飲み会じゃなくて、夕食会の翌日の朝。

「ううん・・・よく寝たなぁ。
 さて、朝ご飯作ろうかな・・・。」

起きたのはシンジ、彼が朝食を用意することが多い。

「あれ?」

ダイニングにつくと、テーブルの上に紙が置いてあった。
シンジはそれを手に取ると、目を通し始めた。

「・・・・・・・何、これ。」

『「金太」の頭を叩くべし。 碇ユイ』



 〜シンジ起床から1時間後〜

「というわけなんだけど・・・『金太』って何?」

全員がダイニングに集まった中、シンジが聞いた。

「お兄ちゃん、『金太』は玄関にある招き猫のこと。」

「そ、そうなの?」

(なぜ、招き猫があるのかは「番外編1」を参照)

「・・・ネーミングセンス、最悪ね。」

「シンジ君、とにかく叩いてみてよ。」

「う、うん。」

シンジは招き猫をテーブルの上に運ぶと、カヲルに言われるまま頭を叩いた。

「ポコンッ!」

『おはよう、みんな。
 Magiの復旧が終わって帰ろうとしたんだけど、新兵器の開発が終了したらしいの。
 松代の皆様も働き者よねぇ・・・。
 というわけで、今日は訓練があるのでネルフに来てちょうだいね。
 それでは、碇ユイでした〜。 バイバーイ♪』

「「「「「「・・・・・・・。」」」」」」

その場の空気が凍りついた。

「と、とにかく、ネルフに行こうよ、ねっ?」

マナ一言で朝ご飯を食べ、ネルフへと向かった。






                    The Restart Of Evangelion

                             第14話「特訓」






 〜ネルフ 発令所〜

そこには朝早くから働く人達がいた。
特に指揮している女性はよほどに眠いのか、しきりに目をこすりながら指示を出していた。

「・・・マヤちゃん、どう?」

「はい。積み込み作業は無事終了したようです。 皆さん、お疲れ様でした!」

「えらいわねぇ、あの娘・・・。」

作業員にお礼を言う所に感心したのか、ユイは気だるそうに言った。

「なんてったって、私の後輩ですから・・・ふあぁ〜。」

「・・・関係ないと思うけど、それ。」

「す、すいません・・・。」

得意になってリツコが誇るが、キョウコのツッコミにあっさり撃沈。

「それにしても・・・シンジ君、扱えるようになるかしらね。」

「大丈夫よ、先生がいるから・・・はふぅ。」

「先生とは?」

「ひ・み・つ、後でわかるわよ。」

こうして、三賢者は椅子に座りこむとウトウトするのだった。




「母さん、起きてよ、母さん。」

「う、うう〜ん。 ダメよ、シンジ。 私達は親子なのよ、いけないわ・・・。」

完全に寝ぼけている、ユイ。

「な、何言ってるんだよ、起きてよ、母さん。」

「冗談よ♪ おはよう、シンジ。 みんなもいるわね、それでは説明するわね。」

今だ眠いのか、しきりに目をこすりながらユイは説明をし始めた。

「『金太』に吹き込んだメッセージにとあるように、新兵器が開発されたので訓練をします。
 零号機には『ポジトロンスナイパーライフル』、弐号機には『ロケットランチャー』、
 参、四号機には『ポジトロンライフル改』が追加されます。
 射撃武器なので射撃訓練と4機で模擬戦をやってもらいます。」

「シンジ君以外は私達と一緒に来てちょうだい。」

ユイの説明が終わると、キョウコとリツコがシンジ以外の子供達を連れて行こうとするが、アスカが口を開く。

「シンジはどうするの、ママ?」

「シンジ君は別なのよ、格闘武器だから。」

「ふうん。」

納得したのか、アスカは移動していった。



「さて、シンジ。 貴方には『侍』になってもらいます。」

「は?」

当然、訳がわからない顔をするシンジ。

「武器は『刀』なのよ。『侍』は冗談だから。」

「ビックリしたよ、もう。でも、刀なんてどう扱ったらいいか・・・。」

EVAは操縦者のイメージで動くものである。
刀なんて名前くらいしか知らないシンジに扱えようもない、イメージできないのだから。

「そ・こ・で、先生をお呼びしてあります、どうぞ〜!」

「シンジ君、私が教えてあげよう。」

「ふ、副指令!?」

そこに現れたのはネルフ副指令こと冬月コウゾウであった。
着物を着込んでいるところにかなりのやる気を感じられる。

「私は一時期、剣の道を極めようと思ったことがあってね。
 しかし、大学の教授であったこともあり、両立できないと思ってあきらめたのだよ。」

「は、はあ。」

「まあ、そんなこともあってか、基本的な刀の扱い方を教えることは出来ると言うわけだ。」

「じゃあ、先生、よろしくお願いします。ほら、シンジも。」

「副指令、よろしくお願いします・・・。」

「ユイ君、任せておきたまえ。 シンジ君、これから私のことを『先生』と呼ぶように。」

「は、はい、『先生』。」

「うむ、行こうか。」

そう言うと、冬月は歩き始めた。
シンジも遅れない様についていくのであった。

「頑張るのよ、シンジ。 それじゃあ、マヤちゃん・・・おやすみなさい。」

「は、はい、おやすみなさいです。」

こうしてユイは仮眠室へと向かい、眠りにつくのだった。



〜ネルフ 冬月の部屋〜

「入りたまえ、シンジ君。」

「はい、失礼します。」

部屋へと通される、そこは畳敷きの純和風の作りになっていた。

「・・・・・・・。」

「シンジ君?」

「は、はい!」

呆けているシンジに声をかける冬月、シンジも気付いて話を聞く体勢をとる。

「そこに座りなさい。」

「は、はあ・・・。」

シンジが座るのを確認すると、冬月は話を始めた。

「刀を扱うために、心を鍛えねばならん。」

「・・・・・。」

「なぜならば、刀は人殺しの道具だからだ。」

「・・・・・!!」

「だが、君が戦う相手は人ではない。
 しかし、刀を使う以上これは必要なことなのだ。」

「・・・・・・・。」

「では、瞑想から始めよう。」

「・・・・・?」

瞑想、と言われても何をしたらいいかわからなかった。

「心を無にする、これが瞑想だよ。」

シンジは目を閉じて、意識を集中する。
こうしてシンジは瞑想を始めた。




〜ネルフ 実験室〜

シンジと離れた5人は、ここで訓練をしていた。

「ふっふっふ・・・待ち焦がれたわ、この時を。 マナ、勝負よ!!」

「いいわ、受けてたつわ!!」

「お姉ちゃん、お姉様・・・。」

こうして、アスカvsマナの模擬戦が始まった。

「レイさんはどう見る?」

「操縦技術ではアスカだけど・・・最近、戦闘から離れてたから。正直、わからないわ。」

「そう見るかい?僕は今まで戦えなかった鬱憤をここで晴らすってことで、アスカさんと見るけど。」

「・・・・・見てればわかるわ。」

「・・・・・そうだね。」

Magiの作り出したバーチャル空間で、睨み合いをする弐号機と参号機を見るレイとカヲルであった。



〜仮想空間内 第3新東京市〜

弐号機、参号機共に手に持っているのはプログレッシブナイフ。

(マナ・・・隙が無いわ、やるわね。)

(さすが、アスカ。うかつに攻め込めないわ・・・。)

制限時間は設けられてないものの、睨み合いが始まって5分を経とうとしていた。

(そういえば、次はあの変な使徒が来るころよね・・・シンジが飲みこまれたヤツ。)

「アスナ、模擬戦は任せたわよ。」

「お、お姉ちゃん・・・ちょっと、困るよ〜。」

弐号機内でのゴタゴタにより、張り詰めた空気が緩んだ。

(今がチャンスかしら・・・。)

「行くわよ、アスカ!!」

そう言うと、マナがダッシュで接近してくる。
一方、いきなり操縦を代わられたアスナはすっかりパニックを起こしていた。

「お、お姉様〜!やめて、ごめんなさい、来ないで〜!!」

「逃げるの!? 待ちなさいよ、卑怯よ!!」

こうして追いかけっこを始めるマナとアスナ、アスカは考え事に耽っていた。

(前はシンジが何とかしたみたいだけど、今回はどうなのかしら?
 シンクロ率は100%だせるし、今回は新兵器もあるし・・・内部に入って何とかできそうな気がするわね。
 アタシも一緒に入ろうかしら・・・・・初号機で。)

前回のレリエル戦について、アスカは『シンジが内部から破壊した』と思っていた。
しかし、実際は初号機が倒したのであって、シンジは何もしていないのだ。

(狭いエントリープラグの中で密着する2人。
 当然、意識もするわね・・・やがて近づく2人の唇、そして一線を超えちゃったりなんかして〜、キャー!!
 シンジも男だし、ありえるわ・・・でも、アタシもシンジとなら・・・・・・・。)

「お姉ちゃん、助けて〜。お姉様と戦いたくなーい!!」

アスカが行けない妄想に思いを馳せる中、アスナが情けない声をあげる。
その為、アスカの妄想はストップされてしまった。

「うるさいわね! いい感じだったのに、マナなんか速攻で片付けるわよ!!」

参号機の方へ振りかえると、グッと身を低くしてから一気にダッシュをかける。

「行くわよ! 覚悟しなさい、マナ!!」

「アスカ!?嘘、何それ!!」

マナがそう叫んだと同時に参号機は爆発した。

「・・・・・・・。」

「・・・アスカの勝ちね。」

「リ、リプレイを見せてもらいたいな。」

カヲルがそう言うと、リプレイが始まった。

アスカが叫んだとき、弐号機はすでに参号機の目の前に立ち、コアにナイフを突き立てていた。
そして、マナが叫んだときにはコアが臨界を突破、爆発したというわけであった。

「アスカさんはどうしてコアの位置が正確にわかったんだろうか?」

「・・・カンだと思う、その辺は『猿』だからすごいの。」

「・・・・・きつい事言うね、君も。」

コアの位置の件に関しては答えることが出来る人はいなかった。
キョウコもリツコも徹夜が効いたのか、仮眠室で寝ていたのだった。



「くやしい〜! もう一回よ、アスカ!!」

「何度やっても無駄よ、レベルが違うんだから。」

テストプラグから出てきた3人がレイ・カヲルの元へ戻ってきた。

「凄かったよ、2人とも。」

「・・・お疲れ様。」

アスカは得意満面、マナは悔しさで一杯、アスナは板ばさみにあってダウン寸前。

「次は僕達だね、お手柔らかに。」

「・・・ええ。」

レイ・カヲルがテストプラグに向かう中、3人はまったく気にすることは無かった。

アスカ・(シンジと密室で2人っきり・・・キャ〜!)

マナ・「あとでもう1回よ、アスカ! 聞いてるの?」

アスナ・(誰か・・・助けて〜。)




〜冬月の部屋〜

「よし、止め!」

(まったく、微動だにしないとは・・・恐ろしい子だな。)

時間にして30分、シンジは動くことなく瞑想を終えた。

(ふう、さすがにこれくらいは動かなくても大丈夫だけどね。)

「シンジ君、次は刀の扱いについて教える。」

「はい、冬月先生。」

〜刀の扱い方の講釈中〜

「わかったかな?」

「はい、なんとか・・・。」

教わったことを繰り返しながらシンジは答える。

「次は攻撃方法だが・・・。」

「刀を抜いてから普通に斬るのでいいんじゃ?」

「こういうのはどうかね?」

どこからか出てきた巻き藁に、冬月は『居合』をやってみせた。

*『居合』・ここでは、「刀を納めたまま敵に接近、抜き様に敵を斬り、その勢いで刀を鞘に収める。」とします。

「カッコイイです! ぜひ教えてください!!」

「うむ、では私の言う通りに練習するのだ。」

「はい、冬月先生!!」

こうして、シンジの居合特訓が始まった。




〜仮想空間内 第3新東京市〜

「では、始めようか。」

「・・・そうね。」

(さて、レイさんとどう戦おうかな・・・。
 射撃では勝てそうに無いし、接近戦なんだけど・・・近づけるかな。)

カヲルは悩みながらも手にはプログレッシブナイフを持ち、しかけるタイミングをうかがい始めた。
一方、レイは手にはパレットライフルを持って、カヲルの動きを警戒している。

(・・・接近戦はダメ、そうなったら勝てないわ。)

互いに円を描くように動きながら、相手を警戒する2人。
どちらも中々隙を見せない。

(埒があかないな、これでは・・・。)

(・・・できるわね、ナルシスホモ。)

カヲルを少し前まではこう呼ぶことは無かったはずだが、お酒がレイを変えてしまったらしい。

『タタタタタ!!!!!』

「仕掛けてきたね!」

円を描きながらの睨み合いでレイは十分な距離を稼いでいた、そして攻撃を仕掛ける。
カヲルもそれに反応して、パレットライフルの弾をかわす。

(これで充分、次は・・・。)

レイは身を低くしパレットライフルを置き、新兵器・ポジトロンスナイパーライフルを装備する。

(すっかり、レイさんのペースだ・・・しまったね。)

カヲルはレイの攻撃に備えて周囲に注意する。

(発射。)

『シュオーーーン!!!』

「!! 後ろから!?」

『パキーーーン!!!』

咄嗟にATフィールドで防御するカヲル、しかし肝を冷やされてしまった。

「後ろに回られるとは・・・恐ろしいよ、君は。」

(・・・次。)

『シュオーーーン!!!』

「今度はこっちかい!」

先ほどの攻撃よりは早く反応できたおかげで、何とか避ける。

(外したようね・・・次。)

「ここでチェックメイトかな?」

レイは次の攻撃ポイントに向かおうとした、しかしそこにはカヲルが待ち構えていた。

「何故、わかったの?」

「教科書通り、と言うより規則性がありすぎたのはミスだと思うよ。」

「くっ・・・!」

レイはポジトロンスナイパーライフルを投げると、プログレッシブナイフを装備する。

「接近戦じゃ負けないよ。」

「・・・・・。」

言葉通りであった。
レイはカヲルの繰り出す攻撃を避けることができなかった。
ATフィールドは中和されていたので、防御も出来なかったのだ。

2人がテストプラグから出ると、3人は今だに同じ事をしていた。

「ここで休憩してようか?」

「・・・そうね。」

「シンジ君は何してるんだろうね?」

「・・・・・。」

「・・・・・。」

こうして、カヲルとレイは黙り込んでしまった。



〜冬月の部屋〜

「うむ、形はどうにか出来てきたようだな。」

「は、はい・・・。」

「よし、少し休憩しよう。」

シンジは疲れ切っていた。
馴れぬ物を使えるようになるのは大変である、しかも今日触ったのが始めてなのだからなおさらである。

「羊羹は好きかね?」

「はい、好きです。」

冬月は切った羊羹と緑茶を入れて持ってきた。

「いただきます。」

「遠慮はしなくていいからな。」

「はい。」

シンジは一切れ口に入れる、冬月はお茶をすすりながらその様子を見ていた。

(碇のヤツにはもったいないな・・・。)

「おいしいです、これ!!」

「そうか、何なら後で1本あげよう。」

「本当ですか!?ありがとうございます、冬月先生。」

冬月は喜ぶシンジの顔を見ながら、残りのお茶をすすると真剣な顔でシンジに声をかける。

「シンジ君。」

「はい?」

「基本となることは先ほど全て教えた、後は自分で練習を積みたまえ。」

「どこか、行かれるんですか?」

「うむ、碇とな。
 本当は今日1日付き合ってあげたいのだが、すまんな。」

「そうですか、わかりました。」

心底すまなそうな顔をする冬月に、シンジは納得してみせた。

(細かいところをもっと聞きたかったんだけどな・・・。)

「わからないことがあったら、帰ってきたときにでも教えてあげよう。
 それと・・・この本を参考にしたまえ。」

そう言うと、冬月は本棚から1冊の本を取り出した、本には名前が書いてなかった。

「これには居合について書いてあるから、読んでおくといい。
 あと、これは先ほどの羊羹だ、みんなで食べたまえ。」

「ほんとうにありがとうございます。」

一礼して冬月の部屋を出ていくシンジに、冬月は声をかけた。

「心を鍛えるのだ、いいかね?」

「はい!」

こうしてシンジは羊羹と本を持って、実験室へと向かった。





〜実験室〜

そこには・・・
ダウンしているアスナ・それを介抱するレイ・アスカに食い下がるマナ・1人ボケッとするカヲル・妄想に耽るアスカがいた。

「え、え〜と・・・みんな?」

「あっ! お帰り、シンジ君。 そっちはどうだったんだい?」

「何とかね。 ところでこれは?」

目でアスカ達を見ると、説明を求める様に言った。

「これは模擬戦の結果だよ。
 惣流姉妹とマナさん、僕とレイさんでやったんだけど・・・。」

カヲルが要点だけをまとめてシンジに説明した。

「なるほどね。 それじゃ、他の組み合わせではやってないんだよね?」

「うん。 そうだ!シンジ君、僕と模擬戦をしてみないかい?」

「じゃあ、お願いしようかな。 僕の新兵器のデータは入ってるのかな?」

「当然、入ってるわよ。」

ドアを開けて入ってくる女性、それは仮眠を取っていたユイだった。

「母さん。」

「だから、冬月先生との訓練の成果を見せてちょうだい。」

「わかったよ。それじゃあカヲル君、やろうか?」

「そうだね。」

「あっ、荷物預かるわよ、シンジ。」

「ありがとう、母さん。」

テストプラグに向かおうとするシンジからユイは荷物を受け取ると、アスカ達に声をかける。

「みんな、シンジが模擬戦やるわよ。」

「「シンジが!?」」

惚れた者の弱みか、シンジの声にユニゾンして答えるアスカとマナ。
一方のアスナは相変わらずダウンしていた。

「アスナちゃんはダメみたいね、そろそろ始まるわよ。」




〜仮想空間内 第3新東京市〜

手にソニックグレイブを持つ四号機の前に『刀』を持つ初号機がいた。

「シンジ君、それは腰につけなくていいのかい?」

「うん、いいんだよ、これで。」

初号機は左手で鞘を、右手で柄を持って構えていたのだ。
カヲルが不思議がってもおかしくはない。

「それじゃ・・・いくよ。」

「・・・・・。」

こうして、カヲルvsシンジの模擬戦が始まった。


「おばさま、本当にあれでいいんですか?」

「そうですよ、刀って腰につけるものなんじゃ?」

「見てればわかるわよ、2人とも。」

カヲルと同じ疑問を浮かべるアスカ・マナに、ユイはそう答えるだけだった。


(接近戦では勝てない気がするんだけど・・・射撃はどうもね、槍のリーチを生かして戦おうかな。)

(槍か・・・カヲル君だし、やりにくいな〜。こっちは完全にマスターしたわけでもないし・・・・・。)

互いに動かない。
うかつな動きは実戦では『死』につながる、攻め込む隙をうかがっているのだ。

(こちらから・・・仕掛けてみようか。)

(・・・・・・・。)

シンジは集中していた。
余計なことは考えずに、相手の懐に踏み込む隙をうかがっていた。

「はあああぁぁぁ!!!」

気合と共にカヲルが物凄い速さで「突き攻撃」を繰り出す。

「くっ!!」

構えを解かずにその攻撃を避けるシンジ、ギリギリなのか顔には汗が伝う。


「「・・・・・凄い。」」

「お兄ちゃん・・・。」

「・・・渚君も凄いけど、避けるシンジも凄いわね。」

モニターで見ている4人は目を離すことなくこれを見ていた。
その表情は「信じられない物を見ている」、と言ったところである。


(どこにいるんだい、シンジ君?)

突き攻撃を止めると、シンジはカヲルの目の前から姿を消していた。

(怖いな・・・どこにいるんだい、君は?)

カヲルは背中に寒気が走った。
心臓の鼓動が大きくなる、自分の耳で聞こえるくらいに。

「はっ!!」

後ろを振り返ると、そこには初号機が立っていた。
急いで離れようとするが間に合わない。

『シュバッ!!』

一瞬だった。
バックステップで離れようとする四号機に、初号機は前には踏み込んできて刀を抜き様に一撃を与え、その勢いで刀を鞘に収める。
四号機は真っ二つになって、爆発炎上した。


「「「「・・・・・・・。」」」」

模擬戦が終了して、テストプラグからシンジとカヲルが戻ってきた。

「お疲れ様、シンジ、渚君。」

いち早く復活したユイが労いの声をかける。

「シンジ君、あの攻撃は何て言うんだい?」

「あれはね、『居合』って言うんだ。」

「「「「「居合?」」」」」

「『居合』っていうのは・・・。」

何時の間にか復活したアスカ・マナ・レイも加わっての質問の声にシンジは説明を始めた。


「なるほどね〜。アンタ、がんばってたのねぇ〜。」

「うん、まあ。ところでアスカ達はどうだったの?」

待ってましたと言わんばかりにアスカが喋り出す。

「聞いてよ。アタシはマナとやったんだけど、ちょっと本気出したら楽勝よ、楽勝。」

「なっ! あれは油断しただけよ、もう一回よ、もう一回!!」

「ふふ〜ん、シンジの前で恥かくだけよ。」

「なんですってぇ!!」

「なによ〜!!」

喧嘩が始まってしまったので、シンジはレイに声をかける。

「レイはカヲル君とやったんだよね?」

「・・・うん。でも、負けたわ。」

「レイは援護するタイプだからね、カヲル君は相手が悪かったよ。」

「お兄ちゃん・・・。」

見つめ合うシンジとレイ。
そんな中、キョウコから通信が入る。

『ユイ、至急発令所まで戻ってきてちょうだい! 使徒らしきものが接近中よ!!』

「わかったわ! 行くわよ、みんな!」

「「「「「はい!」」」」」

ユイは未だにダウンしてるアスナを背負うと発令所へと向かった。




〜発令所〜

「何でしょうね、あれ?」

リツコがキョウコに聞いてみる。

「Magiはパターンオレンジ、解答を保留しています。」

「兵装ビルによる攻撃は効果ありません。」

「・・・・・。」
(効くはずないわ、浮かんでるのは影なんですから。
 それより、今回はどうやって戦うのかしら・・・前回と同じ方法は使えないわよ、ユイ。)

日向・青葉の報告を聞きながら、キョウコはそんなことを考えていた。

「おまたせ! 状況は?」

「今のところ被害はゼロ、モニターに移ってる物体は使徒かどうかわからない、ってところよ。」

「わかったわ。 シンジと渚君にキョウコ、ちょっと来てくれる。」

「「はい。」」

「わかったわ。リッちゃん、ここは任せるわ。」

「わかりました。」

ユイとキョウコは的確に指示を与えると別室へと消えた。

「どうするんでしょうね、センパイ?」

「あの人達ならいいアイディアが浮かぶんでしょう。 それより、監視怠らないで!」

「はい!。」

(私はあの人、ユイさんについていくわ。)

リツコはそう考えながら、謎の物体の監視を始めた。


〜個室〜

「今回の使徒についてだけど・・・。」

「前回のような戦いは出来ないわよ。」

「それはわかってるわ。代わりに渚君を使おうと思ったんだけど・・・。」

ユイはカヲルに視線を送る。

「僕はダメですよ。」

「カヲル君・・・。」

「僕にはアダムの力があるからね。使徒の内部に侵入しての殲滅と言う前回の作戦は危険、ですよね?」

今度はカヲルがユイに視線を送る。

「渚君の言う通りよ。何かが起こる危険性があるから、それはできないわ。」

「じゃあ、どうするの?」

「どうしようもないわ・・・。」

「母さん、キョウコさん、ちょっといいですか。」

おずおずと手を上げるシンジ。

「何、シンジ?」

「アスカと初号機で出撃したいんです。」

「シンジ君、それでどうするの?」

「前回、ガギエル戦で2人でシンクロした時に高シンクロ率が出ました。
 今回は他に方法もないし、唯一のカヲル君もダメだって言うなら、僕とアスカに賭けてみてほしいんです。
 アスカとなら何とかできるかもしれないんです!」

「・・・シンジ君。」

キョウコがシンジを真剣な目で見つめていた。

「正直、自分の娘が死ぬかもしれないアイディアは賛成しかねるわ。
 けど、あの娘はあなたのことが好きなのは知ってる。」

「キョウコ・・・。」

「だから、娘のアスカの好きな人の貴方を信じるわ。」

「ありがとうございます!」

そう言うと、シンジは部屋を飛び出していった。

「いいの、キョウコ?」

「彼に賭けるしかないわ。あの使徒に対する作戦も武器も無いのだから・・・。」

「わかったわ。 シンジ達がダメだったらその時は・・・。」

「わかってます、僕が行きますよ。」


こうして、レリエル戦が始まった。






<後書き>
ウエッキーです。
今作品のEVAの武装についてですが、「スーパーロボット対戦α」を参考にしてます。
ちなみに、初号機の刀の名前は「マゴロク・E・ソード」です。
次回はアスカとのユニゾン(ちょっと違うかな)です。
2人の愛の力(爆)でレリエル戦に向かいます。



<次回予告>
アスカと初号機で出撃するシンジ。
2人でシンクロし、レリエルの内部へと入っていく。
内部で2人を襲う危機、果たして奇跡は起こるのか?

次回、The Restart Of Evangelion

       第15話「愛の奇跡」

を、お送りしまーす。


マナ:シンジ、格好いい武器持つようになったわね。

アスカ:渋いわねぇ。

マナ:遠距離攻撃のわたしと組んだら、最強のコンビね。

アスカ:アンタっ! まだやろうってのっ!?(ーー#

マナ:そうやって、すぐ怒るからアスナが板ばさみでフラフラになってるわよ?

アスカ:アタシは、アンタと違って板じゃないわよっ!

マナ:ど、どういう意味よっ!

アスカ:フン。次回予告を見てみなさいよ。

マナ:えっ?

アスカ:アタシとシンジのユニゾン再びよっ!

マナ:いやぁぁっ! なんで、アスカなのぉっ!(TOT)

アスカ:タイトルはっ! 「愛の奇跡」よーーーーっ!

マナ:次回、コメント係り・・・休む。(TOT)
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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