The Restart Of Evangelion

                                 第17話「バラバラになった絆」





JAUとの『模擬戦』と言う名の『私闘』が終わった翌日の昼。

〜レイの部屋〜

「・・・・・。」

(私はなぜ、お兄ちゃんを叩いたのかしら・・・?)

レイは自室に閉じこもり、ベッドの上で体育座りをしていた。

(お兄ちゃんはアスカが好きで、護ると言ったわ・・・。
 けど、お兄ちゃんはアスカをあんな目に遭わせた、それが許せない・・・。)

レイは座ってる状態から、ベッドにうつ伏せになると枕に顔を埋めた。

(・・・違う。
 あんな情けないお兄ちゃんを見たくなかっただけ、アスカの事なんかどうでもいいの。
 お兄ちゃん・・・。)

レイは顔を埋めたまま、首を何度か横に振る。

(私、お兄ちゃんが好きなのね・・・。)

妹が兄を好きになる。
血のつながりは無い、特殊な状況で兄妹となった。
それでも、抱いてはいけない気持ち。
そんな気持ちを抱いてしまっているからこそ、情けないシンジの姿が許せなかったのだろう。

レイが部屋から出る気配は無かった。



〜アスナの部屋〜

アスナは勉強机に向かっていた、その手は拳を握っていた。

(あの男・・・。)

思い出される男の顔、碇シンジ。
双子の姉を死の淵へとやった男。
怒りの表情を浮かべるその姿、まさに鬼のよう。

(お姉ちゃん、死なないで・・・。)

鬼のような表情から一変して一筋の涙が頬をつたった。
彼女は知らないが、アスナも特殊な環境で生まれた存在である。
アスカとは名前と記憶、性格こそ違うものの彼女も『アスカ』なのだ。
自分でもわからないところで、彼女は大きな不安に苛まれていた。

もう一人の『自分』が死ぬかもしれない、と・・・。



〜ダイニング〜

(はあ、やっぱり降りてこないか・・・。)

ここにいるのはマナ。
戻ってくるかもしれない、期待して作った全員分の昼食。
昨日の事が尾を引いているのか、誰も降りてこなかった。
シンジ・カヲル・ユイ・キョウコについては、昨日の夜からネルフにいると聞いていた。
そして、この時間になっても1人も帰ってこなかった。

「さてと、呼びに行きますか。」

マナは立ち上がると、レイの部屋へと向かった。



〜レイの部屋〜

コンコン!
ドアをノックする音が聞こえた、レイは相手を確認した。

「・・・誰?」

「レイちゃん、マナだけど入っていい?」

「・・・ごめんなさい、誰にも会いたくないの。」

(ダメみたいね・・・。)

マナは自分が予想した通りの展開。
ご飯の時間になっても降りてこないのだ、呼んだところで部屋から出てくるわけは無い。

「お昼出来たんだけど・・・食べない?」

「・・・。」

「取っておくから後で食べてね。」

「・・・・・・・。」

レイからの返事は無かった。
続いて、マナはアスナの部屋へ向かった。



〜アスナの部屋〜

(アスカはお姉ちゃんだから、ショックは大きいでしょうけど・・・。)

正直、アスナに声をかけるのを止めようかと思ったが、
アスナの体調も気になるので声をかけることにした。

コンコン!

「誰ですか?」

アスナの返事が返って来ると、マナが声をかける。

「あの・・・マナだけど、入っていい?」

「お姉様?・・・どうぞ。」

アスナからの許可を経て、マナはアスナの部屋へと入った。

「アスナ、お昼ご飯出来たけど・・・食べる?」

「もう、そんな時間ですか?」

アスナはそう言うと、机の上にある時計で時間を確認する。

『12:17』

「お昼でしょ?」

「そうですね。」

お互い短い言葉で会話すると、どちらからでもなくダイニングへと向かった。



〜ダイニング〜

「「いただきます。」」

2人は席につき、挨拶をすると食事を始めた。

「他の皆はどうしたんですか?」

広いダイニングに2人だけ、時間はお昼。
誰も入ってこないことが気になったアスナはマナに尋ねた。

「ユイさんとキョウコさんに渚君とシンジは本部にいるわ。
 レイちゃんは食べたくないって。」

「ユイさんとお母さんはわかるけど・・・。」

「シンジ達は事情があって帰れない、ってユイさんから電話があって、まだ帰ってきてないわ。」

「・・・まあ、どうでもいいですけど。」

やはりシンジに対しての怒っているのだろう、いつもより声のトーンが低かった。

「やっぱりさ、シンジの事・・・怒ってる?」

「当然じゃないですか!
 JAUが使徒になった時に、お姉ちゃんの言葉を鵜呑みにして1人で戦わせたんですよ?
 苦戦してても手助け無しだったんです、助けられたのに、近くにいたのに!!
 信じられますか!?自分の好きな人がやられそうな時に、あの男は見てただけなんですよ!
 お姉ちゃんがやられてから動いたって遅いのに!!」

「アスナ・・・。」

マナは何も言えなかった。
恐らく始めてだろう、ここまで彼女が感情を露にしたのは。
自分の姉が死ぬかもしれないのだ。
こんな時に冷静になれというほうが無理だし、そんな目に遭わせた相手を許せるわけは無い。

「だから・・・お姉ちゃんが死んだら、私があの男を・・・・・。」

「・・・アスナ。」

マナは椅子から立ち上がり、アスナの後ろに立つ。
そして、座ってるアスナを後ろから抱きしめた。

「お、お姉様!?」

「アスナの気持ち・・・よくわかったわ。
 けどね、アスカが無事に帰ってきたらさ、許してあげて欲しいんだ、シンジの事。」

「お、お姉ちゃんが帰って来てから考えます・・・そ、それで、いいですか?」

「ありがと、アスナ♪」

チュッ♪
マナは軽く頬にキスをすると、アスナから離れた。

(い、色仕掛けは卑怯です〜。でも、好きです・・・お姉様。)

アスナはキスしてもらった頬に手を当てながら、うっとりしていた。
一方のマナは・・・。

(シンジに貸しGet〜! 帰ってきて、アスナがシンジの事許したら・・・。
 『シンジ、アスナを説得したのは私なの。』
 『本当!?ありがとう、とても嬉しいよ、僕。』
 『ご褒美・・・欲しいな♪』
 『何でも言ってよ!僕、何でもするからさ!!』
 『本当!?じゃあ・・・キスして欲しいな♪』
 『ど、どこに?』
 『やあん!そんなことまで言わせる気〜?』
 『ゴ、ゴメン・・・。』
 『謝らないで。あのね、大人のキスをして欲しいの・・・ダメ?』
 『わ、わかったよ。ありがとう・・・マナ』
 『シンジ・・・好き。』
 な〜んちゃって、私ったらイヤン、イヤン。)

1人首を左右に振って、『イヤン、イヤン』をやりながら妄想に耽っていた。



〜ネルフ本部 個室〜

昨日から泊まりこんでいる碇シンジと渚カヲル。
シンジは一睡もしていなかった、カヲルもである。

「シンジ君、寝たほうがいいんじゃないのかい?」

「・・・アスカが目を覚ますまで眠らない。」

「しかし、それじゃあシンジ君が体調を崩してしまうよ?」

「いいんだよ・・・カヲル君。」

昨日の夜から何度目になるであろうか、その時から会話の内容は変わっていない。
カヲルは『人間』ではないため、不眠は問題無い。
シンジは『人間』なので、眠らないと体調不良を起こす。
カヲルはそのことがわかっているのでシンジを説得するが、シンジは頑として眠ろうとしなかった。

「ハックション!!」

「大丈夫かい、シンジ君?」

「うん・・・、誰かが噂してるのかも。」

ちょうどその時はマナが妄想モードに入ったときであった。

「シンジ君。責任を感じてるだろうけど、こんなことに意味は無いよ。
 アスカさんが意識を回復してもシンジ君が入院じゃ、かわいそうだと思わないのかい?」

(アスカが目を覚ましたときに僕が倒れたら、アスカは僕の立場になるんだよね・・・。)

確信は無かった。
しかし、「こんな思いをするのは自分だけでいい」そう思った、シンジはベッドで横になるのだった。

「Zzz・・・・・・・。」

「おやすみ、シンジ君。」

そして、カヲルは静かに部屋から出ていった。



〜廊下〜

(さすがに昨日はやりすぎたかしらね・・・。)

歩いているにはユイ。
昨日の事を反省したのだろう、シンジ達のいる個室へと向かっていた。

(あれは・・・渚君?)

個室へと向かう途中にある休憩室兼喫煙室、そこでカヲルはコーヒーを飲んでいた。



〜休憩室〜

「どうしたの、渚君?」

「ユイさん、おはようございます。」

「もうお昼過ぎよ。」

「そうでしたか? ところで、何かご用ですか?」

ユイは近くの椅子に座ると、話を続けた。

「シンジは、どうしてる?」

「寝てますよ、ようやくってところです。」

カヲルは昨日からのシンジの行動を報告した。

「・・・謝らないといけないわね。」

「そうですね、ユイさんの行動はちょっと酷いと思いますから。」

「そうね・・・。それじゃ、行って来るわ。」

ユイは軽く微笑み、椅子から立ち上がる。
そして、シンジの眠る個室へと向かった。

(ユイさんと仲直りが終わったら、後はアスカさんだけ、か・・・。)

ユイを見送ると、カヲルはコーヒーのお代わりをカップに注ぐのだった。



〜ネルフ本部 個室〜

体力的にも精神的にも疲労していたシンジはぐっすりと眠っていた。
ユイはそんなシンジを起こさないように気をつけながら、静かにベッドに腰掛けた。

(固いわね・・・寝にくくないのかしら?)

座りごごちはあまりよくないのだろう、ユイはよく寝ているシンジを見てそう思った。

「こんな時に謝っても意味が無いかもしれないけど・・・。
 昨日はゴメンね、シンジ。」

ユイはシンジの頬に手を当てながら謝るが、シンジは目を覚まさなかった。

「私も『もしかしたら』、なんて思ったわ。
 けど、戦闘での判断は貴方達に任せてるの、わかるでしょ?」

第8使徒サンダルフォン・第11使徒イロウル戦のような、特殊な使徒以外は全てシンジ達の判断で戦った。
その他でも、作戦やヒントを大人が与えることがあっても判断しているのは子供達だった。

「だから、アスカちゃんが「アタシに任せて」って言っても、シンジには共に戦ってほしかったの。
 相手の使徒がどういう力を持ってるか知ってても、それは前回のと違うかもしれない。
 だから、どんな時も油断をしないで。」

今回は自ら飛び込んでいった第12使徒レリエル戦。
前回はシンクロ率がトップになったことで油断をしたため、シンジは飲みこまれた。
もし、初号機にあんな力がなければ、ユイがシンジを護ろうとしなければ、シンジは死んでいたのだ。
この事から、ユイは「戦闘中の油断が死を招く。」
これは絶対にやってはいけない事として、シンジに教えたかったのである。

「でも、ちゃんと説明しなかったのは私の責任ね。
 本当に、本当にゴメンね・・・シンジ。」

ユイはシンジの頬から手を離し、ベッドから降りると、個室から出ていった。

「僕こそ、これから気をつけるよ・・・・母さん。」

途中から起きていたのだろう、ドアがしまってからボソッと呟くと再び眠りについた。



〜休憩室〜

相変わらずカヲルはそこにいた、無表情で。

「終わりましたか?」

「ええ、謝ってきたわ。」

ユイの答えを聞き、いつもの微笑を浮かべるカヲル。

「親子でいがみ合う事は悲しいことですからね。」

「そうね・・・。」

「それでは、僕はシンジの所へ戻ります。」

「お願いね、渚君。」

こうして、カヲルは個室へ戻り、ユイはアスカの病室へと向かった。



〜レイの部屋〜

グウ〜・・・。
レイのお腹が鳴った、朝から何も食べていないのだ。

(お腹、空いた・・・。)

誰にも会いたくない、そう言っていた彼女は食欲を満たすため、ダイニングへと向かった。

(マナさん・・・「お昼を取っておくから」と言ってたわ。)



〜ダイニング〜

ダイニングには誰もいなかった。

(誰もいない・・・出かけてるのかしら?)

周りを見渡すが、誰かがいるような気配はしない。

(お腹・・・空いた。)

こうして、レイはマナが作って取っておいてくれた昼食を食べるのであった。

(空腹時は・・・何でも美味しい。)

やはりと言うか、マナも料理は上手いのだが、レイはシンジの料理の方がいいらしい。



〜アスナの部屋〜

ベッドに横たわる2つの人影、マナとアスナ。
アスナはマナに抱きつき眠っていた。

(あらら・・・寝ちゃったわね。)

マナは『一人でいるのが不安』、そう言ったアスナについていたのだ。
横目でアスナを見た後、視線を天井へと向ける。

(ねぇ、シンジはアスカを信じた上で、1人で戦わせたのよね?)

『本部の防衛』と言って待機していたマナ・レイ・カヲル・アスナ、4人はアスカとシンジの様子を知っていた。
EVAの通信機能は声と動画が届く、すなわち誰かが戦ってる最中の状況は遠くにいてもわかるのだ。

(シンジはアスカを見捨てたんじゃないわよね?
 私は信じてるからね・・・。)

惚れた者の弱みなのだろうか、シンジを信じようとするマナであった。



〜ネルフ本部 個室〜

(まだシンジ君は寝てるかな?)

コーヒーも飲み終わり、カヲルは個室へと戻ってきた。
案の定、シンジはベッドに横になっていた。

(静かにしてないといけないね・・・。)

音を立てないように椅子に座るカヲル。

「・・・母さんが謝りに来たんだ。」

「起きてたのかい?」

カヲルはシンジの方へ向き、シンジは体を起こしてベッドに腰掛ける。

「僕は油断していたんだ・・・。」

「言わなくてもいいよ。
 こうなってしまったことは仕方ない、次はこうならない様にすればいいんだから。」

「でも、アスカが目を覚まさなかったら・・・僕は、僕は。」

俯き、ベッドのシーツを握り締めるシンジ。
そんなシンジにカヲルは慰めの声をかける。

「大丈夫・・・アスカさんは君を残して死んでしまうほど弱くはないし、お人好しでもないしね。」

「どういうこと?」

「シンジ君をマナさんに取られたくないってことさ。」

「??」

(マナが僕のことを好きだって言ってるのはわかるけど、それとアスカが目を覚ますのとどういう関係があるんだろう?)

シンジは生粋の鈍感なのだろうか。
ここまでカヲルが言ってるのにもかかわらず、よく意味がわかっていなかった。



〜発令所〜

ユイとリツコがそこで暇を持て余していた。
そこで、リツコは最近思っていた疑問をユイにぶつけた。

「ユイさん、聞きたい事があるんですけど。」

「ん? な〜に、リッちゃん。」

「ミサトは何をしてるんですか?最近、姿を見かけないんですけど・・・。」

リツコの質問にユイは笑みを浮かべた。
そんなユイにリツコは引いた。

「ど、どうしたんですか、急に?」

「うふふ・・・、ごめんなさい。
 ミッちゃんはね、花嫁修行してるのよ。」

これにはリツコがビックリである。

「は、花嫁修行って加持君との事を考えてのことですか?」

「当然!この戦いが終わったら結婚させるんだから、私は初仲人やるのよ♪」

(こ、この人は・・・。)

この能天気な上司の発言に、リツコは開いた口が塞がらなかった。



〜病室 303号室〜

ここにはアスカと愛娘に付き添うキョウコがいた。

「アスカちゃん・・・。」

アスカの手を握り、目を開けてくれる、その時を待つキョウコ。

アスカはまだ、目覚めない・・・・・・・。






<後書き>
ども、ウエッキーです。
前話が暗いんで、今回もそれで行こうかと思いましたが・・・ダメでした。
どこかでコメディーが入ってしまいまふ。(^^;
自分は暗い話とシリアスな話が苦手だとつくづく感じました。



<次回予告>
アスカが目を覚まさない内に14番目の使徒が現れる。
当然、弐号機は出撃不可。迎撃に向かう子供達。
しかし、その中にシンジの姿は無かった。

次回、The Restart Of Evangelion

          第18話「戦闘拒否?」

を、お送りしまーす。


マナ:なんてわたしっていいコなのかしら?

アスカ:なんか、妙に頑張ってるなぁって思ったら・・・。(ーー)

マナ:ほらほら、わたしのお陰で少しづつ纏まりだしてるんじゃない?

アスカ:まだ、シンジ本人が全然じゃない。

マナ:まずは足回りから固めなくちゃ。

アスカ:ったく。

マナ:こんなに頑張ってるのに、なんで怒るのよぉ?

アスカ:下心が気に気に食わないのよっ!(ーー#

マナ:やーねぇ。(^^;;

レイ:私は、あなたの料理が気に食わない・・・。(・・)

マナ:やーねぇ。(;;)
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

inserted by FC2 system