達。
久しぶりに会う友人達との会話に嬉しさがこみ上げる。
けど、そんな中でも使徒はやってくるようで・・・。

次回、The Restart Of Evangelion

             「学校」

を、お送りしまーす。


アスカ:これが原因で何か起こらないといいですってっ!! 既に勃発してるわよっ!! キーーーーーッ!!!(▼▼#

マナ:シンジの唇は、もうわたしのものよっ!(*^^*)

アスカ:アンタは、アスナと仲良くやっときゃいいのよっ!!(▼▼#

マナ:あっらぁ、シンジもわたしのこと可愛いって思ってるんだしさぁ。(*^^*)

アスカ:やかましーーーーっ!! このキス泥棒っ!! キーーーーーーッ!!!(▼▼#

マナ:ウエッキーさん、どんどんこういう展開にしてねぇ。(*^^*)

アスカ:もう1度キスしたら、ぶっ殺すわよっ!!!(▼▼#

マナ:じゃ、前作で行った温泉にシンジと2人で行こうかなぁ。(*^^*)

アスカ:死ねーーーーーーーーっ!!!!(▼▼#

マナ:おっとっ! 大人のキス練習しに帰ろっと。(*^^*)

アスカ:待てコラーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!(▼▼#
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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