「アタシ、ここから出ていこうと思うの・・・。」

「へっ?な、何言ってんのさ、アスカ?」

ここは碇家のリビング。
2人きりで向かい合って話をしているだが、その話題の始まりがこれだった。
当然、シンジはわけのわからないと言った表情をしていた。

「い、いきなり出てくったって、どうしてさ!?」

「アタシ・・・戻って来てシンジに素直になれたのは嬉しかったわ。
 けど、EVAにはロクに乗ってないし、乗ったときにはほとんど役立たずだった・・・それが嫌なの。」

俯きながらそう言うアスカ、その声は震えていた。

「そ、それで出ていくの?」

「シンジはアタシに『戦わなくていい』って言ってくれたけど、アタシがそれじゃ嫌だったの。
 EVAで役に立てないのなら、アタシはシンジと一緒にいられないの!!」

顔を上げたアスカは泣いていた。
EVAが全てだった少女は、碇シンジが全てになったはずだった。
しかし、彼女にとって彼との絆を作ってくれた、彼の役に立てること、それが今の彼女にとってのEVAの価値。

その価値が発揮できない。

だから、彼女はここから出ることにした。
役に立てない自分を、必要と言ってくれる優しい彼から逃げるため。

「そんな!!僕はアスカ、君のことが・・・・・。」

「お願いだから言わないで・・・。
 ママには許可を取ってあるの、アタシはドイツの大学院に進む事にしたの。

いつしか、彼女の流れていた涙は止まっていた。
シンジを真っ直ぐに見つめ、確固たる意思を感じる。
『何を言ってもアタシは意見を変えない。』そんな瞳をしていた。

「・・・何を言ってもダメなんだろ。」

アスカとの付き合いが長かったシンジは、彼女の表情からその意思が硬いことがわかっていた。

「うん。ちなみに謝らないわよ。
 謝るくらいなら、こんなこと言い出さないんだから。」

「わかったよ。
 向こうでも頑張ってね、アスカ。」

シンジの言葉を聞くと、アスカは立ちあがり玄関から出ていった。

(今日、今から出発するなんて・・・アスからしいね。)






                   The Restart Of Evangelion

                        番外編Z「新たな恋の話」〜LMS〜





〜あれから3ヶ月〜

それからの碇シンジは見るに堪えないものであった。
『使徒』との戦いを終え、世界に平和を取り戻した。

「皆がいる平和な世界。」

彼にとって、ここに戻るときに誓った世界がここにあった。
しかし、いてほしい人がここにはいなかった。

さて、今現在の彼はどうなっているだろうか?



〜碇家〜

朝、誰かがベッドに寝てる人を起こしていた。

「もう朝だよ、起きて・・・。」

「ううん・・・。」

体を揺らされて、目をこすりながら体を起こす少年。
起こしたのは霧島マナ、現在碇家に同棲中。(本人談・本当は同居)
起こされたのは碇シンジ、ここの家の息子。

「シンジ、おはよ♪」

「おはよう・・・マナ。」

「さっ、早く起きて。
 みんなが下で朝ご飯食べる準備してるんだから。」

「わかったよ、5分したら行くから。」

「2度寝しちゃダメよ〜。」

そう言ってマナは下へと降りていった。

(はぁ、起こしてくれるのはいいんだけどなぁ・・・。
 僕はもう少しゆっくりしたいんだけど。)

3ヶ月前、当時の恋人同士の関係であった『惣流=アスカ=ラングレー』と別れてからの彼は酷いものであった。
1人部屋に閉じこもり、誰とも顔を合わせなかった。
不意に誰かと出会っても走って逃げてしまっていたのだ。
そんな彼を以前のようにしたのはマナであった。

〜回想〜

『シンジ・・・どうしたの?』

『・・・ほっといてくれよ!僕はアスカに捨てられたんだから!!』

当時からアスカとシンジが付き合ってたことを知っていたマナにとって、驚くべきことではなかった。
しかし、本人から『捨てられた』など聞かされると、流石に驚いた。

『!! そうだったんだ。ゴメンね、シンジ。』

『どうしてマナが謝るのさ、僕こそ大きな声だして・・・ゴメン。』

『『・・・・・。』』

不意に訪れた静寂。
それを破ったのはお互いだった。

『『あの!!』』

『マナから言ってよ。』

『うん・・・。
 あのね、シンジさえよければ・・・アスカの代わりになれないかな、私?』

この発言にはシンジが驚いた。
自分はもう一度謝って、部屋へと帰ろうとしていたところだったのだ。
この発言は重い。

『そんな、それこそマナに悪いじゃないか・・・。』

『それでもいいの・・・。
 そんな、人から逃げまわるシンジなんて、見たくないから。』

『・・・・・・・。』

『私はアスカの代わりでも構わないから・・・。』

シンジは返事をせず、そこから走って部屋に閉じこもってしまった。

しかし、マナのおかげであろう。
翌日から彼は以前と変わらぬ生活を送るようになっていた。



(僕はもう振りかえらない、さようなら・・・アスカ。)

「さてっと、仕度はOKだな・・・ご飯を食べに行かなくちゃ。」



ダイニングにつくと、そこにはシンジを除く全員が座っていた。

「おはよう、みんな。」

「挨拶は言いから、早く座りなさい、シンジ。」

ユイに窘められ、自分の席につくシンジ。
すでにテーブルの上には食事の準備が整っていた。

「みんなそろったことだし・・・あなた、お願いね♪」

「ああ。それでは・・・いただきます。」

「「「「「いただきます。」」」」」

このように、ゲンドウが音頭を取り、碇家の食事が始まる。
これは戦いが終わり、ゲンドウが一緒に住むようになってからユイが決めたこと。
ユイと一緒に暮らせるようになったからであろう、ゲンドウは口数が多少だが多くなった。

「シンジ君、今日もゆっくりだね。」

「おはよう、カヲル君。
 本当はもう少し寝てたいんだけどね。」

カヲルが声をかける、次はレイ。
これも今では決まり事のようなもの。

「おはよう、お兄ちゃん。」

「レイ、おはよう。」

「みんな、急がないと学校に遅れるぞ。」

ゲンドウの声で急いでご飯を食べる子供達。
これもシンジが早く起きれば、問題無くなるのだが・・・無理なので誰もそれには触れない。

「「「「ごちそうさまでした〜。」」」」

そう言うや否や、急いで鞄を取りにいく。
そして、学校へと向かうのであった。

「「「「行ってきまーす!!」」」」

「はい、いってらっしゃい。」

「車には気をつけるんだぞ。」

嵐のように駆け抜けて行く子供達。
それを見送った後、ユイは後片付け、ゲンドウは出社準備をする。

「では、行ってくる。」

「いってらっしゃい♪」




学校に行くと、以前と変わらずトウジ・ケンスケ・委員長にがいる。
授業を受けて、みんなでお昼を食べて、一緒に帰る。
使徒との戦いがあった時には中々出来なかった光景。
しかし、今日はいつもと違っていた。

「シンジ君、帰ろうか?」

「ゴメン、今日は先に帰ってくれる。」

カヲルの誘いを申し訳なさそうに断るシンジ。

「寂しいけど仕方ないね。じゃあ、先に帰ってるよ。」

「ほなな、シンジ。」

「じゃあな、シンジ。」

「さようなら、碇君。」

「先に帰ってるわ、お兄ちゃん。」

「じゃあ、私も・・・。」

みんな同様、帰ろうとするマナをシンジが呼び止める。

「マナ、話があるんだ。」

「? いいけど、何?」

「屋上に行こうよ。」

「?? いいけど・・・。」

マナは鞄を机に置くと、シンジと一緒に屋上へと向かった。



それはとても綺麗な夕焼け。
屋上に出た2人はその光景に出くわした。

「綺麗だね〜、シンジはこれを見せたかったの?」

「違うよ・・・マナ。」

シンジが真剣な声を出し、マナも真面目な顔になる。

「ありがとう。」

「へっ?私、何かした?」

「僕が落ち込んでたときに慰めてくれたじゃないか、嬉しかったし、感謝してるんだ。」

「ううん、いいの。」

「それで・・・あれからずっと考えてたんだけど。」

「うん・・・。」

シンジは大きく息を吸うと、言葉を発した。

「マナ、アスカの変わりじゃなくていいよ。
 マナ自身として、僕と付き合ってください。」

マナは口に手を当て、目から涙がにじんでいた。
信じられないのと嬉しい表情が混ざった、そんな表情を浮かべていた。

「本当に私でいいの?」

「当たり前じゃないか!
 アスカの変わりは誰にも出来ないよ。
 僕はマナ、君自身が好きなんだ!!」

「私でいいの?いいんだよね・・・?」

マナの目からにじんでいた涙が流れていた。

「うん、君じゃないとダメなんだ・・・。」

「シンジー!!!」

マナはシンジに走り寄ると、そのまま抱きついた。

「私も・・・シンジの事、好きだよ。
 ずっと、ずっと前から好きだったの。」

「マナ、好きだよ・・・・・。」

シンジが目を閉じ、顔を近づけてくる。
その行動がどういう意味か知ってるマナも瞳を閉じる

「シンジ・・・・・。」

『チュ・・・・・・・。』

お互いの気持ちを確認し、確かめ合うかのように甘く優しい長いキス。

「「はあぁ・・・。」」

お互いの唇が離れる。

「そろそろ帰ろうか?」

「うん・・・。」

シンジがマナの手を取り、屋上から出ていった。

(シンジの手って暖かいな・・・。)

それは家に帰るときまで離れることは無かった。






<後書き>
ども、ウエッキーです。
最近、「LMSもいいなぁ・・・。」などと思っています。
LAS、LRSも好きなんですけどね。(^^;

設定としては「使徒との戦いが全て終わり、平和な世界でのLMS」って感じです。
当然ですが、本編の終わりはこうはなりません。
本編については今後の展開をお楽しみにです。

補足説明・・・キョウコとアスナはアスカと一緒にドイツへと帰ったことになってます。
       ネルフは研究所になり、所属してるのはゲンドウだけ。
       ユイは専業主婦になってます。
       レイは「碇レイ」となり、カヲルとマナはそのまま同居です。
       
一応、続く予定です・・・これ。

コメント係のお二人へ。

アスカさん、怒らないで下さいね。
こういう話も許してくれる、寛容な心の持ち主ですもんね、ね?
本編のヒロインは貴方ですから。

マナさん、こんな感じですがどうでしょう?
「シンジとマナのラブラブな話」で、この話ではマナさんがヒロインです。
今後の展開をお楽しみに〜。(私は続きを書くつもりです、はい。)

しつこい様ですが、続きを書くつもりはあります。
しかし、次の番外編がこれになるかわからないので次回予告はしません。

予定としては『デート編』?<定番ですけど、これかなぁ。
『2人で過ごす始めての夜編』とか?<「そういう展開」無しの話が出来ればありえる?
『アスナが復活して修羅場編』?<これはマナさんに怒られるんで無いです。


マナ:ウエッキーさんっ! ありがとーーーーっ!(感涙)

アスカ:(▼▼#

マナ:3年よっ。3年。3年コメント係りして、こんなの始めて。(;;)(感動)

アスカ:裏切ったわねっ!(▼▼#

マナ:なんて顔してるのよっ。こんな名作書いて下さったウエッキーさんに失礼でしょっ。(^O^v

アスカ:シンジはアタシのものよっ!(▼▼#

マナ:散々これ迄当てられ続けたんだもん。わたしの話が1つくらいあってもいいじゃない。ね。(^^v

アスカ:シンジはアタシのものよっ!(▼▼#

マナ:あーん。もう嬉しい嬉しい嬉しいよーっ!(涙涙涙)

アスカ:アスナは何してるのよっ! アスナはっ!(▼▼#

マナ:もうわたしとシンジの間を邪魔できる人なんていないのよぉっ!(^O^v

アスカ:殺してやるっ! 殺してやるっ! 殺してやるっ! 弐号機起動っ!! スナイパーポジトロンライフル用意っ!!(▼▼#

マナ:ウエッキーさんっ! この乱暴者はちゃんと押さえつけておくから、どんどん書いてねぇ。(はーと)

アスカ:離せーーーっ! 離せーーーっ! 殺してやるぅぅっ! うがーーーーーーーっ!!!(▼▼#(じたばたじたばた)
作者"ウエッキー"様へのメール/小説の感想はこちら。
frontier@tokai.or.jp

感想は新たな作品を作り出す原動力です。1行の感想でも結構
ですので、ぜひとも作者の方に感想メールを送って下さい。

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