(リリス、君も来るといい・・・。そのほうがシンジ君も喜ぶさ。) (・・・これは、アダムの声? ・・・わからない。 ・・・けど、誰かの声が聞こえたような気がする。) 『ピカァーーーーーーー!!!!!!!』 まぶしい光があたり一面に広がると、レイは意識を失った・・・。 「・・・ここは?」 レイが目を開けたその場所、見慣れている自分の部屋だった。 コンクリート剥き出しの壁、自分の血で汚れたベッド、水の入ったビーカーと薬、ダンボールに入った汚れた包帯。 そして・・・レイが1番大事だと思っていた人の壊れた眼鏡。 「・・・なぜ、私がここにいるの?」 口にした疑問に答えてくれる人はいない。 (ここには私しかいないから・・・誰もいない、人が住むような部屋で無いここには、私しかいないから。) 次にレイは、窓から外の景色を見ると、見なれている光景が目に入ってきた。 それはサードインパクトが起こる前の『第3親東京市』だった。 「私も還ってきたの?ここに・・・。」 『ピピピピピ!!!!!』 (そんな時に私の携帯が鳴った。前と一緒なら、かけてきた人はあの人。) 「(ピッ!)・・・はい。」 「レイ、今すぐ本部に来なさい。(ピッ!)」 (用件だけ言って、一方的に切るあの人。これで確信した、私は還ってきたのだ・・・あの時へ。) The Restart Of Evangelion 番外編U「綾波レイ、帰還」 レイが本部に到着し、発令所へ行くと、緊迫した空気がそこを覆っていた。 「レイ、ついに来た、避けられぬ戦いが。・・・赤木博士、後は任せる。」 ゲンドウがそれだけ言うと自分の席へと戻り、次にリツコがレイへと近づく。 「ついてきなさい、レイ。」 (この人も・・・あの人に利用されている。 あの人のことが好きなのに、奥さんを復活させる手伝いをしている。 ・・・なぜ?) リツコの後をついて歩きながら、レイは疑問を浮かべていた。 ケージに到着すると、レイはその場で学校の制服を脱いだ。 (サキエルが来ることは知ってる、あの時の私じゃない・・・碇君が来る前に片付けるわ。) 制服を脱ぐと、下はプラグスーツだった。 「レイ・・・あなた準備がいいのね?」 「・・・問題ありません。」 『使徒接近』直接言ったわけでもないし、ほのめかす表現は先程ゲンドウから聞いたばかり、それなのにプラグスーツを着てくる。 リツコは疑問に思うかもしれないが、今のレイはそこまで考えが及ばなかった。 「とにかく、現在『使徒』が接近中です。『使徒』については・・・聞いてるわね。」 「はい・・・。」 『使徒』 その遺伝子がレイの身体を構成しているのだ。 ゲンドウ、リツコから、 「『使徒』は『敵』だ。」 と、いう説明を受けていたため、名前は知っているのは前の歴史のレイ。 今では、来る順番、殲滅方法、名称、全てわかっている。 「ところで、どうして今日は、制服の下にプラグスーツを着てきたのかしら?」 リツコは当然の疑問をぶつけてくる。 しかし、レイはさらっとこう答えた、早まった行動を後悔しながら。 「・・・嫌な予感がしたからです。」 「そう・・・まあいいわ。」 そして、リツコはレイが乗る『EVA零号機』の出撃準備を整える。 「マヤ、出撃準備の進行具合は?」 『はい、たった今終了しました。』 リツコはマヤに確認した後、レイの方を向いた。 「お聞きの通り、出撃準備は整ったわ。さあ、出撃準備しなさい。 それと今、葛城一尉がサードチルドレンを迎えに行ってるわ、潰さない様に、いいわね?」 リツコの言葉にレイは首を縦に振ると、エントリープラグに入っていった。 LCLが注水され、各部チェックのアナウンスが入る。 そんな時にゲンドウから通信が入る。 『レイ,無理はするな・・・危ない時には戻ってくるのだ,いいな?』 そのゲンドウの通信に答えず,一方的に通信を切った。 今のレイにはゲンドウの声は雑音と等しいものなのだ、あの時から。 (話しかけないで・・・。あなたの声、昔は安心したけど、今はうるさいだけ。) 「EVA零号機、出撃します。」 『EVA零号機、発進します!!』 レイの言葉に日向がリフトのスイッチを入れた。 リフトが上がりきると、正面にサキエルの姿が見える。 (前とは違う。・・・力を失っても、身体が覚えてるから。) レイは操縦桿を力強く握りこむと、サキエルへと接近し始めた。 「マヤ、レイのシンクロ率はいくつ?」 「はい・・・7、70.3%です!」 「どうなってるの・・・これは?」 発令所ではリツコがマヤにシンクロ率を聞くと、その数字に驚いた。 この出撃の1週間前のテストの結果は、何とか30%を超えた程度だったのだから、リツコが驚くのも当然である。 国連軍は零号機の周りで、サキエルの動きを監視していた。 「役に立たないのに・・・邪魔。」 レイは零号機での通信装置を全てOFFにし、1人愚痴った。 サキエルは零号機に気付いたのか、真っ直ぐこっちに向かってきた。 「あなたも邪魔・・・。」 『ガシッ!!』 真正面から組み合う零号機と使徒。 力は五分。どちらかと言えば、高いシンクロ率のおかげかレイの方が有利だった。 『ピカッ!!』 組み合っていると、サキエルの目が光った。 そこから光線が発射され、レイは避けることが出来ずに直撃してしまう。 「くっ!!」 攻撃方法をすべて知っているのに、実践経験の少なさが仇となった。 しかし、高シンクロ率で張った強固なATフィールドのおかげで対したダメージではなかった。 (ここで何とかすれば、碇君にかかる負担が減る。私は負けられないの!!) 『ジャキッ!』 レイはプログレッシブナイフを装備し、サキエルに攻撃をしかける。 ところが、確実に攻撃を命中させるが、決定的なダメージを与えることが出来ない。 「ATフィールドは中和してる・・・なぜ?なぜ倒れないの!?」 『シンジの為に』という、焦りから『コア』が弱点と言うことを忘れ、パニックを起こしていた。 (そうだ、『コア』!!) しかし、遅かった。 コアを狙った攻撃に気付いたサキエルは、レイの動きより早く攻撃をしかけてきた。 「しまった!!」 『ガスッ!!ガスッ!!ガスッ!!』 初号機にやった『光のパイル』での攻撃を、同じく顔の、目に食らってしまう。 「うっ、ぐっ・・・。」 目を押さえ、よろめく零号機。 そこへ、リツコがMagiを使って通信装置を強制的にONにする。 『レイ、撤退しなさい!!』 「ま、だ・・・まだ、戦え、ま、す・・・。」 『レイ、よくやった。後の事は気にせずに下がれ。』 ゲンドウが説得しても、聞く耳を持たずにサキエルへと向かっていく。 しかし、大ダメージを食らっていて、実践経験の少なさと、レイに勝機は無かった。 「赤木博士、レイがどの回収ルートでもいい、乗ったところでリフトを下ろせ。」 「はい・・・。」 ゲンドウの命令に、リツコは唇を噛みながらも了承した。 「くっ・・・、あう・・・。」 ATフィールドを張ることなく、サキエルの攻撃を食らい続ける。 そのとき、零号機は回収ルートの1つの上に座り込むようになった。 (今ね・・・。) リツコはリフトの操作をした。 そして、振り返りゲンドウに指示を仰いだ。 「碇指令、作業完了しました。」 「ご苦労、後は国連軍に任せる。」 レイは診療室へと運ばれる中、悔しくて涙が出てきた。 (結局、役に立てなかった・・・ごめんなさい、ごめんなさい、碇君。) 処置を受け、病室へと運ばれるとリツコが入ってきた。 「・・・あなたは誰?」 「・・・・・。」 リツコは手に持ったファイルに目を通して、再度聞いた。 「・・・あなたは誰?」 「私は・・・綾波レイです。」 レイの答えに、リツコはファイルから目を離し、レイの目を見つめた。 「嘘じゃないようね・・・。けど、あなたの中にある『リリス』はどこに行ってしまったのかしら?」 「・・・捨てました。」 「どうやって?」 「・・・わかりません。」 「・・・・・・・。」 リツコは黙った、目は逸らさずに。 しばらくして、また言葉を発した。 「碇指令の役に立てないわよ、いいのかしら?」 「・・・かまいません。」 きっぱり答えるレイに、リツコは声を荒げ、話を続ける。 「『かまいません』ですって?あなた、それがどういう意味かわかっているの!?」 「・・・わかってます。」 お互い、目を逸らさずに話している中、リツコに通信が入る。 「どうしたの?」 『センパイ、葛城さんが迷ってしまったようなので迎えに行ってほしい、と指令が。』 「わかったわ。」 マヤからの通信を切ると、レイの方へ向き、一言発した。 「・・・あなたは『人』になってるわ。」 「・・・・・。」 それだけ言うと、リツコは病室から出てミサトを迎えに行った。 レイはベッドで横になりながら考えていた。 「私が・・・『人』。」 自分でシンジに『力』を渡したのだが、まさか『人』になっていると思わなかった。 (弐号機パイロット、いえ、アスカのことがなければ、碇君と・・・ でもダメ、碇君に必要なのは私じゃなくて、アスカなんだから・・・迷惑かけて、嫌われたくない・・・。) シンジの気持ちを知っている以上、考えてはいけないこと。 自分もシンジのことが好きなのだが、そのためにシンジに迷惑をかけ、嫌われる方が嫌なのだ。 そんなレイは、いつしか眠りについていた。 しばらくすると、外からノックする音が聞こえた。 「・・・そして、この後お兄ちゃんに、『私も還ってきた』っていう説明をしたの。」 ここはレイの部屋。 アスカはレイが還ってきた時の話を聞いていた。 「ふうん・・・。 それにしても、レイ・・・アンタもシンジの事、好きだったのね?」 「ええ、今でも好きよ。」 「な、何言ってんのよ!!アンタにシンジは渡さないわよ!!」 突然のレイの告白に、大声を出しながらアスカは立ちあがった。 「兄として、だけどね。」 「なっ・・・もう、ビックリさせないでよね〜。」 『恋人』としての好きな人でないならいいのか、アスカはまた座って、話し始める。 「ごめんなさい・・・。」 「いいわよ。ところで、今は好きな人はいないの?」 「私にはみんながいる、今はそれでいいの・・・。」 「なるほどね・・・アンタにも、いつかいい人見つかるわよ。」 「ありがとう、アスカ。」 レイの笑顔に、アスカもテレながら笑顔で返す。 「ま、まあ、何か困ったことがあったらアタシか、ユイおばさま、お母さんに相談しなさいよ。 できるだけ力になってあげるからさ。 けど、アスナには聞かないほうがいいかもしれないわ。」 「・・・私、あの子怖いわ。」 「そうね〜。 渚のヤツがあんな風にしちゃったもんだから・・・困ってたんだけどね。」 「?」 アスカは『困ってた』、と言うわりには顔が半分笑っている。 レイにはまだ、『困ってた』と言うのに笑っている意味がわからなかった。 「今は?」 「マナとよろしくやってるわ。」 「マナさんも、アスナさんみたいな人だったのね・・・。」 「知らなかったわよね〜。」 (自分が付きまとわれなくなったから『困ってた』であって、後は他人のことだから笑ってたのね。) ようやく、レイはアスカの半笑いの意味がわかった。 そんな話しをされてるマナは、自室でくしゃみをした。 「へっくし!!」 「お姉様、風邪ですか?」 「そうかなぁ?」 心配げに聞くアスナに、自分でもよくわからないと言った感じのマナ。 「風邪には寝るのが1番ですよ!さあ、一緒に寝ましょう!!」 「ちょ、一緒に!? い、いいわよ、風邪うつっちゃうといけないから・・・アスナは部屋に戻って、ね?」 「お姉様になら・・・うつされてもいいです〜。 もし、うつすんなら口移しでお願いします・・・。」 唇を突き出し、マナの顔を掴むと、その距離をどんどん近づけていく。 「ちょっ、ダメだって・・・誰か、助けて〜!!」 マナはアスナの攻撃をかわし、両者が一定距離の離れたところで、アスナはまたも喋り出す。 「もう一つ、風邪にいい方法があるんです!!」 「へっ、なに?」 (今の方法以外ならいいけど・・・。) 「そ・れ・は・・・汗を掻くことなんですよ〜。 だから、ね?お姉様、汗掻くことしましょう♪」 さっきよりも性質の悪い治療法(?)に、マナは必死で部屋の中を逃げる。 しかし、妙にすばやいアスナに捕まってしまった。 「いっ、ちょっ、ちょっと、嫌、そんなとこ、触らないで・・・あん、やめて〜、お願い!」 マナの部屋でそんなことが行われてる中、レイ・アスカは部屋で仲良く雑談していた。 全てが終わり、平和な世の中が来た後、レイは奇異の目で見られることが多くなるだろう。 アルビノという白い肌、人としては絶対に無い天然の紅い瞳と、目を引く要素があるからだ。 しかし、彼女は負けないだろう。 前は無関心で気にしなかった、しかし今は『仲間と家族』という『絆』を手に入れた。 今後つらいことがあった時には、『絆』で結ばれた人達を思い出し、自分を励ますのだ。 「私は一人じゃない、私には仲間と家族がいるんだから・・・。」 <後書き> ども、ウエッキーです。 今回の番外編はレイの帰還の話を書いてみました。 自作を略して「ROE」、本編でレイは影が薄いんで、と思ったんで。 あと、今回もリクエストを受けての作品です、こんなんでいいですか?
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