〜???〜

「何で私がこんな所に・・・。」

彼女の名前は葛城ミサト、29歳。
少し前まで、同僚の赤木リツコと『嫁に行か(け)ない三十路女』としてネルフ内で有名であった。
しかし、そんな彼女にも春が訪れた。
かつての思い人・加持リョウジ。
彼と復縁して、現在はミサトのマンションに同棲している。

そんな生活が始まって数日後・・・。
彼女は上司であり、加持と復縁させてくれた碇ユイに呼び出された。



〜碇ユイ研究室〜

「ミッちゃんごめんね、呼び出してりして。」

「いいえ、それはいいんですけど・・・何のご用ですか?」

ユイは机の上にあったチラシを手に取り、ミサトに手渡した。

「ここに通ったほうがいいかと思って。」

「これは・・・料理教室?」

ミサトが受け取ったチラシには、

『女性のたしなみの1つ、お料理。当教室では現役シェフが親切・丁寧に教えます!!』

と、書かれていた。

「ミッちゃんも、この戦いが終わったら結婚するんでしょ?加持君と。」

「あっ、まあ、それは・・・その、つもり、ですけど・・・・・。」

顔を真っ赤にしているミサトに、ユイは微笑みながら話を続ける。

「そ・れ・で、ミッちゃんはお料理できる?」

「え〜と、カレーくらいなら・・・。」

「それじゃあ、通わないとダメよ。掃除・洗濯はまだしもお料理は作ってあげないと。」

現在、葛城家では家事をやっているのは加持である。
と、言ってもシンジやマナのように上手く出来るわけはない。

「加持君がやってるんでしょ?」

「はい・・・。」

「掃除はそうね・・・週1回くらいでもいいと思うわ、あまり散らかさなければだけど、ね。
 その1回で全部の部屋の掃除をするの、加持君と2人だと早く終わるから役割分担を決めてやるといいわ。
 でも、お風呂掃除は別よ。これは毎日の方がいいんじゃない?
 洗濯も毎日、これは当然ね。
 干し方なんかはマナちゃんに教えてもらうといいわね。」

「は、はあ・・・。」

いままでそんなことはやったことが無いミサト。
1人のときはご飯はインスタント、洗濯は溜まったらコインランドリー、掃除はお風呂はしっかり、後はおざなり。
そんなミサトにとってユイの言う事は面倒な物にしか聞こえない。

「お料理はその教室に通って習えばいいと思うわ。」

「わ、わかりました・・・。」



〜料理教室前〜

「何で私がこんな所に・・・。」

こうして、ミサトのお料理修行が始まった。





                      The Restart Of Evangelion

                            番外編Y「ミサトの花嫁修行」





〜料理教室内〜

中に入ったミサトは受付へと向かった。

「すいませーん。」

「はい。」

中で事務仕事をしていたのだろう、受付嬢は手を止めてミサトの方へ向いた。

「あの、今日からこちらに通うことになってる葛城ミサトですけど・・・。」

「はい、碇様から聞いております。
 ここを右に曲がった奥の教室へどうぞ、講師がお待ちしております。」

「は、はあ。
 あと、授業料についてなんですけど・・・。」

ミサトにとってこれが最大の問題であった。
彼女にとってお金はビールを買うものであるから、余計な事に使いたくないのだ。

「碇様からいただいてますので、教室へどうぞ。」

「わかりました・・・。」

(ここで「払ってください。」とか言われたら、「イヤ!」とか言って逃げれたのに・・・・・。)

ミサトは顔は笑顔だが、心では舌打ちをしていた。

(ユイさんはここまで予想していたのかしら・・・だとしたら完敗ね。)

歩いていく内に目的地である教室へ到着。
ミサトは1つ大きく息を吸うと、中へと入っていった。

「失礼します。」



〜調理室〜

ミサトが中に入ると、そこは学校にあるような家庭科室とさほど変わりない部屋だった。

(もっと、おしゃれな感じだと思ってたけど、違うのね。)

「葛城ミサトさんですね?」

「は、はい。」

ミサトは声の主の方を見ると、そこには割烹着を着た女性が立っていた。

「貴方に料理を教えることになります、先生とお呼び下さい。」

「葛城ミサトです。よ、よろしくお願いします。」

「それでは、これに着替えてきてください。隣の部屋が開いているのでそこでどうぞ。」

渡されたのは割烹着。
ミサトのいつもと変わらぬ派手(?)な格好は好ましくない、そう判断した先生であった。

〜着替え中〜

(なんで・・・あたしがこんな格好をしなけりゃならないのよ〜。)

すっかり着替えが終わったミサトは教室へと戻った。

「先生、着替え終わりました。」

「髪をまとめた方がいいですが・・・まあ、いいでしょう。
 では、早速始めましょう。」

そう言って、先生が取り出したのはペンと紙であった。

「そこの椅子に座ってちょうだい、葛城さん。」

「失礼します。」

一言断ってから、椅子に座る。
ミサトが座ったのを確認すると、先生は質問をするのだった。

「葛城さんの得意料理は?」

「カレーです。」

「好きな食べ物は?」

「ビールに合う物全般!」

「・・・嫌いな食べ物は?」

「ビールに合わない物全般!」

「・・・普段からお料理する?」

「皆が集まったときにカレー作る以外はしません。」

「・・・作ってみたいお料理とかありますか?」

「ビールに合う物で、面倒じゃなくて簡単な物。」

「・・・・・わかりました、ちょっと待っててくださる。」

そう言うと、先生は椅子から立ちあがり、奥から何かを持ってきた。

「ここに3つのおにぎりがあります、どれが1番美味しいか答えてください。」

先生が出したおにぎり、A・B・Cとしよう。
Aは新米のおにぎり、Bは古米のおにぎり、Cは賞味期限ギリギリのコンビニのおにぎり

〜食べ比べ中〜

(どれも同じじゃないから・・・これって。)

食べれれば問題無い、そんなミサトには味の違いなどわかろう筈が無い。

「全部同じ味じゃないんですか?」

「・・・わかりました。」

(味音痴なのね、この人の作るカレーは食べたくないわ。)

「じゃあ、早速お料理の基本を始めたいと思います。」

「は、はい。」

ミサトはここで『包丁の使い方・切り方』、『鍋の使い方・振り方』、『食器の洗い方・洗った後の処置』などなど
料理をする前とした後の事の基礎知識を叩きこまれて、初日を終えた。

「・・・もう、こんな時間ですか。 今日はここまでにしましょう。」

「あ、ありがとうございました〜・・・。」

「明日も今日と同じ時間に来てくださいね。」

「は〜い。」

先生は教室から出ていく、ミサトは近くにあった椅子に座りこんでしまった。

(しゃ、しゃれにならないわね・・・これ。)

料理の奥深さを体感したミサトは心底疲れきってしまった。
動かしたくない体を無理に動かして車に乗りこむ、こうして帰宅するのだった。



〜ミサトのマンション〜

「ただいま〜・・・。」

「おう、おかえり。どうだった、料理教室は?」

彼女を出迎えたこの男が、加持リョウジであった。
彼の格好は、首から掛ける薄いブルーのエプロンをして、右手にはフライパンを持っていた。
夕飯の仕度をしている最中といった所だ。

「ゴメン、後で話すわ・・・お風呂沸いてる?」

「ああ。準備はできてるが、大丈夫か?」

「大丈夫よ〜。じゃ、先に入るわね・・・。」

そう言うと、ミサトはバスルームへと消えた。

「何かあったのか、あいつ。」

加持は首を傾げながらも、夕飯の仕度の続きを始めた。



〜バスルーム〜

脱衣所で服を脱ぎ、バスルームへと入る。
扉を閉める直前、ペンペンが入ってきた。

「ペンペンも一緒には入ろうね〜。」

「クワ?」

主人の力ない声に心配するような目で見るが気付いてもらえないペンペンであった。



一頻り体と頭を洗い終えたミサトとペンペン、1人と1匹は仲良く湯船に浸かっていた。

「ねえ、ペンペン・・・。私って家庭的じゃないみたい。」

「クワッ、クワッ!!」

「そうだ。」と言わんばかりに首を縦に振るペンペン。
しかし、ミサトは俯いていたためこれも見ていなかった。



〜ダイニング〜

「「いただきます。」」

「クワ〜♪」

今日の夕飯は加持作『加持流・炒飯』、『インスタントのオニオンスープ』、『加持流・男のサラダ』の3品。
(ちなみに、『男のサラダ』とは野菜をぶった切ってボールに盛ったという、ワイルド(?)なサラダです。)

「アンタの料理って見た目悪いんだけど・・・美味しいわよね。」

「・・・それ、誉めてるのか?けなしてるのか?」

「誉めてんじゃないのよ〜、ビールお代わり!!」

「そりゃどうも。お代わりはいいけど、飲みすぎんなよ。」

「心配してくれるんだ〜、ありがと。」

「は、早く食べろ!冷めるだろが!!」

「照れちゃって〜、かわいいんだから。」

仲がいいことは良い事で〜。
こんな会話を毎日するこの2人、飽きないものである。



〜リビング〜

「はぁ、美味しかった。」

「お前の料理、楽しみにしてるからな。」

『お前の料理』と聞いて、一気にテンションが低くなるミサト。

「どうした?」

「・・・料理って大変よね。」

「はあ?」

「あのね・・・。」

ミサトは今日、料理教室で教わったことを加持に話した。

「そうか、それって基本的なことなんだからしょうがないだろ。」

「でも、アンタ出来ないでしょ?」

「独学だからなぁ、俺。」

加持の料理は独学である。
独り身が長かった所為でできるようになっただけのものなのだ。

「はあ、あんなに大変だと思わなかったもの・・・。」

「せっかく基礎から教えてくれるんだ、きっちり習ってこい。」

「イジワル〜。」



〜翌日・料理教室〜

「葛城さん、おはようございます。」

「おはようございます、先生。」

「では、今日からお料理をしようと思います。」

今日から料理を教えてくれることになった。
しかし、開けてみれば『ご飯の炊き方』・『ダシの取り方』・『味噌汁の作り方』であった。
食事のメインになるような料理はまた後日であった。


〜授業中〜


「・・・・それでは、今日はここまでにしましょう。」

「あ、ありがとうございました〜。」

こうして、ミサトは今日もヘトヘトに疲れて帰宅するのだった。


〜通い始めて数日〜


「今日もお疲れ様でした、葛城さん。」

「先生、ありがとうございました。」

あれから数日。いろいろな料理を教わり、得意料理も出来るようになった。
余談だが、かつて自分の得意だった『カレー』を食べてダウンしたらしい・・・。

「明日はお休みになってますね。」

「へっ?」

「碇様から連絡が来てます。詳しくは聞いてみたらいかがでしょう?」

「は、はあ。」

『ピピ〜ピピ〜ピ〜ピピピ〜♪ピッピッピ〜、ピッピッピ〜♪』

ミサトが電話しようと思ったちょうどその時、電話が掛かってきた。

「はい?」

『ミッちゃん?先生から聞いた、明日お休みの件?』

「はい、どういうことなんです?」

『詳しくは、今日帰って旦那様とTVを見てね♪』

「だ、旦那って・・・。」

『じゃあね〜。』ピッ!

「それじゃ、私は失礼します。」

「はい、次回は明後日ですね。ありがとうございました。」

こうしてミサトは帰宅したのだった。

〜家〜

夕飯もそこそこに加持と一緒にTVを見ると・・・・・。

『次のニュースです。
 かつて製作されたものの、暴走事故を起こしたことがあるロボット、JAの新型機が発表されました。』

『開発責任者の時田さんです。』

『どうも。この度はアメリカで開発を進め、完成したので発表をしようと思ったわけです。
 このJAUは・・・・・核では無く・・・・・完全な・・・・・無線操縦で・・・・・
 連続稼働時間が・・・・・<中略>・・・・・と、言うわけです。』

『は、はあ。』

『そ・こ・で、ネルフの諸君に告ぐ!
 前回の屈辱を晴らすために勝負を挑みたい!!
 そちらは何体でこられても構わん、次こそは絶対にJAUがEVAに勝ーーーつ!!!』

ユイの言ってたことはこのことなのだろう。
そして、「明日はネルフに来てね」と、言うことだとわかった。

「アイツ、まだ懲りてないようねぇ!!」

「お、落ち着けよ、葛城。」

「やかましゃあ!!!!!」

「のわぁーーーーー!!!!!」

この夜、ミサトは加持と『夜のプロレス』を5ラウンドほどプレイするのだった。

「激しいのは好みなんですが・・・あれは地獄でした・・・・・。」と、加持談。



〜発令所〜

(ここは本編17話の続きになってます。)

「・・・と、いう感じなのよ。」

「あのミサトが花嫁修行なんて・・・・・。」

信じられない、そんな表情を浮かべるリツコ。

「みんな〜、ごくろうさまん♪」

噂をすれば影、ミサトがお盆片手に現れた。

「ユイさん、リツコ、これ私が作ったんだけど食べてみてよ。」

お盆に乗ってる物、それは「おにぎり」であった。

「どれどれ〜。」

ユイが1つ手に取ると、口に運ぶ。

「(もぐもぐ)おいしいじゃない、リッちゃんも食べてみなさいよ。」

「は、はあ・・・。」

ユイに言われて、「おにぎり」を手に取り、恐る恐る口に運ぶ。

「(もぐもぐ)う、嘘・・・、味音痴の作った「おにぎり」とは思えないわ。」

「し、失礼ね、アンタって。でも、自分で作った「特製カレー」があんなに不味いと思わなかったわ。」

ミサトが自分の作った「カレー」を食べて、「不味い」と思った。
それを聞いて、リツコは涙がこぼれそうになった。

「ミサト・・・あなた、いいお嫁さんになれるわ。」

「ありがとう・・・リツコ。」

こうして、ミサトの「おにぎり」はあっという間に無くなった。
そして、『お嫁に行か(け)ない三十路女』はリツコだけになり、
『ネルフ・女性職員人気Top5』でミサトは1位にランクインするのだった。







<後書き>
ミサト、補完完了〜!!
この味覚音痴が治ればいいんじゃないかな、みたいな。(^^;
なんか花嫁修行の部分が薄かった気もしますが、これでよし!<おいおい

次回の番外編はどうしましょうかねぇ。
コメント係のマナちゃんが、
『番外編は、本編とリンクしなくていいから、わたし主役で別のストーリー展開して欲しいなぁ。』
と、言ってるしやってみようかなぁ。
アスナと2人、女同士の愛の物語とか?(爆)

とは言え、リクエストがメインなのは変わりませんけどね。

P.S
最後に出てきた『ネルフ・女性職員人気Top5』発表!!

1位 葛城ミサト          理由・『料理上手』であのナイスバディ、最高っす!!
2位 綾波レイ           理由・自分のためだけに尽くしてくれそうだから。
   碇ユイ            理由・あのヒゲ司令にはもったいない!! (レイと同票で2位)
3位 霧島マナ           理由・笑顔がかわいいから、『家事全般』できるそうだから。
4位 伊吹マヤ           理由・守ってあげたくなるかわいさがあるから。
5位 惣流=キョウコ=ツェッペリン 理由・子持ちでも再婚でもOK、甘えられそうだから。

ちなみに、
6位 惣流=アスナ=ラングレー   理由・レズ?関係無い、無い、甘えられたらなんでもしてあげたくなるから。
7位 赤木リツコ          理由・綺麗なんだけど、冷たく恐い雰囲気があるから。人体改造されそうだから。
8位 惣流=アスカ=ラングレー   理由・彼女にしたい!・・・けど、相手が決まってうのはどうもねぇ。
欄外 Magi           理由・凄く頼りになりそうだから。(1票)


マナ:(ーー#

アスカ:(ーー#

マナ:あなた、顔怖いわよ。(ーー#

アスカ:アンタこそ。(ーー#

マナ:あなたが怒るようなストーリーだったかしら?(ーー#。

アスカ:アンタも怒るようなストーリーじゃなかったと思うけど?(ーー#

マナ:ええ。後書き見るまでは、楽しく読ませてもらっていましたとも。(ーー#

アスカ:アタシだって、P.S見るまでは、楽しく読ませて貰ってたわよっ!(ーー#

マナ:誰が危ない関係の物語をリクエストしてんのよーーーーーーーーーーーーっ!!!(▼▼#

アスカ:最下位とはどういうことじゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!(▼▼#

マナ:あーら、訂正前は名前すら忘れられてたらしいじゃない。(ー。ー)(ぼそ)

アスカ:ぬわんですってーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!(▼▼#

マナ&アスカ:フォローしなかったら、ただで済むなんておもうんじゃないわよっ!(▼▼#(▼▼#
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
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